異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。

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学園編-交流戦

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 面白いものだ……。
 たった……一つの敗北は何もかもを失落させる。

 くだらないものだ。
 自分は何もなしていない連中がまるで、自分が生徒会長を倒したとでも本気で勘違いしているように接してくる。

 青い髪……美形とも言える整った顔……
 知識も美も体術も……そのどれも誰もが認める優等生。
 スコールはたった一つの敗北でそれらの全てを否定される。


 だが……偽りの設定でここまで登りつめた訳じゃない。
 今も勘違いして自分に絡んできた生徒の一人が自分の前に、尻餅をつき怯えるように命乞いをしている。

 「まるで……悪役だ、そうは思わないか?」
 その目の前で怯える男ではなく、背後にいる俺にそうスコールは言った。


 昨日と一昨日の実戦だけが交流戦が終わるわけではない。
 平和的な徒競走的なものが本日の競技だった。
 昨日の疲れもあった、そのあたりは俺よりも得意な人物に任せた。

 結果全て勝利も収めている。
 
 本日の競技が終了し、家に帰ろうと廊下を歩いていたところ、
 そんな現場に出くわしてしまった。

 恐らく、本日ですでに何十回と同じようなことを繰り返してきたのだろう。
 そう、見て取れた。


 「……それとも、お前から見れば俺は最初から悪役だったか?」
 嫌味っぽく笑みを作りながら……

 「レス……と言ったな?少し付き合え」
 そうスコールが言って、ついて来いというように尻餅をつく男を横切り歩き出す。

 黙って、その後ろを歩く……


 学園の3階、人通りの無い廊下に出ると……
 スコールは廊下の窓に手をつき、外を見下ろしながら立ち止まった。
 理由は無いが少し距離を取って俺も足を止める。


 「……当たり前のように学園に通い、終われば当たり前のように与えられた場所へ帰る……それがこの世界のルールというものだ」
 そう……スコールが言う。

 「……そうだな」
 少し戸惑いながらも、たぶん……俺の認識も変わらない。

 「……その決められたルールになぜ……人は従わなくてはならない?なぜ、その誰かの引いた道《レール》を渡らないとならない?」
 ……与えられた場所に帰る生徒達を3階の窓から見下ろしながら……
 夕日に照らされる彼の顔はどこか寂しそうに……


 「……ルールが無いと人は共存できない……ルールが無いと人は人を助けられない……」
 ルールがあるから……人は人を助ける理由、要因が産まれる。

 「……ルールはを助ける……なぁ、お前の言うとは誰を指す?」
 そうスコールが返す。

 「お前や俺が言う、ルールという奴は、この世界……この学園に居る人間を一人残らず平等に助けているのか?」
 そう聞き返される……

 「……それは、万能ってわけじゃないだろうが……」
 最低限、最大限に考慮されたモノなのだろう……

 「……レス、俺は違うと思う……ルールなんてものは、俺や、お前も……レインも……人を個に助けたりなんてしない」
 そういい切る。

 「誰かの引いたレール……人々がそこを渡る為に従うべき事、それをルールとして定めているだけだ、守られているのはそこに書かれている事例に基づいているだけだ……誰か個人が守られている訳じゃない」


 ・
 ・
 ・


 18年前……俺はこの世界にアクア家、長男として産まれた。
 その2年後、レインが次女としてアクア家に産まれた。

 最初は親の愛は平等に注がれた。

 それから6年の月日が流れた。

 俺は、アクア家としてそれなりの才を発揮させ、アクア家。
 その高貴の名に恥じない……長男とし恥じぬよう生きた。

 両親のレインの扱いに少しずつ変化が訪れたのはそのころからだ。
 明らかに俺が6歳のときに成し遂げていたことをレインはできなかった。

 愛嬌の振る舞い方だけは一著前で、いつもへらへらと楽しそうに笑っていた。

 不思議だった……。
 同じ家族だというのに……俺とレインの生活には何処か差があって……

 親は俺に日頃の褒美だと色々なモノを買い与え……
 おいしい食事を与えられた。

 レインはいつも……俺が不要になったものを与えられ、
 食事の余りのようなものを与えられていた。

 それでも、あいつはいつも笑っていて……
 おにーちゃん、おにーちゃんと呼びながら俺の後ろをついてきた。


 俺は優等生…… レインは出来損ない……
 その肩書きで、なぜ……ルールを書き換えられるのか……
 なぜ生活《ルール》がこうも違うのか……

 ある日、俺は食事の少しを隠し持って、
 こっそりとレインにわけあたえた。

 レインは目を輝かせ、美味しい、美味しいよと喜びながら、口周りを汚しながら、嬉しそうにおにいちゃん、ありがとうって言ってくれた。

 すっげぇ可愛くて、愛おしくて……また有難うって言ってもらいたくて、俺は繰り返し食事の一部を分け与えた。
 それが何時しか、親にばれて……俺は親に叱られるのを覚悟していた……

 だけど……スコール、あんたは優しい子と母は俺を褒め称え……
 そして、不平等にレインだけが酷く叱られた。
 それでも、あいつはいつものように笑って、お兄ちゃん有難うって……言うんだ。

 その頃から俺は正しさの基準がわからなくなっていった……
 あいつが正しく笑える場所を作りたいだけなのに……


 あいつが誰かに苛められていれば、俺はすぐに駆けつけてそいつをぶっ飛ばした。
 年上だろうが関係ない……その産まれた才にその時は感謝しながらも……
 相手が誰であろうと……立ち向かった。

 あいつは、まるで正義の味方が助けに来てくれたというように、
 泣いてぐしゃぐしゃだった顔で笑顔を作って、お兄ちゃん有難うって言ってくれた。
 俺は優等生…… レインは出来損ない……。
 両親も世間もそう評価する。

 いつしか、俺はいつものようにレインを助けるため暴力を振るった。
 相手が年上で向こうにもプライドがあったのだろう……いつもよりもしつこく抵抗され、少し酷い怪我をおわせてしまった……

 社会に定めれたルールというもので……
 俺は妹を助けるためとはいえ、そのルールに裁かれる立場となった。

 なのにその結果は……

 俺は……妹のために自分よりも一回りも年上に立ち向かった英雄と称えられ……
 レインは、自分のせいでそんな英雄に罪を負わせた悪者と謗《そし》られる。

 意味がわからねーだろ。

 俺はこいつがいつもこんな風に笑ってればいいって思った。
 だから、この件だって……そのせいで俺の立場がどうなったってかまわないとさえ思っていた。

 なのに……それからも……ずっと、ずーーーっとだ……
 俺が、あいつのために何かすれば……俺は立派だと周囲は称え、
 レインは出来損ないと否定され続け……

 それでも……あいつはいつも笑いながら、おにいちゃん有難うって……

 何が正しい?何が間違っている?

 こんなルールが正しいのか?
 こんなルールに従うのが正しいのか?

 この評価は正しいのか?
 こんな場面で、嬉しそうに笑っているレインの笑顔は正しいのか?

 わからねーーーだろっ!!
 守るってのはなんだ?
 妹を守るっていうのはこういう事なのか?

 違うだろ……
 俺の頑張りは……レインを不幸にする。
 俺が正しいと思うことは……レインは正しく笑えなくなる。
 
 
 今……思えばそれは人生はじめての逃げ……だった。

 いつものように……出来損ないと非難されて泣き喚く妹の姿が見えた。

 いつものように、勝手に動いた足が途中で地面に縫い付けられたように動かなくなった。
 結局……俺が駆けつけたところで……この行いは俺を上げ、あいつを下げるだけの行為なんだとそう俺の中で完結した。

 そこからの……兄としての零落ぶりは……昨日の俺と同じだ。

 おにーちゃんと近寄って来たあいつの手を冷たくはじき……
 それでも、俺に関わろうとすれば、時には暴力すらふるった……

 同じ学園に着てからもそうだ。
 お前の知っている通りの俺がすでにそこに居た。

 学園で目立つような行動を取れば、表に現れないよう影に引っ込めようとした。
 俺と比較されるような場面に出られないようにしようとした……それが……この世界のルールの正解なんだと……
 俺はそう自分に言い聞かせた。



