11 / 213
学園編-交流戦
兄
しおりを挟む
面白いものだ……。
たった……一つの敗北は何もかもを失落させる。
くだらないものだ。
自分は何もなしていない連中がまるで、自分が生徒会長を倒したとでも本気で勘違いしているように接してくる。
青い髪……美形とも言える整った顔……
知識も美も体術も……そのどれも誰もが認める優等生。
スコールはたった一つの敗北でそれらの全てを否定される。
だが……偽りの設定でここまで登りつめた訳じゃない。
今も勘違いして自分に絡んできた生徒の一人が自分の前に、尻餅をつき怯えるように命乞いをしている。
「まるで……悪役だ、そうは思わないか?」
その目の前で怯える男ではなく、背後にいる俺にそうスコールは言った。
昨日と一昨日の実戦だけが交流戦が終わるわけではない。
平和的な徒競走的なものが本日の競技だった。
昨日の疲れもあった、そのあたりは俺よりも得意な人物に任せた。
結果全て勝利も収めている。
本日の競技が終了し、家に帰ろうと廊下を歩いていたところ、
そんな現場に出くわしてしまった。
恐らく、本日ですでに何十回と同じようなことを繰り返してきたのだろう。
そう、見て取れた。
「……それとも、お前から見れば俺は最初から悪役だったか?」
嫌味っぽく笑みを作りながら……
「レス……と言ったな?少し付き合え」
そうスコールが言って、ついて来いというように尻餅をつく男を横切り歩き出す。
黙って、その後ろを歩く……
学園の3階、人通りの無い廊下に出ると……
スコールは廊下の窓に手をつき、外を見下ろしながら立ち止まった。
理由は無いが少し距離を取って俺も足を止める。
「……当たり前のように学園に通い、終われば当たり前のように与えられた場所へ帰る……それがこの世界のルールというものだ」
そう……スコールが言う。
「……そうだな」
少し戸惑いながらも、たぶん……俺の認識も変わらない。
「……その決められたルールになぜ……人は従わなくてはならない?なぜ、その誰かの引いた道《レール》を渡らないとならない?」
……与えられた場所に帰る生徒達を3階の窓から見下ろしながら……
夕日に照らされる彼の顔はどこか寂しそうに……
「……ルールが無いと人は共存できない……ルールが無いと人は人を助けられない……」
ルールがあるから……人は人を助ける理由、要因が産まれる。
「……ルールは人を助ける……なぁ、お前の言う人とは誰を指す?」
そうスコールが返す。
「お前や俺が言う、ルールという奴は、この世界……この学園に居る人間を一人残らず平等に助けているのか?」
そう聞き返される……
「……それは、万能ってわけじゃないだろうが……」
最低限、最大限に考慮されたモノなのだろう……
「……レス、俺は違うと思う……ルールなんてものは、俺や、お前も……レインも……人を個に助けたりなんてしない」
そういい切る。
「誰かの引いたレール……人々がそこを渡る為に従うべき事、それをルールとして定めているだけだ、守られているのはそこに書かれている事例に基づいているだけだ……誰か個人が守られている訳じゃない」
・
・
・
18年前……俺はこの世界にアクア家、長男として産まれた。
その2年後、レインが次女としてアクア家に産まれた。
最初は親の愛は平等に注がれた。
それから6年の月日が流れた。
俺は、アクア家としてそれなりの才を発揮させ、アクア家。
その高貴の名に恥じない……長男とし恥じぬよう生きた。
両親のレインの扱いに少しずつ変化が訪れたのはそのころからだ。
明らかに俺が6歳のときに成し遂げていたことをレインはできなかった。
愛嬌の振る舞い方だけは一著前で、いつもへらへらと楽しそうに笑っていた。
不思議だった……。
同じ家族だというのに……俺とレインの生活には何処か差があって……
親は俺に日頃の褒美だと色々なモノを買い与え……
おいしい食事を与えられた。
レインはいつも……俺が不要になったものを与えられ、
食事の余りのようなものを与えられていた。
それでも、あいつはいつも笑っていて……
おにーちゃん、おにーちゃんと呼びながら俺の後ろをついてきた。
俺は優等生…… レインは出来損ない……
その肩書きで、なぜ……ルールを書き換えられるのか……
なぜ生活《ルール》がこうも違うのか……
ある日、俺は食事の少しを隠し持って、
こっそりとレインにわけあたえた。
レインは目を輝かせ、美味しい、美味しいよと喜びながら、口周りを汚しながら、嬉しそうにおにいちゃん、ありがとうって言ってくれた。
すっげぇ可愛くて、愛おしくて……また有難うって言ってもらいたくて、俺は繰り返し食事の一部を分け与えた。
それが何時しか、親にばれて……俺は親に叱られるのを覚悟していた……
だけど……スコール、あんたは優しい子と母は俺を褒め称え……
そして、不平等にレインだけが酷く叱られた。
それでも、あいつはいつものように笑って、お兄ちゃん有難うって……言うんだ。
その頃から俺は正しさの基準がわからなくなっていった……
あいつが正しく笑える場所を作りたいだけなのに……
あいつが誰かに苛められていれば、俺はすぐに駆けつけてそいつをぶっ飛ばした。
年上だろうが関係ない……その産まれた才にその時は感謝しながらも……
相手が誰であろうと……立ち向かった。
あいつは、まるで正義の味方が助けに来てくれたというように、
泣いてぐしゃぐしゃだった顔で笑顔を作って、お兄ちゃん有難うって言ってくれた。
俺は優等生…… レインは出来損ない……。
両親も世間もそう評価する。
いつしか、俺はいつものようにレインを助けるため暴力を振るった。
相手が年上で向こうにもプライドがあったのだろう……いつもよりもしつこく抵抗され、少し酷い怪我をおわせてしまった……
社会に定めれたルールというもので……
俺は妹を助けるためとはいえ、そのルールに裁かれる立場となった。
なのにその結果は……
俺は……妹のために自分よりも一回りも年上に立ち向かった英雄と称えられ……
レインは、自分のせいでそんな英雄に罪を負わせた悪者と謗《そし》られる。
意味がわからねーだろ。
俺はこいつがいつもこんな風に笑ってればいいって思った。
だから、この件だって……そのせいで俺の立場がどうなったってかまわないとさえ思っていた。
なのに……それからも……ずっと、ずーーーっとだ……
俺が、あいつのために何かすれば……俺は立派だと周囲は称え、
レインは出来損ないと否定され続け……
それでも……あいつはいつも笑いながら、おにいちゃん有難うって……
何が正しい?何が間違っている?
こんなルールが正しいのか?
こんなルールに従うのが正しいのか?
この評価は正しいのか?
こんな場面で、嬉しそうに笑っているレインの笑顔は正しいのか?
わからねーーーだろっ!!
守るってのはなんだ?
妹を守るっていうのはこういう事なのか?
違うだろ……
俺の頑張りは……レインを不幸にする。
俺が正しいと思うことは……レインは正しく笑えなくなる。
今……思えばそれは人生はじめての逃げ……だった。
いつものように……出来損ないと非難されて泣き喚く妹の姿が見えた。
いつものように、勝手に動いた足が途中で地面に縫い付けられたように動かなくなった。
結局……俺が駆けつけたところで……この行いは俺を上げ、あいつを下げるだけの行為なんだとそう俺の中で完結した。
そこからの……兄としての零落ぶりは……昨日の俺と同じだ。
おにーちゃんと近寄って来たあいつの手を冷たくはじき……
それでも、俺に関わろうとすれば、時には暴力すらふるった……
同じ学園に着てからもそうだ。
お前の知っている通りの俺がすでにそこに居た。
学園で目立つような行動を取れば、表に現れないよう影に引っ込めようとした。
俺と比較されるような場面に出られないようにしようとした……それが……この世界のルールの正解なんだと……
俺はそう自分に言い聞かせた。
そう……スコールが俺に昔語りを聞かせてくれた。
「……可愛くない訳がないだろ……憎いなんて思ったことある訳ないだろ」
そうスコールが呟く。
「……生徒会長、俺は……難しいことも、あんたに偉そうに言えるほどの言葉も持ち合わせていないけどさ」
俺はそう返す。
「……生徒会長、あんたが言うように、この世界のルールは不条理で不平等なのかもしれない……それでもさ、きっと……そのルールはレインを守っていたんだと思うぜ」
俺のその無責任な言葉に少しだけスコールが怒ったようにも見える。
「……そのルールの上で、例えうまく立ち回れなくても……生きられなくても……その日、その時……同じレールを歩いている人ってのはさ、それでも……やっぱりそのレールの上で繋がっているんだ」
俺はそう続ける。
「……例え、辛くても……そのルールもレールも……切り離すべきでは無いんだよ、たった……一人の可愛い妹なんだろ?その兄妹《かんけい》は切り離すレールじゃないだろ、やっぱり……」
俺は静かに言う。
「……お前に、俺たち家計の何が……わか……る」
そう弱々しく続ける。
「……わかったよ、あんたの優しさも苦しみも……」
俺はそう返す。
