【祝!完結!】第六天魔王、織田信長、再臨す 〜関ヶ原から始める織田家再興物語〜 

中村幸男

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最後の大戦

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「織田秀信が……総大将自らが出て来たか……」
 
 政宗の眼の前には秀信の軍が布陣していた。
 
「中央に織田、左翼に福島。右翼に真田か……」
 
 昌幸は敵陣を見据える。
 既に構えは万全。
 奇襲とならない事は明白であった。
 
「……やる事は変わらん。全軍! 狙いは織田秀信ただ一人! 突っ込め!」
 
 政宗最後の戦が始まる。
 伊達勢が織田勢に襲いかかる。
 その勢いに、織田方の中央が徐々に押され始める。
 
「怯むな! 押し返せ!」
 
 木造長政が先頭で槍を振るい伊達勢を押し返す。
 敵を次々と切り倒し、その後に兵達も続く。
 
「伊達政宗の兵はその程度か! そんなものでは儂の首すら取れんぞ!」
「ほう! 織田家の重臣、木造長政殿か! お相手願おうか!」
 
 すると、伊達勢の中から前田慶次が前へ出る。
 伊達軍も両翼に上杉、最上の手勢を配置しており、確実に秀信の首を取るため、慶次を中央に配置した。
 
「前田慶次……相手にとって不足は無い!」
 
 木造長政が槍を繰り出す。

「はぁっ!」

 しかし、前田慶次は難なくそれをいなす。
 
「ふむ。その程度か」
 
 自らの攻撃を難なくかわされた木造長政に、僅かな隙が生まれる。
 その隙を前田慶次は逃さない。
 
「はっ!」
「木造殿!」
 
 慶次が槍を繰り出す直前。
 織田方の中から声が響く。
 
「っ!」
 
 慶次はすぐさま危険を察知し、身を小さくする。。
 木造長政もその場に伏せる。
 
「放て!」
 
 そして次の瞬間、鉄砲が放たれる。
 しかし、距離があった為、前田慶次には当たらなかった。
 しかし、伊達の雑兵にはある程度は命中し、僅かに隙が生まれる。
 
「突っ込め!」
 
 そして、伊達勢が怯んだ隙を見逃さず、織田勢は兵を繰り出す。
 大した一撃ではなかったが、長政を救い出すのには充分であった。
 
「木造殿! 無事か!」
「綱家殿……助かった。流石にあの前田慶次には敵わぬか……」
 
 百々綱家は頷く。
 
「あまり無茶をするでない。お主に死なれては困る。それに、まだ無茶をする場面では無いぞ」
「……そうであったな」
 
 木造長政は槍を握りしめる。
 そして、激を飛ばす。
 
「引け! 一度態勢を立て直す!」
 
 長政の言葉で兵が引いていく。
 兵が安全圏まで引いたことを確認し、百々綱家は再度鉄砲隊に指示を出す。
 
「放て!」
 
 銃声が鳴り響く。
 その攻撃に伊達方は再度怯み、織田方の先鋒は陣を下げることに成功した。
 
「押せ押せ! 休む暇を与えるな!」
 
 前田慶次が中央を押し上げる。
 それに伴い、織田方の中央はどんどんと下がっていく。
 
「これは……まずいか」
 
 伊達政宗は戦況を見て判断する。
 織田方は徐々に鶴翼の陣系になりつつある。
 対して伊達方の両翼は押し切れておらず、包囲される形になってきていた。
 
「……それが狙いか……だがしかし!」
 
 伊達政宗は刀を抜き、供回りと共に駆ける。
 
「今こそ好機! 敵は思い通りに策が進んでいると油断している! それに鶴翼の陣は連携が取りにくい……つまり、今秀信は助けに入れるものが居らぬという事! 今こそ、秀信の首を取る時だ! 我に続け!」
 
 既に伊達方の陣形は包囲されつつあり、もし政宗の中央が下がれば、両翼がどんどんと押し込まれ、陣形が崩れる。
 政宗が離脱できたとしても、壊滅的な被害は免れない。
 勝つためには、進むしかなかった。
 
「……全ては、我が策の通り」
 
 昌幸は笑った。
 
「伊達政宗よ。我らの勝利だ」
 
 政宗は、昌幸の術中に陥っている事に気が付いていない。
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