異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。

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異世界編-スノー編

友達

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 どうして、私はそこに存在していたのかは知らない……

 時間という概念のないその場所で私はただ……存在していた。

 真っ白な空間……その中央にある大きな真っ白な球体の機械みたいなもの。
 それが、世界の心臓。

 理屈は解らないがそれがこの世界を形創っている全て。

 お父様はいつもそれを……真剣に眺めている。
 何か……一寸の狂いも見逃さないように……

 私はその隅で積みあがったような古いTVのようなものに映る映像を眺めている。
 その少し離れた場所で、兄《セシル》は、どこから手に入れたボードゲームで遊んでいる。

 短い薄い水色の髪……
 私は両足を伸ばしグテッとだらけるように座り、映像を眺める。


 「何を見ている……?」

 飽きずに映像を見ている私に少しだけ興味を持つように父が言う。

 「ん……っ」

 人間で言うところ3歳くらいの私は黙って一つのテレビを指差す。

 映っているのは30代前後の異世界の冴えない男。


 何も上手くいかない……疲れ果てた男性の男。

 身の程に合わない労働を続け……
 その無力さを嘆きながらも……

 それでも、誰かの人生を優先するように……

 誰にも気づかれない小さいお節介をただ続ける……

 感謝されることなく、褒められることなく……

 それは……ただ、逆に惨めで……

 それでも……

 何かにただ……抗うように……
 そんな男に……


 何から……何処から……わからない。
 それでも、救ってくれるのは……


 たまたま、チャンネルが合った異世界の男。
 私を助けてくれるのは彼なんだ……

 根拠はない……ただ、そう思ったんだ。


 ・

 ・

 ・


 この世界は偽りを積み上げて……それだけで成立している。
 矛盾を正当化するだけの……言葉を証拠を持ち合わせていないから、
 訂正も修正もできないのだ。
                    レイム=ゼロ




 訳もわからず……レインはその身体をミルザに抱かれている。

 「それは……あなたにとって偽りのはずです……」

 キツネ面の外れたリヴァーはミルザに告げる。


 「……あなたが望むとおりに私は、その子を私《ただのむすめ》に育てたのです……あなたの代わりに……」

 レインを愛しそうに抱えるミルザに言う。


 「そんな貴方が今更……彼女に愛されようなど……許される訳がない」

 リヴァーがミルザを冷たくにらむ。
 ビクリとその言葉に言い聞かせられるように、ミルザがレインの身体を開放する。

 世界の最果てまで連れ出したその手を放したあの日のように……


 「どうしました……いつになく無口ではないですか?」

 リヴァーが俺に何か言葉を求めるように見る。


 「……俺は、もともと人見知りなんだ……どちらかと言えば無口なんだよ」

 そう皮肉こめて返す。


 「嬢様《レイン》さまは……そんな貴方に助けを求めたのです……」
 「誰にも優しい貴方に……自分より他人の事を優先している貴方に……」
 「自分が嫌いなのに……自分のことが嫌いな誰かを救う貴方に……」

 レインの事なら何でも知っているというように……


 「もし……貴方が私を許せるというのなら……私も貴方の英雄《ヒロイン》になれたのでしょうか?」

 さびしそうな瞳を俺に向ける。


 「何言ってるか……理解できねぇよ……俺は……俺はこの異世界に来て……お前とレインと会って……学園に転入して……クリアをクロハを……ヴァニと出会って……先生《フレア》と魔王《フィル》と……卒業すると……」

