泡沫の白雪姫

なつめ

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ゼロ

泡沫の白雪姫

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    #ゼロ




西日が手元をジリジリと
照らしている。
暦のうえでは、すでに
秋だというのに、
まだ夏の気配が残っている。

カフェのテラス席で 1人 
スマホとにらめっこ。
飲みかけのアイスティーは、
氷が溶け出して
琥珀色のグラデーションを
作り出している。

私は今、ルームシェア相手を
探している。

今の場所でも不自由はないけれど、
「家賃が半分になる!」
という、単純な理由から、
思いきって引っ越しを決意した。

物件は押さえ済み。
安くグレード高めのお家に住めるなんてラッキー!

ちょうどいいとこあったし、手っ取り早くSNSで同居人を見つけよう!

アドレス掲載。

メールボックスが、迷惑メールで
ぎゅうぎゅうに………


はい、アホです。

「~~やってしまったぁ……」

いかがわしい内容で埋め尽くされたスマホを、ゴトッとテーブルに投げ置くと、私は人目もはばからず、盛大に頭を抱えた。

気取ってテラス席で紅茶なんか
飲んでる場合じゃないだろ、
私ぃぃぃ~!

そう。
何を隠そう、私は昔から詰めが甘く、
非常に、考えが足りない。

要は、世間知らずなのだ。

自覚はきちんとある。
だからこそタチが悪い。
大事なところで判断を誤っては、
後悔の繰り返し。
全く学習しない自分の頭の中を、
一度見てみたい。

「どうしよう……」

思わず天をあおぐ。
雲ひとつない快晴。
晴れ晴れとしていて、
今の私には、憎たらしく映る。

しばらくぼんやりしていると、
赤とんぼが空を横切った。
赤とんぼによって、
現実にひきもどされると、
ため息をひとつ。

自分がまいた種とはいえ、
スマホを単調にスクロールする
作業に、そろそろ嫌気がさしてきた。

ふと。

1通のメールに目が留まる。

「…何コレ………」

"  一緒に暮らしませんか  "

ただ一言。

だけど妙に惹かれるものを感じ、
しばし、メールとにらみ合う。

ごくり、と生唾を飲み込むと、
意を決して返信してみた。

《あなたは?》
 
我ながら気の効かない言葉を
チョイスした自分に
ガッカリしていると、
思いの外、すぐに返信が来た。

心臓がバクバク脈打って、
耳が熱くなってきた。
震える指先で
何とかメールボックスをタップした。

"  桜庭 章 (さくらば あや) "

サクラバ アヤ

綺麗な名前だと思った。

よかった…女の人みたいだわ…

あ、私の名前………
自己紹介しなきゃ…

《改めてまして、
    井上 誠(いのうえ まこと )です。  》

またしても、
時間を置かずに返信が来た。

"あなたと 暮らしたいです"

簡潔な文章。
顔もどんな人となりなのかも
分からない人と暮らすなんて、
否定的な人の方がほとんどだと思う。

だけど。

だけど私は、
この人がいいと、
本能的に思ってしまったんだ………




桜が散り始める頃、
私は無事に引っ越しを済ませた。

私は持ち物が最小限のため、
あっという間に
片付けが終わってしまった。

うーん…手持ちぶさただ…

あれからーーー

夢のように
ふわふわと決めてしまったが、
冷静になった時、慌てた。
それはもう、通行人が
ドン引きするほど
取り乱して、
最終的にフリーズした。

でも、不思議と後悔はなかった。

変なの。



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