異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。

文字の大きさ
124 / 213
異世界編-神の遊戯

要塞

しおりを挟む
 運命《やくそく》の日……

 学園、王都、ギルドの主力となる人物が一箇所に集結している。


 神代理《フィーリア》の姿は無い。
 正直、あの領域《のうりょく》でどうにかできないのかと思ったが……

 強大な魔力だけならともかく……瘴気《ふのかんじょう》まで浄化することは、
 できないのだろうか……


 「国王……王都市民、全員を説得しろと俺は言ったはずだがな」

 明らかに半分にも満たない数に、キリングは国王に吐き捨てる。

 「まぁ……いい……」

 その場のほとんどのものが見つめる紫空にキリングを目を向ける。


 「距離的に……頃合か」

 あれをどうにかするための距離……遠すぎても攻撃が届かない……近寄りすぎても時間が足りない。
 キリングは俺の考える方法を知らないながらも、推測するように言う。


 「スコール……」

 「あ……あぁ」

 どこか、少しだけ緊張するようにスコールが前に出る。
 レインのイメージを具現化する土台……

 そして、その土台にこの国、全員の魔力を注ぐ。
 それをレインがこの世界を救う何かを形にする。

 そんな大役に……


 「大丈夫、お前ならできる」

 ポンとレインの頭に手を置く。
 震える身体を隠しながら俺を見る。


 「準備はよいか?」

 失敗を恐れるレインたちをよそに、キリングは……
 そんな事を許さないと言いたげに事を急がせる。


 「おや……あれは?」

 ゆっくりと近づく人影に、リリエットが遠くを見るようなポーズをつくりながら言う。

 ずるり、ずるりと重い何かを引きずるように……
 

 「……マナト」

 リエンがその男の名を呼ぶ。


 「殺さずにおいたが、魔力も無い貴様が何をしにここにいる」

 キリングがマナトを睨み付ける。


 「下がれっ……マナト、お前はいったい何をしようとしている」

 リエンがマナトに向かい感情的に叫ぶ。
 少なからず、リエンにとっては大事な友だ。


 「とウ……さん……お……カァさ……ン」

 瘴気に完全に精神を破壊されている男が続けて現れる。
 障りに落ちていないのが不思議なくらいに衰退している身体に……


 「ここに来て……そんな化け物一つで抵抗するつもりか?」

 キリングが化物《ニアン》に目を向ける。


 「何をしているっ……そう聞いている」

 すでに取り返しのつかないところまで来ている。
 勇者《リエン》として、目の前の悪は斬り捨てなければならない……
 それでも……


 「平等な世界を作りたいんだ……誰もが笑って暮らせる……障りに怯えることなく……」

 虚ろな瞳をこちらに向ける。


 「……この世界を壊して……ですか?」

 俺はマナトの行き着いた答えを尋ねる。


 「……なぜ、幸福を平行にすることが悪だ……なぜ、不幸を平等に振りまくのが悪なのか……」

 光の無い瞳を……俺やセティ、リプリスへと向ける。
 同じ転生者として、理解を得ようと言いたいように……
 そんな、理不尽を体験しこの場にいる境遇者に……


 「……世界は表裏一体……持論だけどね」

 飛空挺を飛び降り、遅れてナキがその場に合流する。


 「元学園長、あんたの言うことは美しい……実にね……でも、それだけじゃ駄目だ」

 ナキがマナトを睨みながら言う。


 「それに……幸せの価値観なんて、人それぞれだよ、学園長《あんた》の言う、幸福が平等が……誰かの同等とは限らない」

 ナキがそう否定する。


 「自分の不幸を知っているから他人の幸せを知る……そんな幸せを得るために誰かを不幸にする……」

 「だからこそ……それを平等にすると私は言っているのですっ」

 マナトがナキの言葉を否定するように叫ぶが……


 「何度も言っているよ……平等なんて成立しないと……平等という言葉は不平等という言葉の表と裏で成立しているんだ……平等《おもて》に不平等《うら》は必ず付きまとう……」

 ナキが冷たくマナトを否定する。


 「わからない人だ……わたしが、わたしができないお前たちに代わりそれをっ」

 マナトが叫ぶ。


 「……か?」

 今までの少しおどけた口調ではなく、圧のある瞳でマナトを睨む。


 「瘴気塊《あれ》は、これまで……この世界で……不幸に不平等に生きた者たちの怒りや恨み……それを不条理に背負い続けた女性が苦痛に耐え続け抑え続けてきたものだ……」

 すべてを憎むようにマナトは感情的に……

 「それを……悪だと、この世界は斬り捨てた……そんな彼女に感謝をすることなく、限界を迎えた彼女に優しく手を差し伸べることなく、斬り捨てたのだろ……そんな彼女が不条理に苦痛に耐え抑え続けた瘴気を、この世界に平等に返す」

 それだけのことだと叫ぶ。


 「……それが、あんたの言う平等かい?」

 そんな言葉に、臆することも、同情することも無くナキは冷たい瞳を送り続ける。

 「もう少し、周りを見なよ……」

 マナトがぐるりと周りを見渡す……何を言っているかは理解できていないようだが……

 「世界は表裏一体……持論だけどね、きみの平等《りそう》は……此処にいる者たちが不平等《ふじょうり》により成立する……結局あんたの一人よがりだ、そう言っているよ」

 完全に言い返す言葉を失うように、マナトが俯く。


 「ハハはハ……じゃマするナ……」

 ぼとり、ぼとりとニアンの周囲にどこからか黒い繭が表れその場に落ちる。


 「あトは……ボくがネぇ?」

 黒い糸が、棺の中の女性を包み込む。


 「ぼクが……」

 その場に居る全員がさすがに動揺を隠せずに……


 「なんだ……あれは……」

 黒い繭の中に閉じ込めた数多の能力《まりょく》と瘴気を取り込み……


 それは、紫色の空を覆い隠すほどの大きな影を作り出す。


 「まるで……要塞じゃないか……」

 リエンがその空をも覆い隠すだけの化物に向かい言う。

 その源《ニアン》の姿はその天辺、化物の頭の辺りにある。
 並大抵の攻撃は届かない……

 そして……要塞となった化物は、ルディナの能力で武装するように、
 要塞に近づけぬように障害物や防壁、そして砲台をも作り出していく。

 遠距離攻撃を能力とするものが、ニアンの姿を狙い攻撃するが……
 サイガのリフレクトの能力により、全てが反射される。


 「……無敵要塞とでも言うつもりかよ」

 俺は苦笑する。
 足場を作り近づくにも要塞《ばけもの》からのあらゆる攻撃がそうさせない。
 遠距離攻撃は防壁とリフレクトにより守られている。


 ……こんな場所で余り魔力を使うわけにいかない……
 だが、はやくこの壁をどうにかしなくては……瘴気が落ちてしまう。


 しかし、ここに居る誰しもが、短時間でこの絶対要塞を攻略は難しい。


 「……ボーイ、一ついいかい?」

 いつの間にか、俺の前に立つナキが言う。

 「おじさんなら……何とかできるかもしれない」

 そんな役を簡単に名乗り出る。

 「しかしね、ここまでの間に少し無茶をさせすぎた……片道切符なのさ」

 そんな自分の能力の状況を語る。


 「……その役目の代償……報酬を手に入れるために、ボーイ、君の力を今一度だけ貸してくれるかい?」

 どこかやりきれない、笑顔でナキは俺に言った。

 世界は表裏一体……覚悟はできている。
 ナキの瞳がそう無言で俺に語る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

モブ高校生と愉快なカード達〜主人公は無自覚脱モブ&チート持ちだった!カードから美少女を召喚します!強いカード程1癖2癖もあり一筋縄ではない〜

KeyBow
ファンタジー
 1999年世界各地に隕石が落ち、その数年後に隕石が落ちた場所がラビリンス(迷宮)となり魔物が町に湧き出した。  各国の軍隊、日本も自衛隊によりラビリンスより外に出た魔物を駆逐した。  ラビリンスの中で魔物を倒すと稀にその個体の姿が写ったカードが落ちた。  その後、そのカードに血を掛けるとその魔物が召喚され使役できる事が判明した。  彼らは通称カーヴァント。  カーヴァントを使役する者は探索者と呼ばれた。  カーヴァントには1から10までのランクがあり、1は最弱、6で強者、7や8は最大戦力で鬼神とも呼ばれる強さだ。  しかし9と10は報告された事がない伝説級だ。  また、カードのランクはそのカードにいるカーヴァントを召喚するのに必要なコストに比例する。  探索者は各自そのラビリンスが持っているカーヴァントの召喚コスト内分しか召喚出来ない。  つまり沢山のカーヴァントを召喚したくてもコスト制限があり、強力なカーヴァントはコストが高い為に少数精鋭となる。  数を選ぶか質を選ぶかになるのだ。  月日が流れ、最初にラビリンスに入った者達の子供達が高校生〜大学生に。  彼らは二世と呼ばれ、例外なく特別な力を持っていた。  そんな中、ラビリンスに入った自衛隊員の息子である斗枡も高校生になり探索者となる。  勿論二世だ。  斗枡が持っている最大の能力はカード合成。  それは例えばゴブリンを10体合成すると10体分の力になるもカードのランクとコストは共に変わらない。  彼はその程度の認識だった。  実際は合成結果は最大でランク10の強さになるのだ。  単純な話ではないが、経験を積むとそのカーヴァントはより強力になるが、特筆すべきは合成元の生き残るカーヴァントのコストがそのままになる事だ。  つまりランク1(コスト1)の最弱扱いにも関わらず、実は伝説級であるランク10の強力な実力を持つカーヴァントを作れるチートだった。  また、探索者ギルドよりアドバイザーとして姉のような女性があてがわれる。  斗枡は平凡な容姿の為に己をモブだと思うも、周りはそうは見ず、クラスの底辺だと思っていたらトップとして周りを巻き込む事になる?  女子が自然と彼の取り巻きに!  彼はモブとしてモブではない高校生として生活を始める所から物語はスタートする。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

処理中です...