何が正解か……何が間違っているのか……それは俺にも答えられない。
それでも……一つだけ……一つ言うのなら。
「……そんな理不尽なルールも、不平等なレールの上でも……その兄妹《かんけい》だけは、そのルールとレールがもたらす、レインが今日まで、これからも大切に守り続けてきたものだ……どんなにつらくてもそれだけは守ってきたものだ、そんな残酷なルールとレールがたった一つレインに与えた希望だ」
そう俺が言う。
「なんでっ、なんでっ……ここに来て間もないお前が、レインの気持ちをわかったようにっ!!」
そう怒り任せにスコールが言う。
「……あんた、自分で何回も言っていただろ」
俺のその返しに……スコールは戸惑い……
「……あんた、何度も言っていたぜ……それでも、あいつは、おにいちゃん、有難うって笑って言うんだって……レインはどんな事があっても、あんたと……優しいお兄ちゃんとの兄妹《かんけい》だけは失いたくなかった……そういう事だろ」
俺がそう言うと……
スコールは俺の胸ぐらをつかみあげるように……
そのまま……恋人に胸に預けるように額をつけ……流れる涙を隠すように……
「なんで……なんで……お前が言うんだよっ……なんで、それをお前に教えられてるんだよ……なんで、そこに気づいてやれねーんだよっ……糞過ぎるだろ……兄として……糞過ぎるだろ……」
そう……自分で自分を罵倒するように……
苦笑する……自分でも何を偉そうに言っているのか。
異世界《ここ》に来る前のお前はどうだった?
法律《ルール》にも人生《レール》にもうまく乗れなかったのは誰だ。
列車にいつも乗り遅れていた。
それでも……そんな俺でも……
「……なぁ、レス……俺は何をしていた……今日までいったい何をしていた……何のためにこんなこと、続けていた……教えてくれ、俺は……どうすれば……」
そう……流す涙を隠しながらスコールが言う。
「……ゆっくりでいいさ……レインが守り続けてきた、あんたの場所に……帰ればいい」
俺はそうスコールに告げる。
「……これまでの無礼を承知で言う……手伝ってくれるか……レス」
そうスコールが俺に言う。
「あぁ……俺に出来る範囲でなら……」
そう俺が返す。
「……有難う、レス……お前が俺たちの前に来てくれて良かった……本当に良かった……」
そう感謝の言葉を送られる。
どこの世界もルールなんてものは残酷で……
レールなんてものは……どこに向かっているのかわからなくて……
それでも……そんなルールとレールで……俺たち人は繋がっている。
だから……守るんだ。
ルールも……進むべき道も……
一緒に歩く仲間と絆を……俺が守るんだ。
たった……一つの敗北は何もかもを失落させる。
くだらないものだ。
自分は何もなしていない連中がまるで、自分が生徒会長を倒したとでも本気で勘違いしているように接してくる。
青い髪……美形とも言える整った顔……
知識も美も体術も……そのどれも誰もが認める優等生。
スコールはたった一つの敗北でそれらの全てを否定される。
だが……偽りの設定でここまで登りつめた訳じゃない。
今も勘違いして自分に絡んできた生徒の一人が自分の前に、尻餅をつき怯えるように命乞いをしている。
「まるで……悪役だ、そうは思わないか?」
その目の前で怯える男ではなく、背後にいる俺にそうスコールは言った。
昨日と一昨日の実戦だけが交流戦が終わるわけではない。
平和的な徒競走的なものが本日の競技だった。
昨日の疲れもあった、そのあたりは俺よりも得意な人物に任せた。
結果全て勝利も収めている。
本日の競技が終了し、家に帰ろうと廊下を歩いていたところ、
そんな現場に出くわしてしまった。
恐らく、本日ですでに何十回と同じようなことを繰り返してきたのだろう。
そう、見て取れた。
「……それとも、お前から見れば俺は最初から悪役だったか?」
嫌味っぽく笑みを作りながら……
「レス……と言ったな?少し付き合え」
そうスコールが言って、ついて来いというように尻餅をつく男を横切り歩き出す。
黙って、その後ろを歩く……
学園の3階、人通りの無い廊下に出ると……
スコールは廊下の窓に手をつき、外を見下ろしながら立ち止まった。
理由は無いが少し距離を取って俺も足を止める。
「……当たり前のように学園に通い、終われば当たり前のように与えられた場所へ帰る……それがこの世界のルールというものだ」
そう……スコールが言う。
「……そうだな」
少し戸惑いながらも、たぶん……俺の認識も変わらない。
「……その決められたルールになぜ……人は従わなくてはならない?なぜ、その誰かの引いた道《レール》を渡らないとならない?」
