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第十一話 ミツキ様_6
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「さて、ここまで三人のを見たが…こりゃ、決まりかな」
田崎の言葉に、
「い、いや、あんなんじゃ怖くも何とも無いじゃないか!」
「そ、そうよ、まだ私たちの方がこれからどうなるかって期待持てるでしょ?!」
残された挑戦者たちは腰を浮かし食い下がる…が、田崎ははっきり首を横に振った。
「いやぁ、はっきり言うが二人のは作為が強すぎる。はっきりいって、視聴者にとっては本当に怖いかどうかは大事じゃないんだわ」
「こ、怖がるところが観たいって言ったのは田崎さんじゃないですか!」
「そりゃあ、こういう番組だから怖がるところを判断基準にはするよ。けど、それだけじゃだめだ。視聴者にとって重要なのは、安全なところにいる自分が『怯えてうろたえている他人を観る』ことに尽きる」
「そんなもん観て面白いわけあるか!」
食い下がられるも、田崎は頑として譲らない。
「いーや、あるんだよこれが。センセも、素人の投稿動画でもバカにせず観てみりゃ良かったんだ。ホラーゲームの実況とか観てみれば分かるけど、ゲームが上手い人や語りが上手い人よりも、悲鳴が上手い人の方が人気があったりするもんだよ」
さすがに番組を長年作ってきただけあって、着眼点が鋭い。桂木もたまにそういう系統の動画を観たことはあるが、言われてみれば人気が有る作品は恐怖におののく反応やタイミングが秀逸なことが多いのを思い出していた。
「確かに二人の動画も、力が入っているのは認める。が、入れすぎたな。分かりやすく言うならそうだな…相手の動画と、三城のとを比べてどちらが面白かったか。そういえば納得できるだろ? 『お前ら怖がらせてやる』って考えが透けて見えるのはダメなんだよね」
そこまで言われた二人は一度だけ互いの顔を見合わせ、それから視線を落とすと大人しく椅子に腰を下ろした。恐らく、「こいつのよりは」とでも思ったのだろう。
「よし、じゃあ納得してもらったところで三城君メインでやっていこうか。もちろん、絵里香ちゃんたちにも後で出番用意するからそちらでも頑張ってもらおうか」
そう言われて三城はもとより、残った二人も表情が明るくなる。
「今後の流れとして、大雑把に言うとだな。ここの呪いの主が現れ、絵里香ちゃんたちを襲う。三城君はそいつから逃げて、屋上の祠まで行き、霊を慰める…って感じだ」
「むぅ…」
「えぇ…」
「い、良いじゃないですか二人とも。僕は危ないかもしれないところを行くんですからそれに比べれば…」
三城の台詞も後押しとなって、今度こそ二人も納得したようだった。
そこからは全員で打ち合わせを行い、細かい流れを詰めていく。
まずは全員揃って外に出ようとするが、鍵が掛かっていることに気づく。併せて霊に襲撃され、再び分断。
一階から二階に上がったところでまずは剣持が幽霊に襲われる。
同じように襲われるのでは面白くないという主張から、絵里香はトイレに隠れて怯えるという流れに。
そして最後に、途中で合流する三城の屋上までの逃走を追走しながら撮影する――という形で決まった。
「よし、時間がもったいない。きびきび動くぞ!」
田崎の号令一下、撮影は再開された。
「ルート取りは決めてあるの?」
解散直後、桂木は先に上に行こうとする三城を呼び止め尋ねた。
先に絵里香たちを撮影するが、合流する際の手間を考えると先に予定を聞いておきたかったからだ。
「ああ、すみません、それはこれから。正直、僕が選ばれる自信が無かったんで」
三城いわく、これから大島と相談しながら見栄えするような流れを模索するのだという。
「そっか、そうだよな、急だったし。ともかくおめでとう。いいもんになるようにしような」
「ええ。あ、それじゃ僕、大島さんに呼ばれてるんで」
「ああ。じゃあ、また後で」
三城と別れた桂木は絵里香との待ち合わせ場所に向かう。
「お待たせ」
「よろしくお願いします~」
「ああ。どこをどう撮りたいとか、希望はある?」
そう尋ねると、絵里香は頤《おとがい》に指を当てて考え込む。
「ねえ、私たちが提出した動画、ちゃんと使ってくれるんですよね?」
「…全部とは限らないけどね」
それでも絵里香と剣持のはさすがに大きくカット編集が入るだろう…とはさすがに桂木もいえなかった。
「だったらもっと膨らましたいかなーって」
「膨らます?」
「うーん…オバケを出してもっと恐怖感を演出したりとか?」
少し考え、桂木は答える。
「そう、だなぁ。そういうのも悪くないかも」
他の出演者との兼ね合いも考えれば、ここで誰にも相談なく勝手にシナリオを作成するのは好ましくない。が、桂木からすればそこまで他の出演者や田崎の顔を立てなければいけない筋合いも無い。
田崎がはっきり指示しないのが悪いのだし、仮に文句が出たなら絵里香が主導ではじめたことだと責任転嫁してしまえばいい。
どちらに転んでも桂木には問題がないので、後は面白そうになる方を選ぶだけだ。
「じゃあ、絵里香ちゃんの考える形で撮影していこうか」
「さっすがー、桂木さん! 話がわっかるー!」
「はいはい。で、またレストランから?」
「んー…」
少し考え、絵里香はキャッシュコーナー跡地を指差す。
「いや、今度はあちらで撮ろうと思います」
「ATM?」
「はい。そこで出待ちされた、という感じで」
幽霊が出待ちするATM…どういうシチュエーションなのか謎だが、絵里香にとっては必然性があるのだろう。桂木はそう考えることにした。
「ああっ、あそこに人影が! もしかして、あれがここに巣食っている幽霊でしょうか…!」
ノリノリで柱の影に隠れながら、スパイ映画さながらに顔を出したりして向こう側を伺う絵里香の様子は、どちらかと言うとFPSやってるゲームプレイヤーに見えなくも無い。
そんな茶番に付き合っていると。
「…な、…だお…は…」
かすかな声が風に乗って聞こえてきた。
「ん? 今なんか言いました?」
「いや、俺じゃない。剣持さんの声だったような…」
お互い顔を見合わせると、どちらからともなく上を見上げる。
と、間をおかずして悲鳴が廃ビルに轟いた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ツギハ26ニチ19ジ
田崎の言葉に、
「い、いや、あんなんじゃ怖くも何とも無いじゃないか!」
「そ、そうよ、まだ私たちの方がこれからどうなるかって期待持てるでしょ?!」
残された挑戦者たちは腰を浮かし食い下がる…が、田崎ははっきり首を横に振った。
「いやぁ、はっきり言うが二人のは作為が強すぎる。はっきりいって、視聴者にとっては本当に怖いかどうかは大事じゃないんだわ」
「こ、怖がるところが観たいって言ったのは田崎さんじゃないですか!」
「そりゃあ、こういう番組だから怖がるところを判断基準にはするよ。けど、それだけじゃだめだ。視聴者にとって重要なのは、安全なところにいる自分が『怯えてうろたえている他人を観る』ことに尽きる」
「そんなもん観て面白いわけあるか!」
食い下がられるも、田崎は頑として譲らない。
「いーや、あるんだよこれが。センセも、素人の投稿動画でもバカにせず観てみりゃ良かったんだ。ホラーゲームの実況とか観てみれば分かるけど、ゲームが上手い人や語りが上手い人よりも、悲鳴が上手い人の方が人気があったりするもんだよ」
さすがに番組を長年作ってきただけあって、着眼点が鋭い。桂木もたまにそういう系統の動画を観たことはあるが、言われてみれば人気が有る作品は恐怖におののく反応やタイミングが秀逸なことが多いのを思い出していた。
「確かに二人の動画も、力が入っているのは認める。が、入れすぎたな。分かりやすく言うならそうだな…相手の動画と、三城のとを比べてどちらが面白かったか。そういえば納得できるだろ? 『お前ら怖がらせてやる』って考えが透けて見えるのはダメなんだよね」
そこまで言われた二人は一度だけ互いの顔を見合わせ、それから視線を落とすと大人しく椅子に腰を下ろした。恐らく、「こいつのよりは」とでも思ったのだろう。
「よし、じゃあ納得してもらったところで三城君メインでやっていこうか。もちろん、絵里香ちゃんたちにも後で出番用意するからそちらでも頑張ってもらおうか」
そう言われて三城はもとより、残った二人も表情が明るくなる。
「今後の流れとして、大雑把に言うとだな。ここの呪いの主が現れ、絵里香ちゃんたちを襲う。三城君はそいつから逃げて、屋上の祠まで行き、霊を慰める…って感じだ」
「むぅ…」
「えぇ…」
「い、良いじゃないですか二人とも。僕は危ないかもしれないところを行くんですからそれに比べれば…」
三城の台詞も後押しとなって、今度こそ二人も納得したようだった。
そこからは全員で打ち合わせを行い、細かい流れを詰めていく。
まずは全員揃って外に出ようとするが、鍵が掛かっていることに気づく。併せて霊に襲撃され、再び分断。
一階から二階に上がったところでまずは剣持が幽霊に襲われる。
同じように襲われるのでは面白くないという主張から、絵里香はトイレに隠れて怯えるという流れに。
そして最後に、途中で合流する三城の屋上までの逃走を追走しながら撮影する――という形で決まった。
「よし、時間がもったいない。きびきび動くぞ!」
田崎の号令一下、撮影は再開された。
「ルート取りは決めてあるの?」
解散直後、桂木は先に上に行こうとする三城を呼び止め尋ねた。
先に絵里香たちを撮影するが、合流する際の手間を考えると先に予定を聞いておきたかったからだ。
「ああ、すみません、それはこれから。正直、僕が選ばれる自信が無かったんで」
三城いわく、これから大島と相談しながら見栄えするような流れを模索するのだという。
「そっか、そうだよな、急だったし。ともかくおめでとう。いいもんになるようにしような」
「ええ。あ、それじゃ僕、大島さんに呼ばれてるんで」
「ああ。じゃあ、また後で」
三城と別れた桂木は絵里香との待ち合わせ場所に向かう。
「お待たせ」
「よろしくお願いします~」
「ああ。どこをどう撮りたいとか、希望はある?」
そう尋ねると、絵里香は頤《おとがい》に指を当てて考え込む。
「ねえ、私たちが提出した動画、ちゃんと使ってくれるんですよね?」
「…全部とは限らないけどね」
それでも絵里香と剣持のはさすがに大きくカット編集が入るだろう…とはさすがに桂木もいえなかった。
「だったらもっと膨らましたいかなーって」
「膨らます?」
「うーん…オバケを出してもっと恐怖感を演出したりとか?」
少し考え、桂木は答える。
「そう、だなぁ。そういうのも悪くないかも」
他の出演者との兼ね合いも考えれば、ここで誰にも相談なく勝手にシナリオを作成するのは好ましくない。が、桂木からすればそこまで他の出演者や田崎の顔を立てなければいけない筋合いも無い。
田崎がはっきり指示しないのが悪いのだし、仮に文句が出たなら絵里香が主導ではじめたことだと責任転嫁してしまえばいい。
どちらに転んでも桂木には問題がないので、後は面白そうになる方を選ぶだけだ。
「じゃあ、絵里香ちゃんの考える形で撮影していこうか」
「さっすがー、桂木さん! 話がわっかるー!」
「はいはい。で、またレストランから?」
「んー…」
少し考え、絵里香はキャッシュコーナー跡地を指差す。
「いや、今度はあちらで撮ろうと思います」
「ATM?」
「はい。そこで出待ちされた、という感じで」
幽霊が出待ちするATM…どういうシチュエーションなのか謎だが、絵里香にとっては必然性があるのだろう。桂木はそう考えることにした。
「ああっ、あそこに人影が! もしかして、あれがここに巣食っている幽霊でしょうか…!」
ノリノリで柱の影に隠れながら、スパイ映画さながらに顔を出したりして向こう側を伺う絵里香の様子は、どちらかと言うとFPSやってるゲームプレイヤーに見えなくも無い。
そんな茶番に付き合っていると。
「…な、…だお…は…」
かすかな声が風に乗って聞こえてきた。
「ん? 今なんか言いました?」
「いや、俺じゃない。剣持さんの声だったような…」
お互い顔を見合わせると、どちらからともなく上を見上げる。
と、間をおかずして悲鳴が廃ビルに轟いた。
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