38 / 182
遥か西で、もう一人
しおりを挟む
「なにやら、東が騒がしいな。」
「……うむ。やはり、お前の言うとおりだ。」
九州、豊前。
そこには天下に名を轟かせた名将が居た。
名を、黒田如水。
黒田官兵衛とも呼ばれた名軍師である。
豊臣秀吉に仕え、秀吉の天下取りを支えた名将。
そして、その傍らにはその時代にはあり得ない服装をした若者がいた。
「で、どうする?」
「無論、決まっておる。」
既に東軍の敗報は届いていた。
その敗報を聞いて尚、その決断を下した。
「我々は、天下を取る。東軍が敗北したとあっては減封は免れんだろう。西軍の主力が戻るよりも前に九州を押さえる。」
如水は外を見る。
史実では、九州の大半を抑えていた黒田如水は、天下を取るよりも平穏な生活が送りたいと言い、家康に服従したという。
「島津義弘、豊久らが留守のうちに、九州における最大の敵、島津を下し、長宗我部、毛利らが留守のうちに中国、四国へ進出する。」
「あぁ。それが良いだろう。」
男は立ち上がり、如水の肩に手を置く。
「流石は、俺だ。」
「……しかし、流石に驚いた。まさか……自分が現れるとは……。」
男の名は小野寺勘助。
三郎と同じく、未来より現れた黒田官兵衛の生まれ変わりである。
かつて武田家に仕えていた軍師と同じ名を持つ男は、ほんの数日前に黒田如水の元へタイムスリップしてきていたのだった。
「何故、自分が生きている時代に来たのか、理由がある筈。それは、神が黒田が天下を取れと言っているのだと、俺は理解した。」
「……だが、儂は老い先が短いんだろう?」
「その事だが、本来ならば関ヶ原は東軍が勝つ筈。俺がこの時代に来てからわずか数日。本来の歴史に大きな影響を与える事は不可能だ。」
如水は勘助を見る。
「しかし、寿命は変わらん。」
「あぁ、その通りだ。殺されない限り、人の寿命は変わらない。上方の状況をしっかりと掌握し、味方につく相手を選ぶ。誰がいつ死ぬか、俺は知ってる。」
如水は頷く。
「成る程。確かにそれを知っておれば優位に立てる。だが、儂の命はその前に終わるぞ?」
「……安心しろ。未来の俺の家系は、医者だった。俺も医学を学んで育って来たから、多少の延命は出来る筈だ。少なくとも、天下を取るまでの間は、絶対に死なせない。」
その勘助の言葉に如水は笑う。
「未来の儂は、強いな。……もし未来ならば、この足も治ったであろうか……。」
如水は足を見る。
黒田如水は過去、荒木村重に捕らえられ、足を悪くしていた。
「恐らくはな。だが、今からではもう難しいだろう。……東軍が敗北したという事は、家康は死ぬだろう。秀忠辺りは逃げるやもしれんが、東軍諸将の生死が気になる。」
東軍の敗報は伝えられたが、家康の死はまだ伝わっていなかった。
三成の死も、織田家の活躍も伝わっておらず、ただ徳川方が負けたという話が伝わってきていた。
勘助も如水と共に外を見る。
「長政はこんな所で死ぬように育ててはいない。必ずや生きておる。」
「あぁ、勿論。」
しかし、勘助はある疑問を抱えていた。
その疑問は勿論如水も抱えていた。
「しかし、何故歴史が変わったか。そこが重要だな。」
「やはり、一つしか無いのではないか?」
如水と勘助は互いに頷き合う。
「お前のような奴が、他にもいる。」
「在りし日の俺よ、一筋縄では行かないかもしれんぞ。」
「……うむ。やはり、お前の言うとおりだ。」
九州、豊前。
そこには天下に名を轟かせた名将が居た。
名を、黒田如水。
黒田官兵衛とも呼ばれた名軍師である。
豊臣秀吉に仕え、秀吉の天下取りを支えた名将。
そして、その傍らにはその時代にはあり得ない服装をした若者がいた。
「で、どうする?」
「無論、決まっておる。」
既に東軍の敗報は届いていた。
その敗報を聞いて尚、その決断を下した。
「我々は、天下を取る。東軍が敗北したとあっては減封は免れんだろう。西軍の主力が戻るよりも前に九州を押さえる。」
如水は外を見る。
史実では、九州の大半を抑えていた黒田如水は、天下を取るよりも平穏な生活が送りたいと言い、家康に服従したという。
「島津義弘、豊久らが留守のうちに、九州における最大の敵、島津を下し、長宗我部、毛利らが留守のうちに中国、四国へ進出する。」
「あぁ。それが良いだろう。」
男は立ち上がり、如水の肩に手を置く。
「流石は、俺だ。」
「……しかし、流石に驚いた。まさか……自分が現れるとは……。」
男の名は小野寺勘助。
三郎と同じく、未来より現れた黒田官兵衛の生まれ変わりである。
かつて武田家に仕えていた軍師と同じ名を持つ男は、ほんの数日前に黒田如水の元へタイムスリップしてきていたのだった。
「何故、自分が生きている時代に来たのか、理由がある筈。それは、神が黒田が天下を取れと言っているのだと、俺は理解した。」
「……だが、儂は老い先が短いんだろう?」
「その事だが、本来ならば関ヶ原は東軍が勝つ筈。俺がこの時代に来てからわずか数日。本来の歴史に大きな影響を与える事は不可能だ。」
如水は勘助を見る。
「しかし、寿命は変わらん。」
「あぁ、その通りだ。殺されない限り、人の寿命は変わらない。上方の状況をしっかりと掌握し、味方につく相手を選ぶ。誰がいつ死ぬか、俺は知ってる。」
如水は頷く。
「成る程。確かにそれを知っておれば優位に立てる。だが、儂の命はその前に終わるぞ?」
「……安心しろ。未来の俺の家系は、医者だった。俺も医学を学んで育って来たから、多少の延命は出来る筈だ。少なくとも、天下を取るまでの間は、絶対に死なせない。」
その勘助の言葉に如水は笑う。
「未来の儂は、強いな。……もし未来ならば、この足も治ったであろうか……。」
如水は足を見る。
黒田如水は過去、荒木村重に捕らえられ、足を悪くしていた。
「恐らくはな。だが、今からではもう難しいだろう。……東軍が敗北したという事は、家康は死ぬだろう。秀忠辺りは逃げるやもしれんが、東軍諸将の生死が気になる。」
東軍の敗報は伝えられたが、家康の死はまだ伝わっていなかった。
三成の死も、織田家の活躍も伝わっておらず、ただ徳川方が負けたという話が伝わってきていた。
勘助も如水と共に外を見る。
「長政はこんな所で死ぬように育ててはいない。必ずや生きておる。」
「あぁ、勿論。」
しかし、勘助はある疑問を抱えていた。
その疑問は勿論如水も抱えていた。
「しかし、何故歴史が変わったか。そこが重要だな。」
「やはり、一つしか無いのではないか?」
如水と勘助は互いに頷き合う。
「お前のような奴が、他にもいる。」
「在りし日の俺よ、一筋縄では行かないかもしれんぞ。」
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった
海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。
ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。
そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。
主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。
ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。
それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。
ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる