愛を抱えて溺れ死にたい。

日向明

文字の大きさ
10 / 29
αとα

10※

しおりを挟む
 アンバーが「そういえばそうだった」と思い出した頃には、ダリウスは既に上衣を脱ぎ終え、ばさりと褥の横に放っていた。
 見事に腹筋の割れた上半身が、一つだけ灯された火によって僅かに照らされている。
 ダリウスはゆっくりとアンバーに覆いかぶさると、まずは触れるだけの接吻をした。右腕で体重を支え、左手は最初にアンバーの髪に触れた。金色の絹の様な髪を優しく撫でると、そこから頬に触れ、首筋までそっと指を這わせる。
 アンバーはくすぐったそうに身じろぎしながら、敷布団のシーツをそっと掴む。その掌はすでにじっとりと汗をかき始めていた。
 そのままダリウスの手は脇腹を通って腰回りを触り、また戻ってくると今度は服の上から胸の辺りをすりすりと擦り始める。
 最初の数回はやはりただくすぐったいだけだった。何回目だろうか、いきなり胸の先から脳を直接痺れさせる様な刺激が走る。
「っ!?」
 アンバーは突然の感覚に声が漏れそうになるのをなんとか堪えた。
 (い、今のは……!?)
 考える暇を与えず、今度は口内にダリウスの舌が侵入する。
 舌先をちゅっと吸われ、ねっとりと舌を絡ませ、つうっと上顎を撫でられてはもう駄目だった。
「んぅっ……、ふぅっ……♡」
 口の端から声が漏れ出る。
 (接吻とはこんなにも気持ち……不思議な感覚だったか?特に舌先が、上顎に当たるのが……)
 初めて受け身側で感じる接吻。アンバーはいつの間にかその快楽を貪る様に舌を絡めていた。
「んっ……」
 ずるりと舌が抜き取られ、アンバーは一瞬物足りなそうな顔をした。すぐさま我に返ると、今度は忌々しそうにダリウスを見上げる。
「……」
 そんな様子を他所に、ダリウスは棚から小瓶を取り出す。
「何をしていらっしゃるんです?早く服を脱いで下さい」
「なっ、はぁ!?」
「恥ずかしいなら下だけで構いません。上衣の裾が長いですから、隠れるでしょう?」
 そう言ってダリウスはアンバーのズボンの紐を解き、下着ごと引きずり下ろした。
 想定通り上衣の裾で隠れ脚だけが露になるが、それも暗がりではよく見えなかった。
 ダリウスは、それでも羞恥にかられ頑に脚を閉じるアンバーの膝に手を当てる。
「脚を開いてください」
 アンバーは反抗的な目で睨みつけるが、ダリウスはそんなの意に介さないかの様にそっと太ももにを撫でる。
 脚の付け根の方まで行っては、また膝に戻ってくる。ダリウスの手の熱を感じたアンバーの脚は少しずつ開かされていった。
 アンバーは頭を枕に預け、両手で完全に顔を覆いながら身悶えする。
「こんな屈辱は生まれて初めてだっ……!」
 もごもごとそう言うアンバーに、そうですかと適当に返事をしながら、ダリウスは小瓶の中の潤滑油をだらりと右手の掌に取り出す。
 指先まで纏わせつつ温めると、そっと上衣の裾の下に手を入れ、アンバーのそこに触れた。
「何をしている!?そんなところ汚なっ……!」
「夜伽の為に準備してましたよね」
「それはそうだが、そういう問題では……大体!何故私が下をやる前提なのだ!」
「第二の性含め同性間の場合、私も時代錯誤だとは思いますが嫁いできた側が受け身をするのが一般的でしょう?」
「だが……」
「それにこちらに来てからの数ヶ月、ずっと慣らしてきたのでしょう?もう腹括ってください」
 そう言うとダリウスは指先に力を入れ、ずぷっ……と、まずは第一関節までを出し入れし、徐々に深くまで差し込んでいった。
「うっ……」
 未だに慣れぬ異物感に、アンバーは呻く。
「痛くありませんか?」
「……痛くは、ない」
 アンバーが短く返事をすると、ダリウスは探る様にその指を動かし始める。優しく、ゆっくり、決して強く押したりすることはせず、時折場所を変えながら中を刺激する。
「……指二本ほどなら余裕だ。とっとと進めろ」
「貴方に怪我をさせるのは本望ではありません。まずは一本からです」
「融通の効かない奴め。貴様童貞だろっ……、!?ゆび、とめ……んお゛っ!?♡」
 悪態をついていたアンバーが、突然情けない嬌声をあげる。
「痛かったですか?」
「ち、ちが……、なんだかジンジンして……、わからなっ……」
 ダリウスは何かを察したように、同じ場所を攻め始めた。
「貴様っ!なにを……、ひとのはなしをきいて……ん゛ぅっ♡」
 声を漏らさないよう喋ることを諦めたアンバーは、必死に自身の指を噛み、その初めての感覚に身を震わせた。
 ダリウスは指の本数を増やしながらアンバーの上衣のボタンを一つ、また一つと外し、露になった胸の先に唇を当て、舌先で刺激し始める。
「!?んっ……♡んっ♡んっ♡」
 アンバーは腰をくねらせて、また増えた快楽をなんとか逃しながら呼吸する。
 ダリウスは指を小刻みに揺らしたり、出し入れしたりと手法を変えながら手淫を続けていると、ふいに上体を上げアンバーの手を口元から離した。
「手を噛んではいけません」
 そして、手の代わりに自分の唇を押し当てる。
「ん゛……♡お゛ぉ♡らぇっ……♡」
 口を閉じて我慢することができず、喘ぎ声が開いた隙間から溢れ続ける。
 とんとんとんとん。一定のリズムで善がってしまうところをいじめられ続け、アンバーの目にはうっすらと涙が滲んでいた。

 どれぐらいの時間が経っただろうか。三十分か一時間か……。とにかくアンバーにはとても長い時間に感じられた。
 尻に入れられた指はいつの間にか三本に増え、そのゴツゴツとした全てを優に咥え込んでいた。
 (お、おかしくなるっ……)
 押し寄せ続ける初めての快楽に翻弄され、しかし達することは許されず、アンバーは気が狂いそうになっていた。
「ん゛はぁ♡」
 ようやく舌と指が引き抜かれる。
 全身を少し痙攣させながら、アンバーは少し上体を起こす。
「次は貴様の番だな。……お前、私で勃つのか?」
 そんなアンバーの考えは杞憂に終わった。
 アンバーがダリウスの下半身に目をやる頃には、その男はズボンを下ろしその聳り立つ、大概大きいアンバーのものよりもさらに大きいそれに避妊具をつけていた。
「問題ありません。悔しいですが、貴方の身体は魅力的ですから」
「!?」
 アンバーはどう考えてもこの男は頭がおかしいと思った。自分の見た目を褒めた者など今までいなかったからだ。
「ひ、避妊具をつけるのは関心だ。私も他の者を抱く時はいつも……」
「マナーのなっていない方ですね。もう黙ってください、入れますよ?」
 そう言ってダリウスはアンバーの両脚を抱える。
「ちょ、待て……、ぅあ゛っ……♡」
 ゆっくり、少しづつダリウスの男根がアンバーの中へと入っていく。散々慣らされたおかげで痛くはないが、ずるずると侵入される感覚に慣れず、アンバーはぎゅぅっとシーツを掴む。
「……は、はいったか?」
 はぁはぁと息をしながらアンバーが尋ねる。
「全部ではありませんが……。大体入りましたよ」
 アンバーは信じられなかった。
 (大体!?こんなにも圧迫感があるのにか!?)
 しばらくして中が馴染むと、ダリウスはゆっくりと腰を動かし始めた。
 中で大きなものが動く違和感と強い圧迫感。そして時折擦れる善いところ。
 無意識に前を触りながらアンバーは短く呼吸を繰り返す。
 声を我慢する為、再び指を噛みながらダリウスを見上げると、相手の男は目をつむり、額から汗を流し頬を染めながら荒い息遣いをしていた。
 (今、この男は誰のことを考えているのだろう)
 ふと過ぎったそんな考え事は、ぱちゅぱちゅと響く水音にかき消された。
 ぞわぞわとした感覚がアンバーを襲い始め、前を触る手が速まる。
「だりうすっ……♡」
「は、あっ……、すみません、私ももう……」
 ほぼ同時に、二人は白濁液を吐いた。
 (どくどくしている……)
 ずるんっと中のものを引き抜かれ、アンバーは脱力する。
「また手を噛んだんですね?血が滲んでいる」
 そう言ってダリウスはアンバーの手を撫でた。
「薬をとってきます。いや、湯浴みが先か。私は後で構いません」
 そう言ってダリウスはアンバーに風呂を勧めた。

 一人湯に浸かりながら、アンバーは胸がいっぱいになるのを感じていた。
 自分を抱いてくれたこと、身体を魅力的だと言ってくれたこと。肯定された感覚も悪くはなかったが、一番の理由は別にあった。
「手、初めて心配された」
 上部だけとはいえ、褒められたことはいくらでもある。だが、心配されたのは彼にとって初めてのことだった。
 眠りにつく布団が温かく感じたのはきっと、二人の体温だけのせいではなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜

せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。 しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……? 「お前が産んだ、俺の子供だ」 いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!? クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに? 一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士 ※一応オメガバース設定をお借りしています

愛憎の檻・義父の受難

でみず
BL
深夜1時過ぎ、静寂を破るように玄関の扉が開き、濡れそぼった姿の少年・瀬那が帰宅する。彼は義父である理仁に冷たく敵意を向け、反発を露わにする。新たな家族に馴染めない孤独や母の再婚への複雑な思いをぶつける瀬那に、理仁は静かに接しながらも強い意志で彼を抱きしめ、冷え切った心と体を温めようとする。

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

処理中です...