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幼少期 中編
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橋の手すりを力強く握り飛び降りようとした時、
「なぁ!」
大きな声で声をかけられた。
何かと思い振り返ると、私と同じくらいの歳の少年が少し離れたところに立っていた。
でも小学生とは思えないほどヤンキーのようにぐれていた。
金髪に泥によって汚れている服、そんな人に声をかけられるとは思わず、しばらく固まっていた。
「お前、死ぬのか・・・・・」
こちらを睨んで怖い口調で言ってくる。
「うん、そうだよ。私なんか生きている意味ないし、こんな苦しい思いするなら死んだ方が楽だから・・・・・・」
私は無理に笑顔を作りながら彼に言った。
「そうか」
しばらく、彼は下を向いて俯いていた。
そして彼は私にとって光のような温かい言葉をかけてくれた。
「俺は、お前が生きてくれているだけで嬉しいぜ!」
満面の笑みで彼は言う。
その言葉を聞いてポロリと涙が落ちた。
いじめられてから初めて聞いた優しい言葉に溜まっていた悲しい感情が溢れ出す。
「ぐすん、何で。あなたには関係ないでしょ!」
大量に溢れる涙を拭いながら、彼を突き放すようなことを言う。
涙を流していて気づかなかったけど、彼は私が泣いている隙に距離を詰めていた。
「とりゃ!」
私の体は彼に捕まえられていた。
そのまま力強い腕力で引っ張られ、私達は地面へ倒れ込んだ。
「ガッハハハハ! 捕獲成功!」
大きな笑い声を上げて笑っていた。
一瞬すぎることに私は頭が追いついてこなかった。
心臓のばくばくした音だけが響く。
冷静になった時、死ねなかったことを後悔した。
そして怒りがこみ上げてきて彼を問い詰める。
「ど、どうしてこんなことするんですか!?」
私の怒鳴るように大きな声で言ったが、彼は耳を傾けず私の腕を掴んだ。
「さぁ、俺についてこい! 面白い場所へ連れて行ってやる」
話を聞かず、無茶苦茶なことをしてくる。
彼に手を引っ張られ、私はどこかへ連れられる。
本当は反抗したかったが、泣いたり、自殺を防がれたことによって体は思ってた以上に疲労していて、動かなかった。
彼は力強く走るから追いつくのがしんどかった。
本当、自分勝手なヤンキーだ。
目的の場所に着くとやっと私の腕を解放してくれた。
「はぁはぁ」
私は両手を膝に置いて呼吸を整える。
「いきなりこんなところへ連れてきてあなた、なんなんですか?」
愚痴を言いながら地面へ座り込んだ。
心が落ち着いて前を向くと、そこにはとても綺麗な川と豊かな自然があった。
「うわぁ!」
悲しい心も吹っ飛ぶような景色で思わず声を出していた。
「ガハハハハ! どうだ。ここはいいだろう」
つい彼の思い通りになってしまい、心を入れ替えてムスッとする。
「なぜ私を助けたんですか?」
少し怒りを込めて、問い詰める。
「ふっ、何でだろうな。ただお前に生きて欲しかったからかな」
彼はさっきとは違う少し真面目な顔をしていた。
「それだけ・・・・?」
「それだけ、じゃいけないか?」
「フ、ハハハハハハハハ!」
私は思わず吹き出していた。
久しぶりに笑った気がする。
「おっしゃあ!」
彼は叫んでから走り出した。
そして川の中へビシャビシャと音を立てながら入って行った。
「ガハハハハ! 気持ちいいぜ」
泳いだり、水を上に巻き上げて雨のようなものを降らしりして遊んでいた。
「馬鹿みたい・・・・」
小さな声で言ったつもりだが彼には聞こえたようで怒り出した。
「ああん、今何つった? 馬鹿って言ったよな」
「え、何で聞こえているの・・・」
地味に耳が良くて呆れる。
馬鹿と言ったことが気に食わなかったのか、対抗してきた。
「は、なんだよ。自殺しようとしていた奴に言われたくねえな!」
「自殺」と言うワードを言われて思わず、落ち込んでしまう。
「あ・・・・ すまん、言いすぎた」
