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本編 第一章 【伏縁編】
※夜に溶ける
しおりを挟む結局、昼食はユリシーズに詰問されまくった。
時間が足りなくて食べ切るのを急ぐ必要があるくらいの質問責めだった。
勇者一行の視察は終わったのに、何だか慌しかったなあ。
夜道を歩きながら空を見上げる。
星や月がはっきりと顔を出していて、その美しさにほぅと漏らした息が白い。
寒くなってきたから、今度からは厚手の上着を羽織って仕事に行かなきゃ。
それにしてもあれからアラスターは、一度も姿を現さなかったな。
遠征の依頼をギルドマスターから受けるように言われていたから、準備に追われていたのかも。
確かに遠征で長い期間会えなくなるのは、寂しいかもしれない。だってたった半日会っていないだけで、私はすぐに彼のことを考えてしまってるし。
案外、私の方が寂しがり屋なのかも。
そんな思いがよぎって、自嘲気味に笑う。
視察で案内役を任された私は、明日は特別に休暇を貰っている。罰…という名の仕事があるのに良いのかなと思ったけれど、ギルドマスターの好意だしありがたくゆっくり休ませてもらおう。
その分今日はいつもよりも遅くまで働かせてもらった。訓練場の補修を行う現場監督の人と打ち合わせ出来たし。
家に着き鍵を開けた扉を開いて、目を見張る。
窓辺に佇み夜空を見上げる黒。
私の入室と共に振り返り、漆黒の髪が揺れる。
暗い部屋の中で、まるで猫のように爛々と光らせた金色の瞳が私を捉える。
夜のように静かに穏やかな気配を纏い、柔らかく微笑みかけられる。
「おかえり、アビー」
「……ただいま戻りました」
夜の闇に溶けるように立っていた彼の美しさに息を呑んだものの、すぐに現実に引き戻されて、とりあえず返事をする。
よく見ると自分の装備や手袋を机に綺麗に並べてある。
…もう文句を言う気も起きない。
相変わらずどうやって入ったのかわからないし、いつからこの部屋にいるのかもわからない。
でも正直、いるかもしれないな…と少しでも思っていた私もちょっと彼に毒されている気がする。
「遅かったね、お疲れさま」
「ありがとうございます。アラン様もお疲れさまでした」
「うん、ありがとう」
後ろでに扉を閉め、床にカバンを下ろす。
確かに今日は少し遅くまで仕事をしていたし、ちょっと疲れてはいる。
ふぅ…とひと息ついて彼へ視線を向けると、両手を開いて小首を傾げて待つ姿が。
「…アビー、おいで?」
「………」
私は犬か猫じゃないもん。
そうは思うのに彼のその仕草に何かが耐えきれないような感覚がして、おずおずと歩み寄る。
ぽすんと彼の胸に体を預けると柔らかく腕で包み込まれた。
先ほどまで外に居たから暖かい。
目を閉じて、深呼吸。
すっかり嗅ぎ慣れた木を彷彿とさせる彼の匂いで胸がいっぱいになる。
この匂いが、とても落ち着く。
「今夜は一段と私の心をくすぐるね」
くつくつと笑い、後頭部に回した手で撫でられる。ゆるゆると優しい手付きが心地よい。
すると結っていた髪がはらりと私の顔にかかる。あれ、なんで?
疑問に思って顔を上げると、今度はメガネを抜き取られた。
「アラン様?何を…」
「ご褒美を貰いに来たんだよ」
……あ。
仕事に追われ、またすっかり頭から抜けていた。いやいやでも私の髪結い紐やメガネが欲しいなんて、彼もすっかりお茶目になったなあ。
なんて現実逃避よろしく考えていたら、突然体がふわりと宙に浮いた感覚に思わず声を上げる。
「ひゃ」
「本当に君は軽いね、もう少し頑張って食べてもらわないと」
そう言いながら私を横抱きにして歩き、ベッドへと腰を下ろすと同時に自分の膝の上に私を優しく下ろした。
手に持っていた髪結い紐とメガネをサイドテーブルへ置くと、彼は自分が来ていたトップスを捲り上げて脱ぐ。
……脱ぐ!?
