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冒頭
第4話 ネトゲ友達、サワチー
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「よし、次はサワチーだな」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。一旦お茶を……」
3人目は、青野のネトゲ友達。中学からオンラインゲームを共に遊んでいる仲で、サワチーというのは彼女のアカウントネームだ。
青野はまだ、リアルの彼女とは会った事もない。そのため本名や顔をまだ知らない。それにも関わらず、彼女はヒロインなんだと言い張る彼の自信は、いったいどこから来るのだろうか。自前の水筒から、お茶をグイっと飲み始める。俺は構わず続けた。
「36、こっちもかなり低くなったな」
「ブハッ!?」
口に含んだお茶を、自分のカバンの中へ盛大に噴出した。俺にかからなくてよかった、と内心ホッとした。瀬戸会長の12程では無いものの、36は2人の間に明確な距離があるということを意味している。
「待て待て!? ネトゲ数年来の仲なのに何でそんな低いんだよ!?」
オンラインゲーム『街角で強くなるRPG』、通称『かどつよ』。魔物たちと戦って強くなったり、村を発展させてほのぼのと暮らすこともできる、バトルとスローライフが両立しているゲームである。青野に誘われて始めた俺も、そこそこハマっている。
そんな『かどつよ』を中学時代から一緒に遊んできた彼女、最初は同胞としての信頼もあり、60程度と好感触だった。しかし今では、数字にうっすらと明るめの青が見え始めてきている。この事実は青野にとって、裏切りとも言える程にショックだった。
「ある時からガクッと落ちたよな……。身の回りの噂に一番敏感だし、何か悪い噂でも流されてるんじゃないか?」
「何だよそれ……、昨日誘った時も、今朝に『ごめ、寝てたわ』って返信が来たんだよな」
青野は現状を受け止めきれず、膝が震えている。『寝ていた』は多分、知っていて無視されてる時の返事だぞ、とは言わないでおくとしよう。
「まあ、本当に寝てたんじゃないか? 今周回で忙しいみたいだし」
「そうだ! 周回で思い出したんだけどさ!」
「な、なんだ……?」
俺がぼかして答えようとしたところで、青野に愚痴のスイッチが入ってしまった。唾が飛びそうだから、もうちょっと抑えて喋ってほしい。
「この間、期間限定のクエストがあっただろ? 男女2人でしか入れないやつ!」
「あぁ、バカップル量産クエストで話題だったあれか」
先日、期間限定で愛の試練とかいう謎クエストが存在していた。敵のレベルは弱いのだが、何故か毎回王様ゲームが始まる。しかも当然のように出来レースなので、敵がプレイヤー2人にひたすら恥ずかしいことを言わされるのである。
「あれ、謎の告白タイムがあったから、とにかく心臓に悪かったな……」
俺はその限定クエストを何度も周回した事があった。タチが悪いことに、『かどつよ』には音声認識システムが搭載されている。そのせいで、愛の告白をしろと命令が出たら、実際にちゃんと言わないとクリアにならないのだ。後で知ったけど、この仕様には流石に批判が殺到していたらしい。
俺が気を抜いて発した言葉に、青野は予想以上に食いついてきた。
「え、友田。お前……誰かとあのクエストやったのかよ! 誰だ! 誰となんだ!?」
いつぞやにネットで見たマーモットの叫びのような勢いで、俺の尋問が始まってしまった。その目はまるで、『友人キャラが俺より先に恋愛してんじゃねえよ』とでも言わんばかりだ。
「あ、あぁ。『何としても限定装備欲しいから協力よろー』って友達に誘われたんだ。青野は会った事が無い人だから、顔見てもわからないと思うぞ」
「――そうか。くそぉ、俺もサワチーとやりたかったぜ……」
内心冷や汗をかいた。一応、嘘は言っていない。青野はサワチーの中の人とは直接会った事が無いのだから、顔を見てもわからないはずだ。
青野はがっくりとうなだれる。俺への追及はどうにか免れたようで、彼の興味は再びサワチーへと向いた。
「ああー、早くリアルでお会いしたい……あのアバターみたいに凛々しくて綺麗なんだろうなー」
サワチーのアバターは、黒いポニーテールの大和撫子的な和服少女だ。瀬戸先輩と雰囲気は少し似ていたようにも思える。
「しゃべり方はちょっと癖があるよな」
「そう! そのギャップがまた良いんだよ!」
「あーはいはい」
いつものヒロイン語りが始まったな、と俺は聞き流す姿勢に入る。
青野には悪いが、俺は知っている。サワチー、本名唐沢千紗はアバターとは全然違う姿であり、どちらかと言えば可愛らしい系だという事を。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。一旦お茶を……」
3人目は、青野のネトゲ友達。中学からオンラインゲームを共に遊んでいる仲で、サワチーというのは彼女のアカウントネームだ。
青野はまだ、リアルの彼女とは会った事もない。そのため本名や顔をまだ知らない。それにも関わらず、彼女はヒロインなんだと言い張る彼の自信は、いったいどこから来るのだろうか。自前の水筒から、お茶をグイっと飲み始める。俺は構わず続けた。
「36、こっちもかなり低くなったな」
「ブハッ!?」
口に含んだお茶を、自分のカバンの中へ盛大に噴出した。俺にかからなくてよかった、と内心ホッとした。瀬戸会長の12程では無いものの、36は2人の間に明確な距離があるということを意味している。
「待て待て!? ネトゲ数年来の仲なのに何でそんな低いんだよ!?」
オンラインゲーム『街角で強くなるRPG』、通称『かどつよ』。魔物たちと戦って強くなったり、村を発展させてほのぼのと暮らすこともできる、バトルとスローライフが両立しているゲームである。青野に誘われて始めた俺も、そこそこハマっている。
そんな『かどつよ』を中学時代から一緒に遊んできた彼女、最初は同胞としての信頼もあり、60程度と好感触だった。しかし今では、数字にうっすらと明るめの青が見え始めてきている。この事実は青野にとって、裏切りとも言える程にショックだった。
「ある時からガクッと落ちたよな……。身の回りの噂に一番敏感だし、何か悪い噂でも流されてるんじゃないか?」
「何だよそれ……、昨日誘った時も、今朝に『ごめ、寝てたわ』って返信が来たんだよな」
青野は現状を受け止めきれず、膝が震えている。『寝ていた』は多分、知っていて無視されてる時の返事だぞ、とは言わないでおくとしよう。
「まあ、本当に寝てたんじゃないか? 今周回で忙しいみたいだし」
「そうだ! 周回で思い出したんだけどさ!」
「な、なんだ……?」
俺がぼかして答えようとしたところで、青野に愚痴のスイッチが入ってしまった。唾が飛びそうだから、もうちょっと抑えて喋ってほしい。
「この間、期間限定のクエストがあっただろ? 男女2人でしか入れないやつ!」
「あぁ、バカップル量産クエストで話題だったあれか」
先日、期間限定で愛の試練とかいう謎クエストが存在していた。敵のレベルは弱いのだが、何故か毎回王様ゲームが始まる。しかも当然のように出来レースなので、敵がプレイヤー2人にひたすら恥ずかしいことを言わされるのである。
「あれ、謎の告白タイムがあったから、とにかく心臓に悪かったな……」
俺はその限定クエストを何度も周回した事があった。タチが悪いことに、『かどつよ』には音声認識システムが搭載されている。そのせいで、愛の告白をしろと命令が出たら、実際にちゃんと言わないとクリアにならないのだ。後で知ったけど、この仕様には流石に批判が殺到していたらしい。
俺が気を抜いて発した言葉に、青野は予想以上に食いついてきた。
「え、友田。お前……誰かとあのクエストやったのかよ! 誰だ! 誰となんだ!?」
いつぞやにネットで見たマーモットの叫びのような勢いで、俺の尋問が始まってしまった。その目はまるで、『友人キャラが俺より先に恋愛してんじゃねえよ』とでも言わんばかりだ。
「あ、あぁ。『何としても限定装備欲しいから協力よろー』って友達に誘われたんだ。青野は会った事が無い人だから、顔見てもわからないと思うぞ」
「――そうか。くそぉ、俺もサワチーとやりたかったぜ……」
内心冷や汗をかいた。一応、嘘は言っていない。青野はサワチーの中の人とは直接会った事が無いのだから、顔を見てもわからないはずだ。
青野はがっくりとうなだれる。俺への追及はどうにか免れたようで、彼の興味は再びサワチーへと向いた。
「ああー、早くリアルでお会いしたい……あのアバターみたいに凛々しくて綺麗なんだろうなー」
サワチーのアバターは、黒いポニーテールの大和撫子的な和服少女だ。瀬戸先輩と雰囲気は少し似ていたようにも思える。
「しゃべり方はちょっと癖があるよな」
「そう! そのギャップがまた良いんだよ!」
「あーはいはい」
いつものヒロイン語りが始まったな、と俺は聞き流す姿勢に入る。
青野には悪いが、俺は知っている。サワチー、本名唐沢千紗はアバターとは全然違う姿であり、どちらかと言えば可愛らしい系だという事を。
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