【祝!完結!】第六天魔王、織田信長、再臨す 〜関ヶ原から始める織田家再興物語〜 

中村幸男

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生き残った者達

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「……さて、少し聞きたい事がございまする」
 
 秀信はその後、上杉景勝らと一人で話をしていた。
 
「供もつけずに、よろしいのですかな?」
「今の上杉殿はそのような無謀な事はせぬでしょう。それに、その有り様で何か出来るとも思えませぬしな」
 
 上杉景勝らは縛られており、秀信を斬ることなど出来る筈が無いのである。
 
「……それに、一人ではありませぬしな」
「……成る程」
 
 上杉景勝は気配を感じないが、付近に秀信の側近が控えている事を察する。
 そして、伊達成実が口を開いた。
 
「……やはり、織田には忍びのような、影で動く者がおるようですな」
「……好きにとらえて貰って構いませぬ」
「……それらを使って、秀頼公を殺したのか」
「何!?」
 
 その言葉に、景勝と津軽為信や水野勝成も驚きを隠せずにいた。
 上杉景勝がすぐに問い正す。
 
「それは真か!? 成実殿!」
「確かなことではありませぬ」
 
 そして、景綱が口を開く。
 
「されど、織田信包殿のご子息が我らの陣に加わり、秀頼公が亡くなった後に行方が分からなくなっておりまする。そして、話によれば加藤清正殿らが遭遇した犯人等は顔を隠しており、装いも黒装束で忍びのようであったと」
「……そう言えば、三郎殿お抱えの大垣衆とやらがおりましたな。あの者等はまるで忍びのように各地で情報を集めていたとか……織田の家の者には必ず数名は大垣衆の者がついていてもおかしくはありませぬな」
 
 成実が秀信を見る。
 しかし、秀信は動じない。
 
「……成る程。今の大垣衆は頭領である虎助が本能寺で三郎と共に死んだ故、別の者が指揮しておりまする。そして、それらに指示を出しているのは、今は某。当時の事、詳しくはわかりませぬな。……まぁ、この度の戦で最も得をしたのは、この織田秀信にございまする。疑われても仕方が無いでしょうな」
 
 秀信は頷く。
 
「されど、身の潔白を証明する術はありませぬ」
「……」
 
 そう言われると、景勝達は何も言えなかった。
 問い詰めた所で知らぬ存ぜぬならば、問い詰めるだけ無駄だからである。
 
「さて、上杉殿。何故、伊達殿の陣に加わられたのか。お聞きしても?」
「……」
 
 しかし、景勝は答えない。
 すると、秀信が口を開いた。
 
「島左近」
「……何故」
「彼の者に何か言われたのでしょう?」
 
 すると、秀信は懐から文を出し、文を広げて景勝の前に置く。
 そこには、三郎が記した策が書き連ねられていた。
 
「全ては三郎の策。有力な大名を潰すための策のようにございまする」
「……という事は、嵌められたということか」
「左様」
 
 秀信は頷く。
 
「ここにいる者達全ては三郎の策によって我らと戦を繰り広げた……と言いたいところなのですが……」
 
 秀信は水野勝成を見る。
 
「水野殿は、三郎の策には関係無く伊達殿の陣に加わったようですな……」
「まぁ……確かに三郎殿と直接関わってはおらんな」
「……水野殿らが京を襲撃致しましたが、それは予想外の動き。この文には書かれておりませぬ。進言したのは水野殿ですかな?」
 
 水野勝成は頷く。
 
「左様。津軽殿が大阪へ戻るよりも前に某が進言致した。まぁ、それも未然に防がれてしまいましたがな」
 
 そして、秀信は考える。
 何故未然に防がれたのか。
 いや、秀信は既に勘付いていた。
 
「……津軽殿。何か知っているのでは?」
「……い、いや……何も……」
 
 明らかに津軽為信は動揺する。
 そこに、秀信は確信する。
 津軽為信が口止めされていると察し、続ける。
 
「……成る程。そういう事で良いのですかな?」
「……恐らく、その通りかと」
 
 津軽為信の答えに秀信は納得する。
 
「……了解致した。これで、聞きたいことは聞けました」
 
 秀信は頭を下げた。
 
「皆様方のお命は取りませぬ。流罪、とはなるでしょうが。今後また戦を起こそうとするならば、次は容赦は致しませぬ」
 
 そして、秀信は頭を上げ、立ち上がる。
 
「誠に、見事な戦ぶりでした。某だけの実力では勝てなかった。それは確実にございまする。細かな沙汰は追って知らせまする」
 
 秀信はその場を後にした。
 
「……織田秀信か」
「上杉殿。もはや織田の天下は揺るぎませぬな」
 
 津軽為信の言葉に景勝は頷く。
 
「何処か遠い所で、織田の天下を見守るとするか」
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