異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。

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異世界編-神の遊戯

正義、英雄、都合

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 「はぁーーーーっ」

 そんな気合を篭めたシルバの掛け声と共に、
 その両手で握った黄金の剣を振り回すたびに、

 この部屋の天井と壁まで延びる波動砲の刃を振り回す。


 ここまで、必要とする場が無かった、隠していたように……
 その彼女の全力はその六賢者に匹敵するだけの力を、所持しているのだろう。


 だが……


 一対一なら、その分はシルバにあったのかもしれない。
 時に、仲間は……その想いは、
 その正義の枷になる。

 マフィリドの黒い糸に操られるように、
 王都、ギルドの兵士たちがその振るう剣先の前に立ちふさがる。


 「卑劣な真似……恥じるべきです、正しき言葉を語るというのなら、その振る舞いをっ」

 そう言葉にしながらも、波動砲の刃を縮める。


 「正しましょう……そんな善悪など、人間《あなた》がたの都合なのです……そして、そんな神に仕える事を決めた私にも、また……そんな善悪は等価値なのです……だから、正しましょうか……例え、あなたの目の前のわたくしの行動が人間達の悪なのだとしても……そんな悪が、今の私を肯定できるのであれば、それは、私は家族を孫娘《かのじょ》を守り続けている理由なのですから」

 そして、ゆっくりとシルバを見ていた瞳をナイツに移す。


 ナイツの体もまた、マフィリドの黒い糸に囚われ、
 そして……その瘴気がナイツがまとう鎧の隙間から流れ込むように、
 ナイツの体内に流れ込んでいく。


 「愚かでいいのです……あなたも見てきたのでしょう?正義を成すのに……周りの都合に自分の未熟に……いいのです、結局、そんな正義も自己肯定も……正しましょう……」


 ・ ・ ・


 真っ白な空間《へや》に気がつくと一人で立っていた。
 茶髪の男……

 学園のトップ3と言われた男。
 ナイツは孤独にそこに立っている。


 「ねぇ……正義ってなに?英雄ってなに?」

 気がつくと小さな幼い少年《じぶん》がそこに立っている。

 
 正義……

 「志《こころざし》……正しさを強く貫くこと……」

 英雄……

 「そんな、仲間を、自分が信じた君主《せいぎ》を……護れる強さ」

 ナイツはそんな少年の問いに答える。


 「ふーーーん」

 そんな幼い少年《じぶん》は、そんな言葉を半信半疑に聞き流すような返事を返す。


 「ねぇ……それって……(僕は)出来てるの?」

 少年はナイツへ問い返す。


 そんなナイツの記憶を模写するように、
 レスに敗北する記憶《えいぞう》が真っ白な部屋《スクリーン》に映し出される。


 「……違うっ……正義は君主《そこ》にある……それでも、仲間《レス》も、また……正しかった……」

 懸命にその敗北《きおく》を正す。


 「ふふ……」

 少年はそんな自分《ナイツ》を鼻で笑い。


 「随分と……ご都合な正義《ことば》なんだね」

 「そんな……だから……」

 そんな少年の言葉に……映像は切り替わり……


 片腕を失い……ナイツとアストリアを庇う人間の姿。
 セーネが神域魔法に手を出し、二人を護るためその身を犠牲にする。

 そんな映像が流れる。


 「君の正義はその言葉で何を犠牲にした?」

 少年の言葉がナイツの体を拘束する。


 そして、その先で……
 アストリアが、凶悪……リスカを倒す映像が流れる。


 「結局……英雄《なに》にもなれないじゃないか……」

 そんな少年の言葉に……


 「結局、実力の伴わない正義など……周りを犠牲にする悪でしかない」

 冷たく少年はナイツを見る。


 「そして、くだらない正義《つごう》は……それを後悔することすら許されない」

 冷たく少年はナイツを見あげる。


 あぁ……自分の正義など……

 アストリア……レス……そんな周りを上げるだけの存在……


 醜く……ただ……醜く……それを、まだ正義だと言うのか?


