君と二人の自分

ともとも

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エピローグ

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「ということがありました。おしまい!」
「ううぅぅ、ぐすん・・・・ぐすん・・・」
「フフフ、どうしたんだ真希。そんなに涙を出して」
顔を真っ赤にしながら涙を流していたのでハンカチで顔を拭いてやる。

すこしするといつもの調子に戻っていた。
すぐ泣き止んでくれるのは親としても楽だ。

「ただいま!」
ガチャっと玄関を開けて妻が帰ってきた。

重そうに買い物袋を持ちながらリビングに入ってくる。
「よいしょっと」
ドサっとテーブルに荷物を置いたと同時に真希はママに向かって飛びついた。
身長がまだ小さく、お腹に顔を疼くめる。

「ママー! 死んじゃう、死んじゃう。嫌だ嫌だ!」
「え、ええ! どうしちゃったの真希?」
どうやら、ママが死にそうになった時の話が心に残っているようで、また泣き出した。

「うーん、なんのことかわからないけどママは死んだりしないよ! よしよし」
頭を撫でて優しい言葉をかける。
「本当?」
「うん、ママは真希のそばにずっといるよ!」

ずっと頭を撫で続けていると真希の機嫌も治った。
「えへへ、もっとやって!」
「フフフ、よしよし。真紀はいい子いい子!」

そのまま、真希は眠ってしまった。
すうすうっと可愛い寝息をたてて君に膝枕されながら眠る。

すこし落ち着いたと思うと君に睨まれた。
「アハハ、ごめんね、雪菜に迷惑かけてしまって」
「本当、びっくりだよ! いきなり死ぬ死ぬって言い出すんだもん。まだ小さいんだから変な言葉覚えさせないでよ!」
ムスッとしながら君は怒る。

「うう、ごめんなさい。雪菜との出会いのことを話していると、つい熱中しちゃって小さい子には重いことも話していたかも・・・・・
本当、ごめん。ちゃんと反省してます」
「フフフ、もういいよ! それにしても懐かしいね!」
二人で顔を合わせながら昔のことを思い返す。

あの高校生活のおかげで今、こうして幸せに暮らせている。

雪菜と結婚して、今は一児の父。本当に幸せだ。

「昔のこと考えて思い出したけど、明日ってみんなと剛君のお墓参りするって約束していたよね」

剛と別れて少し経ってからみんなにもこの話をした。そのあとは仲良くみんなでお墓参りしたことを覚えている。

「あっ、そうだった! 真希に話し込みすぎて思わず忘れていたよ」
「フフフ、祐介らしいね。私も何回高校の時の話をされたことか・・・」
呆れたような反応にすこし反論する。

「雪菜も高校生だった頃の思い出はとても大切でしょ?」
「そりゃ大切だけど、もう何百回もされたらさすがの私でもすこし飽きちゃうな」
プフっと笑ってすこし茶化してくる。

「確かに・・・・その通りかも・・・」
数えたことはないけど君の言う通り、数えきれないくらい話していたかもしれない。

すこし反省するが、それだけ僕は高校時代が大好きだったと改めて思う。

「さぁ、ご飯作るから手伝って!」
「分かった!」
真希を静かにソファへ寝転ばして料理を手伝った。



セミの鳴き声がうるさいほど聞こえる夏の中、久しぶりにみんなと会う。

二人で手を繋いで待っていると、みんなすぐに来てくれた。
「おう、久しぶりだな! みんな元気にしてたか?」
「うん、元気だったよ! 相変わらず翔ちゃんは明るい声を出すね」
「あったりまえだ! 暑い時こそ元気が大事ってな」

誰よりも明るい翔ちゃんの挨拶が響く。
暑いからこそ、いつもより小さい声にしてほしい。
元気がありすぎて周りの気温まで上がる気がする・・・・
失礼かもしれないけど心の中でそう思ってしまう。

