旦那様、離縁の申し出承りますわ

ブラウン

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第10話 ルーデンス視点

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 侯爵領地(執事ルーデンス視点)

 旦那様は領地の収支決算処理をしているが、今は侯爵夫人の仕事までしているためだいぶ手こずっていた。

 対して、クララ様は貴族としての所作を習っているがこちらも進んでいない。そして、とんでもないことに、クララ様の家族と親戚がこの領地に移り住み、侯爵夫人の家族だからと傲慢な態度で過ごしている。時折陳情や請求書が来るようになった。

 周辺の領地にお二人で出向き、これから二人で侯爵家を盛り立てて行くと挨拶に行ったが、どの家も二人の結婚を祝う言葉などなかったようだ。そして融資先は悉く断られてしまった。クララ様がこちらに来る前にお世話になっていた商会に足を運んだようだが、ケイトリン様の実家で営むコリンズ商会を敵に回したくない、献身的なケイトリン様を蔑ろにした旦那様とその愛人が自分の商会の従業員だったことを知った商会長は激怒し追い出したとのことだった。大商会とは言え平民の商会に融資を申し出るなんて、侯爵家を乗っ取られたらと思わなかったのだろうか?それを許す旦那様には失望だ。

 そして、追い打ちをかけるように災害が起こってしまった。しかし、クララ様は侯爵夫人としての災害対策を怠った。炊き出しなどもしなかった。なぜなら備蓄品と避難所をクララ様の家族に当ててしまったからだ。あまりにも領地での暴飲暴食により、領民からの苦情や請求者が多いため、備蓄品に手を出してしまったようだ。初動対応や復旧活動を怠ったのだ。

「旦那様、復旧対策やこのクララ様のご家族の請求書や領民の陳情書、いかがいたしますか?クララ様にご家族を元住んでいた場所へお帰りいただけるよう伝えていただけないでしょうか?これでは領民の不満が爆発してしまいます。先の自然災害のことも領民は不満に思っております。そして収支報告の期日も近いですが、侯爵夫人の仕事の中に報告期日のものがあります。そちらも旦那様にお持ちしてよろしいでしょうか?」

「クララはどうしている?侯爵夫人としての責務を全うするために頑張ると言っていたではないか?進んでいないのか?」

「はい、貴族の所作や嗜みの教育も滞っており、尚且つ侯爵夫人の仕事も進んでおりません。復旧の炊き出しの手配もしておりません。これでは領民の不満がより一層多く寄せられます」

「復旧の炊き出しなどしていないのか?侯爵夫人としての仕事だっただろう!このところ忙しくクララに会っていない。様子を見にいった方がいいな」

「そうでございますか、では邪魔にならないところで様子を見てください。ですが災害復旧のメドも立っておりませんので、早めに旦那様とクララ様は行動を起こした方がいいと思われます。今は領民の代表が対策を担ってくれています。このままではいけないと思われます」

 旦那様を連れて様子を見にいったが、クララ様は伯爵夫人に文句を言っているところに遭遇した。

 どうしてこんなに厳しくするの?

 私が平民だから馬鹿にしているでしょ!

 もうこんなのやりたくない!

 など、ひどい有様だった。

「クララ・・・」

グランドール伯爵夫人がクララ様を説き伏せていた。

「クララ様、あなたははじめ私に言いましたよね。私は侯爵夫人になるのよ!侯爵夫人になったら、美しく着飾って、みんなに自慢したいと言ってましたよね。美しくなられるためにはまず所作が美しくなければ、いくら着飾っても、貴族としての心構えを身に付けなければ、笑われます。クララ様は侯爵夫人になられるのですよね?そして、笑われるのは侯爵様もですよ。ケイトリン様と離縁して貴女と再婚すること自体マイナスからのスタートですよ。あなた方は愛し合ってここにいらっしゃるのですよね。お二人は結婚したいためにケイトリン様を追い出したのですよね?それでしたら愛する侯爵様のために、早く習得した方がよろしいかと思いますわ。それにいつも言っていましたが侯爵夫人の責務である災害復旧を早く行うことをお勧めします。領民の信頼が余計なくなりますわよ」

「私はケイトリン様を追い出したりはしていません。私は純粋にロイド様と居たかっただけです。こんな侯爵夫人の仕事なんてできません。無理です、私には無理です」

「あなた、ルメニエール教を信仰していないのですか?未婚女性が純潔を失う行為、または既婚者が別の女性と行為をすることは許されないことですよ。あなたは侯爵様とすでに行為があるということですか?」

「ち、違います。そんなことはしておりません」

「まぁ、教会が離縁承諾でそれらを調べて明らかになるでしょうから、あなたの口から聞いても真実はわかりませんからね」

「クララ」

「ロ、ロイド様」

「庭に散歩でも行こう。気分転換をしよう」

「は、はい」

「侯爵様、早めに災害対策とクララ様の教育をしないと間に合いません。恥をかくのはあなた様ですから。それでは私はこれで終わりにしますわね。ごきげんよう」

 そう言って、伯爵夫人は帰ってしまった。

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