「あ、アラン様!?」
思わず咄嗟に両手で顔を覆う。
心臓が飛び出そうなほど脈打ってうるさい。
覆い隠した顔が火傷するほど熱く感じる。
目を固く閉じて暗くなった視界の中で、彼の身体の温かさを肌越しに感じる。
今まではずっと布越しだったから、もうそれだけでどうにかなりそう。
「アビー、大丈夫。怖くないよ」
「……うぅ」
顔を隠した手に優しく触れられて、手を離すように促される。
そのまま指を絡めて握られた手を今度は離せなくなる。諦め気味にそろりと目を開ける。
白い肌。先日の大きな斬り傷の痕。
それ以外にも、無数の怪我の痕で身体は埋め尽くされている。
彼のそんな体に、羞恥心よりも胸が痛んで仕方がなかった。
(怖くないってこの傷痕のこと?)
ちらりと様子を伺うように見上げる。
彼はただ優しい瞳で私を見ていた。
けれどその瞳の奥はどこか悲しそうで、きっとこの傷痕を見て私が怯えるんじゃないかと思っていたのかもしれない。
確かに、少し怖い。
でもそれは彼が怖いんじゃない。
これらの傷を受ける度に彼はどんな思いをしていたのかを考える怖さだ。
だって私には想像も出来ない。
少し転んだって痛いのに、あんな刃物で切り付けられたらって考えるだけで辛い。
彼は私に忘れられた痛みを抱えながら、ただ強くなるためだけにこんなに傷をこさえた。
——ああそうか、私に忘れられた時の方が…
どんな傷よりも痛かったんだ
「……」
「酷い有様だろう?こんな私を嫌になったかい?」
この傷だらけの体を見せて、そう自嘲気味に笑う彼がらしくなかった。
嫌って下さいと言っているようなものだ。
あんなに私に気持ちを伝えてくれていたのに。
だから私には最終警告のように思えてならなかった。
(引くなら今のうちだと)
彼の胸元にそっと手を置くように触れる。
柔らかく撫で、その胸元に祈りを込めるように口付けを落とす。
「っ…」
「……嫌になんかなりません。貴方が嫌だといっても離れません」
「私が君を拒む未来は来ないよ」
「なら、私にも来ませんね」
そう告げて再び胸元に口付けを落とす。
これは労いと癒しを祈る口付け。彼の痛みが少しでも楽になりますようにと願いを込めて、少し場所をずらしながら何度も優しく唇で触れる。
「…っ、は…」
頭上から聞こえてくる息を乱す音。
手合わせの時ですら乱したことのない呼吸。私のこんな些細な刺激で、彼は分かりやすいくらいに乱している。
胸に手を当てると、振動が手に伝わってくる。
こんなにも彼を乱すのが私だという気持ちに、どうしようもないくらい胸が掻き乱される。
(わたし、あなたを…ひとりじめしたい)
そう思いながら再びアラスターを見上げる。
眉根を寄せ、金の瞳は熱を孕み、頬を仄かに紅潮させる彼の欲に浮かされた顔。
その表情にじりじりと腹部に感じたものが、初めて覚えたはずなのにはっきりと欲だとわかった。
「アビー…っ、今日は積極的だね…」
「…アラン様は、ご褒美が欲しかったんですよね?」
「っ!」
息を乱す彼にたまらなく心が満たされて、首を傾げて問いかけて見せる。
大きく、喉が鳴る音がして、ぎゅうと固く抱きしめられる。
耳元に彼の唇が寄せられる。
はぁはぁと苦しげな息遣いが聞こえる度に、耳から伝う刺激に私は目を細める。
「私を挑発なんて、いけない人だ」
「あっ…」
囁かれて、びりりと脳を刺激する。
その刺激はあっという間に私を支配して、されるがままになることを許してしまう。
