君と二人の自分

ともとも

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幼少期 後編

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相変わらず、学校では一人だ。
たまに敬助君が話しかけてくれるけど、堀北さんにあんなこと言われたから、少し避けている。

敬助君のことが嫌いというわけではないが、彼女の目が気になって話せない。

なによりも虐めがなくなってよかった。

キーンコーンと鐘が鳴り、学校が終わった。

終わると同時に誰よりも早く教室を出た。
この苦しい場所から早く逃げるためや剛君と会うためだ。

あれ以来、友達になった剛君と毎日遊んだ。
唯一の友達で信じれる人がいると、心がここまで軽くなるんだと思う。

彼と初めて出会った橋をいつも待ち合わせ場所としている。

季節は夏に近づいていることもあって川でよく水遊びをしている。水切りや水の掛け合い。トランプなどのゲームを持ってきて遊ぶ
こともある。

たまに剛君が孤児院でお小遣いをもらった時はゲームセンターへ行ってメダルゲームやクレーンゲームをする。
意外に剛君はクレーンゲームがうまくて、この前遊んだ時は、両手くらいの小さなのぬいぐるみを取ってくれた。

今日も橋へ行く。

先に剛君がついていて、肘を手すりにつけて暇そうに待っていた。

「おーい!」
手を振りながら声をかけると私に気づく。

「遅いぞ。何やってたんだよ」
「いや、遅いっていっても私、学校が終わったらすぐにここへきたよ。剛君こそサボっていたんじゃないの? フフフ」
「ちゃんと学校には行ってるよ。まぁいい、今日も遊ぼうぜ」

今、こうして剛君と遊んでいるなんて不思議だ。
ヤンキーみたいなやんちゃな子と友達なんて、ある意味面白い。

フフフ、と笑いながら彼の横に並ぶ。

この何気ない生活が私は幸せだった。

しかしある事件で壊れてしまう。
それはある日の学校でのことだった。


ガランと教室へ入るための、ドアを開ける。
そして誰にも挨拶をせず静かに席へと座る。
一人なので家から持ってきた本を読む。

最近、学校に来てからの日課だ。

読書というものをあまりしてこなかったが、読んでみると意外にハマってしまった。

休み時間に読書していると、1日でたくさんのページが読めて一週間に一冊くらいのペースで読んでいた。

いやー、しっかし面白いねこの本は。

一人、心の中で感心していた。

「おはよう!」
前を向くと、敬助君がいた。

私と比べて彼は誰とでも仲がいいから、高嶺の花のような存在になっていた。

そして笑顔が眩しすぎて、彼と話すのが苦手になった気がする。

「何読んでるの?」
「えっと、これは家族系の物語ですね・・・・・」
「へぇー、面白そうだね。僕も一緒に読みたいな!」
「アハハ、一緒ですか・・・・」
ひきつりながら笑顔を見せる。

「あっ! 敬助君おはよう! そんな本の話なんてほっといて私と話そうよ。昨日、どんなテレビ見てた?」
堀北さんが話の中に入ってくる。
前に言った通り、彼女は敬助君のことが好きなようで、よく私達が話していると会話に混じってくる。

別に敬助君のことを私はなんとも思ってないので、いつもすぐに身を引いて、二人から離れる。

離れようとすると珍しく敬助君に呼び止められた。
「あ、朝空さん。今日の放課後少し時間あるかな? 大切な話があるんだけど」
「え、放課後ですか・・・それはちょっと・・・・」
「お願い! 大切な話なんだ」
両手を合わせて頼まれた。
「あ、はい。わかりました・・・・」

堀北さんに睨まれながらも、渋々頼みを受け入れた。

今日は剛君に怒られるな・・・
放課後の敬助君の話が終わったあとのことしか考えていなかった。


そして放課後、誰もいなくなった教室の中に私と敬助君の二人がいた。
「あの・・・・  話とはなんでしょうか?」
「ごめんね。僕のために残ってくれて。その大切な話っていうのは・・・・・」
敬助君は顔を赤くしながらほおをかきながら、横を向いている。

