【祝!完結!】第六天魔王、織田信長、再臨す 〜関ヶ原から始める織田家再興物語〜 

中村幸男

文字の大きさ
55 / 182

如水と長政

しおりを挟む
「勘助が、死んだか……。」
「は。」
 
 如水は報告を受けていた。
 勘助が死んだという言葉を聞き、如水は動じなかった。
 中津城が落ち、周辺の城も尽くが落ちた。
 
(……やはり、天下を狙うなど、無理な話であったか。)
 
 眼の前の戦況は優勢。
 中津城陥落の報を受けて尚、如水は戦を続けた。
 中津城からここまでは距離があり、敵が来るのはまだ後だと予測がついたからである。
 幸い、防塁は沿岸ほどではないが一部築けている。
 もし敵が来てもすぐに引けばそこで防衛戦を繰り広げられるのである。
 
「敵は大浜に上陸した。……まぁ、かなり削れたから、良しとしよう。」
 
 敵勢は豊久が築いた橋頭堡から次々と上陸してきていた。
 豊久ら島津勢は挟撃されたというのに豊久らの奮戦凄まじく、敵を陸に上げてしまった。
 幸い、全ての敵では無かった。
 
「殿!敵方より和平の使者が。」
「……うむ。会おう。」
 
 
 
 数刻前。
 大浜に上陸した豊臣方にも中津に織田勢が上陸したとの報せは届いていた。
 策を巡らし、既に多数の城を落としていると。
 
「流石は織田殿。敵を騙すにはまず味方から。か。」
「長宗我部殿。今こそ好機。一気に攻めかかりましょうぞ!」
 
 豊久は盛親に一斉攻勢を申し出る。
 が、盛親は首を横に振る。
 
「いや、実はな、織田殿から知らせに来たのは、黒田長政殿なのだ……。」
「如水の息子の……。」
 
 盛親は頷く。
 
「報せによれば、背後が脅かされた事で、中国の黒田勢も引いたそうだ。毛利殿も勢いを取り戻し、自領を取り戻す勢いとのこと。勢いそのままにこちらまで攻勢をかけるらしい。」
「それに、細川忠興殿が四国へ渡り、鍋島直茂を調略しております。」
「お主は……長政殿か。」

 すると、豊臣方の諸将の前に黒田長政が現れる。
 その姿を見て豊久は口を開く。
 長政は軽く頭を下げた。
 
「何故、こちらへ参られた?」
「は。直接お願い申し上げたき儀が御座いまして参りました。」

 皆が長政に注目する。
 長政は盛親と目を合わせ、盛親は頷く。
 
「某を、臼杵城へ、我が父如水の元へ行かせて下され!」
 
 
 
「如水様。和平の使者が来ておりまする。」
「うむ、誰だ?」

 伝令の者は少し躊躇う。 
 
「構わん。申せ。」
「それが……長政様にございます。」
 
 如水は目をつむり、考えた。
 
「……通せ。」
「は。」
 
 
 
「長政、久しぶりだな。」
「は。父上も、息災のようで……何よりでございます。」
 
 二人が軽く挨拶を交わすと、暫くの沈黙が流れる。
 最初に沈黙を破ったのは、如水だった。
 
「長政。関ヶ原での活躍、耳にしているぞ。見事だ。」
「お味方は大敗しましたが……。」
「それでもお前の調略の話は聞いておる。流石は、儂の子だ。」
 
 長政は少し考えてから口を開く。
 
「……父上!まだ間に合いまする。降伏して下され!中津城が豊臣方に渡り、毛利も勢いを取り戻しておりまする!もはやこれまで!」
「……ここまでやってしまった以上、後には引けぬ。やれるところまでやってやるわ。」
 
 長政は如水のその言葉を聞き、更に返す。
 
「ですが、織田殿は決して父上の命は取らぬと申しております!某の説得で父上が下ってくれれば、所領も元のそのままで良いと申しておりまする!父上、どうか!」
「……長政。織田殿はどのようなお方であった?」
 
 その言葉に長政は考える。
 
「……恐ろしいお方です。」
「……。」
「あの若さで一体どこまで考えてるのか分かりませぬ。そうですな……かの信長公にも似た雰囲気を感じました。恐らく、世が世ならば天下を取れるお方でしょう。」
 
 長政のその言葉を聞き、如水は決断を下す。
 
「……天下、か。その言葉を聞き、安心したわ。」
「父上!それでは!」
 
 如水は首を横に振る。
 
「尚更、従うつもりは無くなった。老い先短いこの命、最後に天下分け目の大戦を繰り広げて見せる!」
 
 如水は立ち上がり、長政の肩に手を置く。
 
「長政。敵味方に分かれるが、そこで戦功を立てよ。さすれば所領の心配は無くなる。……しかと励め。」
 
 長政は俯き、涙を流す。
 
「父上。」
「さらばだ。長政。お主と合うのはこれが最後だろう。」
 
 如水はその場を去る。
 九州征伐は決戦の時を迎える事となる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...