9 / 71
2.邂逅
3
しおりを挟む「イオくん……好き……」
総司はチューハイをぐいっと飲み干した後、ぽつりと呟いた。
リビングのローテーブルの上には、ビールやチューハイの缶、つまみやお菓子が並ぶ。さらにイオのブロマイドやチェキも所狭しと並んでいた。
すでに四本の缶を空にしており、総司の顔はうっすらと赤い。思考はぼんやりとして、酩酊状態だ。
ワイシャツの上からTwinMeteorのグッズのTシャツを着て、ズボンはスラックスのままという格好で、リビングでグダグダと飲んでいた。誰も止める者がいないため、五本目の缶に手を伸ばす。よりにもよってアルコール度数が高いチューハイだが、総司は全く気付かず、一口飲む。
「ゔ……、あぁ……」
がつんとアルコールが頭に響く感じに、総司は呻いた。飲んでも全く楽しくならないのは、早々に気づいていたが、引くに引けない。それに、全て忘れられるのなら、何でもよかった。
缶を片手に、スマホではTwitterのTLを眺める。TwinMeteorのファンの呟きは、みんな同様に暗く、鬱々している。
「イオくん……」
総司は半分泣きながら、チューハイをあおる。
Twitterには『イオくんに会いたい』『イオくんが世界で一番好き』『イオくん』『イオくんに会えないなんて無理』『イオくんまじ天使。下界に降り立った希望の光』『イオくん好き』『イオくんの笑顔が見たい』と心境を書きこんでいく。書きこめば書きこむほど泣けてきて、またチューハイをぐびぐびと飲んだ。
五本目の缶が空になったとき、ピンポンと腑抜けたチャイムの音が鳴った。聞き間違いかと思ったが、もう一度チャイムが鳴る。
(こんな時間に誰だよ……)
時刻は夜の十時。訪問者に心当たりがない総司は、思わず舌打ちをした。
よたよたとしながら立ち上がり、壁に設置されたインターホンの画面を確認する。解像度は低いが、一人の人物が映っていた。
「…………は?」
総司は思わず声を零す。
そこにいたのは、天使、もとい、イオだった。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
86
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる