CHANGE syndrome

ハイブリッジ万生

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誤報

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山村みすずはようやく落ち着きをとりもどした、山村ゆり子はわが子を抱きながら、このあとどうすべきかを現実的に考えていた。

「と...とりあえず.......学校に連絡しないと」

このまま入れ替わった状態では学校に行けるわけがない。

もしかすると時間が経てば元に戻るかもしれないし...。

そこまで考えて家の電話から学校にかけようとして、思いとどまった。

そうだ、今の私はみすずの声なのだ。

「みすず、あなた学校に電話できる?」

みすずはゆっくりと頷いた。

「もしもし」

「はい、こちら平和高校です」

よかった、保健室の優しい女の先生だ。

一番話しやすい先生が出た事にみすずは安堵した。

「あの...わたし山村みすず......の母ですけど...び...病気で休みです」

「はい?」

「あ、すみません、病気があるので休みたいです。」

「......はい、ちょっと担任の先生に変わりますね。」

不味い。

なにか、おかしかっただろうか?

少しだけ声が震えただけだとおもうが...。

「はい、かわりました、担任の郷村です。」

野太い声が聴こえる、苦手な担任の先生だ。

「あ、どうも、山村みすずの母です。」

今度は普通に言えた...はず。
語尾が多少上がった様な気もするが問題ない筈だ、なんと言っても母親の声なのだから。

「お母さん...ですよね?」

「はい?」

やばい、疑われて声が上ずってるのが自分でもわかる。

「母ですよ!母でなければなんですか!え?父ですか!え?!」

「いや、すみません、そう興奮なさらずに...。」

こちらの剣幕にいつも恐れてる担任の先生がたじろいだのを感じて、すこしみすずは嬉しくなった。

「まったく、だいたいいつも聞いてますよみすずから。相手の話を聞かずに頭ごなしに叱るのはどうかと思いますね!」

「は...はぁ、気をつけます。」

郷村先生が電話の向こうで小さくなってるのがわかる。

「気をつけますってアナタね...。」

そこまで言った時に隣で聞いていたゆり子が受話器を奪ったのでみすずはその後を続けられなかった。

「ごめんなさい!先生、ちょっと具合が悪いのでやすませてください!」

郷村は、いきなり、自分の生徒に元気よく休むと宣言されてしまった。

ふつうなら叱りつけるところだが、先程の母親の剣幕を考えると簡単に駄目ともいえなかった。

「そ...そうか...。大事にしろよ」

「は、はい!」

「あと、あの...なんだ、お母さんによろしくな…。」

「は...はい。」

それだけ言うと直ぐに電話は切られた。

山村ゆり子と山村みすずはしばらく顔を見合っていたが、どちらからともなく笑ってしまった。
「ふふ…ふふふふ。」

「ふは...ははははは。」

母娘《おやこ》は久しぶりに顔を見合わせて笑った 。






笑って落ち着きをとりもどしたせいか、ゆり子に名案らしきものが浮かんだ

「そういえば...もしかしてだけど」

「ん?」

「もしかしてなんだけど、さっきと同じことをすれば...戻るんじゃないかしら?」

みすずは暫らく考えていたが
「あ、あぁ!」

たしかに、入れ替わった時と同じ工程を繰り返すことでもとにもどるかもしれない

「ほんとだ!なんで思いつかなかったんだろ?」

たしかに、本来であれば頭の柔らかいみすずの方がまっさきに思いついても良い発想であるが...もしかすると、体が入れ替わることで、なにかが変わってるのかもしれない。

「名案!やってみよう!」
みすずは元気よく言った。

 さっそく試そうとした、時にけたたましく2人の携帯電話が鳴った。

『緊急速報緊急速報』
なんらかの災害の時にしか流れない音がふたりの携帯にながれた。

そして、ふたりはその内容に愕然とする

『緊急速報、ただ今、新種のウィルスによる感染症が全国的に広がっている模様、これらに感染すると精神的に非常に不安定になり一時的に他人になった錯覚に襲われる事があります、自覚症状がある方は取り急ぎ最寄りの国立病院へ向かってください、間違っても自分の判断で行動しないようにしてください。また、自覚症状がない方も、強い衝撃を生むような動作を避けてください、スポーツなども、同様に感染する可能性があります。今後指示があるまで強い衝撃の加わるスポーツは全て中止してください。くれぐれも自己判断をせず国立病院へ向かってください、保険証や受診料などは必要ありません、交通費はこちらで負担します。国家公安委員会より 』

え?

どういうこと?

これって今の状況に似てるけど、そういうことなの?

これは錯覚なの?

ふたりは混乱した

この文面をまるきり信用するとすると、

ふたりは新型のウィルスに感染して、自分を見失ってる

ということらしい...

そんな......ばかな...

ふたりはまたもや顔を見合わせたが

次の言葉が出てこなかった

自分が自分ではなく本当は...

考えると気分が悪くなった

みすずはぶるぶると小刻みに震え始めた

咄嗟にゆり子が、みすずの肩を掴んで言った。

「大丈夫、あなたはみすずよ」

みすずは震えながらも、何度も頷いた。










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