深く謝ってくれた。これにはさすが反省しているようだ。
そして真面目な顔をして低いトーンで質問してきた。
「なぁ、お前何があったんだ?」
彼に虐めのことを話すのは苦しかったが、勇気を出して話し始めた。
「最近、友達に虐められるようになって・・・・・・」
どんなことをされたか。私がどんな思いをしていたかなど苦しみながら淡々と話した。
意外にも苦しみを吐き出していると気持ちが楽になった。
話終えると、彼は私を馬鹿にしてきた。
「はぁー、そんなしょうもない理由で死のうと思ったのか?」
「しょうもない・・・・・・」
その言葉を聞いて、全身に変な衝撃が走った。
そしてものすごい怒りがこみ上げてくる。
「しょうもないって、私を知らないがどうしてそんなことが言えるんですか?」
今まで出したことがないような大きな怒りの声を出していた。
その声に彼も少し戸惑った。
「しょもないってふざけないで。どれだけ私は苦しい思いをしてきたか。一人でずっと考え込んで、虐めにも耐えてきた。
たくさん頑張って立ち上がってきたのに」
拳を強く握りしめていた。
「命ってそんなに軽いものじゃねえよ」
鋭い目つきでこちらを向いて正論を言われ、私の心が揺らいだ。
「その・・・・命はお前だけのものではない。大切に思っている家族がいるだろ」
彼は上にある空を見上げてそんなことを言う。
「俺はなあ。家族も死んで学校でも友達がいない。だから羨ましいぜ」
家族がいないという言葉を聞いて俯いた。
彼も苦しい思いをしていることに気づいていきなり怒鳴ったことを反省する。
暗い気持ちになっていると、それを吹き飛ばすような明るい声がとんできた。
「お前も入れよ。気持ちいいぜ!」
あの真面目な顔がなかったかのように満面の笑みを浮かべている。
私はその笑顔がとても輝いて見えた。
そしてまた力強く腕を掴まれた。
「行くぞ、おりゃ!」
「へ、いや、ちょっと!」
そのまま川の方へ引っ張られ、投げつけられた。
バシャン、と大きな音を立てて冷たい感触が身体中に染み渡る。
浅いところだったのでこけた時は結構痛かった。
「ああ、もう。いきなり何するんですか?」
「ガハハハハハ! 言った通り、気持ちいいだろ」
上を向いて高らかに笑う。
私は水に放り投げた腹いせに、手に水を貯めて彼に投げつけた。
「うわ、冷った」
「水の中へ放り投げたお返し。気持ちいいんでしょ」
ちょうど彼が嫌がりそうな言い方でからかった。
彼は悔しがって私が投げつけた倍くらいの量の水がこちらへ飛んできた。
私も避けるすべはなく、頭からかぶる。
「やったな!」
それからはお互いに水を掛け合って遊んでいた。
まるで今さっきまでの暗い感情やモヤモヤした気持ちをお互いにぶつけるように。
10分くらい続けているとさすがに体力が切れて岸へと上がって座り込む。
お互いにゼエゼエと荒い息を吐いていた。
少し休憩して、私から話を切り出す。
「あなたの名前はなんていうの?」
「俺は剛だ!」
「うう、名前通りの性格してるな・・・・」
独り言のようにいうと彼がまた怒り出した。
「どういう意味だよ!」
「まあまあ、剛君だね」
「ああ、そうだ。お前はなんていうんだ?」
「私は朝空雪菜だよ」
「ふん、そうか」
まるで興味がなさそうにそっぽを向いて反応する。
この頃には自殺や虐めなどの悲しい感情は無くなって、楽しんでいた。
しばらく黙っていたが私はあることを頼もうとした。
不敵な笑みを浮かべて剛君に提案する。
「私があなたの友達になってあげます! 一人でいつもいるんですよね! 寂しいでしょ? そのかわり剛君が私をいじめから守って!」
手を胸の前に当てて言うと彼は怒り出した。
「はぁ! なんでそんな生意気な言い方されないといけないんだよ。普通そこは敬語だろ。俺様に対してそんな言い方などおこがましいぞ」
「おこがましいって・・・・ う、うん」
地味に難しい言葉を知っていたから驚いたが咳払いをして話を戻す。
「これは命令ですよ。私が生きるための!」
「生きる」と言う言葉を使うと剛君は素直にうなずいた。
「わかったよ!」
少し嫌々だったけれど受け入れてくれた。
「んじゃあ雪菜だったけな。お前を守るために明日、素直に虐めている奴らにやめてって言うんだ」
少し剛君と親しくなって楽しい気分だったが、それを聞いて体が震え出した。
「おい、大丈夫か? 体が震えてるぞ」
心配そうに駆け寄ってきた。
「い、いきなりすぎないかな・・・・
そんな急にできないよ・・・」
虐めのことを思い出すと「やめて」と言うのが怖くなる。
さっきまでの明るさは無くなって頑なに彼の提案を断ろうとした。
でも剛君はそれを認めてくれない。
「逃げるな。それに立ち向かわないと絶対に終わらないぞ!」
強い意志を持って言われた。
でもまだ怖い。
「俺がその時にはそばにいる。何かされそうになったら必ず助けるから信じろ」
まだ体は震えていた。でも剛君を信じることに決めた。
渋々でちゃんと話せるかわからないけど、明日、堀北さん達に「やめて」と言うことを決意した。
剛君に学校の場所を教えて、放課後に体育館裏で話を切り出すと作戦を立てた。
他校の人ということもあり、一緒にいるにはそこくらいしかなかった。
体育館裏なんて人は来ないから剛君が
「俺、もしかしたらその女を殴るかもしれない」
という本当か冗談かわからない発言をしたので全力で「やめて」と注意した。
この時はちゃんと「やめて」と言えた。
時間や学校の距離も考えて、わざわざ私のために彼は学校を休んでくれた。
「休むとか言いながら元から学校をサボってるんじゃ・・・・」
と冗談で言うとゲンコツをされた。
タンコブができそうなくらい痛かった。
そして作戦決行日になった。
いつも通り学校では一人で過ごし、堀北さん達から罵倒された。
とてもその状況は苦しかったけど前とは違い、私の味方がいることもあっていつもよりは傷つかなかった。
帰り際に、
「放課後、体育館裏に来てください」
という手紙を机の上に置いた。
彼女達を怖がりながらも、心の中に強い芯を持って体育館裏に立っている。
剛君も木の影に隠れてくれている。
それを見てほっと安心した。
そうこうしていると堀北さんと取り巻きの二人が笑いながらくる。
「で、話ってなんなのかな?」
「フフフ、話あるって言いながら黙り込むのまじ、やめてほしんだけど。フハハハハ」
笑者にされて言いにくいかったがそれでも勇気を出した。
「なんで、なんでこんなことするんですか? 私、あなたに何かしました? もうこんなことやめてください!」
「はぁ?」
今出せる最大の大声で言ったが、返ってきたのは「理解できない」と言わしめるような一言だった。
低いトーンになって睨まれる。
私は怖くなって後退りする。
「なんでって・・・ 私が敬助君のこと好きだからよ! それなのにあんたがいつも敬助君と仲良くして、ふざけないで!」
堀北さんは鬼の表層をして私に近づいてくる。
そして大きく腕を振り上げる
ああ、叩かれる。
私は思わず目を瞑ってしまった。
しかしパチンという音は聞こえなかった。
目を開けるとみんな唖然としている。
剛君が堀北さんのビンタを受け止めてくれた。
「何なの、あんた」
いきなり現れた金髪少年に少しびびっているように見えた。
「こいつは俺の友達だ」
笑顔を見せながら話し出した。
まるで怒りを隠すような笑顔で少し怖かった。
「ふん、あんたこんなヤンキーと関わってるんだ。ていうか怖い、キャハハハハ!」
後ろにいた子達もそれに合わせて笑う。
「もう話は終わり? ならもう行くよ」
私がヤンキーのような人を連れてきてそれを嫌がるように逃げようとする。
きゃきゃっきゃと笑いながら後ろを向いて帰ろうとする。
「おい!」
剛君の大きな声が響いて彼女らの足が止まる。
「今度、雪菜を虐めたなら俺は許さないぞ!」
ドスの聞いた鈍い声で最後に脅迫した。
堀北さん達は静かにその場を去る。
「フゥーー」
緊迫した空気がなくなって体に力が入らなくなった。
力が抜けて、地面に膝からついた。
「よかった。ちゃんと言えた!」
「ガハハハハ、よくやったな!」
彼は優しく背中をさすってくれた。
