8 / 182
舞兵庫
しおりを挟む
「この戦、無駄に出る必要はない。田中殿に任せておけ。」
「では、我らは?」
東軍、黒田長政。
秀吉に仕えた軍師黒田官兵衛の息子である。
「後方におれば良い。ここで兵を消耗させたくはない。」
「はっ!」
既に渡河は追え、田中勢が敵に追撃をかけている。
敵の数はせいぜい一千。
大した数ではない。
(それよりも、岐阜城が気になる。岐阜城に籠もるはかの織田信長公の御孫。侮ることは出来ない。)
「殿!」
すると、陣に伝令が駆け込んでくる。
「どうした?」
「て、敵です!後方より敵が!」
「何だと!?どこの兵だ!?」
「旗印は、織田!」
その報告を聞き、振り返る。
そこには確かに織田の旗が立っていた。
「岐阜城に籠もっていたのではないのか!?」
すると、陣の横から鬨の声が聞こえる。
そして、別の伝令が駆け込んできた。
「ご報告!織田の旗が我等が陣のすぐ横にも!」
「くっ!してやられた!」
既に兵には動揺が広がっていた。
しかし、逃げ出す者が居ないのは大軍であるが故の安心感からだろうか。
包囲されていないのは、せめてもの救いか。
「くっ……どうする……。」
「こ、これは!?」
杉江勘兵衛が指揮する殿軍にも、その状況はすぐに伝わった。
敵兵に動揺が広がっていた。
「な、何事だ!?」
すると、杉江勘兵衛は敵陣の中で狼狽える馬上の武将を見つけた。
敵将である。
「今じゃ!攻めかけよ!」
その隙を見のがさす、殿軍は遅滞戦術から一転、攻勢に転じた。
「なっ!?しまっ……。」
馬上の武将は流れ矢に当たり、落ちた。
それを受け、敵勢は一気に崩れた。
「今じゃ!更に押せ!押し戻せ!」
「ん?」
大垣城へと後退する軍を指揮する舞兵庫こと前野忠康。
撤退を開始した彼らにも後方の状況の変化は伝わった。
「あれは、織田様の旗!」
森九兵衛の指差す方を見ると、そこには確かに昔見慣れた織田の旗が立っていた。
「どうやら、城を出て眼の前で戦っていた我等に加勢してくれたのか。」
「敵勢の横にも織田様の旗が!」
半ば包囲された形になっている。
流石は信長公の御孫。
ならは、やることは一つであった。
「我こそは岐阜中納言が家臣、木造長政!かかって参れ!」
木造長政が自ら槍を振るい、敵勢を蹴散らしていく。
奇襲を受けた黒田勢はまだまだ態勢を立て直せていなかった。
「木造殿が出過ぎておるな。松田殿、兵を率いて敵勢左翼を突いてくだされ。」
「相わかった!」
松田が兵を率いて行く。
敵左翼側には百々が率いる別働隊がいる。
あわよくば敵を潰走させられる。
「此度の戦は敵を引かせるだけで良い。あまり無茶はさせるなよ。」
「わかっております。」
秀信の言葉に秀則は頷く。
百々から指導を受けていた秀則が指揮を取っていた。
無論、総大将は秀信てある。
「お、黒田勢が引くようですな。」
「藤堂勢もそれに従い引いたな。秀信様。そろそろ頃合い、友軍と合流し、大垣城へ引きましょう。」
「うむ、三郎の言う通りに……ん?」
すると、黒田勢の引く先に別の軍が動いていることに気が付く。
「あれは……舞兵庫殿!」
「成る程……戦況を見て潰走する敵勢を攻めるか。流石だな。」
秀信に正対し、進言する。
「ここは殿軍と連携して田中勢を打ち倒しましょう。」
「撤退する黒田、藤堂勢は舞兵庫殿にお任せいたしましょう。」
「うむ、そうしようか。一気に攻めよ!」
これで、関ヶ原の状況が大きく変わるだろう。
だが、まだまだだ。
もっと優位な状況を作らねば。
「では、我らは?」
東軍、黒田長政。
秀吉に仕えた軍師黒田官兵衛の息子である。
「後方におれば良い。ここで兵を消耗させたくはない。」
「はっ!」
既に渡河は追え、田中勢が敵に追撃をかけている。
敵の数はせいぜい一千。
大した数ではない。
(それよりも、岐阜城が気になる。岐阜城に籠もるはかの織田信長公の御孫。侮ることは出来ない。)
「殿!」
すると、陣に伝令が駆け込んでくる。
「どうした?」
