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学園編-学園武術会

ヒーロー(2)

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 それぞれが12個の扉に別れ……
 それぞれの続く廊下を通る。

 目の前には光が広がっていて……
 「まぶしぃ……」
 たった、5分くらい歩いてきただけなのに、
 その日差しが少しまぶしく感じた。

 観客席……安堵しているのだろうか……
 クリア=スノーはその風景に少し安心したように……

 ツキヨ達とは反対側の観客席……

 「おーーい」
 オトネという女の子がこちらに手を振っている。
 手を振り替えしながらも正直まだ……どう接していいのかもわからない。
 
 側にはクロハも座っている。

 何となく……少しキャラかぶりしている二人を交互に眺める……

 「クリア……どう……したの?」
 不思議そうにクロハが尋ねる。

 「ううん……一回戦、誰だろうね……」
 おそらく、3:3で左右の客席に分かれて移動したのだろう……
 とたんに……目の前に褐色の女性が着地する。

 「お嬢……やはりこちらでしたか……よかった」
 アストリアがおそらく向こう側の客席からこちら側にジャンプして飛んできた。
 相変わらずの運動神経に雇い主でありながらも驚かされる。

 「向こうには、クレイとツキヨという女が居たので……まさかお嬢が決勝選手に選ばれてしまったのではないかと思いましたが……二人揃って外れてしまったわけですね……そして……ということは、小僧……つくづく宿命を背負っておるようだな」
 そうアストリアは誰かに向かい言う。

 1回戦が始まり……
 終わりが迎える……

 その勝利に私《クリア》を含め全員が安堵している。

 そして……リングの整備が終わり、再び……
 リングに続くドアが開く……

 まずは敵チームの二人がリングにのぼる。

 フード付きのマントを羽織ったままの男と……

 健康的な、黄緑色のショートカットの女生徒がリング上で準備運動をしている……

 そして……こちら側の一人目がリングに上る。

 「うわーー、イケメンさん」
 ショートカットの女生徒がリング上にのぼったナイツに向かって言う。

 「ありがと……」
 なれたようにナイツが簡単に返す。

 「まさか……と思うけど、わたしの相手が君なのか?」
 そう……目の前の女子生徒に尋ねる。

 「うん……抽選とはいえ、決勝に残るチームの一人だよ、甘く見ないでね」
 そうにっこりと微笑む。

 「っと……もう一人来たみたいだねぇ」
 そう……ナイツの後ろを見ながら……

 「アセリア=ウィンド……」
 その女生徒の名前を呼ぶ……

 「そっかぁ、ヴァニが私の相手なんだね」
 そう、準備運動を一通り終え……アセリアと呼ばれた女性がその名を呼ぶ。

 同じ1学年の……C組

 「それじゃ、決勝戦、2回戦……試合開始っ」
 ラビの掛け声が響く。

 「そんじゃ……試合開始ッ!」
 それに続き、アセリアも試合開始の合図と共に両手を地面に向けると、
 手のひらから巻き起こした風を動力源に一気にこちら側に攻め寄る。

