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異世界編-神の遊戯
正義、平等、都合(2)
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・
・
・
28年前に一人の女性に恋をした。
想いは伝わり、一人の娘が誕生した。
それから、18年後に、娘は一人の男と結ばれた。
また、一人の孫娘が誕生して……
そして5年後……
「おじいちゃん……」
くりんとした大きな瞳でわたしの足にしがみつき私の顔を見上げる孫娘が余りにも愛しかったことを今も覚えている……
そんな娘《はは》が、神に仕えるための六賢者の一人に選ばれた。
そんな名誉を正義を責任《すべて》を放棄するように……
娘は孫娘へとその権利《せいぎ》を押し付けた。
何もわからない、何も知らない……孫娘が……
ただ、その正義《つごう》を押し付けられ、
それが、正義だと名誉だと……
喜ぶ親子に……わたしはどう向き合い言葉を交わせばよいかもわからず……
「おじいちゃん」
何年後に……孫娘《かのじょ》はその使命をおわされているのだろうか……
わたしはその場にしゃがみ込み……微笑みその愛しい孫娘の頭を撫でる。
「ルーネちゃんは……神のつかいになりたいですか?」
そう、孫娘の頭を撫でながら私は、そんな5歳の娘に問う。
「ん……?、パパもママもね……私がそうなれば嬉しいって……だからね、ルーネね、パパとママに喜んでもらうの……おじいちゃんはルーネが正義《それ》になったら嬉しい?」
そんな正義《つごう》を半分しか理解していない孫娘……
もちろん、だからといって……それを放棄した娘を責められる訳じゃない……
「ルーネちゃんは……ママとパパを裏切って恨まれてでも二人と暮らす生活とね……ママとパパのためにそんな正義《つごう》に孤独に生きる生活とどちらがいいですか……」
そんな、5歳に孫娘には難しすぎる質問を……
「パパとママと、一緒に居たい……でも、パパとママが喜ぶならね……私は正義の味方になる……おじいちゃんも喜んでくれる?」
「……そうだね、おじいちゃんはね……」
そんな孫娘の頭を抱きかかえ……
「まずは……そこを正しましょうか……」
わたしはそんな孫娘のあたまを撫でながら……
「ルーネちゃんは……正義や名誉もなく……ただ、ママとパパと暮らす世界と、そんな世界の正義《つごう》のために孤独に生きる世界……どちらを望みますか……」
その答えを聞いて、自分にその望んだ世界を作り出せるのか……
「パパと、ママとね……居たい、でもね……パパとママがね、喜ぶ正義《そんざい》にね……なりたい」
そんな、孫娘の決意《ことば》に……
例え、それが間違いだったとしても……
「そうか……そうだね……ルーネちゃんは立派ですね……」
ゆっくりと何かを決意するように……
「正義《つごう》は後者なのでしょう……それでも、都合《ねがい》が前者であるのなら……おじいちゃんは、例えそれが、パパやママ……ルーネちゃんへの裏切りであってもですね……前者《それ》を望みます」
・ ・ ・
能力が長けていたのは……娘、孫娘だろう。
私以上に、その神の使いとしての素質があったのだろう……
でも、私にもその能力は備わっている。
だから……
そんな正義《けんり》を奪った……
「フィーリア様……私があなたへと仕えましょう……」
例え、わたしがそれに相応しくないとしても……
どうか、どうか……
私の正義《つごう》にお付き合い下さい……
そんな孫娘への想いもそんなわたしの正義など……誰にも伝わらない。
正義や名誉を横取りした悪でしかない。
でも……ルーネちゃんが、今もパパとママと居られているのなら……
私はそんな善悪《せいぎ》を正義《つごう》を受け入れましょう……
・
・
・
「だから……神よ、その代償《つみ》は私が受け入れましょう……その正義《りゆう》が伝わらなくても……私はそんな正義に代償を求めたりはしません……その結果で家族を……孫娘《かのじょ》を守れたのなら……」
マフィリドの頬をかするように、強い魔力が波動砲のように飛んでいく。
「そんな言葉で……私の正義は揺るぎません……その言葉が本当に神のモノだったとしても……それでも、私の正義もまた、神のためではないのですから……」
波動砲を飛ばしただろう、シルバの黄金の剣先がマフィリドに向いている。
「人間《わたしたち》もまた……神の奴隷ではありません……」
「なるほど……そう正しますか……」
シルバがいつの間にか振り払った黒い瘴気の触手のような糸がマフィリドの影から伸びるように……
