20 / 106
第十一話 ミツキ様_3
しおりを挟む
「こうしてみると結構大所帯ですね」
撮影当日。
廃ビルには先日の三人に加えて、新たな三人がいた。
グラビアアイドルの相沢絵里香。
お笑い芸人、三城浩也。
社会学者、剣持祐三。
「えーと、ですねぇ。今日は、この廃ビルを探検してみようと、そういうわけですハイ!」
「いやあ、これまた雰囲気あるねぇ。絵里香ちゃんは大丈夫、オバケ怖くない?」
「怖いですよぉそりゃあ。でもお仕事ですからね! それに今日は社会学者の剣持センセーもいらっしゃるから百人力ですよ!」
百人力どころか、社会学者がお化けにどんな特効があるというのか。
あらかじめ定めてある台本どおりの台詞に、桂木はつい口元を歪めてしてしまう。
そもそも彼は本業はタレントと言うべき人間で、学者業から遠ざかって久しいことはちょっと調べれば誰でもわかることだ。
それは他の二人も同様で――要するに、いずれもざっくばらんに言えば落ち目の連中だ。まあ、そこには自分たちも含まれるわけだが。お似合いのメンバーじゃないか。
桂木が内心で自嘲に耽っていた間に、一同は事件現場にやってきていた。
流れとしては、この後霊の襲撃があったという体でばらばらになって事件現場を見て回り、霊現象っぽいものを撮影して回ることとなる。もちろん、仕込みありだが当人たちは知らない振りをする。素人がどこまで誤魔化せるのかとか、小銭程度の予算で仕込んだところで所詮付け焼刃だろとか桂木は思わないでもないが、田崎はいけると思っているらしい。
「そういうわけで、それじゃあ各員携帯で撮影してくれ。面白いの撮ってくれよ」
他も多かれ少なかれそう思ってるようで、ウッキウキなのは田崎だけだ。
「で、俺は」
「桂木は…そうだな、女の子のフォローも必要だろ。最初は絵里香ちゃんについててやれ」
「えぇ、いいなぁ」
大島が鼻を鳴らした。
「別にお前が行ってくれてもいいぞ、ずっとカメラ持ち歩いてくれるならな」
「あ、いや、それは…あ、じゃあいってきまーす」
そそくさと立ち去る大島を見送り、桂木も仕事に取り掛かることにした。
今日の桂木の主な仕事は、ビル内をうろついてすでに散会しているほかの連中の動向を撮影することだ。
絵里香の撮影は導入に使う予定なので、さっさと一階の待ち合わせ場所で合流することにする。
階段を下ると、一階の入り口の左右にあるATMコーナーを興味深げに覗いていた絵里香がこちらを見つけるとほっとしたように駆け寄ってきた。
「あ、桂木さん! 遅いですよー、心細かったんですからねぇ」
「すいません、打ち合わせが長引いてしまって」
くねくね科《しな》を作る絵里香にペコペコ頭を下げてから、桂木たちは撮影を開始した。
こうしてみる分には男好きする身体にかわいらしい顔と魅力たっぷりなのだが、それをいいことに男癖が悪いことは桂木も噂に聞いて知っている。その情報が週刊誌にすっぱ抜かれて以来仕事が無くなった訳だが、噂に聞くと今回参加したゲスト二人にも前々から粉を掛けていたらしい。この分だと多分田崎ともヤってそうだ。
「えーと、あたし実は先ほどはぐれてしまいまして。ライトが調子悪くて、ぱっと消えたと思ったら女の人の呟き声が聞こえてきたんですよ! それでびっくりして逃げたんですけど、気づいたら一人きりになってしまいました。あぁ怖いなぁ~…」
そう言いながらちらちら、ちらちらカメラ目線でこちらに語りかけている。こういうところが仕事がもらえない理由なんだろうなと桂木は心中で呟いた。
一階はATMコーナーと軽食店があったらしいが、調べた限りでは事件後真っ先にいなくなったという。一同が入ってきた入り口を除いていずれも外への入り口は、浮浪者の侵入対策として金属製のシャッターでふさがれている。
「ふえぇぇ、三城くん、剣持さん、どこぉ~?」
その空き部屋を道なりに入り口からちょろっと覗いてはすぐに出て行く二人。
明らかに探す気がないのは丸分かりだが、大半の視聴者は本当の心霊現象ではなく、怯えてる様を見て楽しみたいのだからこれでいいのだろう。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ツギハ22ニチ19ジ
撮影当日。
廃ビルには先日の三人に加えて、新たな三人がいた。
グラビアアイドルの相沢絵里香。
お笑い芸人、三城浩也。
社会学者、剣持祐三。
「えーと、ですねぇ。今日は、この廃ビルを探検してみようと、そういうわけですハイ!」
「いやあ、これまた雰囲気あるねぇ。絵里香ちゃんは大丈夫、オバケ怖くない?」
「怖いですよぉそりゃあ。でもお仕事ですからね! それに今日は社会学者の剣持センセーもいらっしゃるから百人力ですよ!」
百人力どころか、社会学者がお化けにどんな特効があるというのか。
あらかじめ定めてある台本どおりの台詞に、桂木はつい口元を歪めてしてしまう。
