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人間万事塞翁が馬
しおりを挟む石川良二は顔をしかめて立っていた。
そして、特に目の前で拳銃を構えて立っているナイスバディの女に注意をむけながら、どうしてこうなったかを考えていた。
何がいけなかったのかを冷静に考えるくらいの頭はある、なにせ一年ほど前までは小さいながらも自分の会社を持っていたんだから...。
そうだ、苦境に陥った時こそ冷静になる必要がある、経営のいろはだ...慌てれば状況はどんどん悪くなるに違いない。
人間万事塞翁が馬
「にんげんばんじさいおうがうま」
「ん?なにか言ったか?」
しまった、口にでてしまった、父親から何度も聞かされたことわざ。
詳しい意味はよくわからないが、人生は何がキッカケで良くなるかわからないという事を親父は言っていた
そうだ...俺の人生もまさにそのとおりだ。
俺が会社の社長になったのはリストラされたからだ。
前の会社の社長は高卒のくせに大卒の俺のやり方にいちいちチャチャをいれてきやがったので、会社の中の大卒仲間と陰口を言いまくってたんだが...どこからかそれが漏れたらしく、そのとき陰口を叩いた人間が雁首を並べてリストラにあった。
表向きは経営不振に伴う整理ということらしいが、メンバーを聞くと完全にそうとしか思えない。
陰口を叩かれたくらいでリストラとは、ケツの穴の小さい男だ...そんな奴の下で働くのはこっちから願い下げだ!
とは言ったもののリストラ組は途方に暮れた。
俺は僅かな退職金をもとでに前からやっていた株に手を出したのだが...。
これが大当たり、見る間にひと財産こしらえた俺はそのとき知り合った自称イラストレーターの女が描いたキャラクター販売を冗談で始めたのだが...。
またもやこれが大ヒット!
人生の神様は俺にかなり贔屓するらしいと内心ほくそ笑んでいた。
そして高層マンションの最上階を買ったのだが...。
どうやらそれが不味かったらしい...。
高層マンションというのは強烈な耐震構造の為に地震などの災害にはかなり強いのだか、その耐震構造は揺れを吸収するタイプのために僅かな風が吹いただけでもかなり揺れるのだ。
そんな事はしらない俺はその自称イラストレーターの女と半同棲のような形でそこに住んでいたのだが、その揺れが原因で不眠症になった彼女はだんだんと外にであるかなくなり、調子を崩していった。
そしてそれに比例してか、新しいキャラクターもイマイチ売れなくなり、なんとなくその彼女とは別れる事になった。
それでも、新しいイラストレーターを金で雇っては新商品を作るのだが...
全然ヒットしない。
俺の見たところ彼女の作品とほぼ同じクオリティだと思うのだが...何かが足りないのだろう。
風の噂で体調を回復した彼女は他の会社に入ってまたキャラクターグッズ販売に乗り出したらしいが、爆発的に売れているとの事だった。
その、爆発的に売れているキャラクターグッズを見たが、やはり俺には自社の作品との違いが全くわからなかった。
しまった...彼女の体調が回復するまで待てば良かったと何度も後悔したが、覆水盆に返らずだ。
これも親父からの受け売りなので意味はよくわからないのだが...やった事はもとにもどせない、という意味らしい。
そんな訳で俺は結局、会社の負債額がマイナスになる前に会社を畳んでしまった、ろくなアイデアもださない役立たずの社員に高額の給料を支払い続ける意味がわからないからだ。
俺は慈善事業主じゃない...。
そんな俺のケツの穴の小ささを見透かしたように調子よく動いていた持株が急激に下がった。
その頃は俺自身も超高層マンションの影響なのか不眠症と出不精ですっかりヒキコモリになっていたので下がり続ける株の折れ線グラフを見ても、何をする気にもなれず、たしか...半笑いで画面を見ていたような気がする。
そして半年後、住む家がなくなった。
つまり強制的にヒキコモリ生活から脱出させられたのだ(笑)
そして晴れて(笑)ホームレスになってから、このルール無用のようなホームレス界にもそれなりのルールがあり、それなりの秩序があり、それなりの幸せがあることを学んだ。
はじめて生きている実感みたいなものが湧いてきた
大金のなかでヒキコモリをやっていた頃にはなぜかなかった生きているという実感が、何一つ手に入れてない地べたにあるとは...変な話だ。
そんな事を考えているとき、捨てられていた本を回収していると(なぜ回収しているかと言うと、古本屋に持っていって少しでも金にする為である)そのほんの中に高層マンションの弊害について書かれていた。
あぁそうか!
それが原因なのかと合点がいった...そうだ、全ての悪い原因はそこに違いない、そうでなければ説明がつかない俺の様な優秀な人間がこんな状況に追い込まれる理由が見当たらない。
しかし、人間万事塞翁が馬だ
まだなにかあるかもしれない
これまでだっていろんな不運が逆転してきたじゃないか。
そうだまだなにか...。
そんな気持ちになってた時、つい興奮して夜更かししてしまった、そう
そのお陰であの空を見たんだ紫の夜空を...。
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