……与えられた場所に帰る生徒達を3階の窓から見下ろしながら……
夕日に照らされる彼の顔はどこか寂しそうに……
「……ルールが無いと人は共存できない……ルールが無いと人は人を助けられない……」
ルールがあるから……人は人を助ける理由、要因が産まれる。
「……ルールは人を助ける……なぁ、お前の言う人とは誰を指す?」
そうスコールが返す。
「お前や俺が言う、ルールという奴は、この世界……この学園に居る人間を一人残らず平等に助けているのか?」
そう聞き返される……
「……それは、万能ってわけじゃないだろうが……」
最低限、最大限に考慮されたモノなのだろう……
「……レス、俺は違うと思う……ルールなんてものは、俺や、お前も……レインも……人を個に助けたりなんてしない」
そういい切る。
「誰かの引いたレール……人々がそこを渡る為に従うべき事、それをルールとして定めているだけだ、守られているのはそこに書かれている事例に基づいているだけだ……誰か個人が守られている訳じゃない」
・
・
・
18年前……俺はこの世界にアクア家、長男として産まれた。
その2年後、レインが次女としてアクア家に産まれた。
最初は親の愛は平等に注がれた。
それから6年の月日が流れた。
俺は、アクア家としてそれなりの才を発揮させ、アクア家。
その高貴の名に恥じない……長男とし恥じぬよう生きた。
両親のレインの扱いに少しずつ変化が訪れたのはそのころからだ。
明らかに俺が6歳のときに成し遂げていたことをレインはできなかった。
愛嬌の振る舞い方だけは一著前で、いつもへらへらと楽しそうに笑っていた。
不思議だった……。
同じ家族だというのに……俺とレインの生活には何処か差があって……
親は俺に日頃の褒美だと色々なモノを買い与え……
おいしい食事を与えられた。
レインはいつも……俺が不要になったものを与えられ、
食事の余りのようなものを与えられていた。
それでも、あいつはいつも笑っていて……
おにーちゃん、おにーちゃんと呼びながら俺の後ろをついてきた。
俺は優等生…… レインは出来損ない……
その肩書きで、なぜ……ルールを書き換えられるのか……
なぜ生活《ルール》がこうも違うのか……
ある日、俺は食事の少しを隠し持って、
こっそりとレインにわけあたえた。
レインは目を輝かせ、美味しい、美味しいよと喜びながら、口周りを汚しながら、嬉しそうにおにいちゃん、ありがとうって言ってくれた。
すっげぇ可愛くて、愛おしくて……また有難うって言ってもらいたくて、俺は繰り返し食事の一部を分け与えた。
それが何時しか、親にばれて……俺は親に叱られるのを覚悟していた……
だけど……スコール、あんたは優しい子と母は俺を褒め称え……
そして、不平等にレインだけが酷く叱られた。
それでも、あいつはいつものように笑って、お兄ちゃん有難うって……言うんだ。
その頃から俺は正しさの基準がわからなくなっていった……
あいつが正しく笑える場所を作りたいだけなのに……
あいつが誰かに苛められていれば、俺はすぐに駆けつけてそいつをぶっ飛ばした。
年上だろうが関係ない……その産まれた才にその時は感謝しながらも……
相手が誰であろうと……立ち向かった。
あいつは、まるで正義の味方が助けに来てくれたというように、
泣いてぐしゃぐしゃだった顔で笑顔を作って、お兄ちゃん有難うって言ってくれた。
俺は優等生…… レインは出来損ない……。
両親も世間もそう評価する。
いつしか、俺はいつものようにレインを助けるため暴力を振るった。
相手が年上で向こうにもプライドがあったのだろう……いつもよりもしつこく抵抗され、少し酷い怪我をおわせてしまった……
社会に定めれたルールというもので……
俺は妹を助けるためとはいえ、そのルールに裁かれる立場となった。
なのにその結果は……
俺は……妹のために自分よりも一回りも年上に立ち向かった英雄と称えられ……
レインは、自分のせいでそんな英雄に罪を負わせた悪者と謗《そし》られる。
意味がわからねーだろ。
俺はこいつがいつもこんな風に笑ってればいいって思った。
だから、この件だって……そのせいで俺の立場がどうなったってかまわないとさえ思っていた。
なのに……それからも……ずっと、ずーーーっとだ……
俺が、あいつのために何かすれば……俺は立派だと周囲は称え、
レインは出来損ないと否定され続け……
それでも……あいつはいつも笑いながら、おにいちゃん有難うって……
何が正しい?何が間違っている?
こんなルールが正しいのか?
こんなルールに従うのが正しいのか?
この評価は正しいのか?
こんな場面で、嬉しそうに笑っているレインの笑顔は正しいのか?
わからねーーーだろっ!!
守るってのはなんだ?
妹を守るっていうのはこういう事なのか?
違うだろ……
俺の頑張りは……レインを不幸にする。
俺が正しいと思うことは……レインは正しく笑えなくなる。
今……思えばそれは人生はじめての逃げ……だった。
いつものように……出来損ないと非難されて泣き喚く妹の姿が見えた。
いつものように、勝手に動いた足が途中で地面に縫い付けられたように動かなくなった。
結局……俺が駆けつけたところで……この行いは俺を上げ、あいつを下げるだけの行為なんだとそう俺の中で完結した。
そこからの……兄としての零落ぶりは……昨日の俺と同じだ。
おにーちゃんと近寄って来たあいつの手を冷たくはじき……
それでも、俺に関わろうとすれば、時には暴力すらふるった……
同じ学園に着てからもそうだ。
お前の知っている通りの俺がすでにそこに居た。
学園で目立つような行動を取れば、表に現れないよう影に引っ込めようとした。
俺と比較されるような場面に出られないようにしようとした……それが……この世界のルールの正解なんだと……
俺はそう自分に言い聞かせた。
そう……スコールが俺に昔語りを聞かせてくれた。
「……可愛くない訳がないだろ……憎いなんて思ったことある訳ないだろ」
そうスコールが呟く。
「……生徒会長、俺は……難しいことも、あんたに偉そうに言えるほどの言葉も持ち合わせていないけどさ」
俺はそう返す。
「……生徒会長、あんたが言うように、この世界のルールは不条理で不平等なのかもしれない……それでもさ、きっと……そのルールはレインを守っていたんだと思うぜ」
俺のその無責任な言葉に少しだけスコールが怒ったようにも見える。
「……そのルールの上で、例えうまく立ち回れなくても……生きられなくても……その日、その時……同じレールを歩いている人ってのはさ、それでも……やっぱりそのレールの上で繋がっているんだ」
俺はそう続ける。
「……例え、辛くても……そのルールもレールも……切り離すべきでは無いんだよ、たった……一人の可愛い妹なんだろ?その兄妹《かんけい》は切り離すレールじゃないだろ、やっぱり……」
俺は静かに言う。
「……お前に、俺たち家計の何が……わか……る」
そう弱々しく続ける。
「……わかったよ、あんたの優しさも苦しみも……」
俺はそう返す。
何が正解か……何が間違っているのか……それは俺にも答えられない。
それでも……一つだけ……一つ言うのなら。
「……そんな理不尽なルールも、不平等なレールの上でも……その兄妹《かんけい》だけは、そのルールとレールがもたらす、レインが今日まで、これからも大切に守り続けてきたものだ……どんなにつらくてもそれだけは守ってきたものだ、そんな残酷なルールとレールがたった一つレインに与えた希望だ」
そう俺が言う。
「なんでっ、なんでっ……ここに来て間もないお前が、レインの気持ちをわかったようにっ!!」
そう怒り任せにスコールが言う。
「……あんた、自分で何回も言っていただろ」
俺のその返しに……スコールは戸惑い……
「……あんた、何度も言っていたぜ……それでも、あいつは、おにいちゃん、有難うって笑って言うんだって……レインはどんな事があっても、あんたと……優しいお兄ちゃんとの兄妹《かんけい》だけは失いたくなかった……そういう事だろ」
俺がそう言うと……
スコールは俺の胸ぐらをつかみあげるように……
そのまま……恋人に胸に預けるように額をつけ……流れる涙を隠すように……
「なんで……なんで……お前が言うんだよっ……なんで、それをお前に教えられてるんだよ……なんで、そこに気づいてやれねーんだよっ……糞過ぎるだろ……兄として……糞過ぎるだろ……」
そう……自分で自分を罵倒するように……
苦笑する……自分でも何を偉そうに言っているのか。
異世界《ここ》に来る前のお前はどうだった?
