君と二人の自分

ともとも

文字の大きさ
16 / 28

しおりを挟む
薄暗い天気の中、君は過去の話を下を向きながら話す。

「・・・その時、私は泣けませんでした。
絶望しすぎていたのか、夢だと思ったのか、涙ひとつ出ませんでした・・・・」

暗い感情で眼鏡が曇る。

「そのあと、私が自殺しようと考えていたことがわかり、両親は喧嘩ばかりするようになって離婚。フフフ、笑えますよね、こんな話」

気持ちを紛らわすために無理に笑顔を作っていた。

「だから、私に関わると酷い目に合います」
君の悲しそうな顔を見て僕は何も言えなかった。ただ辛そうにしている君を見る事しかできない。

「私は人を不幸にしてしまう・・・・・・・
私には生きる価値がない・・・・」
全てを言い終えると、黙ってしまった。

しばらく強い風の音しか聞こえなかったが、雲の中から一筋の光が僕達を照らした。

「僕は、君が生きてくれているだけで嬉しいよ!」

心の底から思っている言葉を言った。
すると、一滴の涙が君の目からポロリと落ちる。

「あれ・・・・なんでだろう・・・どうしてこんな時に・・・涙が・・・・ぐすん!」
軽く手で拭いながら涙が出ていることを不思議がっている。

「はっ!」
僕は目を見開いて、全身をガタガタと震わしていた。

女の子が泣くところを初めて間近で見てしまった。
しかも僕が何か言ったせいで泣いている。

どうしよう、どうしよう。

顔が真っ青になった。

ええっと、確かこういう時は・・・・
あっ、そうだ。優しく、優しく。

心を落ち着かせるために僕がこういう時、して欲しいと思うことをやった。

君に少し近づいて背中をさする。

「ああ、えっと・・・・・」
普段やらないようなことをやって顔が赤くなる。

「朝空さん・・・・  僕は君が生きていてくれて嬉しかったです。いつも同じ友達と過ごして、退屈な日を過ごしていました。そんな時に僕から誘って、初めて作れた友達が君です。正直、あまり会話がなくてしょうもないことを話しただけだったかもしれないけど、僕にとってはとても大切な日々でした」

胸を手に当てて、思っていたことを素直にいう。

「ハトに餌をあげて楽しんだり、パンを一緒に食べて味を楽しんだり、僕にとってはそれだけで楽しかったんです! もう朝空さん、いや雪菜さんは一人じゃないです!」
笑顔を君に向ける。

「ああ、えっとすいません。つい熱く語ってしまって・・・・・」
頬をかきながら自信なさげに下を向く。

雪菜さんは僕の方をまっすぐ見ていた。
また強い、光が僕達を照らす。

「フフフ・・・ハハハハハハハハ!!」

雪菜さんは腹を抱えて今まで聞いたことのない大きな声で笑い出した。笑いながらも瞳の端から涙が流れている。ポロポロと流れながらも雪菜さんは笑い続けた。

いきなり笑い出したから始めはギョッと驚いたが、君の笑顔をもらうように僕も声高らかに笑った。

雲が吹き飛ぶような笑顔だった。

空は少し薄暗くなり、ちらほらと星が見えている。

一頻り笑い終えると雪菜さんから話を持ちかけ出した。
「祐介君・・・・   相談なんだけど、この話を清水さんにしても友達でいてくれるかな?」
今までの雪菜さんとすこし違って見えた。
そして頼るように僕に相談してくれたことに感動している。

おっと、なぜか涙が一滴出てきたぞ。

「ああ、えっと」
次は僕が心配された。
さっきまで僕が慰めようとしていたからすこし恥ずかしい・・・・

「ごめんなさい。すこし心を取り乱していました。必ず清水さんもそばにいてくれるよ。もし離れても僕が君の友達でいるから安心して!」
「フフフ、ありがとう!」
はにかんだ笑顔で、すこしくだけた口調で君が言った感謝の言葉。それがいつまでも頭の中で響いていた。

その姿はとても美しかった。

次の日、同じ場所へ来て、清水さんにも同じ話を雪菜さんはした。

僕はベンチの端に座り、すこし二人から距離を置いている。
この三人が揃うと自分一人だけ性別が違うから部外者のようですこし気まずい。

話終わると清水さんは君を抱き寄せた。
そして優しい口調で喋りだす。
「ずっと、苦しかったんだね。ありがと、ちゃんと話してくれて」
清水さんは君の悲しい過去に泣いていた。

すごいよね、人のために泣けるなんて。

あまり清水さんと面識がなかったけど、これを見て信用し始める。

そう思うと気まずいと思っていた心は無くなって、距離をとっていたところからすこし近づいた。

「私、朝空さんともう二度と離れないから。ぐすん、これからも友達でいようね! そしてたくさん遊びに行こう。悲しい過去を忘れるくらいの楽しい思い出を作ろう・・・・ぐすん」
力強く、抱きしめていた。
まるでもう離さないような力強さだ。

心を落ち着かせるために、パン屋で買ったパンをみんなで食べた。

「村上君、君もよろしくね! これからも友達として!」
「は、はい!」
新しい友達ができて、心の中でとってもはしゃいだ。

こうして、朝空雪菜さんは昔ほどではないがすこし明るくなった。
僕と清水が友達になって、もう一人ではなくなった。

雲ひとつない大空の下で君は笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...