脛かじり生活(願望)を堪能人生録~ゆるく楽しく生活していけるはずだよね?

ブラウン

文字の大きさ
82 / 294

82 面談1

しおりを挟む
 工房は面接会場になっていた。単身の人、家族を伴って来ている人もいる。

 子供達は飽きてしまうので、子供がいる人を先に面談してしまおう。

「今から面談を行います。昨日お渡しした履歴書を出してください。それに伴い面談をしていきます。それではこちらの方からお願いします」

 緊張しまくりの家族が来た。

「こちらに単身で出稼ぎに来ていましたが、家族を呼び寄せました。家族一緒に住めるということが嬉しいです」

 1組目にして、泣かれてしまった。イーサン兄様、なんとかして。

「レッド、泣くな。話が進まない。これから今後の雇用の話と家族で住む家の話をしなければいけない。泣き止んでくれ」

「も、申し訳ございません。このような機会を設けていただきありがとうございます。昨日と本日配られた雇用契約書に合意します」

 何にも説明してないのですが、合意でいいのか?一応説明をさせて。

 それから一戸建ての家族寮を説明した。街に行きたい時は貸し馬車。

「ここはなぜこんな高待遇なのですか?給料も他より高いです。お酒も飲めるなんて私はありがたいです」

「そのうち学校も考えているので子供の将来を一緒に支えていきましょう」

 みんなが一斉に俺を見る。何か変なこと言ったかな?

「ケビン、学校ってなんだ?聞いていないけど」

 あれ?そうだ、父様に後で相談すると言っていて、辺境にすぐ連れて行かれたんだった。

「だいぶ前に父様に相談しようとしていた案件なのですがあの時いろいろ大変なことがあって、相談忘れてました。学校をこの領地に作って、学力と技術の底上げを考えていたのです。専門学校みたいなものを作れば技術の継承になっていいかなと思っていたのです」

「ケビン、そういう大事なことは早く言ってくれ!教師の確保もしなければならないだろう」

「イーサン兄様忘れていてすみません」

 大事なことを忘れていた。学校だよ。イーサン兄様やロナウド兄様が頭を抱えてしまった。

「あ、あの、この子を学校に行かせていただけるのですか?私は恵まれており、読み書きや計算は以前の工房主に教わりました。ですが、読み書きができない職人が多いのが現状です。この子の将来に大事な読み書きを教えていただけるなんてありがたいです」

 感謝されまくって一組目の面談が終了した。その後も同じだった。

「ランドルフ、来たな」

「ああ、イーサン、なんだかみんな泣いていたぞ。その光景を見てみんなザワザワしていたよ。神だという家族もいたぞ」

「あははは、俺たちも1組目の家族との面談でケビンから初めて聞いたよ。こいつは本当に報連相がダメなんだ。やってから報告、作ってから報告、決まってから報告。そんな感じだ」

「楽しい弟だな。振り回されそうだけど」

「「「そのとおり!!!」」」

 ゼーファン義兄様まで言っているよ。

「ゼーファン義兄様を振り回した記憶はないのですが、はて?」

「辺境伯領内全域で振り回されているよ。今、父上が対応しているのではないか。私はクラウディアと離れたくなかったからこちらに来たのだ、あははは」

「ふふふふ、ブラッドを紹介したいよ」

「あぁ、あいつ今どうしているんだ?確か寄親の侯爵の事務官になったはずだが?」

「閉鎖的な職場だから辞めたと聞いた。今は伯爵領で父親と兄の手伝いをしていると言っていた。私がここに来る前に一緒に行かないか?と誘ったが、魔道具は製作できないから無理と言っていた。でもあいつここなら事務官できそうだよな」

「俺の方からも手紙を書いておくよ。うちの弟のお守りを頼むか。すぐ出すよ」

 そう言って魔鳥で手紙を出しに行った。魔鳥は本当に便利だな。その間にランドルフ様のお母様の話を聞いた。

 ランドルフ様のお母様は商家の娘だったが、ランドルフ様の父、伯爵様に見初められ第二夫人となる。ランドルフ様が生まれると第三夫人ができ、そちらに夢中になったということだ。ランドルフ様は第二子男子、嫡男のスペアとして扱われていたが第三夫人に男の子が生まれるとそちらがスペアになったということだった。だからいてもいなくてもいい存在だから、爵位全て捨ててきたということだ。

「ランドルフ様のお母様、ピアノと刺繍などが得意と伺い、また、今仕事をお探しと伺いました。こちらの刺繍や編み物に興味がありますか?あと、こちらの楽譜をお渡しします。弾けますか?」

 俺は徐に楽譜と刺繍や編み物をだした。

「これは知らない楽曲ですがどうされたのですか?」

「あー、それは置いておいて弾いてみたいですか?」

「それはぜひ弾いてみたいです。ずっと伯爵家では弾けずにいたのでいっぱい弾いてみたいです」

 俺はマジックバッグからピアノを取り出して、調律してランドルフ様のお母様に弾くよう促した。周りのみんなはかなりびっくりしていた。マジックバッグからピアノを出すなよと兄様達に怒られた。

「どうぞ、試しに弾いてください。できればこの曲を弾いてほしいですが、興味ある曲を弾いてください」

「では、この曲を弾いてみたいです。楽譜を見て、全ていい曲だと思ったのですが、この曲調が好きです」

 リストの愛の夢ですか、いいですよね。でも、一度楽譜を見ただけで弾けるなんて、音楽家のスキル持ちですか?