そんな翔ちゃんもワイルド系のカッコいい大人になった。
結婚はまだしていないらしいが、まぁ翔ちゃんならいい相手が見つかると思う。

「みんな久しぶり、雪菜も大人っぽくなったね。もう結婚しているし、本当羨ましいよ!」
「陽子も可愛いからすぐに相手も見つかるよ!」
「またまたそんな褒めちゃって。早く見つかるといいけどな・・・・」
「俺とかは?」
「あ、結構です!」
キッパリと断った。
翔ちゃんはすこし、しょんぼりとしている。

清水さんも大人になることでとても美人になった。キャリアウーマンとして頑張っていたようだが、そろそろ結婚の心配をして婚活とかもしているそうだ。
こっちもいい相手が見つかるといいな。

「あはよう、祐介。久しぶりだね!」
すこし控えめに後ろの方に優が立っていた。

彼は今、プロのピアニストになった。
あのコンクールからも続けてそこまでいけるのは本当に凄い。
世界中を飛び回ってたくさんの人に素晴らしい音楽をプレゼントしている。
とても誇らしいことだと思う。

「大変なのにごめんね」
「あ、いいよいいよ。みんなと会えるなんてとっても嬉しいことだから!」
「そっか!」
みんなで笑い合っていると、車から昼寝をしていた真希が起きて出てきた。

しょぼしょぼして目を擦っていたが、みんなのことを見ると目を輝かした。
「うわぁ、みんないる! 嬉しい!」

飛び跳ねて清水さんに抱きついて行った。

「あらあら、大きくなったね真希ちゃん!」
「うん、清水姉ちゃんの匂い好き!」
「ウフフ、嬉しい!」

よくみんなで集まっていたので真希も全員のことを知っている。
特に清水さんはよく遊んでくれたので、真希のお気に入りのようだ。

「優兄ちゃんと翔おじちゃんも大好きだよ!」
二人にも天使のような笑顔を向ける。
「ああ、可愛い!」
「可愛いな・・・・ってなんで俺だけおじさん呼ばわり!?」
翔ちゃんがツッコミを入れたが、真希は純粋な顔をして首を傾げていた。

「フハハハハ! 髭が生えてるからじゃない? 意外に子どもってよく見てるから」
「えっ、それだけで! マジか・・・・
これからは見た目も整えないと・・・・」
「ハッハハハハ!」
みんなで笑い合った。

一頻り話終わると僕達は石段を地道に上っていった。
強い日差しのせいで汗をびっしょりとかく。
みんなヘトヘトの中、二人張り切っている。

それは僕と真希だ。
「おーい、みんな遅いよ早く行こうよ!」
「早く、早く!」

僕は早く行きたいとうずうずしながらみんなを待っている。
真希も疲れをまるで感じないような天使の笑顔をしている。

こういう時って子どもは、よくはしゃいで疲れを見せないよな・・・・

「真希に負けてるよ。恥ずかしくないの?」
別に煽るつもりで言ったわけではないがみんなから怖い視線を向けられた。
そして呆れてみんな下を向く。

「はぁー。あいつ剛のことになったら張り切るよな」
「もうくたくたになったよ・・・」
「ごめんね。みんな巻き込んでしまって」
「雪菜さんのせいじゃないよ。ただ僕の体力がないだけで・・・」

みんな「はぁはぁ」と苦しそうに呼吸をしながらもついてきてくれた。

光が入ってくる。
そよ風が吹く、気持ちいい場所に出た。
たくさんの石が並ぶ中、一つを見つけ出す。

やっと剛の墓まで着いた。
着くなりみんなヘトヘトのようですぐに座り込んでしまった。

お茶を飲んだり、深呼吸をして息を整えたりいろいろだった。

そんな中、僕と真希は手を腰に当てて言った。
「みんな弱っちいな!」
「よ、弱っちいな!」
真希は僕の真似をして遊んでいるようだった。
その姿はとても似ていて本当に親子だと思う。