 俺は動揺しながらそう叫ぶようにリヴァーに言う。


 「全ての偽りが正された後で……現実を知った後で……貴方は私に同じ事を言ってくれますか?」

 そんな寂しそうなリヴァーの瞳に……

 「全員……皆……守る………俺は……」

 そう誓ったんだ……。


 リヴァーは口角を上に上げ寂しそうに笑い……


 「貴方が救いたいレインという少女は……どんな少女でしょうか?」

 その言葉に……
 自然と目線はミルザから開放されたレインに向かう……


 「彼女《それ》が……レインじゃないと言えば……貴方は彼女を愛しませんか?」

 そんなことはありませんよね……と無言で告げる。


 「……もし、私が彼女《レイン》だと名乗れば、あなたは、私は彼女のように愛せますか?」

 完全に言葉を失う……
 理解が追いついてない……


 世界を騙した……騙して……騙されて……


 神……そんな存在と入れ替われるような人間が居たとするのなら……


 「……そんな貴方が例え、私を許したとして……世界は私を許しはしない……私は修正される……だから……許す必要はないのです……愛される資格などないのです」


 ・ ・ ・

 「英雄っていうのはどんな存在でしょうか……」

 短い沈黙を破りリヴァーが言葉を続ける。

 「憧れ……に近いものでしょうか……それは異性に抱くものに似ているのでしょうか?」

 続けるリヴァーの言葉をただ聴いている。


 「いま……思えば……ここに召喚された転生された人間は……それぞれ異性に呼ばれているのではないですか?」

 知る限りで思い返す……

 「憧れとは好意に近い感情ではないでしょうか……」

 セティ、ナキ……マナト……どれも当てはまる気がする。


 「……俺は……」

 全部……お前も助ける……
 そう言葉にしようとする。


 「……この歴史に残っている……兄《スコール》と妹《レイン》が過ごした時間は紛れもなく……今の彼と彼女が積み上げてきたもの……今更、私が本物ですと……名乗りでることが許されますか?レインとして……兄に私が再び愛されることが許されますか?貴方に愛されることが許されますか?」

 理解など追いつかない……
 解決策など思いつかない……

 今日まで……彼女にとって……

 彼女《レイン》を助ける事が……リーヴァと自分《レイン》を助ける事と道立だった。

 今更……私を別に助けてくれなど……


 世界を皆を騙してきた……

 奴《わたし》にその資格は無いと……


 「わかりませんっ!」

 そんな会話を黙って聞いていたクリアが……口を開く。
 何故か怒ったように、まゆげを逆ハの字につり上げ、
 ムスっとした口調で割ってはいる。

 「彼女《レインさん》は失礼な人で……私の邪魔ばかりしてくる人で……」
 「貴方《リヴァーさん》は優しい人で……それでも、どこか少し裏の有りそうで、それでも私の大事なモノを横から奪っていきそうなそんな人で……」

 「私の邪魔ばかりしてくる人たちですが……それでも大事な友達《クラスメイト》です……よくわからない言葉《りゆう》ばかり並べられても……」

 「わかりませんっ!」

 そんなリヴァーを守るようにクリアが前に立つ。


 「……だよな……」

 俺はそのクリアの言葉でようやく目を覚ますように……

 「……悪いが……今さら……誰が誰で……あいつは誰だなんて言われてもな……」
 「お前はリヴァーで……そいつはレインだ……」

 俺はミルザの前に割って入るとレインの手を取り立ち上がらせる。

 「俺の前では他の名で呼ぶな……」

 「レス……私は……何を忘れてしまっているんだ?」

 一人状況が読めていないように、震えているレインを……
 優しく抱え込む。

 「大丈夫……お前はここに入ればいい……」

 「……うん」

 
 「おいおいっ……クライマックスにはまだはえぇだろ」

 気がつくと真っ白な部屋。
 横で透明な細い線が光を反射させるように光る。

 そこで初めて部屋中にその線が巡らされている事に気がつく。


 「だーれぇも動くなぁ」

 ゆっくりと黒い髪……真っ黒な執事服に身を包む女が入ってくる。


 「……カイ……」

 俺が彼女に与えられているナンバーを読み上げる。
 あの制御役《ルイン》は一緒じゃないのか……


 「なーーーるほど」

 カイは一人納得するように、自分の罠だらけの部屋を自由に動き回るように、
 ゆっくりとこちらに歩いてくる。


 「どーりで、見つからねぇ訳だ……扉を開ける鍵《みこ》は、過去改変で隠蔽され……システムを書き換えるための鍵《かみ》は……別人としてどうどうと人間を名乗っていたわけか」

