サブキャラへのゲーム転生は、思ったより大人しくしていられない

こなひー

文字の大きさ
23 / 32

第23話 クロードとノエル

しおりを挟む
 僕は、もう三度目になる応接室の上座にいた。横にはシリウス、そして対面にはシリウスが家に招いた客人二人が並んでいた。その客人とは、僕も一度だけ会っている人物だった。僕は冷や汗を一粒頬に垂らしながらシリウスに尋ねる。

「……兄さん、一個聞きたいんだけど」
「なんだ?」

 シリウスは至っていつも通りに落ち着いた様子だが、僕はとても気が気じゃない。おまけに招待された二人も少々戸惑っているようだった。

「シリウスの弟に今度話しておきたい事があるとシリウス先輩に話したら、即日家に招待されるとは思いませんでした……」
「右に同じ。どーも、ハルト君。図書室の時以来だねー」

 今回の客人であり、プリ庭のヒーローであるクロードとノエル。勿論僕はこの二人が来ることは聞いていなかったし、二人も唐突に呼ばれてしまったせいか乾いた笑みを浮かべている。

「前からそうだけどさ、何で用件がある人をすぐ家に呼んじゃうの?」
「確実に用件を済ませられるからだ」
「もー……こないだエマさんにそういう所を注意されたばかりじゃなかった?」
「あの時は女性を招く際のマナーについてだった。男同士であれば問題無いだろう」
「だめだこりゃ……」

 シリウスの完璧人間像が日々崩れ去っていくのを感じる今日この頃である。ノエルは大きくため息をつきながら右手で眉間を摘まみ、クロードは背もたれにだらんと体重を預けている。

「問題大有りですよ、シリウス先輩」
「僕らもちょうど話をするだけの時間はあったから、良かったけどねー」
「お二方、兄が申し訳ありませんでした」
「……い、いえ」
「……気にしなくていいよ。シリウスの不器用さはいつもの事だからね」

 僕が兄の代わりに謝ったことで、二人は僕を数奇の目で見つめてくる。クロードは僕をひとしきり見回した後、ふーんと言いながら何処か納得したような表情に変わった。

「うん、ちょっと観察してみてわかったよ。リリアとシリウスの言った通り、随分丸くなったみたいだね。ノエルもそう思わない?」
「……そのようですね。ハルト君、先日は失礼な態度を取ってしまって申し訳ありませんでした」
「そんな! 僕なんかのために頭を下げないでください!」

 ヒーロー二人に頭を下げられるなんて全く予想していなかった。真摯な謝罪に僕は恐縮してしまう。

「噂は大体が本当の事ですし、リリアさんに近づけまいとするのは正しい行動だったと思います」
「噂が本当って言うのはつまり……これまで本当に噂通りの事をしてたのかい?」
「は、はい……」
「認めるのですね……それが何故ここまで?」
「まあ、色々ありまして……」

 どうしてこうなった、という質問はもう何度もされてきた。ここでもやはり本当の事は言えない。有耶無耶にして流そうとしていたのだが、クロードが何かを思いついてしまう。

「あー! ……もしかして、リリアちゃんに惚れちゃったんじゃないのー?」
「え?」
「クロード先輩が良く言っている恋の力、というものですか? ……私には理解できかねますが」
「そ、そういうわけじゃないですよ!」

 恋の力というフレーズはクロードがよく使う言葉なのだが、僕にはそれは該当していないはずだ。そもそもリリアはヒーローである誰かと結ばれるはずで、僕はその対象にはならない。……実はあまりの距離の近さに少しずつ意識し始めてしまっている、なんて言うのはここでする話ではない。

「照れちゃうなんてかわいい弟君じゃないかー」
「ですから違いますってー!」
(嗚呼……ゲームの時から思ってたけど、やっぱり僕このキャラ苦手だぁ)

 ちょっと近すぎる距離感で親しく接してくれる男性は、女性にとってはキュンと来るのかもしれない。しかし人付き合いが得意じゃない男にはちょっと相手をするのが難しいと感じた。

「クロード先輩! ハルト君が嫌がっているじゃないですか、離れてあげてください」
「えー? ノエルは相変わらず厳しいなあ……」
「貴方が緩すぎるんですよ! ハルト君、大丈夫ですか?」
「あ、ありがとうございます」
「ネクタイが緩んでしまいましたね。結びなおして上げますよ」
(ノエルって気難しいキャラだと思ってたけど、案外優しい人なのかな?)

 慣れた手つきでネクタイを素早く直してくれたことに感謝する。しかし、その後眼鏡を直して白い光を反射させると、何かスイッチが入ったようで僕の服装をまじまじと見てくる。何故か少しだけ寒気を感じる。

「……ネクタイだけじゃない。襟が曲がっています。あと立ち姿勢が悪い。最初の礼も角度が曖昧でした」
「え」
「先輩に会うのに最低限のマナーが出来ていないじゃないですか。僭越ながら私が一から鍛えて差し上げましょう」
(あダメだ、こっちも僕には無理だ……)

 ノエルは身だしなみや規律に厳しすぎる一面がある。ゲームでは主人公の身だしなみを気にする必要が無いから気にならなかったが、実際に指摘され続けるとキツい。二人のキャラに困惑していた僕の前に、シリウスが立って告げた。

「クロード、ノエル。用件が済んだのなら早々に帰るといい」
「シリウス先輩!?」
「シリウス!? 急にひどくない!?」
「兄さん、言い方キツいし言葉足りてないし」

 そしてシリウスは、コミュニケーションにおいての不器用さが目立っている。ゲームではこれで何度もリリアとすれ違いを起こす原因になるのだ。

「む、そうか……二人とも、私が急に呼び出してしまったからな」
「そ、そういうことでしたか……驚かさないでくださいよ」
「まあ、シリウスの言葉足らずは今に始まったことじゃないけどさー……」
「あはは……」

 直接会ってみた結果、険悪な雰囲気は無くなったけれど僕にとってはやりづらい相手だということが分かった。あと残念ながらシリウスによる三度の急な呼び出しは、全て良い結果になっていたのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

処理中です...