 少年から黒い瘴気がこぼれるように、ナイツを犯していく。


 正せ……

 例え、その力が悪であったとしても……


 自分の正義《いきざま》を正せるというのなら……



 ・・・


 目を開く……

 再び……真っ白な部屋には、シルバやマフィリドの姿がある。


 ただ……今のナイツの敵《せいぎ》は……


 「あーぁ、結局……そうなるんだ」

 呆れるように、少年は黒き瘴気に変わりナイツの力の一部になる。


 神域の魔力、それに操られるナイツの身体。

 そんな魔力を手にして、そしてそんな自分のこれまでの正義を裏切る。


 「さぁ……正しましょうか……あなたの正義を……例え、それが悪だったとしても、それを主張できるのであれば……ほかの誰かも神の言葉も聴く必要はないのです」

 マフィリドが光を失った瞳のナイツへそう告げる。


 正義を成せ……
 悪《しんいき》の魔力《それ》にすがってでも……

 光の無い瞳がマフィリドに向けられる。
 ナイツの正義が完全にそれに支配される。

 今の俺に……
 アストリアやレスに匹敵するだけの正義《ちから》が無いのなら……

 利用……するんだ。


 神域魔力《それ》を……


 「神域鎧化《セイントクロス》……」

 「モード……神界鎧《オリハルコン》」

 ナイツがそのマフィリドから注がれた魔力で鎧を精製する。


 一度目を閉じる。

 再び、真っ白な世界に幼き少年《じぶん》が立っている。


 「これが……答えだ」

 そう、ナイツが少年へ告げる。


 「その犠牲も……その敗北も……その嫉妬も……今の正義《わたし》を肯定するものだ……だから、それを貫く……それが私が出した英雄《こたえ》っ」

 「そうか……正せるといいね」

 同時に自分《ナイツ》と少年《じぶん》が目を閉じる。

 二人の姿が合わさるようにシンクロし、目を開く。


 ナイツを捕らえるように黒い糸が伸びている。

 それでも……


 その場から、姿を消すナイツが……一瞬でマフィリドの正面に、地面から人一人分の高さを保つように飛び跳ね、その身体を旋回させて、振り回した足でマフィリドを捕らえる。


 「誇れっ……導け……正義は此処にある」

 シルバが黄金の剣を手にした右手を胸元に構える。


 「誇れっ、勝ち取れっ……正義は此処《われ》に在れっ」

 再び天まで延びた波動砲のような刃がマフィリドに振り下ろされる。

 そのまま、マフィリドの身体は遥か後方の壁に叩きつけられる。


 「ただ……さねば……ならないのです……正義《それ》は都合に過ぎないのですから……でなけらば……私は……見返りなど求めない……孫娘《それ》を護れるのなら……後悔などしないのですから……でも、ここで負けてしまったら……それを否定してしまうようではないですか……」

 再び、マフィリドはその姿を起き上がらせる。

 ナイツが右手を大きく後ろに振りかぶる。
 その右手に魔力をまとうように眩い光を放つ。


 娘……孫娘を護るために……そんな身を犠牲にした。
 そんな事実をナイツもシルバも知らない。

 それでも……


 「神に屈し、正義《じぶん》を犠牲にした……その決断が正しかったのか……まずはそこを正すべきだ」

 目の前に迫ったナイツの拳がマフィリドをとらえ、再び真っ白な壁にその身体を埋める。


 そうか……そうですね……


 「……なら……そこを正しましょうか」

 何とか動く口をマフィリドが動かす。


 今にも崩れ落ちそうな身体を保ちながら、ナイツとシルバを見る。


 私は私という犠牲を得て、家族を孫娘を護った。

 そこで、私の正義は完結している……


 この勝敗で……私の命が果てる事で、別に家族や孫娘の運命が左右されることはない。

 ここで私が勝利したところで、その権利を奪った私を、家族や孫娘が許してくれる訳ではない。


 あの日、あの時点で……私の犠牲《つごう》は、そんな正義《つごう》は完結している。


 「だったら……そうですね……そこを正しましょうか……」

 ぐたりと、両膝を地面につき、なんとかその身体を支える。


 「正せるのなら……護れるのなら……そんな犠牲《じぶん》など……老いた人間《じぶん》など……そんな犠牲で護れるものがあるのなら……それが正義になれるのであれば、それで良かったのです」

 そんな答えに……


 「野蛮な若者には……わからぬ正義《ねがい》なのでしょう……ならば、正してみてはいかがですか……先は長いのですから……せいぜい、その正義《つごう》に……後悔《きぼう》を見てみるのも悪くないかもしれません」

 両膝で支えていた上半身をそのまま前方に倒す。


 「腐らせなどしません……王国を民を導く……そんな正義を私は……」

 父の意思を、自分の正義を……


 ナイツはまとったオリハルコンの兜だけを開放するように……
 その頭で天を仰ぐ。


 そんな正義《めいよ》を、今、この瞬間に手に入れたとは思っていない。

 それでも、過去に負けない……正義の意思を……


 「志はここに在ります……だから、英雄を語りましょう……」

 忠誠を誓う君主へと告げるように……

 「私が貴方の英雄《ヒーロー》です」

 その正義《つごう》は誰にも譲る気などない。
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