こうして私の勇気ある行動で虐めはなくなった。
学校では一人だったが、それでも罵倒されなくなっただけで心は軽くなった。
「なぁ!」
大きな声で声をかけられた。
何かと思い振り返ると、私と同じくらいの歳の少年が少し離れたところに立っていた。
でも小学生とは思えないほどヤンキーのようにぐれていた。
金髪に泥によって汚れている服、そんな人に声をかけられるとは思わず、しばらく固まっていた。
「お前、死ぬのか・・・・・」
こちらを睨んで怖い口調で言ってくる。
「うん、そうだよ。私なんか生きている意味ないし、こんな苦しい思いするなら死んだ方が楽だから・・・・・・」
私は無理に笑顔を作りながら彼に言った。
「そうか」
しばらく、彼は下を向いて俯いていた。
そして彼は私にとって光のような温かい言葉をかけてくれた。
「俺は、お前が生きてくれているだけで嬉しいぜ!」
満面の笑みで彼は言う。
その言葉を聞いてポロリと涙が落ちた。
いじめられてから初めて聞いた優しい言葉に溜まっていた悲しい感情が溢れ出す。
「ぐすん、何で。あなたには関係ないでしょ!」
大量に溢れる涙を拭いながら、彼を突き放すようなことを言う。
涙を流していて気づかなかったけど、彼は私が泣いている隙に距離を詰めていた。
「とりゃ!」
私の体は彼に捕まえられていた。
そのまま力強い腕力で引っ張られ、私達は地面へ倒れ込んだ。
「ガッハハハハ! 捕獲成功!」
大きな笑い声を上げて笑っていた。
一瞬すぎることに私は頭が追いついてこなかった。
心臓のばくばくした音だけが響く。
冷静になった時、死ねなかったことを後悔した。
そして怒りがこみ上げてきて彼を問い詰める。
「ど、どうしてこんなことするんですか!?」
私の怒鳴るように大きな声で言ったが、彼は耳を傾けず私の腕を掴んだ。
「さぁ、俺についてこい! 面白い場所へ連れて行ってやる」
話を聞かず、無茶苦茶なことをしてくる。
彼に手を引っ張られ、私はどこかへ連れられる。
本当は反抗したかったが、泣いたり、自殺を防がれたことによって体は思ってた以上に疲労していて、動かなかった。
彼は力強く走るから追いつくのがしんどかった。
本当、自分勝手なヤンキーだ。
目的の場所に着くとやっと私の腕を解放してくれた。
「はぁはぁ」
私は両手を膝に置いて呼吸を整える。
「いきなりこんなところへ連れてきてあなた、なんなんですか?」
愚痴を言いながら地面へ座り込んだ。
心が落ち着いて前を向くと、そこにはとても綺麗な川と豊かな自然があった。
「うわぁ!」
悲しい心も吹っ飛ぶような景色で思わず声を出していた。
「ガハハハハ! どうだ。ここはいいだろう」
つい彼の思い通りになってしまい、心を入れ替えてムスッとする。
「なぜ私を助けたんですか?」
少し怒りを込めて、問い詰める。
「ふっ、何でだろうな。ただお前に生きて欲しかったからかな」
彼はさっきとは違う少し真面目な顔をしていた。
「それだけ・・・・?」
「それだけ、じゃいけないか?」
「フ、ハハハハハハハハ!」
私は思わず吹き出していた。
久しぶりに笑った気がする。
「おっしゃあ!」
彼は叫んでから走り出した。
そして川の中へビシャビシャと音を立てながら入って行った。
「ガハハハハ! 気持ちいいぜ」
泳いだり、水を上に巻き上げて雨のようなものを降らしりして遊んでいた。
「馬鹿みたい・・・・」
小さな声で言ったつもりだが彼には聞こえたようで怒り出した。
「ああん、今何つった? 馬鹿って言ったよな」
「え、何で聞こえているの・・・」
地味に耳が良くて呆れる。
馬鹿と言ったことが気に食わなかったのか、対抗してきた。
「は、なんだよ。自殺しようとしていた奴に言われたくねえな!」
「自殺」と言うワードを言われて思わず、落ち込んでしまう。
「あ・・・・ すまん、言いすぎた」
深く謝ってくれた。これにはさすが反省しているようだ。
そして真面目な顔をして低いトーンで質問してきた。
「なぁ、お前何があったんだ?」
彼に虐めのことを話すのは苦しかったが、勇気を出して話し始めた。