法律《ルール》にも人生《レール》にもうまく乗れなかったのは誰だ。
列車にいつも乗り遅れていた。
それでも……そんな俺でも……
「……なぁ、レス……俺は何をしていた……今日までいったい何をしていた……何のためにこんなこと、続けていた……教えてくれ、俺は……どうすれば……」
そう……流す涙を隠しながらスコールが言う。
「……ゆっくりでいいさ……レインが守り続けてきた、あんたの場所に……帰ればいい」
俺はそうスコールに告げる。
「……これまでの無礼を承知で言う……手伝ってくれるか……レス」
そうスコールが俺に言う。
「あぁ……俺に出来る範囲でなら……」
そう俺が返す。
「……有難う、レス……お前が俺たちの前に来てくれて良かった……本当に良かった……」
そう感謝の言葉を送られる。
どこの世界もルールなんてものは残酷で……
レールなんてものは……どこに向かっているのかわからなくて……
それでも……そんなルールとレールで……俺たち人は繋がっている。
だから……守るんだ。
ルールも……進むべき道も……
一緒に歩く仲間と絆を……俺が守るんだ。
41
あなたにおすすめの小説
異世界亜人熟女ハーレム製作者
†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です
【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。
モブ高校生と愉快なカード達〜主人公は無自覚脱モブ&チート持ちだった!カードから美少女を召喚します!強いカード程1癖2癖もあり一筋縄ではない〜
KeyBow
ファンタジー
1999年世界各地に隕石が落ち、その数年後に隕石が落ちた場所がラビリンス(迷宮)となり魔物が町に湧き出した。
各国の軍隊、日本も自衛隊によりラビリンスより外に出た魔物を駆逐した。
ラビリンスの中で魔物を倒すと稀にその個体の姿が写ったカードが落ちた。
その後、そのカードに血を掛けるとその魔物が召喚され使役できる事が判明した。
彼らは通称カーヴァント。
カーヴァントを使役する者は探索者と呼ばれた。
カーヴァントには1から10までのランクがあり、1は最弱、6で強者、7や8は最大戦力で鬼神とも呼ばれる強さだ。
しかし9と10は報告された事がない伝説級だ。
また、カードのランクはそのカードにいるカーヴァントを召喚するのに必要なコストに比例する。
探索者は各自そのラビリンスが持っているカーヴァントの召喚コスト内分しか召喚出来ない。
つまり沢山のカーヴァントを召喚したくてもコスト制限があり、強力なカーヴァントはコストが高い為に少数精鋭となる。
数を選ぶか質を選ぶかになるのだ。
月日が流れ、最初にラビリンスに入った者達の子供達が高校生〜大学生に。
彼らは二世と呼ばれ、例外なく特別な力を持っていた。
そんな中、ラビリンスに入った自衛隊員の息子である斗枡も高校生になり探索者となる。
勿論二世だ。
斗枡が持っている最大の能力はカード合成。
それは例えばゴブリンを10体合成すると10体分の力になるもカードのランクとコストは共に変わらない。
彼はその程度の認識だった。
実際は合成結果は最大でランク10の強さになるのだ。
単純な話ではないが、経験を積むとそのカーヴァントはより強力になるが、特筆すべきは合成元の生き残るカーヴァントのコストがそのままになる事だ。
つまりランク1(コスト1)の最弱扱いにも関わらず、実は伝説級であるランク10の強力な実力を持つカーヴァントを作れるチートだった。
また、探索者ギルドよりアドバイザーとして姉のような女性があてがわれる。
斗枡は平凡な容姿の為に己をモブだと思うも、周りはそうは見ず、クラスの底辺だと思っていたらトップとして周りを巻き込む事になる?
女子が自然と彼の取り巻きに!
彼はモブとしてモブではない高校生として生活を始める所から物語はスタートする。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる