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合渡の戦い
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「くっ、このままでは……一旦引くぞ!」
秀信勢が岐阜城脱出と時を同じくして、三成より送られた岐阜城救援の為の援軍は岐阜城の西、河渡川へ到達していた。
が、援軍の将、前野忠康は朝食を取らせている間に東軍、黒田、田中、藤堂隊の奇襲を受けていた。
「梅野村まで退き、態勢を立て直すぞ!」
その場はなんとか脱した。
東軍は大軍、渡河さえ成功すれば後はどうとでもなると思っているのだろうか。
が、三成より与えられた兵は最初は千もいたのが今では六百程であった。
「前野殿、これではまともに戦えぬ。岐阜中納言殿には悪いが、ここは退却致そう。」
「森殿……仕方無いか。しかし、殿軍は……。」
「俺がやろう。」
三成より援軍を任されたのは主に前野忠康、森九兵衛、杉江勘兵衛の三人であった。
「お主等は必ずや兵を無事に大垣に戻すのだ。」
「……相わかった。」
そうこうしているうちに、東軍が兵を差し向けてくる。
先鋒は田中吉政の軍であった。
「早くゆかれよ!」
「すまぬ!」
「秀信様。何やら河渡の辺りが騒がしいですな。」
「河渡……。そうか、合渡川の戦い!」
兵を走らせつつ、思い出す。
岐阜城救援の為とも長良川一帯の警戒のためとも伝わるが、大垣城より前野忠康率いる一千の兵が出陣し、岐阜城陥落の日と同じ日に東軍と戦を繰り広げている。
そして、殿軍を務めた杉江勘兵衛は討ち死にしたはずだ。
杉江勘兵衛は島左近等と並んで勇猛と謳われた将である。
ここで失うのは惜しい。
「三郎殿。どうする?」
「……東軍の後背を突きましょう。敵は黒田、田中、藤堂と東軍の猛将。ここで力を削いでおきたい。背後に敵がいるとは思いも寄らないでそょうから、油断している筈。」
「では、向こうと連携を取りたいですな。」
百々の意見は尤もである。
が、友軍も敵軍も我々が岐阜城を脱出したことに気付いていない。
我々は千五百程である。
奇襲したとしてもどれほど被害を与えられるか……。
「百々、少数の別働隊を率い迂回して敵の横っ腹につけ、我々が敵の後背を突いたと同時に一斉に鬨の声を上げるんだ。」
「……何を偉そうに……。だが、お主の策は見事だ。従おう。」
百々は渋々、すぐさま兵を引き連れ、移動を開始した。
「包囲し、殲滅するか?」
「いえ、殿の策も良いとは思いますが、それではこちらの被害も大きくなります。逃げ道を作っておき、敢えて逃がします。逃げることが出来ると悟った兵は勝つことより生きる事を優先するので。」
秀信は頷いた。
「木造。敵の後背を突く際の先鋒は任せた。」
「はっ!お任せ下さい!」
木造長政も決して若くは無いというのに、よく働く。
昔からそうだったな。
「兄上、私も行かせてください。」
「秀則。お前は……。」
織田秀則。
織田秀信の弟として西軍に属し、兄ととも東軍とに戦った。
秀信が三郎の方へ視線を送る。
「……やめておいた方が良いでしょう。もし秀信様に何かがあれば織田家を継ぐのは秀則様です。」
「ということだ。我らと共に後方におれ。」
三郎は織田家の再興を目的としている。
そのためには、織田の血筋が、それも信忠の血筋が必要なのである。
「信長様。弟は三郎殿が信長様だと気付いておりませぬ。」
秀信が耳打ちをしてくる。
気付いていないのならば、それはそれで助かるので良い。
「分かってる。取り敢えず今は眼の前の戦に集中しよう。」
「はっ。」
ここでいかに敵を打ち取れるかが寛容だ。
相手は関ヶ原における東軍の主力。
出来る限り減らしておきたい。
秀信勢が岐阜城脱出と時を同じくして、三成より送られた岐阜城救援の為の援軍は岐阜城の西、河渡川へ到達していた。
が、援軍の将、前野忠康は朝食を取らせている間に東軍、黒田、田中、藤堂隊の奇襲を受けていた。
「梅野村まで退き、態勢を立て直すぞ!」
その場はなんとか脱した。
東軍は大軍、渡河さえ成功すれば後はどうとでもなると思っているのだろうか。
が、三成より与えられた兵は最初は千もいたのが今では六百程であった。
「前野殿、これではまともに戦えぬ。岐阜中納言殿には悪いが、ここは退却致そう。」
「森殿……仕方無いか。しかし、殿軍は……。」
「俺がやろう。」
三成より援軍を任されたのは主に前野忠康、森九兵衛、杉江勘兵衛の三人であった。
「お主等は必ずや兵を無事に大垣に戻すのだ。」
「……相わかった。」
そうこうしているうちに、東軍が兵を差し向けてくる。
先鋒は田中吉政の軍であった。
「早くゆかれよ!」
「すまぬ!」
「秀信様。何やら河渡の辺りが騒がしいですな。」
「河渡……。そうか、合渡川の戦い!」
兵を走らせつつ、思い出す。
岐阜城救援の為とも長良川一帯の警戒のためとも伝わるが、大垣城より前野忠康率いる一千の兵が出陣し、岐阜城陥落の日と同じ日に東軍と戦を繰り広げている。
そして、殿軍を務めた杉江勘兵衛は討ち死にしたはずだ。
杉江勘兵衛は島左近等と並んで勇猛と謳われた将である。
ここで失うのは惜しい。
「三郎殿。どうする?」
「……東軍の後背を突きましょう。敵は黒田、田中、藤堂と東軍の猛将。ここで力を削いでおきたい。背後に敵がいるとは思いも寄らないでそょうから、油断している筈。」
「では、向こうと連携を取りたいですな。」
百々の意見は尤もである。
が、友軍も敵軍も我々が岐阜城を脱出したことに気付いていない。
我々は千五百程である。
奇襲したとしてもどれほど被害を与えられるか……。
「百々、少数の別働隊を率い迂回して敵の横っ腹につけ、我々が敵の後背を突いたと同時に一斉に鬨の声を上げるんだ。」
「……何を偉そうに……。だが、お主の策は見事だ。従おう。」
百々は渋々、すぐさま兵を引き連れ、移動を開始した。
「包囲し、殲滅するか?」
「いえ、殿の策も良いとは思いますが、それではこちらの被害も大きくなります。逃げ道を作っておき、敢えて逃がします。逃げることが出来ると悟った兵は勝つことより生きる事を優先するので。」
秀信は頷いた。
「木造。敵の後背を突く際の先鋒は任せた。」
「はっ!お任せ下さい!」
木造長政も決して若くは無いというのに、よく働く。
昔からそうだったな。
「兄上、私も行かせてください。」
「秀則。お前は……。」
織田秀則。
織田秀信の弟として西軍に属し、兄ととも東軍とに戦った。
秀信が三郎の方へ視線を送る。
「……やめておいた方が良いでしょう。もし秀信様に何かがあれば織田家を継ぐのは秀則様です。」
「ということだ。我らと共に後方におれ。」
三郎は織田家の再興を目的としている。
そのためには、織田の血筋が、それも信忠の血筋が必要なのである。
「信長様。弟は三郎殿が信長様だと気付いておりませぬ。」
秀信が耳打ちをしてくる。
気付いていないのならば、それはそれで助かるので良い。
「分かってる。取り敢えず今は眼の前の戦に集中しよう。」
「はっ。」
ここでいかに敵を打ち取れるかが寛容だ。
相手は関ヶ原における東軍の主力。
出来る限り減らしておきたい。
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