「最近、友達に虐められるようになって・・・・・・」
どんなことをされたか。私がどんな思いをしていたかなど苦しみながら淡々と話した。
意外にも苦しみを吐き出していると気持ちが楽になった。
話終えると、彼は私を馬鹿にしてきた。
「はぁー、そんなしょうもない理由で死のうと思ったのか?」
「しょうもない・・・・・・」
その言葉を聞いて、全身に変な衝撃が走った。
そしてものすごい怒りがこみ上げてくる。
「しょうもないって、私を知らないがどうしてそんなことが言えるんですか?」
今まで出したことがないような大きな怒りの声を出していた。
その声に彼も少し戸惑った。
「しょもないってふざけないで。どれだけ私は苦しい思いをしてきたか。一人でずっと考え込んで、虐めにも耐えてきた。
たくさん頑張って立ち上がってきたのに」
拳を強く握りしめていた。
「命ってそんなに軽いものじゃねえよ」
鋭い目つきでこちらを向いて正論を言われ、私の心が揺らいだ。
「その・・・・命はお前だけのものではない。大切に思っている家族がいるだろ」
彼は上にある空を見上げてそんなことを言う。
「俺はなあ。家族も死んで学校でも友達がいない。だから羨ましいぜ」
家族がいないという言葉を聞いて俯いた。
彼も苦しい思いをしていることに気づいていきなり怒鳴ったことを反省する。
暗い気持ちになっていると、それを吹き飛ばすような明るい声がとんできた。
「お前も入れよ。気持ちいいぜ!」
あの真面目な顔がなかったかのように満面の笑みを浮かべている。
私はその笑顔がとても輝いて見えた。
そしてまた力強く腕を掴まれた。
「行くぞ、おりゃ!」
「へ、いや、ちょっと!」
そのまま川の方へ引っ張られ、投げつけられた。
バシャン、と大きな音を立てて冷たい感触が身体中に染み渡る。
浅いところだったのでこけた時は結構痛かった。
「ああ、もう。いきなり何するんですか?」
「ガハハハハハ! 言った通り、気持ちいいだろ」
上を向いて高らかに笑う。
私は水に放り投げた腹いせに、手に水を貯めて彼に投げつけた。
「うわ、冷った」
「水の中へ放り投げたお返し。気持ちいいんでしょ」
ちょうど彼が嫌がりそうな言い方でからかった。
彼は悔しがって私が投げつけた倍くらいの量の水がこちらへ飛んできた。
私も避けるすべはなく、頭からかぶる。
「やったな!」
それからはお互いに水を掛け合って遊んでいた。
まるで今さっきまでの暗い感情やモヤモヤした気持ちをお互いにぶつけるように。
10分くらい続けているとさすがに体力が切れて岸へと上がって座り込む。
お互いにゼエゼエと荒い息を吐いていた。
少し休憩して、私から話を切り出す。
「あなたの名前はなんていうの?」
「俺は剛だ!」
「うう、名前通りの性格してるな・・・・」
独り言のようにいうと彼がまた怒り出した。
「どういう意味だよ!」
「まあまあ、剛君だね」
「ああ、そうだ。お前はなんていうんだ?」
「私は朝空雪菜だよ」
「ふん、そうか」
まるで興味がなさそうにそっぽを向いて反応する。
この頃には自殺や虐めなどの悲しい感情は無くなって、楽しんでいた。
しばらく黙っていたが私はあることを頼もうとした。
不敵な笑みを浮かべて剛君に提案する。
「私があなたの友達になってあげます! 一人でいつもいるんですよね! 寂しいでしょ? そのかわり剛君が私をいじめから守って!」
手を胸の前に当てて言うと彼は怒り出した。
「はぁ! なんでそんな生意気な言い方されないといけないんだよ。普通そこは敬語だろ。俺様に対してそんな言い方などおこがましいぞ」
「おこがましいって・・・・ う、うん」
地味に難しい言葉を知っていたから驚いたが咳払いをして話を戻す。
「これは命令ですよ。私が生きるための!」
「生きる」と言う言葉を使うと剛君は素直にうなずいた。
「わかったよ!」
少し嫌々だったけれど受け入れてくれた。
「んじゃあ雪菜だったけな。お前を守るために明日、素直に虐めている奴らにやめてって言うんだ」