 カイがゆっくりと歩いてくる。


 「……その二つがここにそろっている……そっちの愚かな連中は鍵《みこ》だけ使って、邪神《ちっぽけ》な力《それ》で何とかするつもりだったのかもしれないが……」

 シャキンッという刃物の音が鳴り響く。


 「おっと……動くな、そう忠告したはずだ……」

 手にした短刀をカイの首元まで迫ったミルザの身体がぐっと足元をすくわれ、その場に転倒する。


 「……足の一本……捥がれても文句言えないよなぁ」

 指をクイッと動かす。


 「ミルザッ」

 クロノがその身を案ずるように、張り巡らされた糸の狭い空間の中で黒い矢を放つ。


 が、カイに届く前に黒い矢は幾度もカイの糸に接触し、その矢が途中で消滅してしまう。


 「あはっ……うける、もしかしてぴんち?」

 シャカシャカと耳にしたヘッドフォンから音をこぼしながら、猫背の姿勢で、カイが通った道を辿る様に歩いてくる男。


 「なんで……あんたがまだ……」

 俺はソアラを見て言う。


 「いやーー、僕もさぁ、戻ってくるつもりなんて無かったのにさぁ、帰り道でばったり会った女に……詐欺師《あんた》に会ったぁって言ったらさぁ、そこに連れてけって、脅されちゃってさぁ」

 そうゆっくりと頭だけを後ろに向ける。


 「面白いことになってんじゃん……しょーねん」

 もう一人の、紳士的な美少女《てんせいしゃ》が入ってくる。


 「どーしたぁ、少年……何時に無く元気ないなぁ、おねぇさんが慰めてあげようか?」

 「別に……明日になれば元通りだよ」

 「あんまり……この異世界《せかい》に干渉《ひたる》なよ……それは利用されるだけだ……そんなに騙《りよう》されたいならさぁ……私が優しく騙《あい》してやるよ、しょーねん!」

 パチンとセティが指を鳴らす。


 「はっ……!?」

 ソアラが少し戸惑いの声をあげる。

 ミルザとソアラの立ち居地が入れ替わり……
 ソアラの右足にカイの糸がからまっている。


 ミルザは自由になった体で再びカイに斬りかかる。

 その進行を遮るように再び指を数本動かすと、幾つもの糸がミルザの前に現れる。


 パチンっとセティが指を鳴らす。

 「手品《だましあい》や悪戯《トラップ》で……負けるの嫌いなんだよねぇ」

 セティがカイを笑いながら睨む。

 「手品とトラップと一緒にするなよっ」

 自分の能力を馬鹿にされ、カイが怒りの目を向ける。


 「一度……糸、引いてくれる?歩きにくくてさぁ」

 セティはキョロキョロと周りを見ながら、歩ける場所を探し進む。


 「黙れ……」

 そうさせないために、張り巡らされた糸。


 「ふーん、いいけどさ……糸《それ》……もう私の能力《テリトリー》だから」

 きょろきょろとしていた頭をカイに向ける。


 「な……んだ?」

 「能力ってさ……相性があるんだ……あんたが私に勝つのはちょっと無理かなぁって……」

 チート級能力者に……逆にその能力を逆手に取るような凶悪ぶりを発揮する。


 ちりちり一本の糸が燃え盛るように……その炎がカイに向かう。

 また一本は、強烈な電流が伝うようにカイの元へと向かう。

 また、一本は凍りつき、やはりカイの方に向かい氷ついていく。


 「数ある……凶悪な転生者が居たけどさ……やっぱあんたとだけは敵対したくないよな」

 俺は……改めてセティのいう女の恐ろしさを実感する。

 
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