家に帰ると推しがいます。

えつこ

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4.同棲

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 イオと一緒に住み始めて、わかったことがいくつかある。
 まず、イオの一人称は「俺」だということ。TwinMeteorの時は「僕」を使っていた。イオが「俺」を使うのを聞く度に、総司は新鮮に感じた。
 そして、家事ができること。料理はもちろん、掃除も洗濯もこなす。
 それに付随して、節約上手であること。いつのまにか、マンション近くのスーパーを何店舗か把握して、安売りの日には大量の食材を仕入れて、作り置きを量産していた。
 そして、クールな印象だったが、素の笑顔は幼い。また、可愛らしいというより、どこか男前で雑なところがあった。TwinMeteorの時と印象が違いすぎるが、ギャップとして、総司は受け入れた。
 他にもあるが、総司が一番驚いたのは、イオの年齢だ。それは一緒に住み始めて二日目のことだった。

「アルバイト、見つかりそう?」

 総司が声をかけると、イオはタブレットから顔を上げた。ちなみに、タブレットは総司が貸しているものだ。

「無難にコンビニやカラオケを考えてます」

 イオは手っ取り早く稼ぎたかった。合間に日雇いバイトを入れるつもりだ。ことによっては風俗店も考えていたが、もしそうなれば総司には内緒にすると決めていた。

「朝と夜で掛け持ちすれば、なんとか稼げる気がします」

 イオはタブレットを総司に見せる。総司が画面を確認すると、見たことのあるコンビニやカラオケ、スーパーなどの店名がいくつも表示されていた。時給やシフトなどの条件が細々と書かれている。

「でも、イオくん十八歳でしょ?親の許可とかいるんじゃない?」

 総司が尋ねると、イオは視線を落とす。

(あれ、聞いちゃいけないことだった……?)

 心配になった総司だが、イオが視線を上げると、苦笑いをしていた。

「えっと、実は、俺十八歳じゃなくて……」
「え?」
「……二十一歳なんです」
「は?」

 総司は思わずイオをじっと見つめて「にじゅう、いっさい……」と呟いた。

(そう言われると、二十一歳に見える、わけない。え、じゃあ、もう成人して……?あ、成人は十八歳だけど……。アイドルならサバくらい読むのか……?でも、考えれば、会うことができなかったはずの二十一歳のイオくんに会えて、ラッキーってことでは?!)

「ごめんなさい。騙すつもりはなかったんですけど、事務所側からの指示で……」
「あ、いや、全然、ちょっとびっくりしただけ」

 世間的にはアイドルは若い方がいいのだろう。総司はそう解釈した。イオがいくつであろうと、イオであることに変わりない。二十一歳のイオは、急に大人びて見えた。

「じゃあ、お酒飲んだりするんだ?」
「たまには。あ、煙草は吸いませんよ」

 もし煙草を吸っていたとしても、それはそれでセクシーだ。想像を馳せていた総司だが、はたと気づく。

「もしかして、ミナミも……?」

 総司の質問に、イオは曖昧に笑った。二十二歳と公表しているミナミだが、実は二十四歳なのだ。本人がいない場で明かすのは気が引けて、イオは何も言わなかった。総司もそれを察して、それ以上年齢の話を掘り下げることはなかった。
 と同時に、イオの『実家と疎遠』と言う言葉に納得する。十八歳であれば首を傾げるところだが、二十一歳であれば頷けた。
 こうして、イオの素の姿が、徐々に明らかになっていった。それに伴い、総司のイオに対する評価はプラスされるばかりだ。

(どうしよう……)

 総司はソファにもたれかかり、目を瞑った。ふぅと息を吐く。イオとの生活はなんら問題ない。問題があるのは、総司の心境だ。

 総司の心中には『推す』以上の感情が生まれていた。

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