そもそも彼は本業はタレントと言うべき人間で、学者業から遠ざかって久しいことはちょっと調べれば誰でもわかることだ。
それは他の二人も同様で――要するに、いずれもざっくばらんに言えば落ち目の連中だ。まあ、そこには自分たちも含まれるわけだが。お似合いのメンバーじゃないか。
桂木が内心で自嘲に耽っていた間に、一同は事件現場にやってきていた。
流れとしては、この後霊の襲撃があったという体でばらばらになって事件現場を見て回り、霊現象っぽいものを撮影して回ることとなる。もちろん、仕込みありだが当人たちは知らない振りをする。素人がどこまで誤魔化せるのかとか、小銭程度の予算で仕込んだところで所詮付け焼刃だろとか桂木は思わないでもないが、田崎はいけると思っているらしい。
「そういうわけで、それじゃあ各員携帯で撮影してくれ。面白いの撮ってくれよ」
他も多かれ少なかれそう思ってるようで、ウッキウキなのは田崎だけだ。
「で、俺は」
「桂木は…そうだな、女の子のフォローも必要だろ。最初は絵里香ちゃんについててやれ」
「えぇ、いいなぁ」
大島が鼻を鳴らした。
「別にお前が行ってくれてもいいぞ、ずっとカメラ持ち歩いてくれるならな」
「あ、いや、それは…あ、じゃあいってきまーす」
そそくさと立ち去る大島を見送り、桂木も仕事に取り掛かることにした。
今日の桂木の主な仕事は、ビル内をうろついてすでに散会しているほかの連中の動向を撮影することだ。
絵里香の撮影は導入に使う予定なので、さっさと一階の待ち合わせ場所で合流することにする。
階段を下ると、一階の入り口の左右にあるATMコーナーを興味深げに覗いていた絵里香がこちらを見つけるとほっとしたように駆け寄ってきた。
「あ、桂木さん! 遅いですよー、心細かったんですからねぇ」
「すいません、打ち合わせが長引いてしまって」
くねくね科《しな》を作る絵里香にペコペコ頭を下げてから、桂木たちは撮影を開始した。
こうしてみる分には男好きする身体にかわいらしい顔と魅力たっぷりなのだが、それをいいことに男癖が悪いことは桂木も噂に聞いて知っている。その情報が週刊誌にすっぱ抜かれて以来仕事が無くなった訳だが、噂に聞くと今回参加したゲスト二人にも前々から粉を掛けていたらしい。この分だと多分田崎ともヤってそうだ。
「えーと、あたし実は先ほどはぐれてしまいまして。ライトが調子悪くて、ぱっと消えたと思ったら女の人の呟き声が聞こえてきたんですよ! それでびっくりして逃げたんですけど、気づいたら一人きりになってしまいました。あぁ怖いなぁ~…」
そう言いながらちらちら、ちらちらカメラ目線でこちらに語りかけている。こういうところが仕事がもらえない理由なんだろうなと桂木は心中で呟いた。
一階はATMコーナーと軽食店があったらしいが、調べた限りでは事件後真っ先にいなくなったという。一同が入ってきた入り口を除いていずれも外への入り口は、浮浪者の侵入対策として金属製のシャッターでふさがれている。
「ふえぇぇ、三城くん、剣持さん、どこぉ~?」
その空き部屋を道なりに入り口からちょろっと覗いてはすぐに出て行く二人。
明らかに探す気がないのは丸分かりだが、大半の視聴者は本当の心霊現象ではなく、怯えてる様を見て楽しみたいのだからこれでいいのだろう。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ツギハ22ニチ19ジ
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
本当にあった不思議なストーリー
AA.A
ホラー
筆者の実体験をまとめた、本当にあった不思議な話しです。筆者は幼い頃から様々な科学では説明のつかない経験をしてきました。当時はこのような事をお話ししても気持ちが悪い、変な子、と信じてもらえなかった事が多かったので、全て自分の中に封印してきた事柄です。この場をおかりして皆様にシェア出来る事を嬉しく思います。
静かに壊れていく日常
井浦
ホラー
──違和感から始まる十二の恐怖──
いつも通りの朝。
いつも通りの夜。
けれど、ほんの少しだけ、何かがおかしい。
鳴るはずのないインターホン。
いつもと違う帰り道。
知らない誰かの声。
そんな「違和感」に気づいたとき、もう“元の日常”には戻れない。
現実と幻想の境界が曖昧になる、全十二話の短編集。
一話完結で読める、静かな恐怖をあなたへ。
※表紙は生成AIで作成しております。
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
夜にも奇妙な怖い話2
野花マリオ
ホラー
作品のホラーの中で好評である続編であります。
作者が体験した奇妙な怖い体験や日常的に潜む怪異や不条理を語ります。
あなたはその話を読んでどう感じるかはお任せいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる