君と二人の自分

ともとも

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試合の応援

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「頑張れぇぇぇぇ!?」

快晴の日差しが強いある日、あるスタジアムで大きな応援の声が鳴り響く。

たくさんの観客に囲まれながら、計二十二名のユニフォームを着た選手たちが必死にサッカーの試合をおこなっている。

「翔ちゃん、頑張れぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
僕も応援団の人達に負けないくらい、大声で親友の一人である翔ちゃんを応援している。

横には雪菜さんと清水さんがサッカーを観戦している。

今のようになったことの発端は家にいる時に来たLINEから始まる・・・・

僕の心がモヤモヤしていた頃、翔ちゃんから試合のレギュラーに入ったというメッセージがきた。

この時は心に余裕がなくてしばらくすると忘れていた。

しかし、清水さん達と仲良くなってから教室で改めて翔ちゃんから誘われた。

「俺の頑張る県大会、見にきてくれよ。絶対かっこいいところ見せるから!」
両手を合わせて頼み込まれたのである。

一応、LINEでも見に行くということは送っていたので「分かってる分かってる」と了承した。

でもさすがに一人で行くのは寂しいと思い、少ない友達を誘った。

まず優を誘ってみたが、彼は大事なコンクールが近いらしくて「練習するからいけない」と断られた。

次に清水さん達を誘う。

いつも通り広場に集まって雑談をする。
近くでパンを買ってハトにパンをちぎりながら。

クルッポ、クルッポ

数匹のハトが集まってパンを突いて食べる。

「んー、今日のメロンパンも美味しいねゆ
「うん、そうだね。私、今日はクリームパン・・・・美味しい・・・」
少しぎこちないけどタメ口で雪菜さんは話すようになった。

「僕はカレーパン。ガッツリしたものが今日は食べたかったんだ!」
始めはパンの話で盛り上がる。

「最近の数学って難しいよね。新しいことが次々と出てくるから・・・」
「確かに分かります・・・・国語で作文を書けって言われるとすごく悩みます」
「いや、やっぱり英単でしょ。1日どれだけ覚えないといけないか」
微妙に話が噛み合わない。
僕達はいつもこんな感じだからどうでもいいけど。

話が夢中になって、翔ちゃんの約束を忘れるところだった。
「ねぇ、翔ちゃんの試合の応援に来てくれないかな・・・・   人数がたくさんいると翔ちゃんも喜んでくれるし、見に行ったら絶対楽しいと思うよ!」

試合の魅力を全力で伝えて意地でも一緒に見に来てもらおうと考えていた。

すると簡単に二人ともOKしてくれた。


そして当日、始めのように会場はとても盛り上がっている。

試合が始まる前だというのに周りにはお祭りのようにたくさんの売店があり賑わっていた。

「みんな、今日は僕から誘ったからなんでも奢るよ。好きなもの見つけたら言って!」
一度はカッコよく言ってみたかった「奢る」という言葉。自分でもすこし今の発言はかっこいいも思っていた。

「あ、私は弁当も水筒も持ってきたから大丈夫だよ」
「あわわ、えっと。私も大丈夫・・・サンドイッチにジュースを持ってきたから。よかったら祐介君も飲む・・・?」
「ああ、そう・・・・」
カッコよく決まると思ったが現実は思い通りにならず、恥ずかしい発言だけが心に残る。
ああ、まるで黒歴史を作ったような気分になった。

しばらくスタジオ内を歩いて、座るところを決めた。
危ないかもしれないけど、それでも間近でみたかった僕は一番前の真ん中の席に座った。

ウォーミングアップしているところを見ていると、翔ちゃんを発見した。

「おーい」と手をするとこちらに気がついて僕の方へ走ってきた。

「よお、祐介! ちゃんと来てくれてありがとな」
「いいよそんなお礼なんて。期待しているよ。かっこいい姿を見せてね!」
「おう、任せとけ!」
ポンと胸に手を当てて自信満々で答えていた。

「あ、これはどうも朝空さんと清水さん。僕達の応援に来てくれてありがと」

横の二人に気付くと丁寧に挨拶をした。
ああ、もう。
このすぐに気持ちを入れ替える姿を見るだけでかっこいいと思ってしまう。

「楽しく見してもらうよ。頑張ってね!」
「頑張ってください・・・・」

雪菜さんはあまり話したことがない人にはまだ敬語で、すこし恥ずかしがっているように見える。

「ありがと!」
そう言って翔ちゃんは練習へと戻って行った。

「それにしても、村上君と似合わないくらい明るい友達だね」
「うう、ごもっともです・・・・」

確かに僕と一緒にいるのが不思議だと自分でも思っているので、俯いてしまう。

「ああ、ごめんね。傷つけるつもりじゃなかって」
「フフフ」
静かに雪菜さんも笑う。

「でも、村上君が友達を大切にしているからこそあんな明るい子でも一緒にいるんじゃないかな?」
「フフフ、そうですか。エヘヘ!」
褒められてすこし照れてしまう。
清水さんはやっぱりいい人だ。

試合が始まるまで一時間くらいかかったが、
僕はずっと翔ちゃんの練習を見ていた。
横にいた二人は試合が始まるまで、あたりの売店を楽しそうに周っていた。

そして時刻は11時ジャストの時、ピーっと大きなブザーがなって試合が始まった。

相手ボールからだったけど翔ちゃんはすぐにボールを取り返し、カウンターが始まった。

フォアードである翔ちゃんは次々とボールを取りに来る選手たちを抜かして行った。
サッカーを知らない僕でも「すごい」と思えるほどのすごいドリブルだった。

ゴールに近づくとパスを仲間に出してそのまま敵にマークされないように様々な場所に素早く行動する。

見ているだけで自然に大きな声を出していた。
素晴らしい動きに観客の応援も大きくなる。

横で見ていた二人は興奮しすぎている僕を見てすこし引いている。
それでもここってい時にはしっかり応援してくれてありがたいと思う。

僕が応援されているわけではないが、観客から、
「翔太、頑張れ!」
「どんどん抜いてやれ、翔太!」
ということを聞くとなんだか嬉しくなった。

前半残り5分の時に相手のファールでフリーキックを蹴れることになった。
「ここで得点のチャンスがきたぁぁぁ!?」
スポーツアナウンサーのように大きな声で僕は誰かに解説していた。

しばらくチームで話し合っていた。誰がフリーキックを蹴るか相談しているのだろう。

そしてまさかのキッカーは翔ちゃんが選ばれた。
これには驚いて、全力で応援していた。
「決めろぉぉぉ!」
両手を握って僕は祈る。

その願いは見事に叶い、ゴールを決めた。

とてもきれいなカーブを描いたボールはゴールの右端のコストギリギリに入った。

周りからとても大きな歓声が巻き起こった。持っていたタオルを投げるほど興奮している人もいた。

僕達三人も大きな拍手を送った。

前半、一対0で試合が終わった。
このまま守り切れば関東大会へ行ける。
この試合はとても大切なものだった。

後半、相手チームのとても素早い電光石火ですぐに一点決められた。

そして試合は同点のまま進み、残り五分まで接戦が繰り広げられた。

みんな疲労が溜まり走るだけで苦しそうだ。
会場は応援よりも、最終局面ということでみんな息を呑み静かに見守る。

選手たちがパスをもらおうと発している大きな声が響いている。
喉がカラカラになりながらも必死で試合に勝とうと頑張っている。

汗をかき、これまでやってきた練習の全てをこの試合にぶつけている。
どちらも頑張ってきたんだろうな。無我夢中にボールに意識を向けている選手を見ていると肌に伝わってくる。

ピーーー

笛が鳴ると同時にどちらかのチームがゴールを決めた。

結果は・・・・・二対一で翔ちゃんは負けてしまった。

たくさんの人が男泣きしていた。特に三年生は最後の試合だったこともあり、全員が肩を組んで泣いていた。

翔ちゃんは泣かずに我慢している。いつも笑顔を絶やさないからこそ、心が締め付けられるような気持ちになる。

親友と思っているからこそ彼の気持ちは僕にとても伝わってきた。

「ああ、負けちゃったね・・・」
「残念でしたね・・・」
二人も俯いて悲しんでくれた。

僕は静かに翔ちゃんを見ていた。

「あ、二人とも今日は僕の無茶ぶりを聞いてくれてありがとう!」
「あ、うん。私、見ていてとっても楽しかったです!」
「うん、私も楽しかったよ。まさかここまで大きな声を出すとは思わなかった!」
「フハハハハハハ!」
三人で顔を合わせて笑う。

「本当にありがと! 僕はすこし残るから、もう帰っていいよ」
「そっか。じゃあ私達はもう帰ろっか!」
「そ、そうだね・・・」

帰ろうとする時、雪菜さんが止まって聞いてきた。
「ど、どうして残るの・・・?」
「ああ、えっと。翔ちゃんを慰めるためかな・・・」
すこし照れていた。

「うん、まぁそんな感じ・・・・」
照れ隠しのように僕は頬をかく。

「翔ちゃんはいつも明るくて僕とは違ってまっすぐ突き進む奴なんだよ。だから今、試合に負けてとても悔しい思いをしていると思う。だからこんな時こそ僕が力にならなきゃって思って・・・・  ってなんか恥ずかしいな。こんなこと言うの」
「フフフ」
君は軽く笑った。

「やっぱり祐介君は友達思いだね」
そう言い残して帰っていった。
雪菜さんがだんだん変わっていく姿を見て安心してくる。

二人に大きく手を振って別れた。
そして僕も会場を出る。

ぞろぞろと観戦していた人達が帰る中、僕は翔ちゃんが出てくるのを待っていた。

もう観客がほとんど通らなくなった頃に悲しみながら出てくるサッカー部の人達が出てきた。

その中から翔ちゃんを見つけて駆け寄る。
「おう、祐介・・・・   どうだった俺達の試合」
「感動したよ! こんな物語のようなものが観れるとは思わなかった。本当に凄かったよ!」
「フハハ、そうか感動したか!」
すこし顔が引きつっていた。

「翔ちゃん。今から君の大好物のカツ丼を食べに行こう! 悲しい時こそお腹を膨らませて楽しもう」
彼の腕を掴んでカツ丼屋さんへ行こうとする。

「フフフ、お前にはいつも助けられてばかりだよな。ありがと!」
「何言ってんの? 僕も翔ちゃんには助けられているよ。吐いてしまうくらいお腹いっぱい食べよ! どんな愚痴でも今日は聞くよ」
「おう、そうか!」

いつものように強く肩を組む。でも少しだけ力が弱かった。
「ハッハハ! お腹いっぱい食うぞ!」

こうしてカツ丼を食べにいった。

この後、店が閉まるまで翔ちゃんから愚痴を聞かされた。
まさかここまで溜まっているとは知らなかった。

途中からは僕も記憶がなかった。
ただ同じことを何回も繰り返し言う翔ちゃんに「はいはい」と適当に流していたと思う。













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