 そう……スコールが俺に昔語りを聞かせてくれた。


 「……可愛くない訳がないだろ……憎いなんて思ったことある訳ないだろ」
 そうスコールが呟く。



 「……生徒会長、俺は……難しいことも、あんたに偉そうに言えるほどの言葉も持ち合わせていないけどさ」
 俺はそう返す。

 「……生徒会長、あんたが言うように、この世界のルールは不条理で不平等なのかもしれない……それでもさ、きっと……そのルールはレインを守っていたんだと思うぜ」
 俺のその無責任な言葉に少しだけスコールが怒ったようにも見える。

 「……そのルールの上で、例えうまく立ち回れなくても……生きられなくても……その日、その時……同じレールを歩いている人ってのはさ、それでも……やっぱりそのレールの上で繋がっているんだ」
 俺はそう続ける。

 「……例え、辛くても……そのルールもレールも……切り離すべきでは無いんだよ、たった……一人の可愛い妹なんだろ?その兄妹《かんけい》は切り離すレールじゃないだろ、やっぱり……」
 俺は静かに言う。

 「……お前に、俺たち家計の何が……わか……る」
 そう弱々しく続ける。

 「……わかったよ、あんたの優しさも苦しみも……」
 俺はそう返す。

 何が正解か……何が間違っているのか……それは俺にも答えられない。
 それでも……一つだけ……一つ言うのなら。


 「……そんな理不尽なルールも、不平等なレールの上でも……その兄妹《かんけい》だけは、そのルールとレールがもたらす、レインが今日まで、これからも大切に守り続けてきたものだ……どんなにつらくてもそれだけは守ってきたものだ、そんな残酷なルールとレールがたった一つレインに与えた希望だ」
 そう俺が言う。

 「なんでっ、なんでっ……ここに来て間もないお前が、レインの気持ちをわかったようにっ!!」
 そう怒り任せにスコールが言う。

 「……あんた、自分で何回も言っていただろ」
 俺のその返しに……スコールは戸惑い……

 「……あんた、何度も言っていたぜ……それでも、あいつは、おにいちゃん、有難うって笑って言うんだって……レインはどんな事があっても、あんたと……優しいお兄ちゃんとの兄妹《かんけい》だけは失いたくなかった……そういう事だろ」
 俺がそう言うと……
 スコールは俺の胸ぐらをつかみあげるように……
 そのまま……恋人に胸に預けるように額をつけ……流れる涙を隠すように……


 「なんで……なんで……お前が言うんだよっ……なんで、それをお前に教えられてるんだよ……なんで、そこに気づいてやれねーんだよっ……糞過ぎるだろ……兄として……糞過ぎるだろ……」
 そう……自分で自分を罵倒するように……

 苦笑する……自分でも何を偉そうに言っているのか。
 異世界《ここ》に来る前のお前はどうだった?
 法律《ルール》にも人生《レール》にもうまく乗れなかったのは誰だ。
 列車にいつも乗り遅れていた。

 それでも……そんな俺でも……


 「……なぁ、レス……俺は何をしていた……今日までいったい何をしていた……何のためにこんなこと、続けていた……教えてくれ、俺は……どうすれば……」
 そう……流す涙を隠しながらスコールが言う。


 「……ゆっくりでいいさ……レインが守り続けてきた、あんたの場所に……帰ればいい」
 俺はそうスコールに告げる。


 「……これまでの無礼を承知で言う……手伝ってくれるか……レス」
 そうスコールが俺に言う。

 「あぁ……俺に出来る範囲でなら……」
 そう俺が返す。


 「……有難う、レス……お前が俺たちの前に来てくれて良かった……本当に良かった……」
 そう感謝の言葉を送られる。

 どこの世界もルールなんてものは残酷で……
 レールなんてものは……どこに向かっているのかわからなくて……

 それでも……そんなルールとレールで……俺たち人は繋がっている。
 だから……守るんだ。
 ルールも……進むべき道も……

 一緒に歩く仲間と絆を……俺が守るんだ。 
 
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