【祝!完結!】第六天魔王、織田信長、再臨す 〜関ヶ原から始める織田家再興物語〜 

中村幸男

文字の大きさ
148 / 182

公家との対談

しおりを挟む
「織田秀信にございまする」
「おお、織田殿! 良くぞ来てくれた!」
 
 京に滞在して数日。
 織田秀信はとある公家に呼び出されていた。
 
「近衛前久様。ご無事で何よりでございます」
「あぁ、流石の津軽為信もここには手を出さなかったのでな」
 
 近衛前久。
 名門貴族として有名で、かの織田信長とも懇意にしていた公家である。
 
「さて、息子の信尹から話は聞いておる。京の復興に力を尽くしてくれているようだな」
「は」
 
 近衛前久の息子の信尹は島津と懇意にしていた。
 関が原において近衛前久は、島津と音信するなど中立を保ちつつ、東軍とも関係を守っていた。
 そんな近衛前久に秀信は頭を下げる。
 
「それに、昨日の我が屋敷の放火騒ぎもそなた等のお陰で助かった。本当に礼をいう」
「いえ、それは伊達方の残党が起こした事。残党が潜んでいたことに気付けなかった私の落ち度にございまする。誠に申し訳ありませぬ」
 
 秀信は更に深く頭を下げた。
 
「いやいや、お顔をお上げ下され。我等は本当に助かっているのですぞ」
「は。ありがとうございまする」
 
 すると、近衛前久は秀信に近付き、肩に手を置く。
 
「この前久に出来ることがあれば何でも申してくだされ」
「……では、一つだけ」
 
 秀信は頭を上げ、近衛前久の顔をまっすぐ見つめる。
 
「某を、征夷大将軍に任じていただきたい」
「……成る程」
 
 近衛前久は頷く。
 
「伊達政宗を討ち取るため、皆を率いていくための肩書きが欲しいと言う訳か」
「左様にございまする」
 
 近衛前久は秀信の申し出に顔色一つ変えることなく、聴き続ける。
 
「某の所領や、官位などから考えれば皆を率いていくのに相応しいお方は他におられまする。が、今現在皆の気持ちが集まっているのはこの織田秀信だと自負しておりまする」
「……確かに、これまでの経緯から皆を率いるのはお主が適任であろうな」
 
 近衛前久は頷く。
 
「分かった。この近衛前久がお主が征夷大将軍になれるように取り計らおう。されど……」
「されど……?」
 
 近衛前久は少し笑うと続ける。
 
「朝廷は些か金銭面で苦労していてな……それをどうにか出来たら、取り合おう」
「成る程……」
 
 秀信は思う。
 
(……この男、只では動かないか。だが、二度の大返しで大量の金を使った……それに、大阪にも金銀はほとんど残っておらんだろう……この男はそれを分かっていて言っているのか……ならば……)
 
 秀信は口を開いた。
 
「我らには、それほど多くの金は残されておりませぬ」
「そうであったか……ならばこの話は……」
「されど」
 
 秀信は近衛前久の言葉を遮り、続ける。
 
「伊達によって大阪に蓄えられた金銀は浪人の手元にありまする。その浪人たちは大阪に留まり、金をあまり使えていない筈。ならば、大阪を落とし、敵の浪人の尽くから金を徴収いたしまする」
「成る程……例の一族郎党を処罰するというあれに則ってか」
 
 秀信は頷く。
 
「それによって集められた金銀をすべて朝廷に献上いたしまする。敵の総数は十万にも上るといいまする。その家族を含めれば……それでどうでしょうか」
「……成る程。面白い」
 
 近衛前久は笑う。
 
「ならば、それで話をつけようではないか」
 
 秀信は頭を下げる。
 
「ありがとうございまする。必ずや、逆賊伊達政宗を討ち果たしてみせまする」
「うむ。帝にはしかと取り計らっておこう」
 
 かくして、近衛前久との対談は終わった。
 全ては、想定通りに事が進んでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...