CHANGE syndrome

ハイブリッジ万生

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一年後

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ガランとした部屋に1人で座っている自分がいる...。

すると誰かひょっこりと入ってきた。



翼(しずく...大丈夫?)

雫(あ...お姉ちゃん...うん...まぁ)

翼(ふふ...あんまり大丈夫でもないみたいね...)

雫(...わたし...やっぱり...全然すごくなんかないよ...1人じゃなにも出来ないもん...翼お姉ちゃんみたいに遠くまで行ったりとかもできないし...)

翼(...そう?雫は大樹って見たことある?)

雫(...小さいのなら...)

翼(ふふ...小さい大樹ってなによ…)

雫(ご...ごめんなさい)

翼(ふふっ...雫らしいわね...でもその大樹を観た時すごいと思わなかった?)

雫(うん思った、枝が...わぁーて広がって...)

翼(でもね…それだけの枝が広がる為には地中に同じくらいの根が張ってないとダメなのよ...)

雫(そうなんだ...)

翼(人々は枝は褒めるけど根は褒めないよね...でも根の方がすごいと思わない?)

雫(...なんとなく...)

翼(私は枝で...雫は根なのよ…)

雫(...へ?)

翼(...だから自信をもちなさい...)

雫(...う...うん...)

翼(しずく...みんなが待ってるわ…)

雫(...本当?)

翼(本当よ...耳をすませて...)

「しずく!」

「ふぁ...」

「起きて雫...学校遅れるわよ?」

「あ...はぃ...」

なんだ...夢か...

でも...妙にリアルな夢だった。

「大丈夫?昨日また遅くまでテレパシーしてたんじゃないわよね?」

「い...いえ...」

「ほんとう?翼に聴くわよ?」

「ご...ごめんなさい!」

「ふふ、冗談よ...早く食べちゃいなさい」

キッチンからはトーストとバターの焼けるいい匂いがしてきた。

「ありがとうございます…観月さん。」








観月「ふふ...どういたしまして。でも、そろそろもっと砕けても良くない?...もうかれこれ...1年くらい経ってるんだし。」

あれから色々あって、雫は孤児院を出ることになった...たまたま一人暮らしをしていた観月の所に居候する形になってもう1年が経とうとしている。

チェンジシンドロームに関わった人々はいづれにしても国の管理下に置かれる事になってるので親権などの部分も超法規的措置ということでうやむやになっている。

雫「はぃ...頑張ります...」

観月「いや...頑張るもんでもないんだけどね…本当に面白い子よね...雫って翼の言ってた通りね…」

雫「翼お姉ちゃんが?」

観月「食いついた!そのくらいのテンションで接して欲しいけど...まぁ1年じゃ無理か…そぅ、たまに翼とはあなたの事話すわね」

雫「そ...そぅなんですか...」

観月「なによ?中身を知りたくないの?」

雫「え?...あ...はぃ...なんとなく...こわいので...」

観月「えぇ?...なんでこわいの?だいたい褒めてる事の方が多いけど...。」

雫「そ...そぅなんだ...」

雫はしきりに照れながらパンを齧っていた…観月のこだわりのバターがいい香りだ。

観月は絶対にマーガリンは使わない。

そして、水はぬるい水を飲む。

徹底した健康オタクぶりに雫は関心する。

ピンポーン

そこに玄関からチャイムの音が

観月「あれ?今日は少し早いわね…」

そういうといそいそと玄関に向かった。

観月「はーい、今準備させるからね...雫来たわよ」

雫「うん...」

観月「いつも迎えに来て貰って悪いわね…未有ちゃん」

未有「...いぇ...たまたま...通り道なので...」

観月は頭の中で未有の家と自分の家と学校を結んだ…どう考えてもL字になる。

雫「お...おはよう...」

未有「おぉ...おはよう」

観月「いってらっしゃい...気おつけてね」

観月は2人を送り出すといつも思う...全然違う様に見えて、どことなくこの2人は似てるな…と。







雫と未有が家を出ると物陰から男が話掛けてきた。

海野「おはようお二人さん」

雫「おはようございます海野さん」

未有「おはよう、今日も暇なのね?早く仕事見つけたら?」

海野「相変わらずキツイね未有ちゃんは、分かってるって。だからこうやって要人警護の訓練をしてるんじゃない?」

あれから色々あって海野は所属していた組織から抜けた。
未有の言う通り責任を取らされることはなかったが、自ら責任を感じて辞めてしまったのだ。

今はリハビリと称して雫と未有の登下校の送り迎えを自主的にしている...らしい。

雫「よ、要人だなんて...。」
未有「うむ、しっかり守りなさいよ?」
海野「はっ!了解であります!」
3人は笑った。

他愛もない話をしているとあっという間に学校についた。

海野「じゃあまたね。」
雫「あ、ありがとうございます。」
未有「うむ...たいぎであった。」


学校に入っていく2人を見送った後、海野はある人に連絡を取った。

「海野です、無事送り届けました。」
『了解。今日も引き続き任務を遂行して下さい。』

「あの、ちょっと任務遂行にあたって質問がありまして...。」
『なんですか?』

「あの子について、あなたの言う通りの事が起こりましたけど...。」
『私への詮索は...。』

「いえ、約束ですのであなたのへの詮索はしませんが...。」
『...ではなんです?』

「あなたの話だとあの子が敵か味方かもわからないので...警護なのか監視なのかによってやり方も変わってきますし...。できれば、ハッキリさせたいな...と。」

『あの子は敵でも味方でもありませんよ......強いて言うなら...子供です。』
「え?どう言う意味で?」

『では、引き続き任務をお願いします』
それだけ言うと通話は一方的に切れた。

海野は空を見上げた。

「やれやれ...」

タバコを吸おうと思ったが、ポケットをいくら探しても見当たらなかった。

そういえば禁煙を始めたことを思い出した。








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