【祝!完結!】第六天魔王、織田信長、再臨す 〜関ヶ原から始める織田家再興物語〜 

中村幸男

文字の大きさ
110 / 182

関ヶ原へ、いざ

しおりを挟む
「……申し訳ありませぬ。してやられました。まさか全軍で大垣に攻めてくるとは……」
 
 豊臣方は一度岐阜に集い、後の作戦について話し合っていた。
 そして、黒田長政らから、大垣城を攻められ、たまらず引いてきた事を聞かされていた。
 
「いや、充分に御座る。兵を死なせず、兵糧も無事に運んで下さっただけで充分。それに、敵の動きもわかりましたしな」
 
 三郎は地図を見つめながら話す。
 
「敵は美濃赤坂に陣取り、こちらの様子を伺っておりまする。しかし、それだけでは無いでしょう」
 
 三郎は机上の駒を関ヶ原へ動かしていく。
 
「恐らく、あの伊達政宗、そして天海ならば数的不利を補うために、そして、確実に勝つために、かつての我等のように関ヶ原へ陣取るでしょう。されど、立場は逆」
 
 その言葉に、信康が反応する。
 
「つまりは、我等が父上のように敵の包囲網に突っ込むというのか? あの戦は小早川殿を寝返らせるという算段があったからこそ父上は関ヶ原へ向かったのだぞ?」
「勿論、分かっておりまする。されど、ここで手をこまねいていては、徳川方は大阪へ兵を向けるでしょう。そうなっては、我々の負けにございます。それに、兵力で言えば我々の方が勝っております」
 
 すると、輝元が口を開く。
 
「つまりは、我等は北陸の援軍を待たずして、関ヶ原へ乗り込まなくてはならんのか……」
「何を恐れる事がありますか!?」
 
 すると、輝元の弱気な態度に島津豊久が口を開く。
 
「兵の数では我等が勝っておりまする! それに、叔父上もおりまする! 負けるわけがありませぬ!」
「豊久、よさぬか。気持ちは分かるが、抑えよ」
 
 義弘が豊久を抑える。
 
「しかし叔父上!」
「豊久殿。お気持ち、良くわかりますぞ」
 
 すると、長宗我部盛親が口を開く。
 
「何もわざわざ敵の術中に嵌まることは無い! 赤坂夜襲のように攻めれば良いでは無いか! 今度は夜襲で決着をつけましょうぞ!」

 長宗我部や豊久の発言は、三郎にとっては予想がついていた。
 必ず、関ヶ原を決戦の地にすることに反対する者が現れると予想していた。

(やはり、こうなったか。あの時もそうだったしな……)
 
 三郎は赤坂夜襲の頃の事を思い出す。
 
(少し前の事だったが……あの頃が懐かしい。あの時は島津を参戦させるために赤坂夜襲をしたが……念の為、今回もそうするか)
 
 三郎はしばらく考えた後、口を開く。
 
「では、相手が第二次関ヶ原を起こそうとするのならば、我等は第二次赤坂夜襲をしましょう。されど、狙いは二つ。敵の手に落ちた大垣城も共に攻めましょう」
「おお! 分かってくれたか!」
 
 長宗我部は立ち上がる。
 
「先鋒は我等長宗我部に任せよ!」
「この島津も共に参りたい。よろしいか?」
 
 すると、義弘も口を開いた。
 更に、信康が続く。
 
「直政、忠勝。お主等はかの戦の折、夜襲を戦ったそうだな?」
「は。そこの島津殿と刃を交えましたな」
「ならば、この二人も共に行かせよう。三郎殿、よろしいか?」
 
 信康の言葉に、三郎は頷く。
 そして、しばらく考え、口を開く。
 
「では、赤坂夜襲の細かい策は島津殿に一任致しまする。そして、本軍は大垣を攻め落とす。東国無双、本多忠勝殿が赤坂へ行かれるので、西国無双、立場宗茂殿には大垣を落としてもらいたいのですが……」
「うむ、畏まった」
 
 三郎は頷く。
 
「では、各々方。赤坂夜襲で決着をつけるつもりでまいりましょうぞ!」
 
 しかし、言葉とは裏腹に、三郎はそこで終わるとは思っていなかった。
 いや、終わらせるつもりは無かった。
 
(……完膚なきまでに叩き潰さなくては意味が無い。相手がやれるだけのことをやったその上で叩き潰し、反乱の芽を潰す。織田の天下のために……俺が、信長である内に、すべき事はしなくては……)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...