しばらく静かな時間が訪れた。
そして大きく口を開いて敬助君は言った。

「好きです! 僕と付き合ってください!」
「ああ、忘れ物・・・・・」

告白したと同時に堀北さんが忘れ物をしたようで教室に入ってきた。

「・・・・・えっ・・・・」
最悪のタイミングだ。
焦りすぎて体からものすごい汗が出てくる。

しゅ・・・・・修羅場・・・

そのワードが頭をよぎり、体が震える。

怒りをぶつけられるかと思ったが、堀北さんは静かに帰っていった。

「あの・・・  返事はどうなのかな・・・」
「あっ、すいません。えっと返事ですよね・・・・・」

しばらく考えて、きっぱり言った。

「ごめんなさい。私はあなたとは付き合えません」
深く頭を下げる。

「そっか、ごめんね。いきなり困らすようなことを言って」
彼は今までに見たことないような悲しそうな顔をしていた。
私の返事を聞くと彼は後ろを向いてとぼとぼと、小さな背中をして帰ろうとした。

「あの、告白していただいたのはとても嬉しかったです!」
最後にそう言ったが、返事は返ってこなかった。

思わぬ出来事で、頭がしっかりと回らなかった。
だから剛君と遊ぶ約束を忘れていた。


途方に暮れて、私もとぼとぼとゆっくり歩いて家へ帰った。

この時、修羅場にならなかったことがなによりも嬉しかった。
そして安心していた。

しかしまたエスカレートした虐めを受けることになるとはまだこの時、知りもしなかった。


次の日も学校へ行き、いつも通りの日課を行う。
だが、少し違っていたのは教室の空気である。

昨日、クラスで人気者の敬助君が私に告白したっていう噂が飛び回っていた。

どうなったの? 告白は成功したの? などたくさんの人が小さな声で囁いている。

少し居心地が悪かったが、クラスメイトのことなど無視して読書に集中する。

私に取っては嫌な空気だったが、なんの問題もなく今日一日を乗り越えた。
そう思っていたが、帰る途中に引き止められた。

歩いているといきなり堀北さんの取り巻きが目の前に現れる。
そして二人がかりで私の両腕を掴まれた。
「ちょっと私たちに付き合ってくれない?」

そう言われながら、無理矢理連れて行かれた。
断る暇も与えない。

そして女子トイレに行くと堀北さんが仁王立ちで立っていた。

「ほらよっと、フハハハハ」
投げ捨てられて、汚いトイレの床にこける。

「あらあら、汚れちゃったね! これはきれいに掃除しないと・・・・」
「ハハハハハハ!」

ビシャ

私はバケツいっぱいにくまれた水をかぶった。

「なんで、なんでこんなこと・・・・」
小さな声で彼女達には聞こえない。

「ほら、ブラシでしっかり、擦るらないとね」
そう言ってブラシを持って近づいてくる。

「アハハハハハハ。地味子、本当笑える」
だんだん近づいてくるその足音は、恐怖でしかなかった。
体全体が震えて動かない。

「ではきれいに擦りましょう!」
そう言ってブラシが私に触れようとした時、トイレに誰か来た。

同じクラスにいた女の子だ。
その子に私は、勇気を出して言った。
「助けて!」

救いを求めたが、堀北さん達を恐れるように逃げていった。

「フハハハハ! 逃げられてるし。マジださい」
「かわいそうだね。アハハハハ」
「まぁ、今日はこれくらいにしておくか」

ブラシを捨てて帰っていった。

私はそのまま倒れ込んで泣いていた。

「ぐすん、ぐすん・・・・・」
静かに一人で泣いた。

この頃から私の心は余裕がなくなり、誰とも顔を会わせず、一人で過ごした。

剛君とも会わなかった。

暴力的ないじめは今日以外はされなかったが、それでも毎日暴言を言われるのはとても苦しかった。

そしてある時、プツンと糸が切れたように自分はおかしくなった。

もう「死」という言葉しか頭の中に入らなくなっていた。
剛君の言葉も心には残っていたが、それでもまたあの日と同じことをしようと考えていた。

そして日曜日、昼食を家で食べてから橋に来ていた。
もう誰が来ても、なんと言われようとも、ここから飛び降りる事しか考えてなかった。

そう思へば、剛君とも一週間くらい会ってないな。

もしかしたらいるかも、という淡い期待もあったが誰もいなかった。

しばらく、橋の上で景色を眺めている。
雲がゆっくりと進んでいくところやカラスが鳴きながら空を飛んでいるところ、川の水が音を立てず静かに流れているところ。

ぼっとしていたから、時間が経つのは早かった。
気づくと、夕焼け空になっていた。
あの時と同じだ。

そう思いながら手すりに座る。

はぁー、私の人生最悪だったな。

最後に自分の今までの生き方を振り返った。

そして迷いなく私は飛び降りた・・・・・・


だが、死ねなかった。

そのまま、川の底へ落ちて死んでしまうと思ったが、空中に静止していた。
いや違う。
誰かが私の腕を掴んでいた。

「くっくくく・・・・」
剛君だった。
片腕を力強く掴んで唸っている。

「離して・・・・」
静かにそう言った。

でも彼は離さず必死に持ち上げようとしている。

「柵、柵を持て!」
俯いたまま私は何もしない。
「離して・・・あなたも死んでしまう・・」

必死に彼は汗を流しながらも、握る力を弱めない。
「なぁ、こんな時だけどよ・・・・ぐはっ! 俺がなんであの時お前と出会ったか・・・・分かるか?」

片手で掴んでいたが両手で私の腕を掴んで引き上げようとする。そして体が始めより、前のめりになる。

「俺もあの時、死のうと思ってたんだよ! 
・・・ヤバイ・・・でも雪菜、お前がいた!
一人だった俺と友達になってくれた!
だから、お前に生きて欲しい! 
俺と一緒に生きて欲しい!」

彼の言葉に私は「生きたい」と思った。
すると、ぶらぶらしていた片手は橋の柵を握り、私も必死に生きようと頑張る。

「生きたい・・・私も生きる!」
柵を持って力を入れたことによって少し体が上がった。
それと同時に剛君の力も一気に出した。
「うう、ぐわぁぁぁ!」

お互いに汗をにじます中、体力が奪われていく。
それでも諦めず「生きよう」と頑張る。

「はぁはぁ、頑張れ! お前なら生きれる!」
私を慰めながら必死に引っ張ってくれる。
視界がぼやけながらも、私は頑張った。

そして、やっとのことで私は手すりをつかめて生きることができた!

「やったよ、剛君!」
喜んで彼を見ると、私を引き上げるために柵から体がはみ出しすぎていた。
それによって頭から落ちそうになる。

この瞬間、走馬灯を見たのか時間がとてもゆっくりだった。

「あぁぁ」
落ちるまで、とてもゆっくりだった。
剛君を助けようとしたが、体が全然動かない。
彼の足が私の顔の横を通る。
もう完全に空中に出ていた。
せめて足をつかもうと意識していた。

ゆっくりだが、腕は動いていて、彼のつま先を掴かむ。
だが、神様は無慈悲だ。
やっとの思いで掴んだけれど、靴が脱げただけで、彼を助けれなかった。

そのまま、剛君は落下していく。

最後に彼はとてつもない光を浴びていた。
こちらを向いて、今までで最高の笑みを向けて私に言った。

「雪菜、楽しく生きろよ!」

ドボン! 

大きな水しぶきの音がする。


剛君は十一歳という若さでこの世を去ってしまった・・・・
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