【祝!完結!】第六天魔王、織田信長、再臨す 〜関ヶ原から始める織田家再興物語〜 

中村幸男

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新たな政策

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 数日後。
 岐阜城より福が姿を消し、謎の置き手紙が二通発見された事が秀信の下へ知らされた。
 
「……探さないで下さい。夫と旅に出ます……そしてこっちは……」
「俺は嫁と共に旅に出る。後は頑張れよ……ですか。間違いなく、福殿と三郎でしょうね」
 
 秀信は勘助と二人話をしていた。
 実はかなり歳が近く、勘助や三郎の実情を知っている秀信からすれば最も信頼のおける人間であり、三郎が居なくなってからも重宝されていた。
 
「まぁ、捨て置いて構わんでしょう。聞いた限りでは、あいつから信長公としての記憶は消えている事でしょうし、問題は無いかと」
「……信長公の野心のような物がなくなった故、無茶はしないだろうと?」
 
 勘助は頷く。
 
「ええ。本来のあいつは……三郎は、心優しき人間。信長公の生まれ変わりさえ無ければ、人を愛し、人から愛される、乱世からは程遠い人間になったでしょうな」
「……成る程な」
 
 秀信は文をしまう。
 
「まぁ、あいつ等のことは放っといても良い。それに、お前ならばいつ何処に行くかくらい予測がつくだろう?」
「……中々無茶を言いますな……まぁ、出来ない事は無いかと」
 
 秀信は頷き、話を切り替える。
 
「さて、今後の政策だが……お前の意見を聞かせてくれ」
「そうですな……本来の歴史の徳川幕府にある通り、清須の近辺を譜代の者、もしくは信頼のおける者に統治させ、離れた所領は外様に治めてもらうのがよろしいかと」
「万が一の時のためか……」
 
 勘助は頷く。
 
「されど、同じ事をしても徳川幕府と同じ道を辿ることになるかもしれません。現在の諸大名の秀信様への忠誠は充分。全ての大名を譜代、外様問わず均等に配置してもよろしいかと。旧領安堵等、喜ぶ事をしてやれば、反乱など起こす気も無くなるでしょうな」
「ふむ……本来の歴史全てを知る必要もありそうだな……」
 
 秀信は考える。
 そして、勘助はさらに続ける。
 
「あとは……鎖国の事も考えねばなりませぬな」
「鎖国?」
「はい。徳川幕府はキリスト教等が日の本に悪影響を与えていると考え、諸外国との外交を厳しく制限いたしました。それが、鎖国にございますが……」
 
 勘助は秀信を見つつ喋る。
 何故ならば、秀信はキリシタン大名であるからだ。
 鎖国について、良い印象は抱かないだろうと考えた。
 
「……成る程、鎖国か。それで、結果はどうなのだ?」
「……まぁ、一般からの評価は日の本の文化が発展した代わりに産業革命等の近代化から遅れてしまった……という物のようです。」
 
 すると、秀信はすぐさま聞き返す。
 
「産業革命とは何だ?」
「……」
 
 そして、勘助は考えた。
 
(果たして、それを伝えても良いのか……歴史が大きく変わってしまう事となるが……そうなっては俺の未来の知識も活用出来なくなってしまう……)

 暫く逡巡した後、答える。 
 
「……蒸気機関」
「じょうききかん?」
「簡単に申しますと、水を沸かした際、出てくる湯気で動力を得ます。水車が水の流れで動くのと同じ原理ですね」
「成る程! それは凄いな!」
 
 しかし、勘助は忠告する。
 
「されどこれは数百年先の技術。今発明してしまっては、歴史が大きく変わります。それに、私には知識としてしかありませぬ故、完璧に再現出るとは……」
「そこの問題は知恵者を集めれば解決できよう……それに、歴史が変わるというのも、鎖国すれば問題無いだろう? 既に日の本の歴史は大きく変わっているのだしな」
「……成る程。秀信様は鎖国には反対されないと?」
 
 秀信は少し笑いなからに続ける。
 
「あぁ。せっかく手に入れた織田家の天下を諸外国に邪魔されては台無しだ。俺もキリシタン大名だが、この国の為なら宗教は捨てよう。……まぁ、捨てなくて良いように最善は尽くすがな」
「……お見事な覚悟ですな」
 
 勘助は頷き、に続ける。
 
「ならば、次に進言するのは、医療についてです」
「……医療か」
「はい。この時代の医学薬学は遅れており、未来の知識を少し使うだけで大きく死亡率を減らせるでしょう。栄養学などを見直すだけでも違います」
 
 すると、秀信は即答する。
 
「ならば、その辺りは任せる。好きに差配して構わん」
「ありがとうございます」
 
 勘助は頭を下げた。
 
「今後は勘助の未来の知識を目一杯活用して、この国を豊かにしてみせよう。これ以上、人が殺し合わなくて済むようにな」
「……実は農業の知識も多少はございます。そちらでもお役に立てるかと」
 
 勘助の未来の知識。
 これまで三郎が積み重ねてきた織田家の天下の為の策の数々。
 そして、秀信の決断力により、織田家の天下は盤石な物となっていくのであった。
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