サブキャラへのゲーム転生は、思ったより大人しくしていられない

こなひー

文字の大きさ
8 / 32

第8話 クラスのナルシスト

しおりを挟む
「なんだぁ? お前、今更良い子になろうってのか?」
「え?」

 おどけたように会話に入ってきたのはケントと同じくクラスメイトのギールだ。彼はいわゆるナルシストで、常に首まで伸ばしたサラサラの金髪をかき上げながら謎のモデル歩きで話に割り込んできた。彼の狙いはわからないが、度々ハルトを見下すかのような事を言って僕を挑発してくる。今回もそのつもりで来たのだろう。

「ハッ、無駄なことは止めとけよ。何せ君の学力じゃあ兄のシリウス・ユークリウッド、の足元にも……」
「うん、それはよくわかってるよ」
「は……?」
「む……?」
「……ハム?」

 二人から漏れだした二文字が偶然知っている単語になった、ので思わず繋げてしまった。クラスの誰かが吹き出していた、ということはこの世界にもあるんだろうか。ハム。買うと意外と高いんだよね。

「お前が挑発に乗らないだと……?」
「いつもなら、兄の名前が出たら問答無用で殴り掛かるところなのだが……」
「そうだぜ? それで駆けつけた教師がお前を悪者にするのが俺の楽しみなのによぉ……」
「ギース君! やはり君、わざとやっていたな!?」
(やっぱりかー、やっぱり焚きつけてたのかー)

 ギースに焚きつけられたハルトが暴走して、それを見た教師がハルトのせいにする、という流れが去年の間に数えきれない程あった。ほぼ毎日のように似た挑発をされていたのだから、流石にハルトもわざとだと気づいていた。

 僕が挑発に乗らないことを不満に思ったギースは、窓から見た外で何かを見つけるとニヤリと笑う。
 
「おい、あれ……お前のお兄さんじゃねえか?」
「あ、本当だ」
「隣におられるのは……確か今年から編入してきたリリア、という女性だな」
「リリア? ということは、シリウスルートになったのかな」
「ルート? 何言ってんだお前?」
「ごめん、こっちの話だから気にしないで」

(ちゃんとヒロインもいるんだな……ってあれ?)

 シリウスの隣を歩く彼女こそが、プリ庭の主人公であるリリア・フレイル。ゲームの説明書では一枚絵のビジュアルだけが用意されているが、本編でその姿を見ることはほとんどない。但し一枚絵だけと言ってもプロに描かれた彼女は容姿が整っていて、イケメン揃いのプリ庭の世界にも馴染むレベルの美少女と言えた。……キャラ説明の『普通の平民』は詐欺だろうと見た時に思った。

 しかし彼女を見た時、僕の感じた違和感はそこではなかった。リリアの姿をゲームを通してではなく、直接見たような気がしたのだ。交友関係が皆無であるハルトにとって彼女と接点が起きそうな場面なんて無かったはず。とここでとある可能性にたどり着く。

(もしかして、入学式の時に会った女性って……リリアだった?)

 もしそうだったとしたら、物語を狂わせるような行動をしてしまったのだろうか? いや、あの時はお互い名乗っていなかったし、暗くてリリアの顔が良く見えていなかった。だからきっと僕の事は覚えていないはずだ。

(あれ、二人が急に静かになったけど……どうしたんだろう?)

 二人の顔を見ると、ケントもギースも目を見開き口をポカンと開けたまま動かなくなっていた。数秒が経った後、意識が戻ってくると僕から一歩ずつ距離を置き始めた。
 
「ハルト君の口から……ごめん……だと?」
「おいお前……気は確かか?」
(……流石にちょっと鬱陶しくなってきたから、放っとこ)

 リリアの物語は順調に始まっているようだし、その上ハルトという敵が減るのだからきっと大丈夫。それよりも大変なのは、僕自身のこれからの過ごし方だ。評判が悪いままでは普通に過ごすこともままならない。まずはハルトの評価をマイナスから脱却することが最優先にしようと決めた。

「前途多難だなぁ、こりゃ」

 この後、授業開始と共に教室に入ってきた教師も僕が大人しく着席していることに驚いていた。もう既に見飽きた反応だったので無視して授業の準備に取り掛かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...