「て、敵です!後方より敵が!」
「何だと!?どこの兵だ!?」
「旗印は、織田!」
その報告を聞き、振り返る。
そこには確かに織田の旗が立っていた。
「岐阜城に籠もっていたのではないのか!?」
すると、陣の横から鬨の声が聞こえる。
そして、別の伝令が駆け込んできた。
「ご報告!織田の旗が我等が陣のすぐ横にも!」
「くっ!してやられた!」
既に兵には動揺が広がっていた。
しかし、逃げ出す者が居ないのは大軍であるが故の安心感からだろうか。
包囲されていないのは、せめてもの救いか。
「くっ……どうする……。」
「こ、これは!?」
杉江勘兵衛が指揮する殿軍にも、その状況はすぐに伝わった。
敵兵に動揺が広がっていた。
「な、何事だ!?」
すると、杉江勘兵衛は敵陣の中で狼狽える馬上の武将を見つけた。
敵将である。
「今じゃ!攻めかけよ!」
その隙を見のがさす、殿軍は遅滞戦術から一転、攻勢に転じた。
「なっ!?しまっ……。」
馬上の武将は流れ矢に当たり、落ちた。
それを受け、敵勢は一気に崩れた。
「今じゃ!更に押せ!押し戻せ!」
「ん?」
大垣城へと後退する軍を指揮する舞兵庫こと前野忠康。
撤退を開始した彼らにも後方の状況の変化は伝わった。
「あれは、織田様の旗!」
森九兵衛の指差す方を見ると、そこには確かに昔見慣れた織田の旗が立っていた。
「どうやら、城を出て眼の前で戦っていた我等に加勢してくれたのか。」
「敵勢の横にも織田様の旗が!」
半ば包囲された形になっている。
流石は信長公の御孫。
ならは、やることは一つであった。
「我こそは岐阜中納言が家臣、木造長政!かかって参れ!」
木造長政が自ら槍を振るい、敵勢を蹴散らしていく。
奇襲を受けた黒田勢はまだまだ態勢を立て直せていなかった。
「木造殿が出過ぎておるな。松田殿、兵を率いて敵勢左翼を突いてくだされ。」
「相わかった!」
松田が兵を率いて行く。
敵左翼側には百々が率いる別働隊がいる。
あわよくば敵を潰走させられる。
「此度の戦は敵を引かせるだけで良い。あまり無茶はさせるなよ。」
「わかっております。」
秀信の言葉に秀則は頷く。
百々から指導を受けていた秀則が指揮を取っていた。
無論、総大将は秀信てある。
「お、黒田勢が引くようですな。」
「藤堂勢もそれに従い引いたな。秀信様。そろそろ頃合い、友軍と合流し、大垣城へ引きましょう。」
「うむ、三郎の言う通りに……ん?」
すると、黒田勢の引く先に別の軍が動いていることに気が付く。
「あれは……舞兵庫殿!」
「成る程……戦況を見て潰走する敵勢を攻めるか。流石だな。」
秀信に正対し、進言する。
「ここは殿軍と連携して田中勢を打ち倒しましょう。」
「撤退する黒田、藤堂勢は舞兵庫殿にお任せいたしましょう。」
「うむ、そうしようか。一気に攻めよ!」
これで、関ヶ原の状況が大きく変わるだろう。
だが、まだまだだ。
もっと優位な状況を作らねば。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった
海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。
ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。
そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。
主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。
ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。
それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。
ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる