異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。

文字の大きさ
90 / 213
異世界編ー創造者

瘴気

しおりを挟む
 ゆがみの先は再び学校の地下の通路のような場所に続いていて……
 セティの姿は無く、一人となる。

 ただ、俺はその通路の先にある部屋を目指して歩く。

 正方形の何も無い真っ白な部屋。
 前後左右対称に通路が繋がっていて……
 示し合わされたかのように、
 その通路の先から俺と他三名が姿を現す。

 セティ……マナト……ナキ……

 そして、中央にいる女……

 その女を囲うように4人が集まる。

 「さて……今さら私たちを突き合わせてどうするつもりなんだ?」
 そう、中央の女に尋ねるようにセティが言う。

 「……おじさんには全く理解ができないけどねぇ」
 中央の女を見ながらも忙しそうに瞳は動き平等に俺たち3名を見ている。

 「そういえば……転生者《ぜんいん》の共通《はじまり》という訳か」
 元の世界と異世界の入り口を繋げた者……
 俺たちに能力《ちから》を与えた者……

 神と名乗った人物……

 「目的はなんだ……」
 今さら……どうして再び俺たちの前に……

 「目的……ですか」
 そう目の前の女はゆっくりと俺たちを見渡し……

 「……転生者は、俺たち4人だけなのか?」
 そう……俺は他の3人を見た後に正面の女を見る。

 「……用意した召喚石は全部で7つ……利用されていない召喚石ももちろんありますが……いま、この物語《いせかい》に関わっている人物は……」
 あなたたち4名だと……

 未だ召喚されない者……召喚されたがどこかでこの物語にすら関わらず生きている者……または……もはやここから退場した者もいるのだろうか……

 そして、それに巻き込まれた4人を今……引き合わせて何を語らせようと言うのか……



 ・・・


 周りを見渡す……

 学園から少しだけ離れた場所……
 街とは逆の何もない平地……

 もちろん魔王《フィル》から剥がれたそれは、
 100M先に転移した後も移動を繰り返し……

 そして再び器に返ろうとしているのだろう。

 良くも悪くも……人気の無い岩と砂しかない場所に……
 リヴァーとヴァニは歩いていた。

 そして……ツキヨ、クレイ、ヨウマの3名もそんな2人に合流している。
 現れる魔物をヴァニ、ツキヨ、クレイが主に狩り、
 ヨウマはリヴァーの身を案じるように護衛に勤めている。