彼の低い声、いつもなら落ち着き払っているはずなのに、今はずっと熱を帯びていて、何かを堪えるように震えている。
「アビー、君の望まないことはしたくない。私を、そう…そっと押し返すだけで構わないんだ」
そう耳元で告げるアラスターの呼吸はずっと酸素を取り込むのに必死だ。
貴方はそんな状態でも私を気遣ってくれるんですね。本当に、どこまでも優しい人。
「っなら、もっと引きつけたら…分かって、貰えますか?」
私も乱れた息でそう言い切ると同時に、唇を塞がれる。
今までのどんな口付けよりも深くて、激しい。
息をつく暇も、思考することも許さない。
舌を絡ませ、歯列をなぞり、貪るような深さに思考も力も奪われていく。
徐々に体の力が抜けるも、彼が手に背を当てて支えながら私をベッドへ組み敷く。
唇が離れ、私の唇を親指の腹で拭われる。
熱に浮かされ、目に滲んだ涙を攫うように口付け。何度も落とされるキスは、徐々に位置がずれていく。
頬、耳、首……
暖かい雫のように落ちるキスの最中に、ワンピースの襟元から鳩尾にかけてあるボタンがひとつ、またひとつと外されていく。
覚悟は出来ている。
でも拭えない恥じらいに思わず手で顔を覆い隠す。
はだけた胸元、ワンピースの下に着ている白く薄い肌着越しに彼の唇の感触が伝う。
「っ…!」
ほとんど触れられることのない胸元。
自分ではない人が触れる感触は、予想とは異なるもので思わず肩を跳ねさせる。
今眼前に広がる光景を見るほど羞恥は捨てられない。でも視界を覆えば何が起こるかわからない。
それがより一層私の感覚を過敏にさせている。
薄い布越しでも、彼の唇が胸元を滑るのが分かる。
都度起こる摩擦が、私の喉から声を出させる。
ああ、だめ…それ以上行けば。
「あっ、やぁ…!」
唇が胸の膨らみを掠め、思わず出た声に自分でも驚いて思わず口を塞ぐ。
口を塞げば顔を覆っていた視界が晴れて、伏目がちに私の胸元に擦り寄っていた彼が映る。
長いまつ毛を備えた瞼を上げ、上目遣いで僅かにこちらへ視線を送る金の瞳。
「いやかい?ごめんね、もう、やめてあげられない」
「ちが、ひゃあっ…」
指先で肌着を引っ掛けるようにずらし、露わになる胸を指先で撫でて優しく覆う。
ゆるりと緊張を解きほぐすように揉まれ、暖かいのにマッサージとは違う感覚に身を捩る。
ちぅ、と胸の下辺りに吸い付かれて甘い刺激に体を震わせる。
続け様にぬらりと手とは違う暖かくて柔らかい感触が胸を這い、それが舌だと気付いた時には、すでに胸の突起に到達していた。
「あぁっ、あっ、ゃ」
何度も舌が這い、弱く吸い付かれる。
飴玉を味わうような愛撫に腰が痺れる。
刺激される度に体が小さく跳ねて反応する。
彼が与えてくれる全てが甘くて、熱い。
思考がその甘さと熱に浮かされていく。
こんな気持ちを私は知らない。
未知の感覚に僅かな怖さがあるのに、それとは裏腹にもっと触れてほしいと思ってしまう。
「…気持ちいい?」
胸に擦り寄り、指先で胸へ触れながら彼は問う。
怪我ですら彼の表情を変えることが出来ないのに、ただ欲を堪える為に痛そうに、辛そうに…歪ませている。
そのたびに私はどうしようもなく満たされる。
彼が与えてくれる刺激もこの感情も、気持ちいいという感覚なのだと問われて気がつく。
「っ…は、い……きもち、いい、です」
「素直で可愛いね、アビー」
息絶え絶えに告げると、嬉しそうに優しく口付けを落とされてまた身を捩る。
次いでスカートの裾から手が侵入し、無意識に身をこわばらせる。
服の中から背に手を当て、ベットに横たわる私の体を片手で僅かに浮かせる。
身に纏っていたワンピースも肌着も、たまごの殻でも剥くようにいとも簡単に取り払われてしまう。
下着一枚になった自分の姿を彼に見下ろされていることが恥ずかしくて、胸元の前で両腕をたたむようにして隠す。
「君のこの綺麗な体を、私が暴いて良いだなんて…私はとても贅沢者だね」
「き、きれいじゃ、ない…です」
「綺麗だよ。降り積もった真白の雪に跡をつけるような、罪深さすら感じてしまう」
「あっ」
恍惚とした表情で私を見下ろし、彼の大きな手が私の腹部に触れる。
ただ触れられただけなのに、その熱に反応して思わず声を漏らす。
左手で私の体の感触を楽しむように触れ、右手は体の上を滑り落ちて太ももに触れる。
彼の一挙一動に反応しながら、羞恥のあまり目を瞑るけれど、気付かれないように薄く開いて彼の様子を窺う。
窓から差し込む光に、輝く瞳。
肩で息をしながら、情欲の熱を纏って私を見下ろす彼。
欲を孕んだ眼差しと組み敷かれて見下ろされるこの状況に、どうしようもなく下腹部が疼く。
ただ彼の意のままに、暴かれたいと願ってしまう。
そうして見惚れていると、彼が再び私に覆い被さる。布を介さない密着は今までのどんな抱擁よりも熱い。
ゆるゆると右手で腹部を撫でられながら、私の顔に頬擦りをして口付け、そのまま滑り込むように私の耳にずれてまた口付け。
「ひぁっ、あっ…」
「うん、分かっているよ。君は、耳が、とても敏感だものね」
そう囁いて唇でゆっくりと耳を食む。
皮膚が擦れる音、僅かに息が漏れる音、小さくくぐもった声。
その全てに支配されたように反応して、耐えられない快楽に声を漏らす。
その音が徐々に水分量を増して、味わうようにして食まれると、ひときわ大きな電流が体を駆け巡る。
「あぁっ、ひ、ぅん…やっ、っあ」
「アビー、好き、好きだよ、愛してる」
耳を食み、囁き、食む。
その繰り返しに都度体は大きく反応する。
逃げてしまいたいくらい大きな快楽なのに、私の思考は熱で溶かされて言うことを聞かない。
耳への刺激が強くて意識が逸れていた彼の右手が、私の下腹部を越える。
下着の下へ入り込み、到達した場所で指先が形をなぞるように撫でる。
「っあ!やっ、あっ…だ、め」
「だめかい?」
「っう…ちが、っんん」
耳への愛撫をそのままに、彼の指先が何度か確かめるようになぞっては撫で、割れ目を掻い潜り少しだけ私の内側へと侵入する。
「可愛いねアビー。君はちゃんと、私を迎える準備を、してくれている」
少し入り込んではなぞり、また少し入り込む。
それを繰り返せば嫌でも分かる。
彼がそう囁くように、自分の恥部が欲に濡れていることに。
耳と恥部から押し寄せる快楽がどうしようもないほど大きくて、心臓が早く脈打っている。
それなのに頭に浮かぶのは…もっと大きな快楽への渇望。
つぷり、と指が先ほどよりも大きく入り込んでくる。異物感と指が内側に擦れる感覚に腰が浮く。
探るように指が蠢いて、たまらず私は彼の胸元に縋り付く。
乱れる呼吸の音ではかき消えないほど、下腹部からするぐちゅと濡れる音に羞恥心と快楽が押し寄せる。
私を優しく抱き込み、指の動きの合間合間に口付けを落とす彼が目に映る。
息を乱し仄かに汗ばむ彼の体を、快楽に浮かされながら視線を下にずらしていく。
黒いボトムスの上からでも分かる象徴の膨らみに息を呑む。
(わたしに、こうふん、してくれてる)
その事実が私の快楽により拍車をかける。
侵入していた指がゆるりと抜かれ、ぬめり気を帯びて濡れた指が恥部の突起を擦る。
再び痺れるような感覚に襲われ、全身に力が入る。
「一度、少し楽になろうね」
「っ?あ、ん…ひぅ…」
そう告げて、彼は執拗に指の腹での摩擦を繰り返す。
強すぎず弱すぎない刺激が何度も繰り返されて、次第に下腹部から迫り上がる感覚に目を見開く。
「あっ、あぁっ…やっ、あら…さまっ」
「うん、気持ちいいかい?」
「だ、めっ…なに、かっ…っああ」
「抗わなくていいんだよ?」
「っう、あっ…ああっ!」
快楽の痺れがひときわ大きくなって襲い、その膨大さに思わず声を上げる。
その声と共に彼は手の動きを止め、ぜえはあと息を切らす私の頭を抱えるように撫でる。
「良い子だね、アビー」
「っは、はぁっ、はぁっ…」
その声と手つきは、いつも通りの優しさがあるのに、何かを堪えるように僅かに震えている。
身を起こし、まだ余韻に痺れる私の腹部に口付けて、私の下着を抜き取った。
自身のベルトに手をかける彼を朦朧とした意識で眺める。
(そう、まだ、おわりじゃない)
なぜかぼんやりとそう思い、次いで露わになった…初めて見る彼の雄の象徴に息を呑む。
血走り猛るその大きさに、体が強張る。
「アビー、すまない。もう無理だ」
「え…」
私の腹部の辺りのベッドに手をつき、見下ろす彼の瞳が色に溺れて大きく揺らいでいる。
はぁはぁと肩で大きく息をする彼は、お預けをくらった獣のように一切の余裕はない。
つい先ほどまで痺れるような感覚を纏っていた恥部に、彼の熱が触れて…ゆっくりと侵入してくる。
「っあ、あ…あああっ」
「っアビー、アビー。すまない、すまない…」
指とは比べ物にならないほどの圧迫感。
彼の熱で押し広げられる痛み。
体に入りそうになる力を堪える。
一気に彼の熱が腹の最奥まで届いて、痛みに滲む涙を浮かべながら彼を見る。
ただ謝罪の言葉を並べる彼は、私より痛々しそうな表情で肩で息をしている。
(あやまらないで、わたし、うれしいのに)
上手く言葉に出来そうになくて、手を伸ばして彼を引き寄せ抱きしめる。
どうしてそんなに貴方が辛そうにしているんだろう。私のことでこんなにも掻き乱れる貴方が嬉しくてどうしようもないのに。
「アランさまが、望むままに…」
「っ」
優しく後頭部を撫で、彼の耳元でそう告げる。
その瞬間、ぬるりと腹部にあった圧迫感を一気に引き抜かれ、すぐに大きく突き上げられる。
最奥に当たる衝撃に視界が瞬き、力が抜けて腕から彼を離す。
都度大きく突き上げられる衝撃に顔を歪ませ、薄く開いた瞳に映る捕食者のような彼の様相が、全身に遅れてきた快楽を巡らせる。
「っだめだ、そんなことを言っては…」
「あ、あっ、ひぁっ、あら、さ、ま」
「抑えられない、もう、止まらない」
「やっ、あぁっ、んぅ」
「君は、俺の、ものだ」
激しい律動の合間に息を切らし、ただ私を貪ることだけに目を見開き、快楽に顔を歪める彼。
そのどこにもいつものような冷静さはない。
彼の言葉と快楽が、熱に浮かされた思考を置き去りに全身に反響する。
軋むベッドの音と打ち付ける水音。
必死に名を呼ぶ彼の声と同時に、先ほどとは異なる快楽が押し寄せてくる。
(もう、だめ…)
彼に突かれた腹部から、衝撃のようにひときわ大きな快楽が私を一瞬で支配する。
同時に意識が朦朧として、私は気を失った。
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