 平等に繰り出される攻撃をヴァニは反撃を交え防戦するが、
 ナイツはただ防御に徹する……

 彼女《あいて》の実力は確かなもの……だが……
 女性相手に男が2人がかり……

 風の能力を取り込んでいる彼女の動きは一切の隙を見せない……

 それでも……動かぬ男をナイツは睨み付ける。

 「ゲイス=マリオネット……」
 その男の名を……思い出すように呼ぶ。

 「手加減は無用だナイツ……そいつは俺の最高傑作だ」
 そう動かずゲイスと呼ばれた男が言う。

 「貴様ぁーーーーッ!!」
 その男の意味を理解すると共にナイツが一気にその男の元に駆け寄る。

 その動きにアセリアが気がつくと、ヴァニを軽くあしらうと、
 風の力を利用し一気にナイツとゲイスの間に割ってはいる。

 「わりぃ……油断したっ」
 そう言って、今度はヴァニがナイツとアセリアの間に割ってはいる。

 「彼女《こっち》は任せてくれ」
 そう言って、右腕に手甲を創り出す。

 「わりぃけど……俺はファミニストじゃねーから」
 そう言って、拳をアセリアに構える。

 「壱の型……爆風《トルネード》」
 彼女の両腕に激しい風が巻きつくようにまとわりつく。

 「てっけんせーさいっ!!」
 彼女がそう叫び、その右腕をヴァニに振りかざす。

 ヴァニが手甲を盾にするようにそれを受け止めるが、
 その一撃に後方へと吹き飛ばされる。

 ナイツがそれを受け止め、場外まで吹っ飛ばされるのを阻止する。

 「……ヒーロータイム……モード白銀《プラチナ》」
 そうナイツが小さく呟くと白銀の鎧に包まれる。
 地面を強く蹴り上げると、アセリアの横を通り過ぎる。

 「わぁお……はやぁ」
 その動きに反応できなかったように見逃すが、それでも彼女の瞳はナイツを追い……

 「弐の型……旋風《アクセルブースト》」
 彼女がそう言うと両足に風が纏わりつくと……
 再びナイツを追い、さらに彼を追い越すとゲイスとの間に割ってはいる。

 「邪魔をするな……わたしの相手は君じゃない」
 そうナイツがアセリアを説得するが……

 「ひっどいなぁ……私、負けないよ、ヴァニにも……先輩にも」
 そう……ナイツを笑顔で見る。

 「参の型……風切《カマイタチ》」
 再び風がアセリアの右腕にまとわりつく……
 繊細な風……鋭く透き通る……

 手とうををその場にナイツをめがけ素振りする。

 「ちぃ……モード鉄《くろがね》」
 ナイツがその脅威に気がつくと素早くモードを切り替えシールドを張る。

 鋭い疾風が斬撃のように迫ってくる。
 それを漆黒の盾で防ぐが盾がずたずたに崩れ去ると同時にその一撃を食い止める。

 「ゲスが……」
 一瞬……ナイツが彼女《アセリア》に向けた言葉かと誤解しそうになるが……
 そのナイツの瞳が写す相手……

 今も動かず、不適に笑っている。
 ゲイス=マリオネット。

 「てっけんせーーさいっ!!」
 思わずその声の方を……ナイツが向く。

 その声の方をアセリアが後ろを振り返るように……


 「無視決め込んでるんじゃねーーよ」
 この決勝、2回戦に置いてまるで眼中にないかのように……
 そう誰からも見向きもされなかった……
 その手甲《こぶし》がゲイスの頬を捕らえる。

 「くくくっ……」
 少しだけ驚いた顔を見せたゲイスだがすぐに不適に笑い……

 「……面白い、だったらお前も俺の仲間に加えてやろう」
 そう不適に微笑み……ゲイスの腕から黒い瘴気が表れる。

 「離れろっ」
 そうナイツがヴァニに叫ぶが……

 その瘴気をまとった右腕がヴァニの口を塞ぐように頭を掴み上げる。
 ヴァニはお構いなしにその手甲《こぶし》を再びゲイスに振り上げようとするが……

 「な……」
 ヴァニの瞳から光が消えるように……

 ゲイスの右手の瘴気がヴァニの体内に入り込んでいく。

 その魔力で……その相手を操り人形のように自分の配下にする……
 もちろんその彼《ゲイス》の魔力が許す範囲の相手にしか通用しない。
 ただ、操る事に成功した相手はその操るに要している己の魔力も上乗せされた状態になっている……

 学園に魂を売った彼の魔力は……
 そんな彼女《アセリア》を彼《ヴァニ》を操るだけの魔力《ちから》が……

 3対1の絶体絶命の構図が出来ている……

 そしてその目の前の正義《ナイツ》は……女性を仲間を傷つける事ができるのだろうか……

 いつの間にか敵対するようにこちらを見ているヴァニ……

 「ヒーロータイム……モード、白金《プラチナ》」
 白銀の鎧がナイツを包んでいく。

 その英雄《ヒーロー》は……そんな悪には絶対屈しない……
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