サブキャラへのゲーム転生は、思ったより大人しくしていられない

こなひー

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第26話 積み重ねた評価

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 学園での僕の評価は、漸くマイナス分を取り戻してきているように思える。普通に過ごし続けた結果、関わる人からの対応がかなり変わってきていた。

「ハルト! さっきは手伝ってくれてありがとな!」
「うん、あれぐらいだったら全然問題ないよ」
「先週の試験の結果、素晴らしかったですよ。担任として鼻が高いです」
「良かった! でもまだまだ平均より少し上ぐらいですから、まだ頑張らないと……」
 
 以前は考えられなかったクラスメイトや担任とのやり取りが、こんな感じで出来るようになってきたのである。ハルトの悪評を引き合いに出してくる人間のほうが少ないのではないだろうかと思えるほどだ。廊下を歩いていても露骨に避けられないというのはとても安心する。

(そうそう、こういう平和な関係が欲しかったんだよ……)

 もう周囲から嫌悪を向けられる事も無くなってきた。のだが、別の意味で僕に突っかかってくる人がいた。

「な……何という事だ! このままではハルト君に優等生としての僕の株が奪われてしまうではないかぁっ!」
(無視無視)

 最近のケントはこんな調子で頭を抱えっぱなしになっていた。別に優等生の座を奪おうとしているつもりはないと何度も言っているのだが、全く耳を貸してくれないので最近は放置している。あと優等生の座は奪い合うものじゃ無いと思う。

「……あいつと関わるのはもう止めだな、もう弄っても面白みがねぇ」

 ケントとは対照的に、ギースは僕に関わってこなくなった。これはきっと悪い関係が自然と切れたという事を示しているのだろう。良い子の周りには良い子が集まり、悪い子の周りには悪い子が集まるというやつなのかもしれない。

(このまま平和に過ごせたらいいなー……)

 のんびりと昼休憩を過ごそうと思っていたのだが、最近はどうも別の注目を少しずつ集めている、という噂を聞いた。その内容とは……。

「ねえハルト! 良かったら、私達とお昼一緒に食べない?」
「へ? 僕?」
「そうそう! どうしてこんなに良い子になったのか気になるしー」
「それに俺って言ってたのが僕になって……かわいさ盛っちゃってるのよね」

 女子からの注目度が上がっている、というものだった。ハルトはサブキャラではあるものの、ヒーローたちと遜色のない顔立ちをしている。これまでは性格が悪かったために周囲から避けられていたが、今はそれが無くなった。つまり、ハルトは普通にしていればモテるらしい。
 ……けれど、一般的には嬉しい事のはずが、僕にとっては違う印象だった。

(前まで陰口言ってた人たちに言い寄られてもいい気持ちはしないな。原因を作ったのは僕だから皆は悪くないんだけど、なんかなぁ……)

 そう、これまで僕の事で散々悪口を言っていたクラスメイトの印象が強すぎた。そのせいで今の言葉が本心で言っていたとしてもどこか信じられないのである。ただこれはきっと、クラスメイトのせいではなくハルトのせいだ。ハルトが先に周囲の期待を裏切ったことが原因なのだと思う。

「いつもハルトを連れて行っちゃうリリア先輩も今日は来てないみたいだし……ってうわっ!」

 笑顔のリリアが正面に立っていた。ただいつもの笑顔と違って何か圧を感じる。

「ハルト君、来てください」
「へっ!? は、はい……」

 これまで何度も聞いてきた人を癒してくれるような声なのだが、今はちょっと重さを含んでいる。それを聞いてか、僕を誘ってきていたクラスメイトはそさくさと離れていった。僕が立ち上がるのを見て直ぐに手をガッチリと掴んで歩き出す。

(なんか、リリアさんが怖いんだけど……手を掴む力もなんか強いし)
「あの、リリアさん……?」
「……」

 僕が恐る恐る出した声を聴いて、早足で進んでいたリリアが足を止めてくれた。振り返って漸く見えた彼女の顔は、頬を膨らませて不満そうにしていた。
 
「ど、どうしたんですか?」
「ごめんなさい、ハルト君。貴方がクラスの女の子達に囲まれているのを見たら、胸の中に黒いものが沸き上がってきて……」
「黒いもの……? それ、平気なんですか?」

 じっと僕の顔を見たリリアは、一呼吸おくと元の爽やかな笑顔に戻った。
 
「……ハルト君と話していたら収まりました!」
「そうですか……良くわかんないけど、治ったのならよかったです」
「……そこは、わかって欲しかったのですが」
「? 何か言いました?」
「いえっ! 何も!」
「えー……?」
 
 途中なんて言ったのかが聞き取れなかった。それが原因なのか、リリアはまた不満そうな表情に戻ってしまい、そのまま昼ご飯を食べる場所まで手をいつもより強めに引っ張られていくことになった。
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