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第8話 クラスのナルシスト
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「なんだぁ? お前、今更良い子になろうってのか?」
「え?」
おどけたように会話に入ってきたのはケントと同じくクラスメイトのギールだ。彼はいわゆるナルシストで、常に首まで伸ばしたサラサラの金髪をかき上げながら謎のモデル歩きで話に割り込んできた。彼の狙いはわからないが、度々ハルトを見下すかのような事を言って僕を挑発してくる。今回もそのつもりで来たのだろう。
「ハッ、無駄なことは止めとけよ。何せ君の学力じゃあ兄のシリウス・ユークリウッド、の足元にも……」
「うん、それはよくわかってるよ」
「は……?」
「む……?」
「……ハム?」
二人から漏れだした二文字が偶然知っている単語になった、ので思わず繋げてしまった。クラスの誰かが吹き出していた、ということはこの世界にもあるんだろうか。ハム。買うと意外と高いんだよね。
「お前が挑発に乗らないだと……?」
「いつもなら、兄の名前が出たら問答無用で殴り掛かるところなのだが……」
「そうだぜ? それで駆けつけた教師がお前を悪者にするのが俺の楽しみなのによぉ……」
「ギース君! やはり君、わざとやっていたな!?」
(やっぱりかー、やっぱり焚きつけてたのかー)
ギースに焚きつけられたハルトが暴走して、それを見た教師がハルトのせいにする、という流れが去年の間に数えきれない程あった。ほぼ毎日のように似た挑発をされていたのだから、流石にハルトもわざとだと気づいていた。
僕が挑発に乗らないことを不満に思ったギースは、窓から見た外で何かを見つけるとニヤリと笑う。
「おい、あれ……お前のお兄さんじゃねえか?」
「あ、本当だ」
「隣におられるのは……確か今年から編入してきたリリア、という女性だな」
「リリア? ということは、シリウスルートになったのかな」
「ルート? 何言ってんだお前?」
「ごめん、こっちの話だから気にしないで」
(ちゃんとヒロインもいるんだな……ってあれ?)
シリウスの隣を歩く彼女こそが、プリ庭の主人公であるリリア・フレイル。ゲームの説明書では一枚絵のビジュアルだけが用意されているが、本編でその姿を見ることはほとんどない。但し一枚絵だけと言ってもプロに描かれた彼女は容姿が整っていて、イケメン揃いのプリ庭の世界にも馴染むレベルの美少女と言えた。……キャラ説明の『普通の平民』は詐欺だろうと見た時に思った。
しかし彼女を見た時、僕の感じた違和感はそこではなかった。リリアの姿をゲームを通してではなく、直接見たような気がしたのだ。交友関係が皆無であるハルトにとって彼女と接点が起きそうな場面なんて無かったはず。とここでとある可能性にたどり着く。
(もしかして、入学式の時に会った女性って……リリアだった?)
もしそうだったとしたら、物語を狂わせるような行動をしてしまったのだろうか? いや、あの時はお互い名乗っていなかったし、暗くてリリアの顔が良く見えていなかった。だからきっと僕の事は覚えていないはずだ。
(あれ、二人が急に静かになったけど……どうしたんだろう?)
二人の顔を見ると、ケントもギースも目を見開き口をポカンと開けたまま動かなくなっていた。数秒が経った後、意識が戻ってくると僕から一歩ずつ距離を置き始めた。
「ハルト君の口から……ごめん……だと?」
「おいお前……気は確かか?」
(……流石にちょっと鬱陶しくなってきたから、放っとこ)
リリアの物語は順調に始まっているようだし、その上ハルトという敵が減るのだからきっと大丈夫。それよりも大変なのは、僕自身のこれからの過ごし方だ。評判が悪いままでは普通に過ごすこともままならない。まずはハルトの評価をマイナスから脱却することが最優先にしようと決めた。
「前途多難だなぁ、こりゃ」
この後、授業開始と共に教室に入ってきた教師も僕が大人しく着席していることに驚いていた。もう既に見飽きた反応だったので無視して授業の準備に取り掛かった。
「え?」
おどけたように会話に入ってきたのはケントと同じくクラスメイトのギールだ。彼はいわゆるナルシストで、常に首まで伸ばしたサラサラの金髪をかき上げながら謎のモデル歩きで話に割り込んできた。彼の狙いはわからないが、度々ハルトを見下すかのような事を言って僕を挑発してくる。今回もそのつもりで来たのだろう。
「ハッ、無駄なことは止めとけよ。何せ君の学力じゃあ兄のシリウス・ユークリウッド、の足元にも……」
「うん、それはよくわかってるよ」
「は……?」
「む……?」
「……ハム?」
二人から漏れだした二文字が偶然知っている単語になった、ので思わず繋げてしまった。クラスの誰かが吹き出していた、ということはこの世界にもあるんだろうか。ハム。買うと意外と高いんだよね。
「お前が挑発に乗らないだと……?」
「いつもなら、兄の名前が出たら問答無用で殴り掛かるところなのだが……」
「そうだぜ? それで駆けつけた教師がお前を悪者にするのが俺の楽しみなのによぉ……」
「ギース君! やはり君、わざとやっていたな!?」
(やっぱりかー、やっぱり焚きつけてたのかー)
ギースに焚きつけられたハルトが暴走して、それを見た教師がハルトのせいにする、という流れが去年の間に数えきれない程あった。ほぼ毎日のように似た挑発をされていたのだから、流石にハルトもわざとだと気づいていた。
僕が挑発に乗らないことを不満に思ったギースは、窓から見た外で何かを見つけるとニヤリと笑う。
「おい、あれ……お前のお兄さんじゃねえか?」
「あ、本当だ」
「隣におられるのは……確か今年から編入してきたリリア、という女性だな」
「リリア? ということは、シリウスルートになったのかな」
「ルート? 何言ってんだお前?」
「ごめん、こっちの話だから気にしないで」
(ちゃんとヒロインもいるんだな……ってあれ?)
シリウスの隣を歩く彼女こそが、プリ庭の主人公であるリリア・フレイル。ゲームの説明書では一枚絵のビジュアルだけが用意されているが、本編でその姿を見ることはほとんどない。但し一枚絵だけと言ってもプロに描かれた彼女は容姿が整っていて、イケメン揃いのプリ庭の世界にも馴染むレベルの美少女と言えた。……キャラ説明の『普通の平民』は詐欺だろうと見た時に思った。
しかし彼女を見た時、僕の感じた違和感はそこではなかった。リリアの姿をゲームを通してではなく、直接見たような気がしたのだ。交友関係が皆無であるハルトにとって彼女と接点が起きそうな場面なんて無かったはず。とここでとある可能性にたどり着く。
(もしかして、入学式の時に会った女性って……リリアだった?)
もしそうだったとしたら、物語を狂わせるような行動をしてしまったのだろうか? いや、あの時はお互い名乗っていなかったし、暗くてリリアの顔が良く見えていなかった。だからきっと僕の事は覚えていないはずだ。
(あれ、二人が急に静かになったけど……どうしたんだろう?)
二人の顔を見ると、ケントもギースも目を見開き口をポカンと開けたまま動かなくなっていた。数秒が経った後、意識が戻ってくると僕から一歩ずつ距離を置き始めた。
「ハルト君の口から……ごめん……だと?」
「おいお前……気は確かか?」
(……流石にちょっと鬱陶しくなってきたから、放っとこ)
リリアの物語は順調に始まっているようだし、その上ハルトという敵が減るのだからきっと大丈夫。それよりも大変なのは、僕自身のこれからの過ごし方だ。評判が悪いままでは普通に過ごすこともままならない。まずはハルトの評価をマイナスから脱却することが最優先にしようと決めた。
「前途多難だなぁ、こりゃ」
この後、授業開始と共に教室に入ってきた教師も僕が大人しく着席していることに驚いていた。もう既に見飽きた反応だったので無視して授業の準備に取り掛かった。
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