 「……魔物の瘴気《つよさ》もあがっている……近いか?」
 そう、ツキヨがリヴァーに尋ねるように……

 「正面……来ます」
 そうリヴァーの言葉に。

 5人に凄い圧がかかる。

 同時に現れる黒き人型の魔王《ばけもの》……
 そして、そんな魔王を囲うように現れる家来《ばけもの》……


 「……さすがに……死ぬかもね……」
 冗談交じりに……冗談抜きでクレイがぼそりとこぼす。

 「……今さら、引き返しもできないけどね」
 そうツキヨが完全に周囲に広がる魔物の群れに……

 「大見得張って……アイツに言ったんだ……こんな所でっ」
 ヴァニの右手に黒い手甲が装着される。

 「……全く、私たち全員……今日1日で、どれだけの魔力を消費してきたと思ってるんだ……」
 クレイがそう嘆きながらも……

 「抜刀……その名を示せ、紅桜っ」
 そう本日、どれだけの血を消費したのか……
 その血を刀に与える。

 「抜刀……まさむねっ」
 そうツキヨも刀を抜く。

 「抜刀……ダリアっ」
 ヨウマもデーモン化し、リヴァーの前に構える。

 ヨウマはリヴァーの前を陣どるように……
 その場を動かず自分とリヴァーに迫る敵を相手にする。

 ツキヨとクレイが次々と溢れ現れる化物を次々と切り倒していく。

 ヴァニは一人……その魔王の瘴気《げんきょう》に立ち向かう。

 その勝敗など……その時点ですでに決まっていたのかもしれない……


 ・
 ・
 ・

 どれだけの時間が経過したのだろうか……

 クレイとツキヨが処理仕切れずにリヴァーを襲う化物をヨウマが処理している。

 「その名を偽れ……鬼丸国綱《おにまるくにつな》」
 クレイがその自らの首の血を刀に捧ぐように……

 処理が追いつかず無限に湧き上がる化物を斬り落とす。
 魔力の限界か……血の限界か……朦朧とする中で……
 幾度と体を貫く攻撃に……その場に崩れ落ちる。

 「……クレイっ」
 そう心配するようにツキヨが叫ぶが……

 化物がそのツキヨの体を囲うように次々と攻撃を受ける。

 持ち前の刀技と運動神経でその場の魔物を処理するが……
 ツキヨも限界が訪れるようにその場にひざを着く。


 そして……
 もう何度目か……

 ヴァニの身体が近くの岩に叩きつけられるように……
 普通の人間ならすでに意識を失っているか、力尽きていてもおかしくない……

 「ヴァニさん、もう起き上がらないで……」
 思わずリヴァーがそう漏らしてしまうように……

 それでも……ヴァニは本能のように……ただ体を起こすだけの動作を繰り返す。

 「諦めたら……だめだ……自分より強い奴に恐怖を与える……倒れたら……駄目だ……」
 そう誰かの言いつけを……守ろうとするが……
 次の一撃に……もう立ち上がることすらできないほどに……その意識は遠のく。

 「リヴァーちゃん……ごめんねぇ」
 そう……ヨウマが諦めるような言葉を言うほどの絶対絶命……

 そして……迫りくる魔王の影に……

 ドンっと小さな隕石でも落ちるかのように……

 「随分……無様だな……
 そう現れた男が言う。

 「おや……じ……」
 もはや、直視できない空ろな目で……

 「俺はてめぇの親父じゃねぇ……何度言えばわかる」
 そう冷たく突き放すように……

 「わりぃが……俺の能力には味方の識別能力は無いからな……」
 そう周囲の化物を見ながら……

 「ツキヨさん、私の周辺にっ」
 そうリヴァーが叫ぶ。
 ツキヨが、クレイの身体を掴みヨウマの近くまで引き返し、
 ラークがヴァニの身体を乱暴に掴むと、同じくヨウマの方にその身体をぶん投げる。

 「炎舞……火炎地獄っ」
 その言葉と同時に周囲に巨大な火柱が何十という数が上がる。
 数多の化物がその火柱に取り込まれ消滅していく。

 ゆっくりと……ヴァニが起き上がる……
 限界を超えている……
 ぼんやりとだけ写る視界の中で……


 戦っている男の背中を……

 「炎舞……火炎乱舞っ」
 両手に炎を宿し、凄まじい乱舞を瘴気《まおう》に浴びせる。

 若き頃よりは衰えてしまったのかもしれないが……
 それでもその実力は……あの日、あの時に憧れていたままで……

 その乱舞《ラッシュ》が決まる中で、瘴気《まおう》の額を掴みあげる。
 「炎舞……火葬っ」
 そう魔王の身体が燃え上がる……

 黒い影はだらりとその両腕を力なく地に向けるが……

 見えない顔をニヤつかせるように……
 右手がラークの腹部を突き破る。

 さすがに驚いたように状況を把握できずにいるラークと……
 魔王の口から放たれた魔力の波動砲に……

 ラークの左腕が吹き飛ぶ。

 そのまま……崩れ落ちるように……ラークがその場に倒れる。


 あぁ……たく、らしくねぇことはするもんじゃねぇ……
 そう後悔する言葉は口に出ない。


 相手は魔王……器を離れたといえ……その力は変わりない。
 そして、それは勇者《リエン》ですら……一人では相手にするには難しいほどだ。
 それを俺、一人でどうにかできるとでも思ったか……
 そう自分を罵倒する……

 「親父っ親父っ!!」
 そう叫ぶ懐かしい声に……

 あぁ……うるせぇな……
 あの日の約束なんて互いに……違えたじゃねぇか……
 もう……それは死に設定なんだよ……

 そう……かすかに残る意識の中で……

 数々の魔法が戦場を飛び交い化物を捉えていく。

 「サイザス=アイスランス……」
 そう現れた部隊のリーダーらしき男が名乗る。

 「ラーク……無事か?」
 リエン……ブレイブ家の部隊だろう助っ人が今さらながらに現れる。

 ヴァニとラークのおかげで、魔王の瘴気もだいぶ弱まっているだろう……
 これだけの部隊なら……

 サイザスの部隊の魔法が次々と化物の部隊を解体し……
 サイザスがその手に騎士の剣を構える。

 そんな中でラークがゆっくりと立ち上がりながら……
 過ぎ去った過去を想い返す……
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~

名無し
ファンタジー
 主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...