雷魔法が最弱の世界

ともとも

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魔法帝の屋敷

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その街は国の中でも有名で、大きな街だった。
リンズベルク。

ここに約二日もかけて歩いた結果、到着することができた。


「うわー、たくさんの人たちがいる! 見て見て、お父さん! あっちには食べ物がたくさん並んで、数字もたくさんあるよ!」
「街、初めてきたからびっくりする。こんなにもたくさんの人がいるんだ。凄い!」

ミヨとソラは両親の袖をくいくいっと引っ張りながら激しく興奮していた。

「我らもここにきたからには、ちゃんと仕事をこなさないとな!」

一人のガタイのいい男が腕を前に出して拳に力を入れる。

この街に来たのは合計十名。

タキの家族四名、そして筋肉担当兼、食材の荷物持ちであるガタイの大きな男たち六名だ

道中が危険ということもあり、女性は収穫祭で料理担当のリーダーしか連れて行けない。
うちの妻はそれも兼ねているのでちょうど家族全員で行くことができた。
なんとも嬉しい話だ。

一応、タキはみんなをまとめるリーダーを務めている。
今は無事着くことができて一人一安心している。


うるさく騒いでいると、街の人から冷たい視線が送られてきた。

小さな小声が聞こえる。

「ま、なんて貧相な姿なんでしょう。見るだけで私たちの目が汚れてしまいますわ」

「ふん、人間の形をした猿が今年もきたのか。汚いな!」

そう、遠く離れた村から来ているせいで、衣服は茶色、足は裸足、泥に塗れた肌、この姿が街の人たちから反感を持たれる。

同じ人だというのにいつも素っ気ない態度を取られることが普通になっていた。

それを悟ったタキたちは子どもに心配をかけないために、笑顔で何もなかったかのように接する。

あまり長居しないためにも、それぞれ別れて目的の行動に移いた。

「じゃあ、父さんはとっても大事な仕事をしてくるよ。母さんを困らせるんじゃないぞ」

大きく、手を振る息子たちを後にしてその場を去る。


「じゃあ、ソラとミヨはお母さんについてきなさい。あ、たくさん食材を買うので荷物、重くなりますがよろしくお願いします」
「いえいえ、我々は筋肉しか取り柄がないのでたくさんこき使ってください」
残ってくれた四人の男たちはガタイにも合わずニコニコと笑う。

「それはありがたいです。では、早速ですがここにあるお金で先にこのメモに書いてある食材を買ってきてもらえるかしら!」
「分かりました、お任せください!」

筋肉を自慢するように腕を振り上げるとズカズカ歩いて商店街の方に男たちは行った。

残ったミヨ、ソラ、お母さんはお金を得るためにモンスターのドロップアイテムを箱に詰める。

「じゃあ行こっか。もしかしたらミヨに助けてもらわないといけないかもね」
「本当! 役に立てるの嬉しい!」

「よっこいしょ」と荷物を持ち、素材を買い取る商人の店に顔を出した。

そこには小太りな商人がヘラヘラと笑いながら話している。

先客がいたようで、いろいろな素材を売っている。あるモンスターの牙も差し出していた。

このドロップアイテムはこちらにもあったはず……

「そうですねぇ……こちらは一つ銀貨二枚でどうでしょう」

「分かった。ならそれでいい」
「どうも、ありがとうございました!」

客が歩き出し、次の番がくる。

「ドロップアイテムの買取をお願いしたいのですが……」
「はい、いらっしゃいませ!」

始めに、先客と同じ牙を数本差し出す。

すると不気味な笑みを浮かべながら、
「そうですねぇ。これは二つ銀貨一枚でどうでしょう?」

さっきの人の4分の1の値段を提案された。

これにはいてもたってもいられず反論してしまう。
「あの……さっきの人は確か一つで銀貨二枚でしたよね?」
「はて……? なんのことでしょうか?
言いがかりは良くありませんよ」

なんの悪びれのない態度に思わず怯んでしまった。

昔から、このような見下す行いが何度も経験した。
どれだけ説得しようとしても、応じてくれない。
だから渋々それで手を打ち、お金に替えてもらうことにした。

「はい、毎度!」
「どうも……」

暗い返事でお金を受け取ろうとした刹那、
「あの、おじさん、計算間違ってますよ!
この牙、一つで銀貨二枚だから四枚くれないとダメなんだよ!
だからあと銀貨3枚たりてない!」

