異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。

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異世界編-スノー編

否定

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 「しかし……俺たちは何をどうしていくべきなんだろうな……」

 1年特別組の教室……
 放課後の教室に夕日の日差しが差し込んでいて、
 その日も少しだけ暑苦しい日だった。

 俺とクリアは隣りの席に座りながら、
 その俺とクリアのちょうど間の少し後ろあたりで、
 制服に身を包む白い長い髪の女性がくるりと不必要に一度回転して、
 そんな自分の制服姿を嬉しそうに眺めている。

 本当に、制服に身を包む日が来ると思わなかったように。


 「あら、もしかして、遠まわしに私に期待していますか?」

 優しい敬語のどこかに少し皮肉を込めたような言い回しが彼女の特徴的な喋り方。


 「前にも言った通り、私も被害者……神代理《それ》をやらされていたに過ぎないのです」

 フィーリアは俺の期待に裏切《こたえ》るように言う。


 「しかし……クリアの兄さんの言葉通りなら……フィーリアが此処に召喚されて過去改変される前には、あのミルザって奴が巫女の使命を持っていて、その神とされる何者かを育てていたんだろ?」

 それが、翼が黒に染まった。
 たったそれだけの理由で、その黒い神は災いとされて、
 処分が決まった。

 そうすれば、また新たな神が産まれたのだろう。

 でも……そんな巫女は、その掟に背き、
 世界の果てに逃げ出して、
 過去《せかいのありかた》を改変した……

 それが、フィーリアだった。
 そして、それは遊戯《ルール》の中で成立して……

 それは、彼女が本気で勝利を意識すれば、
 永久に敗北を知らないルールだった……


 「侵害ですね……私だって現世では普通の女子高生してただけなのです」

 俺の心を読むように、身につける制服を見せ付けるように少し踊って見せる。


 「しかし……そのミルザって女はさ、スノー家と関係は無かったのだろ……だったら、今もクリア以外にその巫女ってやつの候補は居るんじゃないのか?」

 俺はクリアを見て、そしてフィーリアを見る。


 「……ミルザさんは、私と兄の師に当たります……確かに巫女の資格はスノー家に限った話ではないです……でも、彼女、師は、巫女としての適正が、私や兄なんかよりもずっと高くて……それでも、神を正しく導くことは適わなかった……そして、その掟を背いた……」

 「不思議ですよね……そんな大事な事も、兄のことも……私は忘れていたのですから……」


 疑えば……きりが無い……
 そんな兄弟の……絆を否定したいわけじゃない……
 それでも、可能性は……潰しておく必要はある。

 過去が創られたと言うのなら……


 「現実改変……って可能性はありえないのか?」

 過去は何一つ変わっていない……
 変わったのは……今……

 「……少なくともクロノ……彼は私の兄です」

 クリアの瞳が眼鏡越しに俺の瞳を見つめる。

 俺はため息をつく……
 考えたところで俺がその答えに行き着くことは不可能そうだ。

 「で……新たな巫女が選ばれるってなら、新しい神みたいなものも……産まれるのか?それは誰だ?」

 俺の、思考を放棄した瞳が、彼女の言葉を学習することなくフィーリアを見る。
 フィーリアもため息をつきながら……


 「神聖教会に……今頃、大きな卵でも現れて、その大きな卵が孵化して、なんかこうすごいのが産まれるんじゃないですか?」

 俺を少し馬鹿にするように、両手でひよこでも孵化した様子を表すようにパタパタと上下させながら意地悪に適当に答えを出す。

 なんか……俺なんかよりずっと賢いだろう彼女が、そんな皮肉《じょうだん》を言うと……


 「可愛いな……それ……」

 俺もそう意地悪に彼女に感想《ことば》を送る。

 「そう?」

 フィーリアは冷たく笑いながら、もう一度、両手をパタパタと上下させる。


 ほとんどの手がかりを得られないまま……
 俺は席を立ち上がり、今日も欠席している人の席から目を反らすと……

 3人で、学園を下校する。

 下校途中の廊下で……


 「レスか……よかった無事だったか」

 スコールが目の前に立っている。


 「お前の事だ、余計な心配だと思ったがあの日以来、アクア家に戻って無かったからな」

 キツネ面と出くわした日……たった二日の経過だが、
 俺とフィーリアも同様に、スノー邸で提供された部屋に寝泊りしていた。


 ・   ・   ・


 俺は……ここまでの疑問をスコールにも聞いてみるが……

 「……悔しいが、レス……お前の求めるような答えはだしてやれん」

 スコールは悔しそうに言う。

 「だが……確か、2学年に世界の理……それを研究し続ける、女子生徒が居ると聞く……2学年の教室のある2階に空き教室が有り、そこを勝手に自分の部活動の部屋にしていると聞く……試しに話を聞いてみてはどうだ?」

 そんなスコールの話に半分だけ期待するように、その教室に3人で向かう。


 がらりと、ノックも無しにその教室のドアを躊躇無く開く。


 「……で……だから……なるほど……いや……違うのか……」

 ぶつぶつと黒板にチョークで俺には暗号にしか見えない計算式を描いている女性。


 3人でしばらくそんな天才少女の後ろ姿を見ている。


 「なんか用……気が……散るんだけど」

 黒板に凄いスピードで計算式を描く女性の手が止まり、
 制服の上に白衣をまとっている長い茶髪の女性がこちらを見る。

 「邪魔……したか、悪い……」

 俺は、謝罪の言葉を彼女に送りながら改めて彼女を見る。


 茶髪の長い髪……
 細身ながらも、そこまで身長が低いわけでは無い。
 それなのに、その少し自分の体系より大きめの白衣のそでは、
 彼女のてのひらの半分を隠し、そでからは指先だけが見えている。