囚われていた王国の兵やギルドの部員たちの魂が抜け、身体がのっとられるように、マフィリドの支配下となる。
「恥じるな、誇れ……剣をかざせ……」
シルバの黄金の剣に激しい魔力が集まり、刃が青白く発光する。
・
・
・
6年前……
当時、グレイバニアは隣国のバルナゼクの国と対立し、
戦争を繰り返していた。
「……今の王国には正義が無いと……」
当時の将軍に次期将軍であるシルバは、
その場に片ひざをつき、そう意見を申す。
「処罰を覚悟で申し上げます……今の国王にその資格を見ることができません」
その場で首を斬られる覚悟でシルバは、将軍《じょうし》へ意見する。
「顔をあげろ、シルバ……」
言われ、顔を男に向ける。
「……ここでは、部下であるが、同時に俺の娘だ……」
「ならば、シルバ……この国の正義はどこにある?」
片ひざをついたままのシルバを父《おとこ》は見下ろしながら……
「王国を守り、民を導くための正義はどこにある?」
その答えに……思わず黙り込む。
「右手を出して……自分の胸に当ててみろ」
言われたとおりに、右のてのひらを自分のむねにあてる。
「恥じるな……誇れ、シルバ……お前の正義がきちんとそこにあるのだろ?」
「王国を守り、民を導け……剣をかざせ、それを成すのは王の言葉ではなく、お前の力だ……どうだ、シルバ……中間職ってのも案外、大変だろ」
将軍《ちち》が自分の苦労を愚痴るように、苦笑した笑みをシルバへ向ける。
・ ・ ・
バルナゼクの主力部隊が王都の一区を攻め落とす。
そこに最後まで抵抗する部隊のひとつにシルバの姿がある。
「隊長……撤退命令が出ています、この区間は捨て本部隊へ合流しましょう」
その部隊の隊長を任されていた。
そして、出ていた撤退命令を無視し、必死の抵抗を続けている。
見捨てられた人々……
例え、彼ら彼女らがこの住処を捨て、別の区へ逃げたとして、
新たな住居や資産を与えられるわけじゃない……
それで、王国だけを救って……
王国を守った……民を導いたと私は誇るのだろうか……
私の正義はそこに在るのか?
「誇れ……剣をかざせ……民を導けっ!」
ボロボロの身体でシルバがそう叫ぶが……
その声に誰も続かない。
倒れた……仲間《ぶか》……
そして、残った部下も、自分だけをそこに残し本陣へと逃げ帰った。
敵軍には名のある武将たちがたくさんいて……
シルバはもてあそばれるように、起き上がっては叩き伏せられる。
何度目だろう……
倒れた身体を起き上がらせようと、右手に懸命に力を送る。
だけど、それがなかなかうまく出来なくて……
足音が自分のそばに近寄ってくる。
誇れ……その最後まで……
「シルバ隊長……大儀であった……お前の正義が……お前の部下が俺をここへ導いた」
将軍《ちち》がそこに立っている。
「隊長……ご無事でしたか……大丈夫ですか……」
自分の力では、隊長《わたし》を助けられないと思った、部下《かれ》は、
逃げたと思った彼は……自分の成せることを、援軍を、将軍をここへ導いた。
それが……正しかったのか……今も正直わからない……
その区は……私の正義は……
将軍《せいぎ》はその敵部隊を一掃し、
その一人の命を代償に守られた。
そして、その大半の戦力を失ったバルナゼクは、
その日、白旗をかかげた。
「誇れ……正義はここにある……」
正義や尊敬も……正直……見えていない。
そんな王から、父に代わりその将軍の地位を譲り受ける。
この王国が王都が……腐らずにあるのは、そんな将軍《ちち》が居てくれたからだ。
だから……
「誇れ、剣をかざせ……」
この王国を、民を導くのは私の役目《せいぎ》だ。
・
・
・
黄金の刃から放たれる魔力の波動砲が、その空間の天井や壁に到達するほどに刃のリーチを広げるように、振り下ろした刃がマフィリドの周囲を破壊する。
「誇れっ」
「正せっ」
二人の正義と都合が交差する。
・・・いつもそうだ。
学園武術会で……ゲイスに操られた時のように……
ナイツは、自分にまとわりつく瘴気の黒い糸に囚われながら……
昔から……今だって、実力はアストリアが上だった。
トップ3と呼ばれるそんな場所に、身を置いても……
いつだって……上が居た。
自分の信じた正義も……お嬢に捧げた忠誠心も……
そんな、支配される魔力の中で……
虚ろな瞳をマフィリドへ向ける。
「……お嬢……あなたの誇り高い正義に、それを主張する正義のために……私があなたの英雄《せいぎ》であります」
交差する正義……それが、それぞれの都合だとしても……
それを譲るわけにはいかない……
己の正義を主張しろ……
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28年前に一人の女性に恋をした。