なんとミヨが会話の横から入り込んできたのだ。
ミヨは商人を睨むように顔を膨らませる。

「子どもが大人の話に口出しするもんじゃないよ。もっと勉強しないと、みんなに馬鹿にされるよお嬢ちゃん」

優しく商人がささやくがミヨは動じない。

「私、計算得意だもん! 絶対間違ってない。だからあと銀貨3枚ちょうだい!
お父さん言ってた。計算ができない人はお店したらいけないって。
おじさん、頭悪い!」

ミヨが強い口調で反論すると、

「ああーあ、ガキは何かとうるせぇな」
声が低くなり、商人の目が細くなる。

「そんなに金が欲しいならあげるよ。
そうだったな銀貨、あと3枚だったけか……」

銀貨を掴むとミヨに渡そうとする。
が、そう見せかけてお金を投げつけようとした。

「あ、危ない!」

チャリッ!

お母さんがミヨに覆いかぶさるように包んだおかげで怪我をしなかったが、お金はお母さんの頭に当たって少し痛めている。

「ふん、貧乏人が! 用が済んだらさっさと帰ってくれ」

お金を拾い集めると、その場をすぐに離れた。

「お母さん、大丈夫ですか?」
「ごめんね。私があんなこと言わなかったらよかったのに……」
「いいのよ、ミヨはそんなに落ち込まなくって。それにお母さんは元気元気!
ミヨのおかげで相場の値段で買えたんだよ。
ミヨは賢いね」
「うん……」

せっかく街に来たというのに、悲しませることになってしまった。
やはり子どもをここへ連れて行くのはあまりよくない。

「さぁ、お金もあるからいっぱい食べ物を買わないとね。ミヨ、今からが本当の仕事だよ! たくさん計算してね!」
「うん!」

これでも計算が好きなようですぐに気持ちを切り替えてくれた。

「ソラはお母さんと一緒に何を作るか考えよっか!」
「任せてください!」

問題はあったが、それ以降は楽しく家族と買い物ができた。



一方、タキ達四名は魔法騎士に直接依頼するために大きな屋敷の前に来ていた。

この屋敷では、物資の流通、酒場、街の問題の取り締まりなどさまざまなことが行われている。
いわゆるギルドというものだ。

「お、おお……こんなに大きかったものか……」

村では一生かけても立てることのできないほどの建造物に皆の開いた口が塞がらなかった。

「お、俺はたちは魔法騎士に依頼をしに来たんだ! お、お前たち、こんな建造物に怯むでないぞ!」

言葉をつまらせながらもしっかりリーダーとして務めを果たそうとするタキに、他の仲間も「おお!」と返事をする。

ぞろぞろと中へ入り、依頼の申し出を行う。


「すいません……そのことなんですが……今、魔法騎士様は街の見回りに行っておられるので、できません」

黒を主張とした綺麗なスーツを着る受付員は丁寧に説明してくれた。

「一応、依頼として受け取らせていただくことはできますが、やはり一ヶ月ほど先の話になってしまいますね。
あの失礼かもしれませんが、やはり魔法騎士様に直接依頼するとなると費用の方も大変かかります。それに関しても大丈夫でしょうか?」

「ああ……はい」
綺麗な言葉遣い、的確な受け答えにまだ慣れることができず、やはり喋りづらくなる。

「ですが、至急の依頼をご希望されていますよね?」
「はい、お願いだ! 今、村がモンスターによって危険に晒されている。もう頼れる人が魔法騎士しかいない!
どうか、頼む」

ただ、魔法騎士に至急の依頼をすることだけは確かな目的であり、思わず興奮して大声を出していた。

そのせいで周りから嫌な視線が集まり「野蛮人」などと罵られてしまった。
貧相な見た目をしているから余計に目立つ。
仲間に嫌な思いをさせてしまった。

「私は、魔法騎士様のご予定を存じ上げません。ですのでそれが可能かどうかは検討しかねます。でも、もし出会えたらのであれば、直接魔法騎士様にお願いしたらいいと思います」
「ああ、そうか……それは、その、いろいろありがとう」

受付員には優しくたくさんの情報をいただこともあり深く頭を下げた。

「確か、噂では近くの通りにおられると聞きましたので、そちらに行かれてはどうでしょうか?」
「分かった!」

軽く最後に手を振ると、受付員は会釈をした。

話が終わると仲間に情報を伝え、すぐにその場に向かう。


「確か、この辺りと聞いたが……」

受付員が教えてもらった場所に到着すると、他の場所より人だかりができていた。

「タキさん、あれではないでしょうか?」

仲間の一人が指を刺す方向には高そうな指輪、整った相貌、サラサラの髪、そして美しい衣服を見に纏った男が二人、女にすり寄っていた。

「おいおい、そこのねぇちゃん、いい顔してんじゃねえか! 俺たちと今からデートでもしないか?」
「す、すいません。いま仕事中ですのでそれはちょっと……」

女は嫌がっているがそれも構わずさらに近づく。

「そんなこと言わずにさぁ、ちょっとでいんだぜ。その体をすこしでも貸してくれれば!」
「あ、ちょっと、やめてください!」

逃げようとするも、無理やり腕を掴まれて必死で引き剥がそうとしていた。

そんな態度にストレスが溜まったのか。

「ああん! 俺たちは魔法騎士だぜ!
誰のおかげでこの街が平和になっているのか分かっているのか!
さっさと、いうことを聞け!」

パトロールと言われていたけど、町娘にナンパか?
ふざけた人たちだ。

心の中で怒りが吹き上がったものの、自分の役目を思い出して、冷静になった。

そして、四名がずらりと横に並び魔法騎士の人に近づく。

「あの、魔法騎士様でございましょうか?」

どうにかなれない敬語を使う。

「はぁ、誰だよ。いま俺たちは忙しいから後にしてもらえるかな」

ため息をつきながら俺たちのボロ雑巾のような姿を見ると、口調が変わった。

「て、はっ! なんだよ、どこから来た馬の骨だ。というか、臭っさ!
匂いが移る前に俺の前から消えろ!」

「恥を忍んでお願いに参りました。我らの村に巨大なビッグベアーが現れました。至急、モンスターの駆除をしてくださいませんか?
どうか、村をお救いください!」

「ああ、無理無理。そんな至急って言われても今日、パーティがあるからな。可愛い子がいっぱい俺たちに尽くしてくれんだ!
だから、モンスターの駆除をする暇なんてない。さっさと山へ帰れ、醜い人間が!」

「では、次の日でもいいので! 
お願いします!」
「おい、しつこいぞ!
俺たちはエリートの魔法騎士様なんだぞ!
お前らみたいに暇じゃないんだ!
分かったならさっさと、
き・え・ろ」

「まぁ金さえくれれば、別に言ってやってもいいけどよ……でも……お前らだと払えないか! アッハハハハハ!」
「もういいだろ、分かったなら山で草でも食べてろ! はっ、汚らわしい」

「おい、魔法騎士! てめえら言わせておけば、俺たちのリーダーを侮辱するのも加減にしろよ!」

タキは拳を握り必死に耐えていたが、他の仲間は途中から我慢ができなくなり一人がついに反抗してしまう。

その言葉に思わず、ドキリ鼓動がなった。
ゆっくりと魔法騎士を見ると、目が笑っていなかった。

「そうか、それはこういうことだよな……」
「下人の分際でよく言うねそんなこと」

二人はすでに魔力を込めていた。

こうなったら、そう……逃げることしかできない。

「はっ!」
「おら!」

二人の手から、岩石、炎が繰り出される。

やはり魔法騎士というべきか、俺は避けることができれたが、他の仲間三人が致命傷を受けていないが倒れていた。

「ふっ、無様な負犬が」
「もう帰ろうぜ、こんな奴らに時間を裂く方が無駄だ」

俺たちを罵りながら彼らは帰って行った。

「あらら、泥を被ってさらに汚くなっているわよ」
「こういうのが野生の動物って言うのかしら」
「擦り傷くらいで大袈裟な。ほっとけほっとけこんな奴ら」

街の人は誰一人として手を伸ばしてはくれなかった。


夕暮れ時、体に傷を負いながらもミヨとソラに心配ないようにとまた笑顔で振る舞う。

「どうだった、二人とも。街は楽しかったか?」

二人は覇気のない返事をした。
まぁ、この姿をみたら当然の反応である。

「お父さんはな、ちょっと張り切り過ぎてしまったな! アッハハハハ!」

「あなた、二人は一生懸命、私を手伝ってくれたわ。とっても助かった!」
「そうかそうか。二人は偉いな!
さぁ、帰ったらまだ一仕事二人にはしてもらうぞ! 祭りはもうすぐだ!
いっぱい楽しもうな!」

誰も喋らない中、一人俺の声だけが響いた。
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