サブキャラへのゲーム転生は、思ったより大人しくしていられない

こなひー

文字の大きさ
18 / 32

第18話 クラスでの一幕

しおりを挟む
 とある昼休み、授業でわからなかった所を後で復習しようとマークを付けている最中の僕にケントが近づいてきた。僕の前で立ち止まり僕の事を凝視してくる。無言のまま数十秒が過ぎようとした所で、埒が明かないと僕から話を切り出すことにした。
 
「……何か用事?」
「ハルト君、君は本当に改心したと考えていいのかな?」
「え?」

 どうやら、僕がずっと大人しくしていることから考え方を改めようと尋ねてきたようだ。本人に直接聞いてしまう辺り、真面目過ぎる彼らしいような気がする。どう答えていいか迷っていると、ケントは既に肯定したと見なして勝手に話を進めていく。

「ならばやはり私は君を、優等生の座を狙うライバルと判断して……」
「あ、丁度良いや。この問題の解き方がわからないんだけど」
「ふむ、その問いの答えは問題のこの辺りの文章を正しく読み解ければ……」

 ケントはただ真面目すぎるだけで、普通に接してみたら普通に良いやつだった。わからない問題について尋ねるとこうして懇切丁寧に答えだけでなく解き方まで教えてくれる。

「おいケント、話すり替えられてんぞ」
「答えは意外と単純なものになると覚えておくといいぞ! ……はっ、いつの間に!」
「成程、ありがとね」
「うむ! これ位お安い御用だ!」
「……チッ、いい加減ボロ出せっつーの」

 僕とケントのやり取りを、ギースはとても面白くなさそうに睨みつけてくる。しかし彼は平民という立場上、自分からは手が出せない事を理解している。だからいつもハルトを挑発して手を出させていたのだが、今の僕には通用しない。

「助かったよ、これまでサボり続けちゃったからわかんないことばっかりで……」
「勉学のことなら、君の兄に頼ってもいいのではないか? 首席なのだし間違いないだろう」

 ケントの一言で教室がやや静まる。シリウスの事を引き合いに出してしまったから、ハルトの暴走が始まるかとクラスメイト達が冷や汗をかいている。そんな空気を他所に、僕はもし頼った場合を想像したところで止めた。
 
「うーん、多忙な兄さんに頼るのはちょっと気が引けるかも」
「そうか……忙しい中でも首席を取れるとは、流石はシリウス様だな!」
「去年の試験もほぼ満点だったみたいだからね……いっそ講師になってくれないかなー、なんて思ってるよ」

 ちなみにケントはギースと違ってわざとシリウスの名前を出しているわけではない。単にかつてのハルトにとって禁句であることを理解していないだけらしい。……それはそれで優等生としてはどうかと思うけど、今は全然問題じゃなくなったので流しておく。

「兄の名前にも全く引っかからねぇし……本当にどうなってんだよ……」

 ギースの呟きに数人のクラスメイトが同意していた。しかし僕としてはいい加減僕が暴れない事に慣れてほしいと思っている。それで飽きて興味を無くしてくれれば、平穏な日々に近づく事ができるはずだから。
 しかし、このクラスの平穏はもう少し先になるというメッセージかのように、また教室がざわつき始める。その理由は教室に入ってきた高等部の編入生によるものであった。……こっちも初めてじゃないのだからそろそろ慣れてほしいけれど。

「あれ? リリアさん?」
「はい、シリウス様から『エマの件があるから、私がいない間はハルトと行動を共にすると良い』と提案して頂きましたので」
「兄さんがそんな事を……?」
「……でしたが、後押しをしていただけました!」

 リリアが中等部の教室に現れたことでクラスの注目がリリアに集まる。リリアは評判なんて気にしないと言ってくれたが、やはり居づらさは拭えない。……気のせいかもしれないが、最後の言葉の前半をやや強調していたような気がする。

「……やっぱり、中等部にいると目立ちますから別の場所へ……」
「はい、では行きましょうか」

 ギュッ。

「へ!?」
 
 リリアは僕の手を握って廊下に向けて歩き出した。僕もつられて歩き出す。クラス全員がポカンとしたまま固まってしまった。そのおかげか僕たちはスムーズに教室を出られた。

(距離を近づけてくれる事にまだ慣れないけど、だんだん嬉しいって感じるようになったかも)

 平穏とは少し違うかもしれないけれど、今はとても幸せな時間を過ごすことができている。やっぱりハッピーエンドにしなければと思うのだが、やはりリリアの行動がどうもヒーロー達のほうを向いていないような気がして、ちょっとだけ心配になるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

処理中です...