想いは伝わり、一人の娘が誕生した。
それから、18年後に、娘は一人の男と結ばれた。
また、一人の孫娘が誕生して……
そして5年後……
「おじいちゃん……」
くりんとした大きな瞳でわたしの足にしがみつき私の顔を見上げる孫娘が余りにも愛しかったことを今も覚えている……
そんな娘《はは》が、神に仕えるための六賢者の一人に選ばれた。
そんな名誉を正義を責任《すべて》を放棄するように……
娘は孫娘へとその権利《せいぎ》を押し付けた。
何もわからない、何も知らない……孫娘が……
ただ、その正義《つごう》を押し付けられ、
それが、正義だと名誉だと……
喜ぶ親子に……わたしはどう向き合い言葉を交わせばよいかもわからず……
「おじいちゃん」
何年後に……孫娘《かのじょ》はその使命をおわされているのだろうか……
わたしはその場にしゃがみ込み……微笑みその愛しい孫娘の頭を撫でる。
「ルーネちゃんは……神のつかいになりたいですか?」
そう、孫娘の頭を撫でながら私は、そんな5歳の娘に問う。
「ん……?、パパもママもね……私がそうなれば嬉しいって……だからね、ルーネね、パパとママに喜んでもらうの……おじいちゃんはルーネが正義《それ》になったら嬉しい?」
そんな正義《つごう》を半分しか理解していない孫娘……
もちろん、だからといって……それを放棄した娘を責められる訳じゃない……
「ルーネちゃんは……ママとパパを裏切って恨まれてでも二人と暮らす生活とね……ママとパパのためにそんな正義《つごう》に孤独に生きる生活とどちらがいいですか……」
そんな、5歳に孫娘には難しすぎる質問を……
「パパとママと、一緒に居たい……でも、パパとママが喜ぶならね……私は正義の味方になる……おじいちゃんも喜んでくれる?」
「……そうだね、おじいちゃんはね……」
そんな孫娘の頭を抱きかかえ……
「まずは……そこを正しましょうか……」
わたしはそんな孫娘のあたまを撫でながら……
「ルーネちゃんは……正義や名誉もなく……ただ、ママとパパと暮らす世界と、そんな世界の正義《つごう》のために孤独に生きる世界……どちらを望みますか……」
その答えを聞いて、自分にその望んだ世界を作り出せるのか……
「パパと、ママとね……居たい、でもね……パパとママがね、喜ぶ正義《そんざい》にね……なりたい」
そんな、孫娘の決意《ことば》に……
例え、それが間違いだったとしても……
「そうか……そうだね……ルーネちゃんは立派ですね……」
ゆっくりと何かを決意するように……
「正義《つごう》は後者なのでしょう……それでも、都合《ねがい》が前者であるのなら……おじいちゃんは、例えそれが、パパやママ……ルーネちゃんへの裏切りであってもですね……前者《それ》を望みます」
・ ・ ・
能力が長けていたのは……娘、孫娘だろう。
私以上に、その神の使いとしての素質があったのだろう……
でも、私にもその能力は備わっている。
だから……
そんな正義《けんり》を奪った……
「フィーリア様……私があなたへと仕えましょう……」
例え、わたしがそれに相応しくないとしても……
どうか、どうか……
私の正義《つごう》にお付き合い下さい……
そんな孫娘への想いもそんなわたしの正義など……誰にも伝わらない。
正義や名誉を横取りした悪でしかない。
でも……ルーネちゃんが、今もパパとママと居られているのなら……
私はそんな善悪《せいぎ》を正義《つごう》を受け入れましょう……
・
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「だから……神よ、その代償《つみ》は私が受け入れましょう……その正義《りゆう》が伝わらなくても……私はそんな正義に代償を求めたりはしません……その結果で家族を……孫娘《かのじょ》を守れたのなら……」
マフィリドの頬をかするように、強い魔力が波動砲のように飛んでいく。
「そんな言葉で……私の正義は揺るぎません……その言葉が本当に神のモノだったとしても……それでも、私の正義もまた、神のためではないのですから……」
波動砲を飛ばしただろう、シルバの黄金の剣先がマフィリドに向いている。
「人間《わたしたち》もまた……神の奴隷ではありません……」
「なるほど……そう正しますか……」
シルバがいつの間にか振り払った黒い瘴気の触手のような糸がマフィリドの影から伸びるように……
囚われていた王国の兵やギルドの部員たちの魂が抜け、身体がのっとられるように、マフィリドの支配下となる。
「恥じるな、誇れ……剣をかざせ……」
シルバの黄金の剣に激しい魔力が集まり、刃が青白く発光する。
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6年前……
当時、グレイバニアは隣国のバルナゼクの国と対立し、
戦争を繰り返していた。
「……今の王国には正義が無いと……」
当時の将軍に次期将軍であるシルバは、
その場に片ひざをつき、そう意見を申す。
「処罰を覚悟で申し上げます……今の国王にその資格を見ることができません」
その場で首を斬られる覚悟でシルバは、将軍《じょうし》へ意見する。
「顔をあげろ、シルバ……」
言われ、顔を男に向ける。
「……ここでは、部下であるが、同時に俺の娘だ……」
「ならば、シルバ……この国の正義はどこにある?」
片ひざをついたままのシルバを父《おとこ》は見下ろしながら……
「王国を守り、民を導くための正義はどこにある?」
その答えに……思わず黙り込む。
「右手を出して……自分の胸に当ててみろ」
言われたとおりに、右のてのひらを自分のむねにあてる。
「恥じるな……誇れ、シルバ……お前の正義がきちんとそこにあるのだろ?」
「王国を守り、民を導け……剣をかざせ、それを成すのは王の言葉ではなく、お前の力だ……どうだ、シルバ……中間職ってのも案外、大変だろ」
将軍《ちち》が自分の苦労を愚痴るように、苦笑した笑みをシルバへ向ける。
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バルナゼクの主力部隊が王都の一区を攻め落とす。
そこに最後まで抵抗する部隊のひとつにシルバの姿がある。
「隊長……撤退命令が出ています、この区間は捨て本部隊へ合流しましょう」
その部隊の隊長を任されていた。
そして、出ていた撤退命令を無視し、必死の抵抗を続けている。
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例え、彼ら彼女らがこの住処を捨て、別の区へ逃げたとして、
新たな住居や資産を与えられるわけじゃない……
それで、王国だけを救って……
王国を守った……民を導いたと私は誇るのだろうか……
私の正義はそこに在るのか?
「誇れ……剣をかざせ……民を導けっ!」
ボロボロの身体でシルバがそう叫ぶが……
その声に誰も続かない。
倒れた……仲間《ぶか》……
そして、残った部下も、自分だけをそこに残し本陣へと逃げ帰った。
敵軍には名のある武将たちがたくさんいて……
シルバはもてあそばれるように、起き上がっては叩き伏せられる。
何度目だろう……
倒れた身体を起き上がらせようと、右手に懸命に力を送る。
だけど、それがなかなかうまく出来なくて……
足音が自分のそばに近寄ってくる。
誇れ……その最後まで……
「シルバ隊長……大儀であった……お前の正義が……お前の部下が俺をここへ導いた」
将軍《ちち》がそこに立っている。
「隊長……ご無事でしたか……大丈夫ですか……」
自分の力では、隊長《わたし》を助けられないと思った、部下《かれ》は、
逃げたと思った彼は……自分の成せることを、援軍を、将軍をここへ導いた。
それが……正しかったのか……今も正直わからない……
その区は……私の正義は……
将軍《せいぎ》はその敵部隊を一掃し、
その一人の命を代償に守られた。
そして、その大半の戦力を失ったバルナゼクは、
その日、白旗をかかげた。
「誇れ……正義はここにある……」
正義や尊敬も……正直……見えていない。
そんな王から、父に代わりその将軍の地位を譲り受ける。
この王国が王都が……腐らずにあるのは、そんな将軍《ちち》が居てくれたからだ。
だから……
「誇れ、剣をかざせ……」
この王国を、民を導くのは私の役目《せいぎ》だ。
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黄金の刃から放たれる魔力の波動砲が、その空間の天井や壁に到達するほどに刃のリーチを広げるように、振り下ろした刃がマフィリドの周囲を破壊する。
「誇れっ」
「正せっ」
二人の正義と都合が交差する。
・・・いつもそうだ。
学園武術会で……ゲイスに操られた時のように……
ナイツは、自分にまとわりつく瘴気の黒い糸に囚われながら……
昔から……今だって、実力はアストリアが上だった。
トップ3と呼ばれるそんな場所に、身を置いても……
いつだって……上が居た。
自分の信じた正義も……お嬢に捧げた忠誠心も……
そんな、支配される魔力の中で……
虚ろな瞳をマフィリドへ向ける。
「……お嬢……あなたの誇り高い正義に、それを主張する正義のために……私があなたの英雄《せいぎ》であります」
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