146 / 182
瀬田川の決着
しおりを挟む
「な……島津だと……どうしてここに!」
「今だ! 敵が気をそらしたぞ! かかれ!」
南部利直勢の陣形がほんの少しだが乱れた事を確認した黒田長政は一気に攻めてかかる。
その突然の攻勢に南部勢は打撃を受ける。
「な……くそっ! 今は黒田勢に集中せよ! 明石殿に島津を相手して貰う!」
「し、しかし細川勢は……」
「それも我等で相手をする! 島津は長い琵琶湖沿岸を進んてきた。その疲労は凄まじいはずだ!」
為信達伊達方にも島津の動きは伝わっていた。
為信は斥候を放ち、敵の情勢を常に探っていたのである。
今回の船橋妨害の策もそのお陰であった。
島津の動きも勿論掌握していたが、その進軍速度は為信の予測をはるかに超えていた。
「細川殿と共に一気に攻める! かかれ!」
黒田勢と細川勢は、南部勢に対して一気に攻勢を仕掛ける。
兵力的にはほぼ同数。
しかし、織田方の勢いは凄まじく、先程の奇襲で士気が落ちた南部勢は苦戦を強いられる事となる。
「怯むな! 背後は川。正面の敵に集中すれば良いだけだ!」
「と、殿! 織田勢、我らの船を襲い、船橋として利用しようとしておりまする! このままでは、挟み撃ちにあいまする!」
家臣の報告に、利直は決断を迫られる。
しかし、答えは明らかであった。
「撤退だ! 島津のいない南側を抜けて離脱する!」
「は!」
かくして、南部勢は撤退を開始する。
「殿! 追撃を……」
「……いや、又兵衛。お主の気持ちも分かるが、我々もかなり痛手を受けた。ここは追わぬ」
又兵衛の進言通り、長政としても追撃はしたかったが、利直が与えた損害は決して小さくはなかった。
それを理解していた長政は追撃を断念する。
「……どうやら、明石勢も引いておりまするな」
「……一応は、勝ったか? いや、これは実質敗北だな……」
すると、長政の元に細川忠興と毛利輝元、長宗我部盛親が訪れる。
「黒田殿! 無事で良かった!」
「毛利様! 津軽勢はどうなされたのですか?」
すると、長宗我部盛親が答える。
「島津殿が現れてからすぐに引いたのだ。不利を悟ったのだろうな」
「……追撃は出来ませぬな。損耗が激しすぎる……」
すると、島津勢が近づく。
その中から、島津豊久が出てくる。
「皆様方、間に合ったようで何よりでございます」
「豊久殿、何故こんなに早く?」
毛利輝元の問いに長政が答える。
「某が万が一の備えとして急ぐように伝えたのです。されど、島津殿の進軍速度は凄まじかったようで、某が文を届けるまでもなかったやも知れませぬが」
「いえ、知らせてくれなければここで戦を繰り広げてる事も分からなかったでしょう。ありがとうございまする」
豊久は頭を下げる。
「叔父上は、無理をさせぬ為にゆっくりと進んてきてもらっておりまする。じきに合流するでしょう」
「左様か」
輝元は頷くと、指示を飛ばす。
「では、各々方。船橋を繋ぐといたしましょうぞ!」
「……我等が敵に痛手を与えたことはすぐに知れ渡る」
津軽為信は京への帰路の途中、呟いた。
「この戦は……勝ち戦だ……」
拳を握りしめ、それを見る。
「政宗殿……取れるぞ……天下が……」
「今だ! 敵が気をそらしたぞ! かかれ!」
南部利直勢の陣形がほんの少しだが乱れた事を確認した黒田長政は一気に攻めてかかる。
その突然の攻勢に南部勢は打撃を受ける。
「な……くそっ! 今は黒田勢に集中せよ! 明石殿に島津を相手して貰う!」
「し、しかし細川勢は……」
「それも我等で相手をする! 島津は長い琵琶湖沿岸を進んてきた。その疲労は凄まじいはずだ!」
為信達伊達方にも島津の動きは伝わっていた。
為信は斥候を放ち、敵の情勢を常に探っていたのである。
今回の船橋妨害の策もそのお陰であった。
島津の動きも勿論掌握していたが、その進軍速度は為信の予測をはるかに超えていた。
「細川殿と共に一気に攻める! かかれ!」
黒田勢と細川勢は、南部勢に対して一気に攻勢を仕掛ける。
兵力的にはほぼ同数。
しかし、織田方の勢いは凄まじく、先程の奇襲で士気が落ちた南部勢は苦戦を強いられる事となる。
「怯むな! 背後は川。正面の敵に集中すれば良いだけだ!」
「と、殿! 織田勢、我らの船を襲い、船橋として利用しようとしておりまする! このままでは、挟み撃ちにあいまする!」
家臣の報告に、利直は決断を迫られる。
しかし、答えは明らかであった。
「撤退だ! 島津のいない南側を抜けて離脱する!」
「は!」
かくして、南部勢は撤退を開始する。
「殿! 追撃を……」
「……いや、又兵衛。お主の気持ちも分かるが、我々もかなり痛手を受けた。ここは追わぬ」
又兵衛の進言通り、長政としても追撃はしたかったが、利直が与えた損害は決して小さくはなかった。
それを理解していた長政は追撃を断念する。
「……どうやら、明石勢も引いておりまするな」
「……一応は、勝ったか? いや、これは実質敗北だな……」
すると、長政の元に細川忠興と毛利輝元、長宗我部盛親が訪れる。
「黒田殿! 無事で良かった!」
「毛利様! 津軽勢はどうなされたのですか?」
すると、長宗我部盛親が答える。
「島津殿が現れてからすぐに引いたのだ。不利を悟ったのだろうな」
「……追撃は出来ませぬな。損耗が激しすぎる……」
すると、島津勢が近づく。
その中から、島津豊久が出てくる。
「皆様方、間に合ったようで何よりでございます」
「豊久殿、何故こんなに早く?」
毛利輝元の問いに長政が答える。
「某が万が一の備えとして急ぐように伝えたのです。されど、島津殿の進軍速度は凄まじかったようで、某が文を届けるまでもなかったやも知れませぬが」
「いえ、知らせてくれなければここで戦を繰り広げてる事も分からなかったでしょう。ありがとうございまする」
豊久は頭を下げる。
「叔父上は、無理をさせぬ為にゆっくりと進んてきてもらっておりまする。じきに合流するでしょう」
「左様か」
輝元は頷くと、指示を飛ばす。
「では、各々方。船橋を繋ぐといたしましょうぞ!」
「……我等が敵に痛手を与えたことはすぐに知れ渡る」
津軽為信は京への帰路の途中、呟いた。
「この戦は……勝ち戦だ……」
拳を握りしめ、それを見る。
「政宗殿……取れるぞ……天下が……」
1
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった
海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。
ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。
そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。
主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。
ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。
それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。
ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる