【本編完結】転生令嬢、目指すはスローライフ〜イベント企画担当者ではないのよ!

ブラウン

文字の大きさ
116 / 141
本編

第109話 宿泊野外活動5

しおりを挟む
 1班が合流した。1班に概要を説明し、2班が練習したことを披露した。みんな唖然としていた。

「2班はすごいことを考えだしたのだな。すごいな。でも、すごい楽しい。剣舞、かっこいいな」
 1班班長のアンディくんも気に入ってくれたようだ。

 ルーが興奮して近寄ってきた。
「アイちゃん、アイちゃん、これ刀剣〇〇風だよね。よく考え出したね。かっこいいよ」

「ルー、剣舞はかっこいいのよ。見て衣装を描いてみたの。漢服古風にしてみたの。どうよ」

「きゃー、かっこいい、まじかっこいい。これに眼帯誰かにさせちゃえば」

「ルー、それ、いいアイデアね。似合う人は、アンディさんかな」

「また2人とも、おかしな言葉を発しているわよ。でもよかったわ、アイリと一緒にできるなんて嬉しい。女性の衣装も考えたの?」
 女子トーク炸裂していた。男性陣は剣舞をいかにかっこよく見せられるかを検討していた。真面目だ。

「アイリさん、すまない。男性が踊る剣舞のことで聞きたい。いいかな」
 それから男性陣の1班と2班に別れてどのように舞うか。

 私はお疲れ様会で催すものだから、そんなには完璧にできなくてもいいと思う。まずは見栄えが大事。旗や剣、衣装で目を引き、形になっていればいいと思うのだけど、みんなのやる気と熱気が高いなぁ。あれ?

 緩やかに流れるような踊りと殺陣の緊迫した雰囲気の融合。女性の華やかな踊り。

 貴族の男性たちは、幼少の頃から剣を習うので、すんなりと殺陣が身につく。形になっている。早いな。これまだ一日目よね。何気に優秀なAクラス。

「先生、このクラスはとても真面目なクラスですね。お疲れ様会の催しで、これだけ真面目にできるなんて。文化祭の催しのような熱気ですよね」

「アイリさん、なんだ、その年寄りじみた言い方は。まぁ、このクラスは真面目だな。みんな真剣に取り組んでいる、いいクラスだな。そうだ、簡易シャワーなど少し多めに貸してくれないか」

「夜とかは、魔法封印を解いてくれるのですか?魔石に魔力を補填しないといけないので」

「あの簡易シャワーはクズ魔石でもいいのだろう。そういうのは研究室の副産物でたくさんあるから、補填しなくても大丈夫だろう。あとは夕食だが、毎年悲惨な状況なんだよ」
 何を私に求めているのか、この先生。

「悪いが、1班の方を見て回ってくれないか?」

「うちのクラスだけでいいですか?」

「いいんじゃないか、他のクラスは担任が面倒見るのだから」

「先生?私に丸投げしてますよね。担任が面倒を見るのですよね?」

「俺も壊滅的にダメだから、自分の野外活動の時食べられたものではなかったよ。周りのみんなも出来なくて、干し肉の方がうまかったよ。眠いのに、早く朝食が食べたいと思って寝ていたのか起きていたのかという状態だった。腹が空きすぎて、寝不足だったよ。あははは。毎年恒例だ。下位貴族や平民の方が作るのがうまいよ。俺たちの時は誰もできない奴らだった。今年のAクラス、1班はどうかな。1日目の様子を見てダメだったら頼む」
 だから、その縋るような目はやめてくれ。

「1日目は自分たちでやってもらうのですね。わかりました。先生も様子を私たちに教えてください」

「悪いな」
 私は生徒なんだけど、引率の先生か?

 着々と準備と練習が進み、宿泊野外活動日当日。 
 お兄さまたち3年生は山と湖方面、2年生は難易度が高い森、私たちは1年は初級の森と決められている。

 いやー、キャンプ用品が売れた。そしてレンタル用品も盛況だった。

 お兄さまの商会もホクホクだろう。

 クラス全体が仲良くなった。セドリック様など上位貴族もバイロンくんたち平民と仲良く喋っている。バイロンくん、チョコのお裾分けもしちゃっているよ。そのチョコの卸元がお兄さまの商会、ル・ソレイユ商会だから、イライザ様などが詰め寄ってきた。

「いつ、販売になりますの?いつですの?並びますので販売日だけ教えて」

「アイリさんのお兄さまの商会は、いつも新しいものを売り出しますね。私はテオドール叔父上に教わることにします。叔父上の方が口が軽そうだから、そちらから情報を入手します」
 セドリック様はテッシーこと叔父のテオドール様と最近和解したからそちらから聞くのだろう。
 その前に、バイロンくん、君は何喋っているのかな。契約魔法は製造方法や入手先のことを口外禁止だが、製造先や販売先を言わないでよ。もう、バイロンくん。商会を手広く広げると忙しくなるのでこれ以上広げたくないのだが、カフェもしくはデザート販売店も考えないといけなくなってきた。問い合わせが殺到しているらしい。お兄さまの卒業予定の信頼できるご学友いないかしら。それとも1年生の時から育てようかしら。

 ジェイシス様にも相談にのってもらおう。あちらにもチョコを卸しているので、お店を出そうとしていることを相談してみよう。そこで弊害などがあれば考えてくれると思う。ジェイシス様は先々を見越して決断しているので頼りになり、ついつい甘えてしまう。人材育成や、人材確保の件も相談し将来に向けて、基盤を作っていかないといけない。

 チョコを作っていることがクラスメイトに知られてしまったから、野外活動の心配ではなくチョコの心配をしてしまった。

 さあ、気を取り直して野外活動よ。みんなで協力してスコアを出したり、お泊まりもできるなんて嬉しい。これを通してクラスみんなが仲良くなればいいな。領地にみんな呼ぼうかな。それじゃあ、お兄さまみたいだね。お兄さまも結局クラスメイトと仲が良いからそうなるのかな。お兄さまの気持ちも分かってきたかな。クラスメイトと仲良くなれればいいな。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?

水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」 「はぁ?」 静かな食堂の間。 主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。 同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。 いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。 「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」 「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」 父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。 「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」 アリスは家から一度出る決心をする。 それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。 アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。 彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。 「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」 アリスはため息をつく。 「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」 後悔したところでもう遅い。

処理中です...