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2.楽しかった昔の話を少し

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 ラブホテルから音さんの家までタクシーで移動した。タクシーの中では会話はなく、今から音さんの部屋に行くことは、そういうことだとわかっていた。逃げられるタイミングはあったけど、俺は逃げなかった。窓からは、冬の重い空が見えた。
 タクシーが着いたのはマンションで、俺は音さんについていく。二人ともずっと無言だった。そして、部屋に入るやいなや、音さんに抱き寄せられ、キスをされた。そのままもつれるように移動して、気づけばベッドに押し倒されていた。シーツや布団からは音さんの匂いがした。ラブホテルの無機質な匂いとは違い、それにすら興奮してしまう。
「ずっと欲しそうな顔してた」
 指摘され、俺は恥ずかしくなる。そういう表情をしているつもりはなかった。音さんにキスをされながら、性急に服を脱がされる。あっという間に全裸になり、すでに勃ちあがっている俺自身が明らかになった。部屋に暖房は入っておらず、寒さにふるりと震えた。
「すぐ暑くなるよ」
 いつの間にか下着姿になっていた音さんは、ふふっと笑った。音さんの性器も俺と同じように下着を押し上げてるのが視界に入った。俺で興奮してくれているのかもしれない。
「ハルタ、足開いて」
 音さんに言われ、俺は素直に従った。恥ずかしさはあるが、この先の行為に期待していた。昨夜にも同じやり取りがされたのかもしれないが、俺の記憶はない。音さんはローションを取り出し、それを手に取った。
「指挿れるよ」
 その言葉を合図に、音さんの指が俺の後孔には入ってきた。俺はどうすればいいかわからず、とりあえず深呼吸を繰り返す。違和感を感じると思ったが、そんなことはない。むしろ細い指が出入りするのが、物足りないくらいだった。
「中、まだ柔らかい」
「っ、……はぁ……」
「痛くない?」
「大丈夫、です」
 音さんは俺の返事を聞き、「指増やすけど、痛かったら言って」と声をかけてくれる。その優しさがなんだかおかしくて、俺は笑いを吹き出してしまう。
「どうかした?」
「いや、なんか優しくて、意外だと思って」
「なにそれ」
「乱暴にされるかと思ってたので」
 俺の言葉に、音さんは顔を顰めた。
「やっぱりそう見える?今までも結構言われたことあって……」
 今まで、と言う単語に、俺は胸の辺りがちくりとなった。過去に音さんに相手がいることなんて、明白だ。
「ごめん、そんな顔しないで。これからは、ハルタだけだから」
 音さんは優しく俺の額にキスをしてくれた。どうせ一晩だけの相手なのに、音さんの気遣いが嬉しかった。こんなに優しくされると、もう後戻りできない気がした。
「じゃあ、ハルタの希望通り、乱暴にしようか」
 にやりと笑った音さんは、下着を脱ぐ。現れた音さんの性器は太くてグロテスクだった。驚きと同時に、じわりと腹の奥が疼いてしまう。俺の身体はすっかり期待していた。音さんは慣れた手つきでゴムつけ、俺の後孔に性器をあてがった。触れ合ったところが、火傷しそうな程熱く、思わず息を飲む。
「っ……、音さん、待って」
「待たない」
「っあ、……はぁっ……」
 指とは比べ物にならない質量の性器に、俺は深呼吸を繰り返す。徐々に音さんのものが入ってくる。絶対に無理だと思ったのに、俺の身体は学習能力が高いらしい。腹の中の圧迫感が徐々に増していく。



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