 「せっかくだ……意見を聞きたい……」

 茶髪の彼女が俺を見る。


 「私はこうして、世界の在り方を……この世界の理というものを……その不完全なものの答えを……探している」

 そう、自分の描いた黒板の式をその瞳で一瞬見て、再びこちらに瞳を向ける。


 「不完全……故に答えなどない……解けない問題を……永遠に……」

 そんな空ろな目で、俺を見る。


 「1学年……転入生……君ならこの方程式《せかいのことわり》をどう解く?」

 そんな2学年女子の問い。


 「……まずは、その凝り固まった……事実《こたえ》を……無くすことからじゃないか?」

 俺のそんな答えを不快そうに……


 「俺、頭が悪いからあんたみたいな天才の思考に並ぶことはできないけどさ……それでも……助言するなら……あんたが、あんた自身で答えに蓋をしてしまってることに……必死に答えを求めた所で……そこに真実とか答えとか……何もないだろ?」

 俺は……意味も無く笑い、そう答えた。


 「なるほど……下手に根拠を並べる意見よりかはずっと面白い」

 茶髪の少女は俺を見る。


 「で……1学年の君は、私になんのようだ?」

 小さくその小さな頭を左に傾け俺へと訪ねる。

 「レス……そして、こっちがクリア=スノー、で、彼女はフィーリア」

 俺は、またも勝手に自分と周囲の人間の自己紹介する。


 「ふん……レス……ね、噂の転入生か……」

 やはり、俺という人間は知らずに有名人になっているようだ。


 「レイム=ゼロ……まぁ、私の名前など特に意味も無い……覚える必要なんて無いさ」

 「まぁ……なるほど……」

 そんな自己紹介だけで、何か理解するように、そんな天才《かのじょ》は、せかっく書いた、黒板の半分の計算式を消すと、新たに何やら式を描いていく。


 「過去改変……世界の理を捻じ曲げる……そんなことは、レス……君は可能だと思うか……」

 何やらなぞの計算を続けながら、レイムは俺に問いかける。

 「現世《むかし》の俺なら……当然、信じられる話じゃなかったが……」

 この異世界《せかい》では、いろんな能力を見てきた。
 だったら……これだけの事が起こっても……


 「私は全てを否定する……」

 くるりとレイムが止めた手と身体をくるりとこちらに向ける。

 「それが……私の出せる真実《こたえ》だよ」

 「ふふ、どこの世界も天才の言う言葉は……理解に苦しむものですね」

 フィーリアはその言葉に意地悪そうな笑みを浮かべる。


 「世界なんてものはね……人間には到底理解できないようにできているのだ」

 「例えば……この世界は丸い一つの惑星でできている……その外には宇宙という空間が広がる……ではその宇宙の果てはどうなっている……同じ宇宙という球体という存在なのか……果てのないそんな理から外れた空間が永久に続くのか……」

 「この時間はどうだ……時間の始まりとはいつだ?この星が産まれた前から時間は流れていた……どこまで遡ろうと……その原点の前にも時間は流れていなければならない……そして世界が終わろうと時間という概念はいき続ける……その終わり無くその概念は永久に続かなくてはならない……」

 ゆっくりと俺をレイムは見る。


 「……だから、私は否定する……これまでの世界は……偽りなのだと……嘘として全てを0にする……」

 レイムは再び黒板に白のチョークで強引に=を書き込み、その解を0と書く。


 「否定して……否定し続けて、残った結果が答えだとでも?」

 そんなフィーリアの問いに……


 「今の世界の真実は偽りの集合体……繋ぎ合わせた誤回答を繋ぎ合わせたそんな世界……だから、こそ……数式の間違ったものにいくら答えを求めたところで意味など無い……だから、私は全てを否定《ぜろ》にする」

 「……でもさ……俺は答《それ》が、真実か嘘かは知らない……それで、自分が納得して導きだしたならさ……俺はその程度の答えでやっぱり納得するしかないんだよ」

 俺にはその天才の抱える難問を理解することなどできない。


 「ふん……」

 レイムは少しムキになるように俺を睨むように見る。


 「……ならば、私をその神聖教会とやらに連れて行け」

 偉そうにチョークの先を俺に向けて言う。

 「え……どうして、そのような話に……」

 3人の意見を代表するようにクリアが彼女に問う。


 「……問題が目に見えているというのなら、見て答えに辿り着くほうが早い」

 「……そして、私は全て否定する……ただ、それだけだ」


 確かに……その発想は無かった。
 なんか、神聖教会に行くことが、敵陣に自ら乗り込むような危険に身を投げる気がしていた。

 「どうする……?」

 俺は隣の二人に問いかける。


 「……いいわよ、私は別に……神聖教会、今の私には……ただそう呼ばれる場所ってだけですから」

 「私も……レスさんにお任せします」

 思考する……


 「あら……頭はあまりよくないのに、考えてるふりするその顔は、なかなかどうして、騙されて惚れる女性《ひと》が多発する理由ですかね」

 意地悪そうに皮肉を言うフィーリアに……

 「……あんたも、以外に性格悪いよな……」

 そんな皮肉を返す。

 「……あら、気づいちゃいました」

 そんな皮肉を言える友達に囲まれる高校生活を夢見ていた女子は……
 そんな皮肉も喜ぶようにフィーリアが今までで一番楽しそうに笑った。
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