ノエル

ひなた

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シルヴェイン王国

41話 シルヴェインの森

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ルーナリア北部の丘陵地帯を抜けると、
空の青がいっそう深くなった。
遠くには森の帯が広がり、
その奥に霧のような光が揺らめいている。

「……あれが、シルヴェインの森か。」
ガルドが目を細めて言う。

「ええ。国境のすぐ向こうよ。」
アリアが頷いた。
「でも、私の村はもっと西の方よ。」

ノエルはその言葉を聞きながら、
森に流れる淡い緑の光を見つめていた。
「同じ国でも、風の村の時とは空気が違うな。」

「そうね。」アリアが柔らかく微笑む。
「このあたりはルーナリアの影響も受けてる。
 森よりも人の匂いが強いわ。」

ガルドが笑う。
「人の匂いってなんだよ。酒と汗か?」

「もう、あなたってほんと台無しね。」
アリアの声に、ノエルが吹き出した。


午後になると、白い塔が見えてきた。
塔の上では二つの旗がはためいている――
片方にはルーナリアの紋章、もう片方には風の紋。

「検問はないんだな。」
ガルドが言うと、アリアが頷いた。
「ええ。ルーナリアとシルヴェインは昔から友好国。
行き来も自由なの。」

ノエルは足を止め、塔の前に立つ。
風が頬を撫でた。
それは砂の国で感じた熱とはまったく違う、
柔らかくて、清らかな風。

ノエルの視線の先で、森が光っていた。
木々の間に淡い緑の霧が漂い、
その奥から、かすかな風の音が聞こえる。

「ここから先がシルヴェインの領土よ。」
アリアが言った。

「静かだな。」ガルドがつぶやく。
「鳥の声も、虫の音もほとんどねぇ。」

ノエルは一歩、森の中へ踏み出した。
空気は湿っていて、遠くから花の香りが漂ってくる。

「……眠ってるみたいだ。」ノエルが呟く。

「この森はね、生きてるの。」
アリアが穏やかに答えた。
「木々も風も、全部が繋がっているの。
だから、風が止まるということは――森そのものが眠っているってこと。」

アリアの瞳が揺れる。
「ええ。私がここに戻った理由も、それを確かめるためなの。」

ガルドが肩の荷を少し直し、
「よし、だったら俺たちも一緒に確かめに行くか。」
と笑った。

ノエルは頷く。
「行こう。森が眠っているなら――目を覚まさせればいい。」
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