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遥か北で
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黒田家が関ヶ原の争乱の隙をつき、九州の大半を手中に入れ、天下への野心を決意した頃。
遥か北、関ヶ原の発端となった事件の当事者達にも、関ヶ原の結果が伝わっていた。
「景勝様。西軍、大勝との事に御座います。」
「……うむ。やったか、三成殿。」
遥か北、出羽の国で行われた戦は慶長出羽合戦と呼ばれ、北の関ヶ原とも呼ばれた。
上杉に対して、最上、伊達連合軍の戦で、上杉は西軍側であった。
事実であれば西軍の敗報を受けて上杉勢は撤退する。
「それが、三成殿は……。」
「……まさか、死んだのか?」
上杉景勝の問いに直江兼続は答える。
「は。文には、天下への野心を露わにしたので成敗した。と。織田殿、小早川殿が成敗したとの事にございます。」
直江兼続は上杉景勝に仕える家臣で、上杉景勝の信任の厚い武将であった。
その直江兼続の言葉を聞き、景勝は考える。
「……些か、信じられぬ。」
「は、某も同じ思いです。」
上杉景勝はかの軍神、上杉謙信の後を継ぎ、上杉家の当主となった男である。
謙信の死後、家督争いの御館の乱を勝ち、家督を継いだ。
「しかし、上方はもう落ち着いているであろう。今更どうこうするわけにも行かん。今は目の前のことを片付けねばな。」
「左様ですな。この事は伊達や最上にも伝わるでしょう。その動揺の隙を突けば……。」
「殿!」
すると、景勝の元へ伝令が駆け込んでくる。
「伊達政宗様からの書状に御座います!」
「……伊達だと?」
景勝はすぐさま書状を受け取り、中身を確認する。
「殿、向こうは何と?」
「……家康が死に、秀忠も生死不明の今、徳川に味方する意味など無い。我等と和議を結びたいそうだ。」
「……最上は通さず?」
景勝は頷く。
「うむ、恐らく伊達の独断であろう。和議がなった暁には最上へ攻めかかるつもりか。」
「……如何致しますか?」
景勝はしばらく考える。
「徳川は恐らく家督争いに陥る。秀忠の生死が判明するまでは次男の秀康が指揮を執るであろう。が、秀忠が戻れば混乱の種になる。」
「我等はその隙を突く、と?」
景勝は頷く。
「うむ。真田殿や織田殿らの徳川追討軍が上田に迫っておるらしいしな。伊達が最上を攻めれば背後を突かれる心配も無くなる。」
「では、伊達には応じると伝え、真田殿にも文を送りまする。では。」
直江兼続はそう言うと、直ぐに文を書くため、その場を後にした。
「東海道からは島津、立花、福島勢が秀忠を追っておる。捕まるのは必定……。されど……海から逃げられれば捕まえられぬだろうな。」
上杉には上方の情勢が真田を通して細かく伝わっており、東海道から秀忠追討軍が出たというのも伝わっていた。
景勝は空を見上げた。
「天下は、どうなるのであろうな……。」
「……好機だ。」
眼帯をつけたその男は空を見上げ、太陽に手をかざす。
「我が伊達家が、天下を取る。好機が訪れた!これを逃せばもう機はない!」
かざした手を握りしめる。
「まずは最上を下し、奥州を手に入れる!その次は江戸。そこまで行けば周辺の諸大名は儂につく。」
その男は握りしめた拳を見つめる。
「伊達家の、天下取りが始まるのだ!」
男の名は伊達政宗。
独眼竜の名で知られる東北の英雄である。
この混乱に乗じ、北でも天下取りに名を挙げる将がいたのだった。
遥か北、関ヶ原の発端となった事件の当事者達にも、関ヶ原の結果が伝わっていた。
「景勝様。西軍、大勝との事に御座います。」
「……うむ。やったか、三成殿。」
遥か北、出羽の国で行われた戦は慶長出羽合戦と呼ばれ、北の関ヶ原とも呼ばれた。
上杉に対して、最上、伊達連合軍の戦で、上杉は西軍側であった。
事実であれば西軍の敗報を受けて上杉勢は撤退する。
「それが、三成殿は……。」
「……まさか、死んだのか?」
上杉景勝の問いに直江兼続は答える。
「は。文には、天下への野心を露わにしたので成敗した。と。織田殿、小早川殿が成敗したとの事にございます。」
直江兼続は上杉景勝に仕える家臣で、上杉景勝の信任の厚い武将であった。
その直江兼続の言葉を聞き、景勝は考える。
「……些か、信じられぬ。」
「は、某も同じ思いです。」
上杉景勝はかの軍神、上杉謙信の後を継ぎ、上杉家の当主となった男である。
謙信の死後、家督争いの御館の乱を勝ち、家督を継いだ。
「しかし、上方はもう落ち着いているであろう。今更どうこうするわけにも行かん。今は目の前のことを片付けねばな。」
「左様ですな。この事は伊達や最上にも伝わるでしょう。その動揺の隙を突けば……。」
「殿!」
すると、景勝の元へ伝令が駆け込んでくる。
「伊達政宗様からの書状に御座います!」
「……伊達だと?」
景勝はすぐさま書状を受け取り、中身を確認する。
「殿、向こうは何と?」
「……家康が死に、秀忠も生死不明の今、徳川に味方する意味など無い。我等と和議を結びたいそうだ。」
「……最上は通さず?」
景勝は頷く。
「うむ、恐らく伊達の独断であろう。和議がなった暁には最上へ攻めかかるつもりか。」
「……如何致しますか?」
景勝はしばらく考える。
「徳川は恐らく家督争いに陥る。秀忠の生死が判明するまでは次男の秀康が指揮を執るであろう。が、秀忠が戻れば混乱の種になる。」
「我等はその隙を突く、と?」
景勝は頷く。
「うむ。真田殿や織田殿らの徳川追討軍が上田に迫っておるらしいしな。伊達が最上を攻めれば背後を突かれる心配も無くなる。」
「では、伊達には応じると伝え、真田殿にも文を送りまする。では。」
直江兼続はそう言うと、直ぐに文を書くため、その場を後にした。
「東海道からは島津、立花、福島勢が秀忠を追っておる。捕まるのは必定……。されど……海から逃げられれば捕まえられぬだろうな。」
上杉には上方の情勢が真田を通して細かく伝わっており、東海道から秀忠追討軍が出たというのも伝わっていた。
景勝は空を見上げた。
「天下は、どうなるのであろうな……。」
「……好機だ。」
眼帯をつけたその男は空を見上げ、太陽に手をかざす。
「我が伊達家が、天下を取る。好機が訪れた!これを逃せばもう機はない!」
かざした手を握りしめる。
「まずは最上を下し、奥州を手に入れる!その次は江戸。そこまで行けば周辺の諸大名は儂につく。」
その男は握りしめた拳を見つめる。
「伊達家の、天下取りが始まるのだ!」
男の名は伊達政宗。
独眼竜の名で知られる東北の英雄である。
この混乱に乗じ、北でも天下取りに名を挙げる将がいたのだった。
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