CHANGE syndrome

ハイブリッジ万生

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かわってあげたい

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ま、、、不味い!


未有は体調の変化を感じた...これは...前兆!

未有「ううっ...!」

身体中に激痛が走る。

ぷるぷると身体が小刻みに震える。

未知子「未有!しっかり!あなた!先生を呼んで!」

順次「ああ!未有!待ってろ!すぐに呼んでくる!」

順次は部屋を飛び出した。

未知子は未有の手を取って励ましている。

「大丈夫よ!もうすぐ先生がくるから!」

この身体中に駆け巡る激痛は体調の変化を感じた後、どのくらいで来るのかわからない...強さも時間もまちまちで鎮痛剤もさほど効かない。

発症したら収まるのを待つ以外に方法はない。まったく原因不明の難病である。

その為、入院費等は最高レベルの治療を施してる割に安いのだが、病院側の研究材料になっているような気がしてならないと未知子は思っていた。

担当の長谷川医師はここの病院のトップらしいが、この子の難病に自分の名前をつけかねない男だ...しかし、他に頼れる所もなかった。

しばらくして順次と一緒に担当の長谷川が入ってきた。

長谷川「大丈夫かい?すぐ集中治療室に移動しましょう。」

未有「ううっ...」

順次「お願いします!少しでもなんとかしてください!」

長谷川「できるかぎりの事はやってみます」
(毎回同じ台詞...さすがに聞き飽きた)
未有「うう!ぅううっ!」

(代わってほしい...一瞬だけでも...誰かに痛みを!)

(代わってもらおか?)

どこからか変な関西弁が聞こえた気がした

(代わってもらえるで?かわってもらおか?)

(誰?...いや誰でもいい!)
「お願い!かわって!」
声に出てしまった。

(よっしゃ!まかせとき!とりあえずここにいる3人に分担してもらおか?)

(え?3人?)

順次「うお!うぉああ!」

未知子「あなた!どうしたの?あっ!!ああ!」

長谷川「ど、どうしました?うわ!うぉああ!ぎゃああ!」

その室内にいた三人の大人は揃って悶絶していた、かわりに未有は痛みが嘘のように消えていた。

特に長谷川の痛がり方が尋常ではなかった。

未有「お父さん!お母さん!」

順次「ううっ...ここ、これは?」

未知子「未有が言ってたやつなの?ううっ」

長谷川医師「うが、がががっ!」

未有「や、やめてあげて!」

未有は見えない誰かに懇願した。

順次「ううっくっ、大丈夫だ!こ...これくらい」

未知子「そ、そうよこれくらい...大丈夫」

2人は額に汗を滲ませながら笑顔を作ろうとしていた。













未有は必死に笑顔を作ろうとする両親を見て動揺した。

しかし涙は出てこなかった。

何故泣けないんだろう?

何年も前から泣いてないような気がする

どんなに悲しいドラマを観ても

どんなに感動的な映画を観ても

心を動かされる事はあっても泣くことはなかった。

心にブレーキがかかる。

しかし、目の前の両親の苦悶の表情を見てさえも泣けない自分に少し動揺していた...。

(私...こんなに冷たい人間だったの?)

いや、今はそんな事考えてる時ではない。

未有「ちょっと!聴いてるの?やめてって言ってるのよ!」

未有は諦めずに見えない何者かに向かって叫んだ

(やめろ言われてもな、そんなに都合よくやめられへんねん、ほら、車は急には止まれまへん!ってゆうやろ?)

変な関西弁が頭に響いてきた。

未有「じ、じゃあどうすればいいの?」

(どうするもこうするも...痛みが引くのを待つしかないんやない?そんなに長くないやろ)

未有「な、なんでわかるの?」

(せやな、こう見えてわし、高次元思念体やさかい、ある程度の事はわかるねん)

未有「こ、高次元思念体?」

未知子「ううっ...未有...さっきから誰と...あっ」

順次「お...おさまった?」

未有「2人とも大丈夫?」



順次「ああ大丈夫だそれより今のは?チェンジなんとかってやつなのか?」

未有「それは...わからない...でもごめんなさい、私のせいだ...。」

未知子「いいの、全然平気、未有の苦しむ顔を見るより何倍もまし」

そう言って未知子は微笑んだ。

順次「そうだ、もしまた痛みが来たらお父さんに移すといい、こう見えて痛みには強いんだぞ、父さん」

そう言って順次は胸をすこしはってみせた

未有「ありがとう...でも、強い様には見えなかったけど?」

順次「そ、そうか?」
順次は頭をポリポリとかいた。

未知子「...ふふ、ほんとね」

長谷川「笑い事じゃないですよ」

長谷川医師は3人を睨んでいた。

長谷川「さきほどの激痛はあんた方のせいですよね?どうやったかわからないが何故関係ない私を巻き込むんです?私に恨みでもあるんですか?」


しばらく変な沈黙が続いた後に未知子が口を開いた

未知子「すみません......でも先生はさっき、できる限りのことをすると、おっしゃったじゃないですか?」

長谷川医師は無言で3人を睨みつけると

黙って部屋を出ていった。









先生が出ていったあとにやれやれという感じで順次が言った

順次「未知子...大丈夫なのかあんな事言って?これからもお世話になるんだし...。」

未知子「いいのよあれくらい、お世話になるったって今まで散々検査やらなにやらしてきたけど結局原因を突き止められないんだから、実質世話になってないじゃない?」

順次「うむ、たしかに今まではそうだが、これから解明されるかもしれないし...。」

未知子「そんなことより、未有の言ってたチェンジシンドロームとかの方が現実的じゃない?実際に体験したんだし」

未有「それが...。」

未知子「どうしたの?」

未有「あれはたぶんチェンジシンドロームじゃないと思うの...入れ替わってたわけではないし...痛みだけ代わってもらえるなんて。」

順次「未有がやったことではないのかい?」

未有「うん、私じゃなくて高次元...思念体?」

未知子「こうじげん?しねんたい?」

順次「...なんだいそりゃ?」

未有「私にもさっぱりなんだけど...本人がそう言うから」

順次「本人?誰かいるのか?彼氏か?」

未有「彼氏なわけないじゃん!姿も見えないんだし...男性っぽいけど」

未知子「姿が?見えない?」

未有「そうなの、頭に直接声が聞こえてくるの...変な関西弁で」

親子はしばらく無言で見つめあった。

順次が口火を切った。

順次「見えないって事は...今もここにいたりするのか?」

未有「そ、それはわからない...けど、いる可能性は高いとおもう」

順次「おい!いるなら出てきてくれないか?話し合おうじゃないか?」

未知子「それじゃまるで立てこもり犯に言う台詞みたいじゃない?」

未有は本当にそうだと思って笑いそうになった

順次「ええ?じゃあなんて言えばいいんだよ?」

未知子「そんなのわからないけど...とりあえずチェンジシンドロームについて調べた方が良いんじゃない?絶対に関係あると思うし」

順次「ほう」

未知子「それにいざとなったとき未有と入れ替われるかもしれない」

順次「む、たしかにそうだな」

(それは、やめといたほうがええで)

未有「きた!声が聴こえた!」

順次「おお!俺にも聴こえた!」

未知子「ホントだわ変な関西弁!」









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