少し剛君と親しくなって楽しい気分だったが、それを聞いて体が震え出した。
「おい、大丈夫か? 体が震えてるぞ」
心配そうに駆け寄ってきた。
「い、いきなりすぎないかな・・・・
そんな急にできないよ・・・」
虐めのことを思い出すと「やめて」と言うのが怖くなる。
さっきまでの明るさは無くなって頑なに彼の提案を断ろうとした。
でも剛君はそれを認めてくれない。
「逃げるな。それに立ち向かわないと絶対に終わらないぞ!」
強い意志を持って言われた。
でもまだ怖い。
「俺がその時にはそばにいる。何かされそうになったら必ず助けるから信じろ」
まだ体は震えていた。でも剛君を信じることに決めた。
渋々でちゃんと話せるかわからないけど、明日、堀北さん達に「やめて」と言うことを決意した。
剛君に学校の場所を教えて、放課後に体育館裏で話を切り出すと作戦を立てた。
他校の人ということもあり、一緒にいるにはそこくらいしかなかった。
体育館裏なんて人は来ないから剛君が
「俺、もしかしたらその女を殴るかもしれない」
という本当か冗談かわからない発言をしたので全力で「やめて」と注意した。
この時はちゃんと「やめて」と言えた。
時間や学校の距離も考えて、わざわざ私のために彼は学校を休んでくれた。
「休むとか言いながら元から学校をサボってるんじゃ・・・・」
と冗談で言うとゲンコツをされた。
タンコブができそうなくらい痛かった。
そして作戦決行日になった。
いつも通り学校では一人で過ごし、堀北さん達から罵倒された。
とてもその状況は苦しかったけど前とは違い、私の味方がいることもあっていつもよりは傷つかなかった。
帰り際に、
「放課後、体育館裏に来てください」
という手紙を机の上に置いた。
彼女達を怖がりながらも、心の中に強い芯を持って体育館裏に立っている。
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それを見てほっと安心した。
そうこうしていると堀北さんと取り巻きの二人が笑いながらくる。
「で、話ってなんなのかな?」
「フフフ、話あるって言いながら黙り込むのまじ、やめてほしんだけど。フハハハハ」
笑者にされて言いにくいかったがそれでも勇気を出した。
「なんで、なんでこんなことするんですか? 私、あなたに何かしました? もうこんなことやめてください!」
「はぁ?」
今出せる最大の大声で言ったが、返ってきたのは「理解できない」と言わしめるような一言だった。
低いトーンになって睨まれる。
私は怖くなって後退りする。
「なんでって・・・ 私が敬助君のこと好きだからよ! それなのにあんたがいつも敬助君と仲良くして、ふざけないで!」
堀北さんは鬼の表層をして私に近づいてくる。
そして大きく腕を振り上げる
ああ、叩かれる。
私は思わず目を瞑ってしまった。
しかしパチンという音は聞こえなかった。
目を開けるとみんな唖然としている。
剛君が堀北さんのビンタを受け止めてくれた。
「何なの、あんた」
いきなり現れた金髪少年に少しびびっているように見えた。
「こいつは俺の友達だ」
笑顔を見せながら話し出した。
まるで怒りを隠すような笑顔で少し怖かった。
「ふん、あんたこんなヤンキーと関わってるんだ。ていうか怖い、キャハハハハ!」
後ろにいた子達もそれに合わせて笑う。
「もう話は終わり? ならもう行くよ」
私がヤンキーのような人を連れてきてそれを嫌がるように逃げようとする。
きゃきゃっきゃと笑いながら後ろを向いて帰ろうとする。
「おい!」
剛君の大きな声が響いて彼女らの足が止まる。
「今度、雪菜を虐めたなら俺は許さないぞ!」
ドスの聞いた鈍い声で最後に脅迫した。
堀北さん達は静かにその場を去る。
「フゥーー」
緊迫した空気がなくなって体に力が入らなくなった。
力が抜けて、地面に膝からついた。
「よかった。ちゃんと言えた!」
「ガハハハハ、よくやったな!」
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