 次がリストのラ・カンパネラですか。すごいな完璧。

 この会場にいたみんなスタンディングオベーション。"ブラボー"だよ。

「素晴らしい演奏でした。一度見ただけでこれだけ素晴らしい演奏ができるなんて、すごいです。いい演奏をありがとうございます」

「とんでもございません。私はこんな素晴らしい楽曲聞いたことがないです。弾いていて気持ちが昂り余計気持ちが入ってしまいましたわ。こちらこそありがとうございます」

「母上、素晴らしい演奏でした。こんなに素晴らしい腕前を持っていたなんて、もっといろいろな曲が聴きたいです」

「では、ランドルフ様のお母様も採用でお願いします。あとお二方の家をこちらで選んでください」

「はい?選ぶとは?」

 模型を示して、どんな家が良いか確認した。

「このような家まで?高待遇すぎませんか?」

「いえ、気持ちよく働いてもらうための従業員特典ですので、大丈夫です。基本中の基本です」

 呆れているイーサン兄様、感心しているゼーファン義兄様、考え込んでいるロナウド兄様、ランドルフ親子は信じられないと不信がっていた。信じてちょうだい。
 
 家族がいる人の面談は終わった。今度は単身者の面談だ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

英雄の孫は今日も最強

まーびん
ファンタジー
前世では社会人だったが、死んで異世界に転生し、貧乏貴族ターセル男爵家の3男となった主人公ロイ。 前世のギスギスした家庭と違い、家族の皆から愛され、ロイはすくすくと3歳まで育った。 中でも、毎日一緒に遊んでくれるじいじは爺馬鹿全開で、ロイもそんなじいじが大好き。 元将軍で「英雄」と呼ばれる最強のじいじの血を引いたロイは、じいじ達に見守られながら、今日も楽しく最強な日々を過ごす。

足手まといだと言われて冒険者パーティから追放されたのに、なぜか元メンバーが追いかけてきました

ちくわ食べます
ファンタジー
「ユウト。正直にいうけど、最近のあなたは足手まといになっている。もう、ここらへんが限界だと思う」 優秀なアタッカー、メイジ、タンクの3人に囲まれていたヒーラーのユウトは、実力不足を理由に冒険者パーティを追放されてしまう。 ――僕には才能がなかった。 打ちひしがれ、故郷の実家へと帰省を決意したユウトを待ち受けていたのは、彼の知らない真実だった。

心配するな、俺の本命は別にいる——冷酷王太子と籠の花嫁

柴田はつみ
恋愛
王国の公爵令嬢セレーネは、家を守るために王太子レオニスとの政略結婚を命じられる。 婚約の儀の日、彼が告げた冷酷な一言——「心配するな。俺の好きな人は別にいる」。 その言葉はセレーネの心を深く傷つけ、王宮での新たな生活は噂と誤解に満ちていく。 好きな人が別にいるはずの彼が、なぜか自分にだけ独占欲を見せる。 嫉妬、疑念、陰謀が渦巻くなかで明らかになる「真実」。 契約から始まった婚約は、やがて運命を変える愛の物語へと変わっていく——。

ライバル悪役令嬢に転生したハズがどうしてこうなった!?

だましだまし
ファンタジー
長編サイズだけど文字数的には短編の範囲です。 七歳の誕生日、ロウソクをふうっと吹き消した瞬間私の中に走馬灯が流れた。 え?何これ?私?! どうやら私、ゲームの中に転生しちゃったっぽい!? しかも悪役令嬢として出て来た伯爵令嬢じゃないの? しかし流石伯爵家!使用人にかしずかれ美味しいご馳走に可愛いケーキ…ああ!最高! ヒロインが出てくるまでまだ時間もあるし令嬢生活を満喫しよう…って毎日過ごしてたら鏡に写るこの巨体はなに!? 悪役とはいえ美少女スチルどこ行った!?

えっ私人間だったんです?

ハートリオ
恋愛
生まれた時から王女アルデアの【魔力】として生き、16年。 魔力持ちとして帝国から呼ばれたアルデアと共に帝国を訪れ、気が進まないまま歓迎パーティーへ付いて行く【魔力】。 頭からスッポリと灰色ベールを被っている【魔力】は皇太子ファルコに疑惑の目を向けられて…

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

処理中です...