雷魔法が最弱の世界

ともとも

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魔法帝の屋敷

魔法帝のお手伝い

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朝の食堂にて。

「えっ、トモヤ君、今日ユリス様について行くって本当?」

魔法帝が昨日の夜に誘ってくれたことを話すと、ソラとミヨは驚いていた。

「たしかにユリス様が付いているので安心はできますが、まだ体に触りませんか?」
「うん、まぁソラがいつも気にかけてくれるからよくなっているよ!」

「そうなんだ、それは良かったです!」

一番止めると考えられるソラが簡単に受け入れてたので、すこし心がほっとする。
ソラにはいつも心配をかけてしまっている。
だからこそ、怪我なくここへ帰ってこれるようにしたい。

魔法帝がそばにいてくれるのは安心するけど、初めての任務的な行いに不安もあった。

横を見ると、ミヨは納得しているようにニコニコしてくれていた。

「せっかくだし、行ってみたら?
ずっと私と計算するのも大変そうだったし」
「いや、ミヨの手伝いをするのは楽しかったよ」
「それは嬉しいな」
「ごめん、僕のわがままで今日は一緒に手伝えなくて」
「いいよ、というかトモ君のおかげで結構先の分まで終わってるんだよね。
だから、ありがとう!」

白い歯を見せてミヨは笑う。

「そっか、今日はトモ君がいないんだよね。なら今日は休みにしよっかな。読みたい本もあるし。だから気にしないで行ってきて!」

「うん、じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ!」

二人の了承を得られたところで食事も終わり僕と魔法帝は準備にかかった。

始めに僕は魔法帝に連れられて長い廊下を歩いていた。

「どうしたんですか?
連れて行きたい場所があるって」

いきなり何も言わず、手を引っ張られたものだから僕は困惑していた。
今は無言で魔法帝の背中を追っている。

魔法帝が静かにすることがあまりないのでちょっと空気が重かった。


「さぁ、着いたよ!」
明るい声が聞こえるとともに、すごい光景が目の前に現れる。

そこはガラス越しに飾られたたくさんの武器が光沢を浴びて並べられていたのだ。

「うわぁ!」
興奮する気持ちがある反面、どれも一生働いて買えるか危ういほど高価な武器が置いてあるので、手が震えていた。

「やっぱり、そうだよね! 
健全な男子ならこの光景を見て興奮しない人はいないよね!
私は戦いでは武器を使わないけど、こんなに美しい剣とかを見ているとニヤけちゃうよ!」

魔法帝はサプライズをするために無言になっていたのだった。

不器用な人なりに、とても感動することだった。

「えっと、どうしてここに連れてきたんですか?」
「君も鈍感だね! 私がここに連れてきた理由は一つしかないでしょ!」

自信満々に両手を腰に置いて胸を張る魔法帝。

「えっと……自慢ですか?」

「ち、違うよ! 君は私をなんだと思っているんだ!」
「発言通りのイメージです」

「なっ! トモヤ君は酷いね! 
魔法帝とは寛大な心を持って誰にでも平等に接するんだよ!」
「はいはい……」

魔法帝を軽くあしらいながら機嫌が直るのを待つ。

「こほん、まあいいけど」
落ち着くと、魔法帝はどこへ行くのか部屋の奥の方まで行ってしまわれた。

そして、
「酷い、トモヤ君にはい、どうぞ」
まだすこし根に持っているのか、そっぽを向きながら、それを僕に渡してきた。

「こ、これは……刀ですか?」

目の前にはすこし前に潰れた刀とは別格の光を放つ、刀が存在した。

「あの時、私の無茶振りのせいで潰してしまったからね。そのお詫びと言うかなんと言うか……まぁ、この刀は素晴らしい名刀だ!
トモヤ君なら使いこなせると思っている。
今日もだが、これからの任務でこれを使いたまえ」

それを言うと、両手に出された僕の手の上に魔法帝は優しく置いた。

無意識に自分の顔が熱くなっていた。

「なんというか……魔法帝、ちょっとツンデレですね」

「なんだい、その反応は!?
そこは涙とか流して感動して欲しかったよ!」

「大丈夫です。ちゃんと魔法帝には感謝しています。大切に使うので……えっと、ありがとうございます!」
「ああ、じゃあすぐに出発するよ!」
「はい!」

また、魔法帝の背中について行った。

とは言ったものの……


「なんでその服装で行くんですか!
こちらの方が尊敬されますって!
ずっと言っているじゃないですか!」
「いいや、こっちだよ、絶対に!
毎日、続けているからもうほっといて!」

ソラと魔法帝の服装の揉め事で準備してから30分くらい時間が空いてしまった。


「結局そっちになったんですか?」
「そうだよ! こっちの方がカッコいい!」

メガネをキランっと光らせて東大生っぽい服装をした魔法帝と一緒に屋敷の玄関を出た。

後ろでソラがため息をついているが、まあ、どうしようもないね。

「じゃあ、トモヤ君は私に掴まってくれるかな!」
歯を見せて爽やかに笑う魔法帝の手に捕まろうとする。

「は………い、嫌!」
「ん? どうして私は手を払われたのかな!
さっき握ろうとして、いきなり態度豹変って結構傷つくんですけど……」

みるみる自分の顔が青ざめて行くのを感じた。

そう、魔法帝のスピードが早すぎて空気抵抗に自分が耐えられないのだ。
あの時に経験で依頼、あれはトラウマでしかない。
全身から汗を垂らしながら弁解する。

「じ、自分で移動します。こ、これでも結構僕ってすばしっこいんですよ!」
「で、でもほら、そんな無理しちゃ怪我にも影響があるよ」

「魔法帝に掴まって行く方が悪くなります!」
「ええ、そうなのかい?」
「はい、もう触らないでください!」

「いや、そこまで!?」

僕の言いすぎた発言に肩を落とす魔法帝。

「まぁ、君がすごいスピードをだせるのは、拝見済みだからね、わかったよ」

(それに、また雷魔法も見れるし……)


もう、あんな気持ち悪くなりたくない。
説得に成功すると、青ざめた顔も元に戻った。

すこし話し合いを行って、魔法帝に空から道を案内してもらい、僕は全力で魔法帝を追いかけることになった。

「じゃぁ、王都にいる時は屋根を渡るってことだけど、滑って怪我をしないようにね」
「ど、努力します」
「あ、そうそう。一応、魔力が切れそうになったら、あの時あげた薬があるから、教えてね」

白い錠剤を僕に見せてすぐにしまう。

僕も、もしもの時はそれに頼るとしよう。


「じゃあ、出発!」

大きな声で合図すると、魔法帝は空に飛び立った。

それに合わせて、
「雷神!」

雷が僕の全身を包み、
「神速!」

風を切り、全力でスタートした。




「はぁ、はぁ、はぁ………」

深い深い森の中、ちょうど休憩しやすい大きな木の下で僕は息を整えていた。

「いやー! やっぱりトモヤ君の魔法は素晴らしいね!上から見ていてとっても楽しかったよ!
最弱とか言われているけど、よくここまで成長できたね!
本当にすごいよ!

ただ……途中でどこか変な方向に行っていたのは君が必死だったからだよね?」

自分は知らないふりをして顔を合わせなかった。

(本当、ごめんなさい……方向音痴で……)


「まぁ別に急ぐことはないからゆっくりして。もう、約束の村はすぐそこにあるから」

魔法の回復を促進する薬を飲み、しばらく休んだ。


「すいません、迷惑をかけてしまって」

「別に私は気にしていないよ。よくなったならすぐに村へ行こうか!
困っている人たちがたくさんいる」


霧が出るほど深い山の中をゆっくりと歩きながら二人で進んだ。

魔法帝の目は真剣で、真面目モードになっていた。
いつもはおちゃらけているが、やっぱりこれこそが魔法帝だ。

まだ東大生の服装には慣れないが……


村では、たくさんの人が迎えてくれた。

自分が雷魔法ということを聞いて、嫌な視線は向けられた。
でも、魔法帝の輝きが強すぎるせいか、すぐに誤解も解けて明るく接してもらえた。

そして本題の、依頼内容。

それは森近くに生息するモンスターの大量発生だった。
村人でも十分倒すことができる弱いモンスターだが、量には対応することができなくなったらしい。

「分かりました、私に任せてもらいましょう。さあ助手君、早く一緒に来るんだ」
「じょ、助手君?」

メガネを上げてギラつかせる。
嘆息しながら、魔法帝の演技に付き合うことにした。

「安心しなさい、私があなた方をお守りする」
「はっ、なんと寛大なお心……魔法帝様、どうかご無事で!」
「案ずるな、すぐに帰ってくる」

バサッとマントを揺らし、魔法帝なりにかっこよく家を出て行った。

僕がいるからこのように振る舞っているのか、それともいつもこのような形なのか……

考えれば考えるほどいつもの魔法帝と照らし合わせてしまって、吹き出しそうになる自分がいた。

「ふー、やっぱり難しいな、ソラに言われたようにできるだけ感情を表に出さないのは……」

そして、
「どうしたんですか、そんなキラキラした瞳を僕に向けてきて……」

「い、いやなんでもないよ……」

これが私の仕事だってことを見せつけて、褒められたいのだろうか……

「まずはモンスターですよ」
「チッ、ああ、その通りだ」
「今、舌打ちしましたか?」
「気のせいだよ」

「って、トモヤ君どこへ行くんだい!
私はこっちにいるんだよ!」
「あれ?」

知らないうちに結構、魔法帝と離れていた。

どこで間違ったのだろうか?

「えっと、君は本当あのトモヤ君なのかい?
ちょっと、衝撃的すぎる出来事が多々あったのだけど……」
「……」

静かに無視を続ける。

「お~い、お~~~い! 聞いてるかいトモヤ君!」

しばらく問い詰められていたが、いきなりモンスターが大量に現れたのですぐに中断された。


「うわ、大量だね、今日は!」
すぐに激しい戦闘が始まる。

しかし……なぜ、楽しそうにこちらを凝視しながら魔法帝はモンスターを倒せるのだろうか……

僕がモンスターを倒すたび、嬉しそうに見つめる。
こっちは必死で戦っているのに……

「よし、これくらいかな……」

戦いが終わり、一息つく魔法帝。

「う、うまく戦えなかった……」
それに対して自分はヘトヘトだった。
僕は実力がまだまだということを実感する。

「ま、経験あるのみだよ、トモヤ君!」

呼吸一つ乱れず、魔法帝は笑みをこちらに向けていた。

まったく、魔法帝はこれだから、
「かっこよかったですよ!」

それを言うと、大泣きしながらこちらに抱きつこうとしてきた。

「う、やめてください、気持ち悪いです」
「酷い!」

僕は片手を前に出して、魔法帝を静止させた。

「うんうん、でもようやく私の良さに気づいてくれたんだね。やはり私はかっこいいのだ。私はこれをずっとやり続けているんだよ。だからもっと褒めてもバチは当たらないと思うんだ……」

「あ、ハリネズミっぽい動物だ!」
「て、聞いてる!? あ、でもそれは……」

何か魔法帝は言っていたけど可愛い動物に目を取られてほとんど聞けていなかった。

「チュッ、チュッ、チュッ!」

まん丸の瞳を僕に向ける。
ああ、なんと可愛い生き物なのでしょう。

ゆっくりと僕はその動物に近づくき、膝を丸めた瞬間、
「シャアアアアァァァ!」

小動物だと思っていた生き物は1メートル以上の大きな口を開けてきたのだった……

「ギャアアアアァァァ!」

そこからは、魔法帝が助けてくれるまで必死に逃げた。

「はぁはぁはぁ……魔法帝、すぐに助けてくださいよ……あんな……あんな小動物が凶暴なモンスターだったなんて……」

「あれは、ビッグマウスだね!」
「ネズミと口をうまく掛け合わせているな!」

元気な声を出しながらも自分の顔はまだ震えていた。

「結構凶暴なのに、君は近づくから驚いたよ。
いやー、まさか何も知らずに近づいているなんて私も思わなかったからね」

自然と膝を抱えて魔法帝の横に座る。
今までに感じたことのない恐怖だった。

「動物……怖い、もう帰りたい……お母さん……」
「これは相当なダメージを負ってしまったね」

魔法帝は頭を掻きながらため息をついていた。

「そして、まさか君がそんなにモンスターについて常識がないとは」
「うっ!」

嫌なところを突かれて違う意味で、また体が震えてしまう。

「ええっと……それは……」
「いいんだよ、トモヤ君! 苦手なことは誰にでもあるさ!」

その純粋無垢な笑顔が余計に自分の心の傷を痛ませる。

「君が魔物についてあまり知らないなら、今度は私が先生になる番だね!
今日からは私も授業を行うことにするよ!
だから君も生徒になりなさい!」

今度は逆の立場になれるのが嬉しいのか、腕を組んで仁王立ちをしている。

いつもの自分なら断っていただろう。
だってこの人、すぐ調子に乗るし、鬱陶しいことがあるし、すぐに感動するし、うるさいし、子どもっぽいし。
ちょっと魔法帝に対して言い過ぎかもしれないが……

しかし、今回は自分自身も悩んでいたことだ。あまりに常識知らずで危なかったことを何度も経験している。
だからこそ、そのお誘いはとても嬉しかった。

「はい! お願いします!」

引かれることもなく、素直な返事だったからか、魔法帝はすこし驚きながらもまた一段とテンションが高くなっていた。



「ま、魔法帝様、そして雷の助手様、我々の村をお救いくださり、ありがとうございました!」

「お兄ちゃん、おじさん、ありがとう!」
「お、おじさん……こ、こほん、礼には及ばないよ。私は当然のことをしたまでだ!」

ちょっとおじさんと言われたことを引き攣っているらしい。

村の女性に子ども、年配の方にガタイのいい青年。
さまざまな人に見送られてこの村と別れを告げる。

「お、おじ、おじさんって言われた。
私、これでもまだ三十代前半なんだが……」

「はいはい、魔法帝はまだまだお若いですよ! 元気出してください。
それに今から、一緒に魔法で色々実験するんですよね? どこか荒野を見つけて、気を紛らわしましょう!」

それを言うと、急に元気になった。

「そうだった、そうだったね!
私の魔法も見せちゃうよ!
今回は本当にかっこいいからね!
何回もかっこいいかっこいいって言わせるよ!」

「はい、楽しみにしています!」

元気が戻ると魔法帝は荒野を探すため、すぐに空へ昇って行かれた。



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