ふっと笑いながらも、みんなすぐに立ち上がって掃除をしてくれた。

「さぁ祐介、早速だが水を汲んできてくれ!」
「え、僕?」
「祐介君お願い!」
「祐介にしかできないと思う!」

みんな輝く目をして僕を見つめてくる。

はぁーとため息をつきながら、しょうがなく行った。
その間にみんないろいろと準備してくれて、あっという間に掃除は終わった。

「最後は線香を備えないと。最初はやっぱりパパが供えないとね!」
「いやいや、これはママが最初でしょ」

子どもの前では一応パパ、ママと呼び合っている。

「お先にどうぞ!」
「いえいえあなたがお先に」
地味に線香の譲り合いで喧嘩になった。

「もう、一緒にやりなさい! 喧嘩はダメ!」
これを止めたのはまさかの真希だった。
仁王立ちでいつも僕達が怒るように真希に注意された。

「あ、ごめんなさい・・・・」
素直に真希に向かって謝った。

僕達、夫婦の情けなさにみんなして笑った。

子どもに怒られるなんてまだまだ未熟者だな・・・・

三人で手を繋ぎ優しく剛に線香を供えた。

そして目を瞑り、両手を合わせる。

剛へ想いを送る。


今までありがとう! 
お前には感謝の言葉しかない。
これは僕が一生かけて伝えようと思う。

高校の時、僕のそばにいてくれてありがとう。
相談に乗ってくれてありがとう。
アドバイスをしてくれてありがとう。
友達の大切さを教えてくれてありがとう。
どんな時も僕のためにノートにメッセージを書いてくれてありがとう。
唐揚げを作ってくれてありがとう。
雪菜と巡り会わしてくれてありがとう。
僕を幸せにしてくれてありがとう。

もっとありがとうと伝えたいけど、今日はこれくらいにしとくよ。

なによりも剛にこれだけは伝えたい。
今、僕は幸せだ。
とっても、とっても幸せだ。
この生活を送れるようにしてくれたのは紛れもなく剛だ。

だから、剛。
幸せになれよ。


みんなで祈り終わると、来た道を下った。
相変わらず強い日差しは変わらず疲労だけが溜まってくる。

みんな汗だくだ。
お墓参りが終わると全てをやり遂げたように体が重くなった。
下りは楽だが、それもそれで、勢いを止めるために体力を使うので疲れる。

行きしとは大違いで、今度は僕が足手纏いになる。
元気だった真希も疲れて清水さんの背中ですやすやと寝ている。
よく眠る子だ。

「はぁはぁ」と荒い呼吸をしている横には君が歩いてくれている。
手を繋いですこし支えてくれた。

「大丈夫?」
「アハハ、ごめんね。張り切りすぎてすこし疲れちゃった」
「フフフ、大丈夫だよ。ゆっくり歩いてね。私はそばにいるから!」
はにかんだ笑顔を向けてくれる。

ああ、雪菜と結婚できて本当に良かった。

君がいつも横にいてくれることを自覚すると安心する。

「そばにいてくれて、ありがとう!」
「えっ、きゅ、急にどうしたの?」
顔を赤くしながらすこし照れていた。

きっと、それを見ていたのだろうか。
「ガッハハハハ!」

背後から聞こえた笑い声に、僕と君は首がねじ曲がるかのような勢いで振り返った。

もちろん後ろには誰もいない。

でも誰か、からのプレゼントのように強い風が吹いて疲労を回復してくれた。

僕と君の目が合う。
思わず同時に笑ってしまった。

「おーい、ラブラブのお二人さん。早く下りてこいよ。こんだけ暑いし、せっかくみんな揃ったから、どっかで休憩しようぜ!
そうだな、近くのカフェでも行くか!」

翔ちゃんが手を振りみんな僕達に視線を向けていた。
「さて、みんなの所へ行こ!」
「そうだね、みんな待ってる」
僕らはガッハハハハっと笑いながら、階段を下りた。

目に映る光景は輝いていた。
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