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宿敵 そして脱出
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「今は本来対応する者が忙しくてな、拙僧がお相手いたそう」
「は」
三郎は頭を下げる。
(……ここでこいつを殺すか? もし信長としての記憶を失えばこいつに対する恨みも無くなるかもしれん……)
三郎は懐の短刀を確かめる。
が、すぐにやめる。
(いや、殺したいのは山々だが、今は人質の救出だ。ここでこいつを殺しても大勢に影響は無い……)
すると、逡巡する三郎を天海が不審に思ったのか、口を開く。
「どうかされましたかな?」
「……いえ、何でもありませぬ」
三郎は軽く咳払いをする。
「さて、如何程で売っていただけるのかな?」
「その事ですが……考えが変わりました。言い値で売りましょう」
その三郎の発言に天海は少し驚く。
「ほう……それは何故ですかな?」
「あなたはかなりの大物だとお見受けいたします。天海僧正といえば今は亡き家康公のご側近。ここで縁を結んでおきたいと思いましてな」
天海は頷く。
「成る程……商人らしいですな。分かり申した。では……」
「よろしかったのですか?」
虎助は後続の荷車も率いて、三郎の元に合流した。
「あぁ。問題は無い。それに……」
三郎は米の代わりに庭に置かれた、金銀が入った箱が山程積まれた荷車を見る。
「目的は達成した。長居は無用だ」
「……ですな。しかし、よく考えましたな」
あの米の量では、あれほどの金銀の箱の量にはならないはずであった。
「あぁ。入城する時に一悶着起こすことで後から運びいれる荷物を改めさせないようにした」
「その荷の中に救出隊がおり、密かに人質を救出すると……」
三郎は頷く。
米俵が積まれた荷車の中には大垣衆が潜んでおり、頃合いを見て密かに荷車から出て、人質を救出。
一番最初の荷車にはあえて潜ませず、警戒を解いたのだった。
「代わりの荷物に金銀が入った箱。行きと同じように、人質にはその荷車の中に紛れて貰っている」
「ですが、救出隊の分、増えた人数は……」
「奴らもそこまでは把握していない。大丈夫だろう。一応、散らしておけ」
「待て!」
城を出ようとする際、門番に止められる。
「何ですかな?」
「中身を改めさせてもらうぞ」
その門番の発言に三郎は声を荒げる。
「何故ですか!? 入城の際の約束はどうなるのですか!?」
「それは城に入れる際の約束だ。それに、人数も荷物も多い気がする……念の為だ」
その門番の発言に三郎は動揺する。
「な……何故!」
「うるさい! これ以上叱られたくないのだ! 何かあれば城から出さなければ良いだけのこと! さぁ、荷物を調べよ!」
門番は配下の者に指示を出す。
どうやら、門番はかなり絞られたようだった。
「一体何をしておる」
「こ、これは天海様!」
すると、門番の後ろから天海が現れた。
「早くお通しせよ!」
「は、はは!」
天海のその一言で点検されずに通る事が出来た。
それを不審に感じ、三郎は聞く。
「天海様、何故……」
すると、天海は三郎に耳打ちする。
「これは貸しにしておきまする。この先は、手助け出来ませぬ故、ご用心なされよ」
「それは……兵糧の礼ですかな?」
三郎は天海が全て分かっているのだと気付いた。
三郎がそう聞くと天海は笑顔で頷く。
「あれほど大量の兵糧、大変助かりましたぞ。企みは全て分かっておりまするが……」
「阻止するまでの事では無いと?」
天海は頷く。
三郎と天海は見つめ合う。
そして、互いに頭を下げた。
「では、また機会がありましたらよろしく頼みまするぞ」
「ええ、次に合うのは、何処になるのか分かりませぬが、宜しく頼みまする」
そして、ふたりはその場を後にした。
三郎は、信長はこの時代で成すべき事を見つけたのだった。
「は」
三郎は頭を下げる。
(……ここでこいつを殺すか? もし信長としての記憶を失えばこいつに対する恨みも無くなるかもしれん……)
三郎は懐の短刀を確かめる。
が、すぐにやめる。
(いや、殺したいのは山々だが、今は人質の救出だ。ここでこいつを殺しても大勢に影響は無い……)
すると、逡巡する三郎を天海が不審に思ったのか、口を開く。
「どうかされましたかな?」
「……いえ、何でもありませぬ」
三郎は軽く咳払いをする。
「さて、如何程で売っていただけるのかな?」
「その事ですが……考えが変わりました。言い値で売りましょう」
その三郎の発言に天海は少し驚く。
「ほう……それは何故ですかな?」
「あなたはかなりの大物だとお見受けいたします。天海僧正といえば今は亡き家康公のご側近。ここで縁を結んでおきたいと思いましてな」
天海は頷く。
「成る程……商人らしいですな。分かり申した。では……」
「よろしかったのですか?」
虎助は後続の荷車も率いて、三郎の元に合流した。
「あぁ。問題は無い。それに……」
三郎は米の代わりに庭に置かれた、金銀が入った箱が山程積まれた荷車を見る。
「目的は達成した。長居は無用だ」
「……ですな。しかし、よく考えましたな」
あの米の量では、あれほどの金銀の箱の量にはならないはずであった。
「あぁ。入城する時に一悶着起こすことで後から運びいれる荷物を改めさせないようにした」
「その荷の中に救出隊がおり、密かに人質を救出すると……」
三郎は頷く。
米俵が積まれた荷車の中には大垣衆が潜んでおり、頃合いを見て密かに荷車から出て、人質を救出。
一番最初の荷車にはあえて潜ませず、警戒を解いたのだった。
「代わりの荷物に金銀が入った箱。行きと同じように、人質にはその荷車の中に紛れて貰っている」
「ですが、救出隊の分、増えた人数は……」
「奴らもそこまでは把握していない。大丈夫だろう。一応、散らしておけ」
「待て!」
城を出ようとする際、門番に止められる。
「何ですかな?」
「中身を改めさせてもらうぞ」
その門番の発言に三郎は声を荒げる。
「何故ですか!? 入城の際の約束はどうなるのですか!?」
「それは城に入れる際の約束だ。それに、人数も荷物も多い気がする……念の為だ」
その門番の発言に三郎は動揺する。
「な……何故!」
「うるさい! これ以上叱られたくないのだ! 何かあれば城から出さなければ良いだけのこと! さぁ、荷物を調べよ!」
門番は配下の者に指示を出す。
どうやら、門番はかなり絞られたようだった。
「一体何をしておる」
「こ、これは天海様!」
すると、門番の後ろから天海が現れた。
「早くお通しせよ!」
「は、はは!」
天海のその一言で点検されずに通る事が出来た。
それを不審に感じ、三郎は聞く。
「天海様、何故……」
すると、天海は三郎に耳打ちする。
「これは貸しにしておきまする。この先は、手助け出来ませぬ故、ご用心なされよ」
「それは……兵糧の礼ですかな?」
三郎は天海が全て分かっているのだと気付いた。
三郎がそう聞くと天海は笑顔で頷く。
「あれほど大量の兵糧、大変助かりましたぞ。企みは全て分かっておりまするが……」
「阻止するまでの事では無いと?」
天海は頷く。
三郎と天海は見つめ合う。
そして、互いに頭を下げた。
「では、また機会がありましたらよろしく頼みまするぞ」
「ええ、次に合うのは、何処になるのか分かりませぬが、宜しく頼みまする」
そして、ふたりはその場を後にした。
三郎は、信長はこの時代で成すべき事を見つけたのだった。
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