雷魔法が最弱の世界

ともとも

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魔法帝の屋敷

実技

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荒野には静かに風が吹き、砂ぼこりが舞う。
赤く染まった平原が日光に照らされ、さらに真っ赤になる。

トカゲや枯れた草が転がりまわり、近くには小さな川が流れる。
緑はほとんどないが、少しだけ川の周りに乾燥に強い植物が育っていた。

そんな中、強烈な暴風が発生し、一人の男が降り立った。

「ふー、ここら辺がちょうどいいかな?」

軽くメガネを上げて辺りを見渡す。
想像以上に日差しが強かったこともあり、魔法帝は片手で影を作りながら待っていた。

そして少し遅れて、

ビリッ、ビリッ!

雷を纏った自分が魔法帝の元へ追いついた。

「うんうん、今回は距離もそこまでなかったから方向を間違えなくて偉かったよ!」
「そのちょっと馬鹿にするような言い方、嫌いです!」

なんだろう、知らない人にお母さん面されたみたいな気分だった。

というか疲れた……

朝から全力疾走、さっきのモンスター退治、
魔法を回復する薬を飲んでいるが体力は戻らないので、だんだん力が入らなくなった。

「もう……ヘトヘトですよ……」

そんな僕に対して、
「さあ、早く魔法の実践を試してみよう!
いろいろ教えてもらったからウズウズしてたんだよ!
それに今日のことを私はとても楽しみにしていたんだ!
もちろんだと思うけど、トモヤ君の雷魔法を隅々まで見してくれるんだよね!」
「話を聞いていましたか、魔法帝……」

僕のことなど上の空で、魔法帝はとても元気だった。

「さあさあ! さあさあさあ!」

強引に手を引っ張られて歩かされる。
仕方なくその行為を受け取ると手を離してくれて、楽しそうに魔法帝は聞いてきた。

「まずはどうしよっか? 
私が魔法を見せる?
それとも、トモヤ君が雷魔法を見せてくれるのかな?」
「あの、僕が魔法を見せないという選択肢はないのですか……?」

「存在しない」

「そこだけ、真面目な顔で言うのやめてもらえませんか! ……もう、分かりました。たぶんどんだけ嫌って言っても聞いてくれないのですよね?」

「当たり前だ」

また、当然のように真顔になって鋭い目で僕を見つめる。
メガネが光に反射することにより、すこし恐怖を覚えた。

怪我の完治はまだ先かもしれない……

「じゃあ、先にいろいろと僕が見せます。
そのほうが後で休憩できそうだし……」
「うんうん、楽しく見ているよ!
だから早くやって! 早く早く!」

急かす魔法帝にため息をつきながらも、まだしっかりと見せていない種類の魔法を見せた。



汗が顔から流れ、疲労により体がとても重くなった頃。

「おおぉぉぉ!!
感激だ、感激だよトモヤ君!」

ずっと欲しかったおもちゃを買ってもらった子どものように体全体を使って喜びを表していた。

僕は満足した魔法帝を見るとすぐに地面に座り込んだ。

「はぁ……もう疲れました。僕の役目はこれで十分ですか?」
「最高、最高だよー! ここまで喜べるのは久しぶりの出来事だよ!
最弱の雷魔法、わざわざ見させていただきありがとうございました!」

一頻り笑い終えると、今度はなんとも礼儀正しくお辞儀をしていた。

めんどくさいとは思っていたが、やっぱり今まで否定され続けていた魔法を、これほど褒められる機会もなく、すこし照れている自分がいた。

相変わらず読めない方だけど、いろいろな感情を魔法帝は与えてくれる。


「さぁ、今度は私の番だね!
どうにか君に危害を加えないように弱く調整するつもりだが、もしも死にそうになったら……残念だね!」

「いや、怖! というか僕に対するその命の軽々しさなんなんですか!?
さっき、普通にモンスター倒せていましたよね! どうしていきなりそんな怖いこと言うんですか!」

「いやー、なんというかね、こういう広い場所にくるとどうにも強力な技を出したいという衝動に負けてしまうんだよ」

頬を掻きながら笑う魔法帝。
いや、笑い事じゃないのですけど……

「危険です! もう広い場所に来ないでください!」
「き、危険って……そこまで言われないといけないのかい?」
「はぁー」

体が疲れているのに、また大声を出して無駄な気力を使ってしまった。

すぐ口を挟んでしまう自分と無意識にボケを突っ込んでくる魔法帝に深く息を吐く。

一息つくと魔法帝は少し僕から離れてゆっくりと体に力を入れ始めた。

僕は軽い見学の気分でいた。
だけど、自分は魔法帝の力を甘くみすぎていたようだ……


いざ、魔法帝が魔法を貯めようとすると、地面が大きく揺れ、快晴だった空も突如として姿を変え、黒い雲が出現し始めた。

恐怖による鳥肌で、まるで腰を抜かしたかのように動けなくなる。

休むどころか、神経を余計に使うことになった。

「どうだい? 軽い威嚇としてこういうのは使えるが。
だけど、なぜだろう……これをよく家臣とか魔法騎士に見せると、『凄い!』って感想も言わず、逃げていってしまうんだよね……」

「アハハハハ……」

それはですね、あなたの魔法が怖いからですよ!
証拠として今の自分の足がプルプルと震えていた。

相当鈍感なのか知らないが、この発言も無自覚らしい。
魔法帝の明るい声を聞いて安心するも、笑えない話に苦笑いしかできなかった。

「あ、そうそう! これからすごい技を見せるからね! 絶対見ていてよ! これを本当に見逃していたら……殺しちゃうぞ!」

「いや、目が笑っていませんよ!
それガチなんですか! 真面目にあなた危険ですよ!」

可愛く言っているつもりであろうが、笑っていない魔法帝の目に恐怖を覚え、全身から大量の汗を流しながら魔法帝に全集中する。

「まずは地かな……」

ゆっくりと下から上へ手を上げると、それに合わせるように地盤が変化する。

ガタガタッ!

砂ぼこりがだんだん強力になり、それに合わせて揺れも強くなる。

何が起きるのかと怯えながら見ていると、赤色の巨大な岩盤が目の前に現れた。
まるで土魔法を操るように。

僕は驚愕していると、魔法帝は淡々とした口調で、
「次は水……」

近くに流れていた川に変化が見られ、小さな波紋が起こる。
その振動も徐々に大きくなり、

バシャン!

大きな水しぶきの音ともに巨大な津波が発生した。

当然の如く、水飛沫が大量に上から降ってくるので濡れないように両手で頭を抱えた。

そしてうっすらと目を開けると、そこには巨大な水の塊が中に浮いていた。

その光景にまた、驚愕する。

目の前には巨大な岩盤、そして水の塊が発生していた。

僕は空いた口が塞がらないでいると、魔法帝はメガネを光らせて頼み事をしてきた。

「トモヤ君、少しでいいから君の雷で火を起こしてくれないかい?」
「は、はい……火ですか……?」

まだ頭の整理が追いつかず、覇気のない返事をしてしまう。

「ほんの少しでもいいんだ!」
笑顔でこちらを見る魔法帝に、はっと意識がちゃんと戻り、しどろもどろになりながらも願いに応える。

「え、は、はい! 雷、雷で火を起こすんですね! わ、分かります、いや、分かりました! すぐに行います!」

ビリッ!

近くに落ちていた小枝に小さな雷を落とすと小さく燃え出した。

「お、ありがと、ありがとう! 
それくらいあれば十分だ!
危険かもしれないから君はその枝から離れていてくれ」

軽くお礼を言いながら、火がついた枝の方へ手を向ける。

すると、すぐに消えそうな弱々しかった火はみるみると強くなる。

ボッ!

その音をきっかけに急に人間サイズくらいの火へ進化した。

そこからはすぐに魔法帝の元へと飛んでいき、着いたら岩盤や水と同じくらいの巨大な炎になっていた。

僕の体は熱を浴び、生温い風が自分の髪を揺らした。

そして最後にはトドメと言えるほどの強力な風が発生して、魔法帝はドヤ顔をしていた。

僕の目の前には、地・水・火・風という全ての魔法の起源となった4種の魔法が現れていた。

さっきからずっと驚きを隠せない自分に魔法帝は解説を始める。

「私は、昔から魔法の操作が得意なようでね、こうやって風を精密に操って様々な魔法を使うことができるんだよ!
火は風で強く燃えてくれるし、土とか水はあの時、見せたバリアみたいに風で覆うと簡単にできるんだよ!」

簡単そうに言っているが、それはとても難しいそうなことだった。
こういうことを完成できるのは昔から探究力が強くてよく考え、相当な魔力を持っている魔法帝だからこそできる技だろう。

「やっぱり、魔法帝は流石ですね!
僕では到底敵いませんよ」

素直に褒めると満更でもない顔をしていた。

「そうだよね!」

魔法帝が勢いよく手を横へ払うとさっきまで発生していた魔法は一瞬にして散りへと帰ってしまった。

「まぁ、でもこれは近くに物質がないとできないことだからね。役に立つことはよくあるけど結構、場所は重要になるね」
「そう考えると、この場所は最適ですね!」
「ああ、トモヤ君のいう通りだ。
そうだ、私は他にもいろいろできるんだよ!
ほら、水だって冷たい風を当てれば!」

ギーーーン!

