雷魔法が最弱の世界

ともとも

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任務

奴隷

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初めての任務が終わり数日。

僕たちは大金を手に入れ、怯えながら生活していると、次の任務がミーティアに送られてきた。 


「はあ! 任務だよ任務! また俺たちお金持ちになるのかな! でも大金を持ちすぎるのは怖いな……」

「たぶん、今回のは運がよかっただけだよ。
調子に乗ると、痛い目みるよマネト」

「そっ……そうだよ……今回は運がよかっただけ……次は死んじゃうかもしれない……
やっぱり嫌、任務行きたくない!
俺、怪物に追いかけられるのは懲り懲りだよぉぉぉ!」

せっかく、やる気の出ていたマネトだったのに、僕が指摘したせいで文句を言い始めてしまった。

女性陣が僕に対して、鋭い視線を向けてくる。

悪いのは僕ではないのに、この対応はどういうことか。
マネトに対してみんなが甘くなっているような気がする。
それとも、マネトのこの衝動を諦めているのか。

どちらにせよ、僕を責めるのはお門違いだと主張します。

そんな僕はニ対一なので言い返せませんが。


渋々、三人で嫌がるマネトを引き剥がした。
こう言う時にだけ見せるマネトの馬鹿力には大変苦労する。
まぁ、サナの力がそれに勝るのでありがたい話ですが、男としては恥ずかしい。

いつも陰でセクアナに「情けないなぁ」と言われてます。
自分でも力の差をひっくり返すために努力はしている。

森でキャンプをする時は、限界に達するほど枝を積んだり、暇な時は筋トレしたり……

努力しているのにサナはいつも倍ほどの量を持ってくる。
彼女の力にたどり着ける想像がつきません。


マネトが震えながらも準備ができたようなので、この町を出発した。

着くまでの野宿の期間、サナに腕立て勝負を挑んだところ、完敗しました。
まだまだサナの強さに追いつけそうにない。




というわけで、第二の任務の場所に着く。

街の名はメツバニス。

ここは王都に負けず劣らずの大都市。
城壁は高く、中央には大きな貴族の屋敷。
街の外側は大きな商店街となって賑わうという作りになっている。

王都と比べると全体の面積こそ半分ほどになる。しかし、それに負けないほど人口、物の流通、貴族の屋敷、城壁の高さ、商売などが栄えている。
これだけ大きいからこそ、魔法騎士がこの街に護衛年で任命されている。

これらのことを含め、メツバニスはとても栄えている街だと聞いていた……


だが、それは聞いていただけの話であって、百聞は一見にしかず、現実は違っている。

「ねぇ、俺この街、結構栄えてるって噂を聞くんだけど、もしかして道間違えたかな?」
「トモヤじゃないんだから、そんなわけないよー」

「そこで、僕の名前出すの、おかしくない?」

ギロリとセクアナに睨まれる。
「すいません、初任務で道に迷ってしまって……」

まだセクアナはあの時のことを許していないようだ。

「だが、栄えているとは言えないな、王都と比べると街の背景も人々も、暗い気がするぞ」

正直、みんな固まっていた。

建物はひび割れ、街に住んでいるほとんどの人が汚れた服を着ている。
商店街の人は笑顔で商品を宣伝しているが、心から笑っているように見えない。
まるで、商品が売れないと今日の食事が食べられないみたいな必死な表情だ。
がっちりとした人もあまりおらず、ほとんどの人の腕が細い。

王都のように広く、栄えていると聞いていたからこそ、この景色を見てあまりいい雰囲気を感じなかった。

極め付けに、奴隷がいた。

「大人くししやがれ!」

泣き叫ぶ子どもに向かって、大柄の男が棒で殴っていた。

小さなうめき声をあげると、その子どもは大人しくなる。

そんな光景に目を背きたくなる。
だって、僕らは見ているだけで行動を起こせないのだから。ただ、哀れな目で彼らを見ことしかできない傍観者。

心が痛くなる。


奴隷は木で作られた檻に隷属されている。
獣人にエルフ、ドワーフなど。そのほとんどが子どもだった。

親に売られた……いや、人間の手によって誘拐されているのだろう。
金のために動く悪質な考えだ。

違う種族、それだけで差別し、誘拐し、隷属する。
人間の所業とは思えない。

灰被りの服に悪臭を放つ肌、咳き込む子ども。
それらのせいで街の人たちはゴミを見るような視線で彼らを見つめている。

酷い扱いをされていた。


この世界に来て奴隷という存在を初めて見た。

始めに暮らしていた、田舎で存在するなんてことはありえない。
王都も景気がいいのか、そんなものに頼る者がいないのだろう。だから、みることもなかった。

今までの暮らしは、平和だったのかもしれない。

しかし、メツバニスにはいるのだ。

泥沼な現実を思い知らされたようだ。
もしかしたらまだ、他の街でこの現状は続いているかもしれない。
そんな不安も感じてくる。


僕がこの世界に転生した理由。
それは魔王を倒すためだけではないのかもしれない。
セクアナがこの世界を変えるため、自ら降り立った訳が少しわかった気もする。


そう、自分の中で何かを納得させ、現実逃避しているのも束の間。

一人が感情を抑えきれずに爆発する。

「はぁはぁはぁ……ぐっ……!」
サナの様子がおかしくなった。

すごい汗を流して、呼吸の頻度が速くなる。

「サナ、どうしたんだ?」
「大丈夫、サナ? 酷い汗だよ、すぐに私の魔法をかけるから」

僕とセクアナが駆け寄って、心配するが力強く追い払われた。

「ふ、ふざけるな……よくも子どもに向かって非人道的な行いをできるな!」

今までに見たことのない鬼の相貌になっていた。

「クズな人間共が……」

気づいた時、サナは魔法で剣を具現化していた。

鋭い目つきに、全身から滲み出る殺気。

パーティを組んでいる僕らでさえ、一瞬、動くことができなかった。

ゆっくりとサナは奴隷商の方へ近づく。
まるで人を殺しそうな顔で。

「サナ、何するつもりなの!」

セクアナが大きく叫んでも、サナには届かない。
ただ一点を見つめて歩き続ける。

そんな危険な状態を感知したのか、マネトが羽交い絞めにする。
そのままサナに向かって叫ぶが、勢いが止まらない。

僕とセクアナもマネトに続いてサナを止めるために動いた。

三人なら止められると確信していた。

しかし、止められない……

どうにか気持ちを抑えないと、サナがいなくなる。
人殺しとしてもう一緒に旅できない。

とにかく必死だった。
これまで以上に力を使う。

パチン!

セクアナがサナの頬を叩いた。

この時、サナの動きがやっと止まった。
正気に戻ってくれたようだ。


「サナ、もしかしてその剣で奴隷業者の人たちを殺そうとか考えてなかったよね! 人を殺しても何も変わらない!」

セクアナが問い詰める。

「何を甘えたことを言っているのだ! あいつらは子供を誘拐して奴隷にしているのだぞ! それに合わせて、泣き出すと棒で痛めつけている。
そんな奴ら、死んで当然だ!」

サナは怖い顔で怒鳴り返す。

「どうしてそんな簡単に人を殺そうなんて思えるの、おかしいよ!
それにサナのやろうとしていることは、ただの自己満足じゃないの!」
「なんだと!」

「あの人たちを殺したとしても、子ども達はどうなるの! 誰も助けてもらえない、誰も教えてくれない、そんな街に解放して、助かると思ってるの! ちゃんと責任取れないよね?」

「なら、セクアナはあのまま子ども達を放置しろというのか! 誰かにずっと隷属させられたまま一生を過ごす。そんな生活をする子どもを見捨てろと! 
セクアナがそんな奴だと思わなかったぞ!」

「違う!」

ジャリ、ジャリ………

セクアナはポケットから袋を取り出す。

「はい……これ……」
「……どういうことだ?」

両手を出すサナの手に落とす。
その中からは光沢を見せる金貨が大量に入っていた。

「これなら、平和的解決でしょ?」

険しい顔を崩して、セクアナは笑顔を見せる。


「たぶんこの街にはもっと奴隷がいると思う。全員を助けれるほどの財力はないし、あの子達がだけが助かるのは不公平かもしれない………
だからさ、私たちは頑張らないといけないのだと思うよ。頑張って頑張って、必ず他の子達も解放できるようにしよ、サナ!」

「あぁ、そうか……その通りだセクアナ!
……すまなかった、みんな、昔を思い出して、取り乱した。ちゃんと引き止めてくれて感謝する」

「よかったよ、正常に戻ってくれて。
だけど……」

言いながら、僕は指差す。
その先にはガタガタと全身を震わせるマネトが。

「怖いよ怖いよ……女性の修羅場だ……仲間で争いなんて怖い……俺まで巻き添い喰らう、嫌だ、仲間で殺し合いになるんだ……」

サナを静止するまでは良かった。だが、サナの殺気が悪いように影響したようで、簡単には戻らない精神状態に。
途中からサナとセクアナまでが喧嘩を始めたことも合わさって余計に怯えていた。

妄想の中では僕たち四人が戦っているらしい。

しばらくサナとセクアナには近づけないかもしれない。


「なら、私はあの子達を育てるために行ってくるよ」

サナは奴隷商の方へ行ってしまった。

サナは男の前に立つと、いつも通り顔を真っ赤にしていた。
さっきまでの殺気が嘘のような。

「っ………そ、その、全員……私、が買うぞ!!」

緊張しながらも、髭を生やした男にお金を渡す。

と、大柄な男がサナに話しかける。

「その、さっきの話、聞こえていたぜ……俺たちも悪いことだとは思っている………
だけど、こうやって汚れた仕事でもしない限り、この街では食っていけないんだよ!」

サナの顔が少し強張る。
奴隷商の熱心な訴えに引っかかる。

この国には何か闇がある。
そう思えるほど、その人間は心が壊れかけていた。
普通では考えられないことを言うのだから。


奴隷商は曇った顔をしながらドアを開けた。
もちろん中にいる子どもたちは怯える。
当たり前だ、見ず知らずの相手にいきなり飼われるのだ。

全身を震わせながら、細い腕を前に出す。
そのまま柵を持ちながらゆっくりと檻の中から出てきた。

つけられていな鎖も奴隷商の持つ鍵によって外される。

計六人の奴隷が解放されたのであった。

代金を払い終えると、奴隷商は嘆息しながら、
「ま、毎度あり……誘拐しといて、こんなことを言うのもアレだが、こいつらを可愛がってくれ」

そう言い残すと、商人は下を向いて消えていく。


改めて、サナは子ども達と対面した。
虚ろな目で、全てに絶望している子ども達。

怯えている。だから
サナは気高い、いつもの自信に満ち溢れた顔で、
「私の名はサナだ、気軽にサナと呼んでくれ。君達には私のように汚れた奴になってほしくないからな………」

サナは何かを思い出すように、空を仰ぐ。

「君達はもう自由だ! 別に従いたくないのなら、従わなくていい。行きたいなら、森に帰ってもいいぞ。
ただ、助けてほしい、そう思うなら、私のところに来い! いつまでも君たちの味方でいよう、私は主人だからな」

サナは六人に近づいて抱擁する。

「両親と別れて辛かったな、悲しかったな……私が必ず幸せにして見せるからな!」

静かだった、子ども達の目が光る。
サナの言葉で人間らしい心が少し芽生えたようだ。

まだ慣れるとまではいかない。
それでも、サナが僕たちの元に戻ってきた時、子ども達はサナの後ろに必ずついてきていた。


僕たちはこれからメツバニスの闇、そして任務に立ち向かうことになる。








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