大きな音を立てて、流れていた川の水が凍る。

まるでセクアナのような技だった。

セクアナも、努力して取得したんだな……   
氷魔法。

セクアナの努力する姿を想像して心が温まる。

「今回はこれくらいでどうだい! すこしは私のことを見直してくれたかい!」
「魔法帝のことは元から慕っていますよ!」
「当然のことじゃないか! なんたって私は魔法帝だからね!」

肘を腰に当て、ふっふんと鼻息を出す。

一頻り自慢の魔法、といっても今回は今まで以上に感動するものを見してもらうと、上機嫌な魔法帝はこちらへ寄ってきた。

「今回の見せ合いっこはこれで終わり、次は実技だね! 先生に教えてもらったこと実践さしてもらいますよ!」

こっちも楽しみだったのかまた、目をキラキラさせている。

体力、そこしれなさそうだな……

微笑しながら、今度は先生として魔法帝にいろいろ教える。

「ではそうしましょう。でも学んだことで使えるのって火だけですよね?」
「ああ、そうだけど、それだけで私は十分だ! やっぱり風だけでは火にもストックがあるからねー、もし強くなるならそれだけでも十分だよ!」

酸素のことを軽く復習すると、さっきのように僕がまた火を起こした。

「ではやってみようか!
あ、でも実験は危険がつきものだから、僕の言うことをちゃんと聞いてくださいね!
絶対ですよ……絶対ですからね!」

念入りに忠告すると「分かってる分かってる」と軽い返事が飛んできた。
変なこと起こらないよね……

心配もあるが、さっきのように炎を発生させる。

「これで同じ条件だね! あとは酸素!」

目を瞑りしっかりと魔法帝は集中する。
(空気中の酸素を炎に結合する……酸素……酸素……)

メラメラと燃える炎は急にボッと音を立てて二倍以上の大きさに変化した。

「お、おお……おおお……」

ガタガタと体を震わせる魔法帝。

「よかったですね、成功です!」
笑みを向けながら手を叩くと、勢いよく抱きつこうとこちらに走ってきた。

「やめてください、ストップです!」
いつかのように片手で静止をかける。
その対応にすこし魔法帝はしゅんとしていた。

「今回くらいは許してくれても……」
「やっぱり気持ち悪いので……」
「先生酷い!」

涙目になって大の大人が訴えかけてくる。

「ああ、そうだった! まだもう一つ実験が残っていたからね。
それが成功したらやってくれるのかい?」
「絶対に、間違えても、魔法帝と抱き合うことなんてしないので安心してください!」

「ガーーン! そ、そんなに強調しなくても……」

肩を落としながらまたさっきのように炎を作る。

「そう思えば今度は何をするんですか?」
「トモヤ君、何をいっているんだい?
水素だよ水素! ほら、いっていたじゃない
か! 水素は炎に触れると爆発するって」

無邪気に笑う魔法帝。

「ああ、そうですね」
それに僕は軽く頷く。

(そっか、水素爆発ね……水素……)

「って、水素!?」

素っ頓狂な声が漏れる。

「待って、待った、やめなさい!」
両手を振りながら大きな声で訴えるが魔法帝は夢中になり、聞く耳を持たない。

気づいた時にはもうすでに炎は結構大きくなっていた。

に、逃げなきゃ!

こんな巨大な炎が爆発したらひとたまりもない。水素はそれだけ、危険なのだ。
ましてや、魔法帝自身が発生させるし……

もう自分のことに必死だった。

すぐに逃げようとするが、
「いざ、爆発!」

何も考えていない魔法帝は勢いよく水素を炎の中へと放出し……

ドガーーーーーン!!

今までに聞いたこともない爆発音とともにみんな吹き飛ばされた。


「やっぱり……やっぱり魔法帝は最低ぇぇぇぇぇぇぇ!!」

甲高い声が荒野中に響いた。


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